ウマ娘 ブラックアサシン   作:Yoshi4041

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 ――――198‪✕‬年、3月5日。
 ライスシャワーが産まれた年の春は暖かく花と緑が豊かになり始めるそんな時期だが彼女の故郷は未だに真冬で前日の降雪によって約50センチの積雪を記録していた。
 
 そして生まれた日の数日後には月が完全に隠れる新月になろうとしているそんな月夜の無い暗闇の夜の中で一際輝くような可憐な彼女はその日、産まれた。
 
 ライスシャワーは家族のみならず、近所の人から大切に育てられ、中央のウマ娘としての活躍が期待されていた。
 その為か、彼女には幸せになって欲しい、祝福を彼女に捧げたいという家族の思いでライスシャワーという幸せで一杯の名前を付けた。
 
 成長してからも特に小柄ながら健康的かつ身体のバランスが整った可憐な少女であり、トレセン学園に通う前は小学校の担任から小さな体躯ながら学科も体力などは他のどの人間やウマ娘より先んじていた優秀なウマ娘だと評価している。
 
 小柄故に可愛らしい見た目もあって、既に影ながらファンクラブが存在し、老若男女ウマ娘問わず彼女は地元では愛されていた。
 この事もあってか、トレセン学園での入学審査では学科・体力試験共に軽々と合格し、意気揚々としていた彼女は面接も見た目の小ささなどの不安面はあったが余裕で合格した。
 またトレセン学園も彼女を期待されていた事もあり、他の子より早く選抜レースへの参加を決定していた。
 
 だがしかし、やはり小さな体躯が悪い印象を受けたのか、はたまた単に彼女の運が悪かったのか、彼女は熱を出したりして模擬レース参加を突如取り止めたりなど、他のトレーナーからライスシャワーへの印象の悪い状況が続いていた。
 その事があってか、今回の選抜レースでは1着を獲得したものの、誰からもスカウトされることは無かった。
 ある一人の男を除いて………。


第2話 期待の眼差し

 ライスシャワーはスカウトから逃げた後、彼女は一人で切り株の近くに来た。

 彼女は耳をペタンと垂れながら、しょんぼりとした姿で下を向いて落ち込んでいる。

 

「………さっきの強面な人、ライスをスカウトしてくれたけど、ライスなんかを選んだら、良い事なんてないから諦めてもらうしか無いよね……ライスってなんてダメな子なんだろう……」

 

 スカウトされた事に少し嬉しさもあるが、ライスシャワーは誰からもスカウトされず、また自分の不幸を他人に巻き込ませない為にと考えたのか、拒否してしまった。

 だがライスシャワーは少しだけ複雑な気持ちを抱え、拒否した事に少し後悔していた。

 

「うぅ……で、でも今回は無理でも、次は良いトレーナーさんに会えるように頑張ろう……かな?」

「ほぅ…ほなオレは良いトレーナーやないって事か、ライスシャワー……」

「……みゅっ!?」

 

 ライスシャワーは後ろから聴こえた低くおどろおどろしい声に対し、恐る恐る後ろを振り向くと、そこには先程のスカウトを拒否された強面のトレーナーが鬼の形相でこちらを睨んでいる。

 

「ヒィイイイイ!!!ごごごごめんなさい!悪気は無いん…です」

 

 ライスシャワーは再び耳をペタンとしながらビクビクと身体を震わせている。

 そんな状況の中でたづなさんが急いでその場にやってくる。

 

「ここに居たんですね、トレーナーさん。ライスシャワーさんが怯えてるじゃないですか!」

「た、たづなさん……えっと、この人…は?」

「この人は今日赴任した新しいトレーナーさんです。名前は――」

「倉塚や、よろしゅうな!」

「えっと……ライスシャワー、です………」

「それよりもオレが良いトレーナやない理由聞いてへんなぁ、理由聞かせてもらおうか……アアン?!?」

 

 倉塚はそう笑顔を見せるが、まるで笑顔では無い般若の顔のような笑顔を見せたのか、ライスシャワーは顔を引きつらせながら、怯える。

 

「ヒィイイイイイイイイ!!」

 

 するとたづなさんが強く倉塚の後頭部を平手で殴る。

 まるで人間とは思えない強い力で殴られた倉塚は後頭部を押さえながら(うずくま)って悶絶している。

 

「ぐぉおおおおおおッッッ!!」

「やめて下さい!ライスシャワーさんが怖がっているじゃありませんか!」

「い、いてぇええ……な、なんや!理由聞いたら悪いんかいなァ!」

「トレーナーさん言い方があるでしょう、まるでヤクザの方みたいな恫喝で怖がらせても話してくれると思っているんですか?」

「……お、おう、せやな!オレはヤグザやないからな!!……ライスシャワー、怖がらせてスマンなぁ、理由聞かせても…ええかな?」

 

 倉塚はそう言って冷静になり頭を下げると、ライスシャワーは呼吸を整えながら落ち着かせる。

 

