ウマ娘 ブラックアサシン   作:Yoshi4041

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 ―――デビュー戦(新バ戦)
 別名、「メイクデビュー」と呼ばれるそれは札幌、小倉、そして新潟で行われる新しいウマ娘の初レースであり、同時に中央、つまりトゥインクル・シリーズで活躍出来るかの実力テストのようなものであり、ある種の(ふるい)みたいなものでもある。
 
 1位になったウマ娘は東京、中山、阪神、そして京都レース場の重賞レースに参加出来る権利が与えられる。
 だがこのデビュー戦で1年以上勝利しなかった場合、福島や新潟、小倉、札幌、函館、中京レース場の1勝クラス以上の競走しか参加出来なくなる。
 だが、このデビュー戦で勝てないウマ娘はそれらのレースすら勝てるか怪しくなり、彼女らは日本ウマ娘トレーニングセンター学園、通称トレセン学園からはローカルシリーズを主とする地方のウマ娘の学園に転校を余儀なくされるか、もしくは退学を表明することになる。
 
 この1勝を上げるウマ娘は3人に1人しか居らず、地方に行くウマ娘はレースを続けれるが、退学したウマ娘の行先は彼女らの見た目が良ければモデルやアイドルの道に進み、見た目が凡庸であれば人間より筋力がある為に警察や消防、SP、自衛隊などの公務員に勤めるか、工場や建設、鉱山労働者などの過酷な重労働をするなど限られた職場しかない。
 1991年当時は公務員の職場以外はウマ娘による過労死やウマ娘に対する人間との賃金格差や活躍出来なかったウマ娘に対する雇用採用差別、セクハラ・パワハラなどの精神面での自殺(または未遂)などが相次ぎ、2年前には当時の女性と共に「セクシャル・ハラスメント」が流行語になるなど男女のみならずウマ娘の労働環境が問題視されてきた。
 
 政府はこの問題に対し、男女ウマ娘関係無く互いに人権を尊重し、能力を充分に発揮出来るよう1999年に男女ウマ娘共同参画社会基本法を制定し、施行された。
 だがライスシャワーがデビュー戦に参加する1991年当時はそのような法律は無く、デビュー戦はウマ娘達の、彼女達の今後の人生の運命を賭けた一大勝負なのである…………。


第4話 初戦

 ―――ライスシャワーとオレは新潟レース場に着いた。

 とりあえず新潟レース場に見学する前に、昼飯は新潟の名物でも食べようかな。

 

「腹減ったなぁ……とりあえず飯屋探そやライス!やっぱ試合やレースに勝つ為にはカツ丼とかがエエな!」

「ライス、新潟のグルメ調べてきたよ……トレーナーさんがよろこぶと思って……」

「お、ホンマか!それをはよ言わんかいな!」

 

 ライスシャワーは俺の喜んでいる顔を見た瞬間、安堵したのかニコッと笑顔を見せ、すぐさま持ってきたカバンから雑誌を取り出し、丼の写真があるページを見せる。

 

「ラ、ライスのおすすめはね、このタレカツ丼だよ。甘辛いタレがカツにジュワって染み込んでて、サクサクでフワフワで美味しいんだって!」

「ほーう……名前も「カツ」とレースに縁起ええし、丁度ええな!事前調査はええ事やで、ライス!ほな、近くのタレカツ丼の店に向かおか!」

「うん……!」

 

 なんや今日のライス、滅茶苦茶上機嫌やないか。

 これはレースに勝てそうな気がしてきたわ!

 

 レース場近くのタレカツ丼屋に早速入店すると、既に1人のウマ娘が座って食事をしていた。

 

「ふぅ……本当に美味でしたわ!ご馳走様……あら?貴女は…………」

「リ………リュモンさん」

 

 リュモン……どこかで聞いた名前やな…………。

 あ!ライスのデビュー戦で一番人気のダイイチリュモンってやつやん!!