「それは……ライスと一緒に居たらトレーナーさんが不幸に……なるから……それにライスと居ても嬉しいことなんて……無いから……」

 

 ライスシャワーはしょんぼりとした表情で目に涙を浮かべながら話す。

 

「だから良いん…です。多分……次の選抜レースでもライスは選ばれず、退学する運め――――」

「誰が不幸になるんや?」

「…………………え?」

 

 ライスシャワーはゆっくりと顔を上げ、倉塚の顔を見る。

 倉塚はライスシャワーの言葉に対して呆れた様な顔をしている。

 

「ホンマウマ娘って甘いなぁ……オレは生まれた時から最悪の家、最悪の環境で生まれてきたんや。既に不幸の塊の人間が『不幸になるから嫌や〜、逃げた〜い』なんて言うて諦めると思ったら大間違いやぞッゴラァァァ!!」

 

 倉塚がそう言うとライスシャワーは畏怖し、彼女は理由無しですぐさま頭を下げて倉塚に対し謝罪をする。

 

「ご、ごめんなさい……!」

「……いや、待て待て。何も説教とかしてへんねんから謝るなや」

 

 ――――バチィン!!

 すると倉塚は再びたづなさんに後頭部を平手打ちされる。

 さっきより強い力で叩いたのか、倉塚はその場でぶっ倒れ、ジタバタしながら暴れる。

 

「し、死ぬ、死ぬっておま…た、たづなさんや?平手打ちで叩く加減を知らへんのかいな、こっちは人間やねん??」

「私も人間ですよ……?それに怖がらせないで下さいって言ったじゃないですか!」

「ほなら、オレの顔が怖いって言うんか、あん???」

「……ええ、そうですね」

 

 たづなさんは真面目に回答しているが、倉塚は「何を言ってんねんこのアマ!」みたいな顔で口を開けながら呆れている。

 倉塚本人は自分の顔が怖いとは思っていないのである。

 倉塚はたづなさんの事を置いといて、ライスシャワーの方を向く。

 

「と、とりあえずな、ライスシャワー。オレはお前の走りや身体の強さに惚れたんや。だからオレにオマエをスカウトさせてくれ。もちろんオマエの不幸も一緒に背負ってやるわ」

「……ほ、本当に?」

「もちろんや、オマエをいつでも支えてやる。オマエを邪魔するやつは全て消したるさかい!だから安心しい!!」

 

 ライスシャワーは目に浮かぶ涙を拭き取り、驚いた表情で倉塚を見る。

 

「すごい……まるでお兄様みたい………」

「お、お兄様!?」

「な、なんでもないの!今のは……忘れて……えっと、その、よろしくね、トレーナーさん」

「おう、よろしゅうな!」

「ライス、がんばるね……!!」

「良かったですね、ライスシャワーさん!」

 

 たづなさんの声に倉塚とライスシャワーはビックリした表情をする。

 

「……あのー、どうされましたか?」

「いや、たづなさんまだ居たんかい!!折角二人の世界やったのに、邪魔せんといてぇな……」

「ウフフ、私が居たらダメなんですかぁ……?」

 

 たづなさんは笑みを浮かべながら倉塚を再び平手で叩こうとする。

 

「な、なんでや!なんも変なコト言ってへんやろ!!」

「ふふっ、冗談ですよ。それよりもトレーナーさん、スカウトおめでとうございます。次の目標はライスシャワーさんのデビュー戦の日程を決めないといけませんね!」

「デビュー戦……え、デビュー戦もうするん!?早ない?」

「直近のデビュー戦は……7月初旬の札幌ですね、約2ヶ月の時間がありますので大丈夫ですね!」

「そ、そうやな!全然問題あらへんで!!」

 

(う、嘘やろ……デビュー戦って直近で2ヶ月しか無いんか!?ウマ娘のトレーニングなんてド素人のオレに2ヶ月の特訓とかを考えれるんかいな……いやいや、このお嬢なら大丈夫や、ぶつかった時の身体は強かったから適当にトレーニングさせたらいける!バッチグーや!!)

 

「ラ、ライス頑張るから心配しないでね、トレーナーさん」

「当たり前田のクラッカーや、心配なんてあらへんあらへん!」

 

 こうしてオレはこのお嬢、ライスシャワーを札幌開催のデビュー戦に向けて特訓を……まあこの子なら特訓しなくても大丈夫やろ!

 問題あらへんな!!

 

 

 ―――デビュー戦一日前

「……熱発ですね、明日のデビュー戦は控えて下さい」

 

 医者がライスシャワーの熱を測ってそう話す。

 ライスシャワーは青ざめながら泣いた表情で小さく呟く。

 

「ご、ごめんなさいトレーナーさん……頑張るって言ったのに、やっぱりライスは不幸にさせてしまいます………」

 

 お、オレのトレーナー人生、ホンマに大丈夫なんやろか……!?!

 

 




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