 でも確かどっかのご令嬢とか言ってたような……こんな店に来るんか……。

 

「あらあら、まさかライスシャワーさんも私と同じ店に来るなんて……そういえば貴女、二番人気なんですってね。まあ私はあの!ダイイチルビーと同じ華麗なる一族ですから一番人気になるのは仕方ありませんわ!!オーホッホッホ!!!」

 

 店内にダイイチリュモンの高笑いが響き渡る。

 同時にその高笑いでうるさかったのか店主や他のお客様から驚き、好奇な目で彼女を観る。

 ダイイチルビーって言ったらあのウマ娘日本三大名家メジロ家、シンボリ家に並ぶ、バブル期の政財界を牛耳ったと言われる「華麗なる一族」ダイイチ家の一人やないか。

 せやけど確か先月、高松宮杯でダイイチルビーってダイタクヘリオスに負けてたような……。

 そんな事はどうでもええわ、ダイイチ家はオレの嫌いな財閥共……ヤクザになる前はオレらが苦労して働いた労働者の金を巻き上げ悠々自適に過ごす財閥やコンツェルンのヤツらがホンマに嫌いやった。

 それにウチのお嬢を馬鹿にされるのもなんやめっちゃムカつくわ……。

 

 「なんや、ウチのライスシャワーを―――」

 

 俺がそう言いながら詰め寄ると、ライスシャワーがオレの前に来て話そうとしたのを遮る。

 

 「で、でも……それはダイイチルビーさんの名前の力であって………リュモンさんの実力じゃないよ?ライスは実力があっての人気二位だから……ライスの方がすごいよ……?」

 

 そのライスシャワーの発言に店内は静まり返る。

 オレはライスの唐突なこの発言に目を丸くし、口が緩む。

 い、言いよったコイツ!!あの華麗なる一族の一人やで……え、えらいことや……せ、戦争じゃ………。

 やけどコイツ、威勢があってエエやないか、見直したでライス……。

 するとダイイチリュモンも口角を上げてはいるが、どこか怒りを抑えているような感じではある。

 

「ふ、ふぅーん……では明日のレースで貴女に私の『実力』を見せつけて差し上げますわ!覚悟しなさいライスシャワー!!トレーナー!支払いは任せたわ!!」

「は、はい!」

 

 そう捨て台詞を言いながら、ダイイチリュモンは退店し、彼女のトレーナーはブラックカードで支払おうとしたが拒否され、現金で支払い出てゆく。

 ダイイチリュモンが去った途端に先程の状況に店内はざわめき、オレはすぐにライスに声を掛け用途すると。

 ライスは小刻みに震えている。

 

「お前、大丈夫なんか?そりゃあの華麗なる一族に喧嘩売ったんやから……」

「リュモンさんは大丈夫だよ、あんな事で落ち込まないよ。むしろリュモンさんとちゃんと戦えるからうれしいよ」

 

 ライスはケロッとした表情で返答している、まるで自信ありげな表情で……まさか怖くて震えてるんやなくて武者震いなんか?

 

「……なら明日は頑張らなアカンな!!とりあえずタレカツ丼はよ注文して食べよか?」

「うん!ライスはね……小にするね」

「おいおい、もっと食べんかいな!そんなんやから小さいままやねんで?」

「うっ……な、並でお願いします……」

 

 ライスシャワーはやはり小柄な点が不満なのか、丼のサイズを変える。

 そう言って席に座ると、店主はニコニコしながら笑みを浮かべている。

 

「すみませんお客様、うちの店はヤクザの方お断りなんですわ」

 

 

 

「……ち、ちゃうちゃう!ほらバッジ!!オレはトレセン学園のトレーナーや!極道のもんやない!!」

「こ、これは大変失礼しました……!お詫びにサービスさせて頂きます……!」

「ええって、こんなんウチの学園で交友費とかで落ちるやろ!それよりもはよ食べさせてくれや、腹減って腹減ってしゃあないわ」

「すぐに作りますね!………はい、お待ち!!」

「えっ、早っ!?」

「ウチは早さで勝負してますから!」

「おー、おおきにや……ほなライス、食べよか?明日の勝利を祝って!」

「はい!ライス、絶対にメイクデビュー戦勝ちます!!」

「よーし!ほないただこか、めっちゃ腹減ったわ!いただきます!!」

「い、いただきます!」

 

 

 ――――レース当日

 昼近い11時の新潟レース場は燦々と太陽が照りつけ、青空が広がっている。

 絶好の良バ場でライスシャワーの調子も良く、最初のデビュー戦なのに緊張も無く落ち着いている。

 

「大丈夫か、ライスシャワー」

「うん、ライス今日は調子が良いし勝つよ。トレーナーさんもライスが勝つ瞬間を見てね」

「勿論や、お前の初戦を瞬きせずに観るんやからな。ほんで不幸を払って幸せを勝ち取れ!」

「……うん!行ってくるね、トレーナーさん」

 

 そう言ってライスシャワーは今から走るコースがある方へと向かって走っていった。

 彼女がターフへ足を踏み入れると、歓声と拍手が聴こえてくる。

 ライスシャワーはこれから走るという緊張、観客の視線のプレッシャー、トレーナーへの期待からか、身体がブルルと震えている。

 ――――武者震いだ。

 彼女は怖がってはいない、むしろこの瞬間を楽しみにしている表情を観客に見せている。

 するとスピーカーから実況の声がレース場全体に響き渡る。

 

「さあ本バ場に彼女が現れました7枠8番、ライスシャワーです。一番人気こそダイイチリュモンには譲りましたが二番人気の彼女の素質は彼女には負けておりません」

「先月のメイクデビュー戦では熱発で辞退しましたからね、今回はそれを乗り越えて、素晴らしい仕上がりだそうです!」

 

 実況と解説がそう言ってライスシャワーを紹介すると、後ろからダイイチリュモンがやってくる。

 

「さあ、今回の期待の新人。一番人気のダイイチリュモン、優雅な登場だ!果たして人気通りレースに勝つ事が出来るのか!」

 

 実況がそうダイイチリュモンを紹介している最中、彼女はライスシャワーの前に立つ。

 

「……ライスシャワー、私は二番人気の貴女に圧勝し、ダイイチルビーと並ぶダイイチ一族の誉れになる第一歩としての礎を築きますわ。その為には貴女を、いえ、ここに居る全てのウマ娘をここで完膚なきまでに倒しますこと………お覚悟はよくて?」

 

 ダイイチリュモンはそう言いながら風で靡く髪を払い、ライスシャワー、もしくはレースに出る他のウマ娘打倒を宣言する。

 

「……ライスは今日絶好調だから絶対に勝つよ、だからリュモンさんにライスは……負けないからね!」

 

 ライスシャワーはニコッとダイイチリュモンに笑みを浮かべ、余裕を見せつける。

 レース前とは思えないその余裕の表情にダイイチリュモンは面白く無かったのか、フンと鼻を鳴らしてその場を去る。

 そして全てのウマ娘がターフに現れ、彼女達はゲート入りを始める。

 新潟レース場の管楽器で彩るファンファーレの演奏が鳴り響き、レースが始まろうとしている。

 ファンファーレの演奏が終わるとレース場全体が静まり返り、選手、観客、職員の緊張感が包まれる中、実況の声がレース場全体を響かせる。 

 

「晴れ渡る青空の下、新潟レース場にて芝1000mを10人の未勝利ウマ娘が挑みます。さあ最後にゲートに入るのは8番のライスシャワー、ゲート入りを終えました……新潟新バ戦です」

 

 実況がそう発した数秒後、ガチャと大きな音を立てながらゲートが開く。

 その瞬間にライスシャワーを含め、10人のウマ娘がゲートから飛び出す。

 

「スタートしました!」

 

 特にライスシャワーは良いスタートを切り、先頭に躍り出る。

 

「ええでライスシャワー!スタートバッチリや!!」

 

 そうオレは遠く離れたライスシャワーに向かって叫ぶ。

 実況は移りゆくレース状況を細かく紹介してゆく。

 

「まずは1番のフジノプロミスが立ち遅れ、それから7番のセノエオリオンも後ろからです」

 

 二人のウマ娘はゲートから飛び出すのを失敗したのか、悔しそうな顔で先頭を追いかけるが、差がドンドンと開いてゆく。

 一瞬のミスで結果に雲泥の差が生まれるのがこのウマ娘の恐ろしく残酷な世界である。

 実況は先頭へと視点を変え、実況は続く。

 

「先行争い、ライスシャワーは好スタートを決めたが5番のアイネストキオが内から行く。真ん中付いてダイイチリュモンとアイネスブレーブが先頭へと躍り出る」

 

 良いスタートを切ったライスシャワーは作戦通り、先行の位置に付く為、三番手の位置まで下がってゆく、一方ダイイチリュモンは100メートル辺りでグングンとスピードを上げ、10番のアイネスブレーブと一緒に先頭へと躍り出る。

 ライスシャワーは先行を維持したまま、第四コーナーに突入する。

 第四コーナーを曲がり終えると、ライスシャワーは速度を上げゴールを目指す。

 ダイイチリュモンもアイネスブレーブの外側を走り、ライスシャワーは更にダイイチリュモンの外を走る。

 

「リュモンさんには……負けない!」

「来たわねライスシャワー!最終コーナーからのこの直線で差をつけて差し上げますわ!」

 

 するとアイネスブレーブは限界になったのかスピードが落ち始める。

 

「む、無理ぃ……」

 

 アイネスブレーブは音を上げ、限界に達する。

 だがしかしライスシャワーとダイイチリュモンのせめぎ合いは続く。

 

「最終直線、人気の二人がピッタリ並行に並んで譲らない!」

 

 実況がそう叫ぶと、人々の視線はライスシャワー、ダイイチリュモンの二人に目を向ける。

 双方の応援する声が上がり始め、レース会場は一気に熱を帯び始める。

 ライスシャワーとダイイチリュモンの両者はもつれにもつれて差が縮まらない。

 

「くっ、どうしてですの!私はダイイチ一族の一人よ!!こんな所でチビの貴女には負けられないわ!!」

「ライスもここで……負けたくない……!!トレーナーさんを……失望させたく……ない!!」

「くっ、私もこんな所で負けるのは許されないわ、先月負けたルビー姉様とは違って私は勝つのよ!!!」

「「ハァアアアアアアアアア……!!!」」

 

 二人は雄叫びを上げながら最後の力を振り絞ってゴールを目指す。

 だが100mを切ってからライスシャワーが僅かに先頭に出る。

 

「8番のライスシャワーは僅かに先頭、8番のライスシャワー僅かに先頭でゴールイン……!!」

 

 実況は興奮気味にレースを実況し、ライスシャワーの勝利を発表する。

 ライスシャワーが勝った……。

 

「よっ……しゃあああ!!初戦勝利やぁああああ!!」

 

 オレはウマ娘が嫌いやったし、おやっさんから貰った大切な仕事やから全然気にせえへんはず……やけどライスシャワーが勝ったことでのこの高揚感と嬉しさに満ち溢れているわ。

 ただの新バ戦なのにメチャメチャ嬉しいでホンマ……。

 一方の走り終わったライスシャワーはまだまだ余裕そうな顔をしている。

 ……意外と中距離とか長距離も行けるかもしれへんなぁ

 なんて、お嬢は小柄やからそんな長距離とかムズいやろな!

 すると観客席からライスシャワーに対する拍手と歓声が上がる。

 

「一番人気を倒すなんてすごいな!」

「栗東寮のウマ娘を倒すなんて、えらいぞ!!」

「いいぞライスシャワー!この調子で頑張れよ!!」

 

 ライスシャワーは観客の声に気がつくと観客席の方へと振り向き、笑顔を見せて歓声に対して手を振る。

 一方、ダイイチリュモンは負けるのが悔しかったのかその場でうなだれている。

 

「ま、負けた……初戦で私が負けるなんて…………ううっ……」

 

 ダイイチリュモンの目には悔しさで涙が浮かぶ。

 だが彼女は堪えて、涙を引っ込める。

 

「泣いてはいけませんわ。私はダイイチ家の者として涙を見せてはいけない……ですが、これ程負けるというものが悔しいものなんて……」

 

 するとライスシャワーはそんな泣きそうな彼女に近づく。

 ダイイチリュモンは顔を上げ、いつもの様な高慢な態度を見せる。

 

「あら、これは勝利したライスシャワーさん。私に何か用かしら?それとも敗けた私を嘲笑いに来たのかしら」

 

 ダイイチリュモンは笑顔を見せるが、悔しさで身体が震えている。

 するとライスシャワーは手を差し伸ばす。

 

「…………この腕はなんですの?」

「え、えっと……リュモンさんが落ち込んでいたから大丈夫かなって……」

「落ち込んでないわ!貴女、私を馬鹿にしてるの!!」

「ば、バカにしてない……よ?ライスはリュモンさんが強いって、人気一位なんだって今回のレースですごく感じたからね……!」

「……まあ、当たり前よね!だってダイイチ家の者ですから!!オッホッホッホ!!……ライスシャワー、貴女は私に勝ったんだから次のレースで負けたら承知しないんだからね!!」

「……う、うん!次のレースでもライスは頑張るよ!!だから……リュモンさんも頑張ってね!」

 

 ダイイチリュモンは元気を取り戻したのか、口角が吊り上がった不自然な笑顔がいつもの高慢な笑顔に戻っている。

 そしてライスシャワーとダイイチリュモンはお互いに称え合い、握手を交わした。

 

 ……オレはウマ娘共のレースがこんな熱くなるモンやとは思わんかった。

 それに担当したウマ娘が勝つってのもめちゃくちゃ嬉しいし、カタギの奴らがこんなレースで盛り上がるのもめちゃ分かる……。

 これ、G1とかに勝ったらどうなるんや……まあそんなんは夢のまた夢やけど。

 

「ライス、ホンマおめでとさん!」

「トレーナーさん、ありがとう……ございます。ライスはね、トレーナーさんと出会ってこのレースを迎えれてすごくうれしいよ」

「そうかそうか、オレもお前が勝てた事がめちゃ嬉しいわ、ホンマおおきにな!」

 

 するとライスシャワーは恥ずかしそうにモジモジとし始める。

 

「あ、あのねトレーナーさん……いっこ、わがまま言ってもいい……?」

「おう、ええでええで!」

「……あのね、トレーナーさんのこと――――」

「ライスシャワーさん!このあと記念撮影と授与式がありますのでこちらに居らして下さい!!」

 

 するとURAの職員が話を遮ってライスシャワーに声を掛ける。

 

「は、はい!いま行きます……やっぱり忘れて下さい。これからもよろしくお願いしますっ……トレーナーさん!」

「……おう、もちろんや!」

 

 何を言おうとしたんかごっつ気になるんやけど、まあええか!

 意外と初戦楽勝そうに勝てたし、距離伸ばして次は重賞G3に行くのもええな!

 

「あのーすみません……ライスシャワーのトレーナー様でよろしいでしょうか?」

「ああ?なんや、オレに何か用かいな?」

 

 オレに対して声を掛けた方に顔を向けると、そこに一人のURA職員が立っていた。

 オレの顔を見た途端、職員は恐怖で引きつった様な顔をする。

 おっと忘れてたわ、笑顔笑顔や。

 

「なんやお嬢ちゃん、オレに何か用かいな?」

「す、すすすみません!人違いでしたぁああ!!」

 

 URAの職員はその場から逃げようとしていたのですぐに声を掛け、足を止めようとする。

 

「いやいや、ライスシャワーのトレーナーや。合ってるで」

「そ、そうでしたか。取り乱して申し訳ございません」

 

 オレがライスシャワーのトレーナーと気づいたのか、URA職員はすぐに頭を下げ謝る。

 

「……ほんで何の用や?」

「はい、賞状と賞金の授与式がありますのでトレーナーさんには式の参加をお願いをしております」

 

 ……来たで!これを待ってたんや!!

 ウマ娘の賞金は野球選手の年俸並に高いって聞いてたから楽しみやわ!

 授与式が行われ、賞状とトロフィーをライスシャワーは受け取ると観客は拍手と賛辞を贈る。

 そしてオレも表彰場で金一封を渡される。

 フフフ、これでオレもリッチ、ディスコでワンナイトフィーバーや!!

 

「はい、こちらが賞金になります」

「待ってたで……ん?なんか意外と少なない??」

 

 なんでや、予想としていた厚みと比べて薄い……。

 確かウマ娘業界は盛り上がりをみせて儲かってたはずやんか、それやのに初優勝は6万以下って……。

 

「ようわからんけどウマ娘のレース賞金ってこんなもんなんか?」

「ええデビュー戦ですから、重賞などとは違いますよ。それに大半の賞金はトレセン学園の運営費用や貴方の担当ウマ娘に対して還元されていますので5万貰えるだけよろしいと思いますよ」

 

 な、なんやて!?

 ほな重賞を勝てばシノギが上がるんか……これはホンマに次は重賞に向かわなアカンやないか……。

 

「それにほとんどのウマ娘は賞金自体貰える事が珍しいのでくれぐれも大切にご利用ください」

「お、おう……気いつけるわ………」

 

 まあ、こんな金なら少し使っても問題あらへんやろ?

 ………まあ、なんか買うてあげよか。

 余ったお金で酒でも何でも豪遊すればええし!

 よっしゃ!次の目標決めたで!!

 

「ライス、来月の新潟ジュニアステークスで優勝目指そ!!な?」

「ふぇっ!?もう来月にじゅ、重賞目指すの……?でも、トレーナーさんが言うなら……ライス、がんばるね!」

 

次は重賞、OP越えて来月のGⅢ新潟ジュニアステークス目指そか!!

 ジャンジャン稼いで、夢のウマ娘ドリーム掴んだるで!!!

 ほんで豪遊しまくるで、グフフフフ……。

 

 

 

「なんということでしょう!3番人気のライスシャワーが出遅れてしまい11着!!」

 

 ……………ちょ、調子乗ってしまったー!!

 おやっさんやライス嬢には顔向けられへん!!

 

 ライスシャワーはGⅢ新潟ジュニアステークス……11着、初の掲示板外&敗北という失態を犯したのだった。




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