今日はアクたんがお見舞い一番乗りだ。私はその次。
病室に入ってルビーちゃんが居るベッドのカーテンを開けると、昨日とは打って変わって明るい表情のルビーちゃんが居た。何かいいことでもあったのかな?
「さっきお医者さんが言ってたんだけどね、明日には退院できるんだって。」
「良かったねぇ、ルビーちゃん! ついにみんな揃ってアイドル出来る日が戻ってくる………ん?」
「どしたの?」
「退院するって話、他の人にはしたの?」
「いや? MEMちょが最初だけど。」
祝、ルビーちゃん退院!
いやぁ嬉しいねぇ。おめでたいねぇ。たった数日間の入院だったけど、何週間にも感じられたよ。これにて一件落着。明日からあの日常が帰ってくるんだなぁ。
しかし、あることに気付いてしまった私はもうルビーちゃんの退院を喜ぶどころではなくなっていた。
いやとっても素晴らしいことなんだけど、まぁいずれ来ると分かっていたことだ。そうじゃなくてこの情報を知っているのはルビーちゃんと私だけって所が重要。とってもいい使い道がある。
かなちゃんは明日もルビーちゃんが病院に居ると思っている訳だからね。
「にやり。」
「自分で言う言葉じゃなくない? 可愛いから良いけど。」
「いいの。そういう気分だから。とにかくだね、これはチャンスだよ。かなちゃんにドッキリを仕掛けるチャンス。」
「!! MEMちょ、天才!」
「気づいたようだねぇ。」
ルビーちゃんの復帰に合わせていくつか動画のパターンを考えていたが、この状況はユーチューバー的にかなり美味しい。ルビーちゃんのお姉ちゃん力とかなちゃんの末っ子ムーブを上手く引き出すことが出来る絶好の機会だ。
閃いたアイデアを頭の中でこねくり回し、とりあえずの大雑把なプランを完成させる。ルビーちゃんへと説明すれば、目を輝かせて聞き入ってくれた。
「つまり、いつも通りの撮影でコラボ相手のユーチューバーさんを呼んだと思ったら、私が出てきて先輩が泣くって事ね。」
「そのとおり! とにかく、退院することは誰にも言っちゃダメだよ。社長には私から秘密にしてもらうように言っておくから。」
「了解しました!」
さぁ、楽しい楽しいドッキリ企画の始まりだぁ。
・・・
ドッキリの為の嘘企画は、私の知り合いのティックトッカーMさんとのコラボだ。
アイドルオタクが高じてお気に入りのアイドルのダンスを完コピしては動画をアップロードしている人で、旧B小町の曲は全てマスターしている強者だ。既に何度かコラボもしているので嘘企画が怪しまれることも無いだろう。
早速スマホを取り出し、メッセージアプリのB小町仕事用グループ向けにメッセージを送信。まずは全体に向けて動画撮影の内容を周知する。
明日はいつものダンススタジオで
撮影します。かなちゃんは放課後
すぐにスタジオ集合。着替えその
他の準備はアクたんよろしく。
了解。
ダンス企画?
そうだよぉ。
いつものティックトックのお姉さ
んとコラボ。
分かったわ。
それじゃあ明日も頑張っていこー
!
おー!
@ルビー
あんたは入院中でしょうが!
病院に居ても気持ちは一緒だから
ね!
元気そうで安心したわ。メムさん
明日はよろしく。
お任せください!
全体への連絡はこれでOK。そしてすかさずかなちゃんを除いたメンバーに秘密の連絡だ。
かなちゃんだけ仲間外れみたいでちょっと心が痛むけど、良い動画を撮るためには仕方がない。それに、かなちゃんには思いっきり喜んで欲しいからね。
メッセージアプリで新たにトークを作成し、仕掛け人側の人間に企画の流れを説明する。
という訳でかなちゃんは普通のコ
ラボ企画だと思っています。
オープニングは普通に企画の説明
をして、コラボ相手の登場まで進
めます。
ルビーちゃんはスタジオの扉の前
でスタンバイ。私が合図を出した
らクラッカーを鳴らして登場ね。
おっけー。
超楽しみ!
有馬の奴絶対泣くな。
その時は私の出番だね。
流石おねえちゃん。有馬もイチコ
ロだろうな。
じゃあ頼んだよ。二人とも!
はーい!
了解。楽しみだ。
よぉし。これで仕込みはばっちりだね。
・・・
ドッキリ当日。スタジオに集まったの私とかなちゃん、そしてアクたんだ。
ルビーちゃんは近くの駐車場で社長と待機してもらっている。動画の撮影が始まったらアクアたんが社長に連絡し、ルビーちゃんがこっそりスタジオに来るという流れだ。そしてコラボ相手のMさんの登場、と見せかけてルビーちゃんが出てくる。
かなちゃんはどんな反応をするだろうね。まぁ大体分かるけど。
アクたんが入念にカメラをセットして、動画撮影の準備を整える。私はかなちゃんと軽く打ち合わせだ。ドッキリがばれないように、落ち着いてね。
「ちょーっとMさん遅れてるみたいだから、先にオープニング撮っちゃおうか。んで、到着したらカメラ回したまま部屋に入るところも含めて動画にしよう。」
「分かったわ。とりあえずいつもみたいにトークしながら待ってれば良いわけね。」
「そゆこと。あと5分もすれば着くって言ってるから、もう撮り始めちゃうね。アクたんお願い。」
「了解。3…2…1…」
0のタイミングでアクたんが手を振り下ろし、撮影開始だ。
いつも通りのオープニングに、嘘の企画の説明を粛々と進めていく。ダンスの企画と信じ切っているかなちゃんを見るとちょっとだけ罪悪感。
そのまま私とかなちゃんでトークを続けていると、アクたんはスタジオの外へ。ルビーちゃんを呼びに行ったようだ。もう1,2分もすればルビーちゃんが到着する。
ああヤバい。めっちゃ緊張して来た!
そしてアクたんがスタジオに戻ると、その手にはコラボ相手が到着したというカンペが掲げられている。ルビーちゃんはもう扉の前でスタンバってるという合図だ。後は私が一声かければルビーちゃんが現れて………
さぁやるぞ。
「という訳で、今日はMさんとのコラボなんだよねぇ。」
「久しぶりね。何の曲を披露してくれるのかしら。」
「それは見てのお楽しみ! それじゃあ本日のゲストの登場です。Mさん! どうぞ!」
私の合図でかなちゃんが扉の方向に振り向く。そして勢いよく開かれた扉から現れたのはMさん……ではなくルビーちゃんだ。
かなちゃんはどうなっているかと言うと、ドアの方向に視線を向けたまま固まっている。あり得ない人物の登場に思考が追い付いていないようだ。
そこへルビーちゃんがクラッカーを鳴らす。
頭が真っ白になったかなちゃんは容赦のない音の衝撃に体をびくっと震わせる。もう何が何だか分からないと言った様子。パニック状態だ。
「どうも、ルビーお姉ちゃんでーす! 実はもう退院してました! 今日から復帰でーす!」
止めの一撃。さてかなちゃんの反応は。
「る゛びい゛い゛ぃぃ」
全く予想通りの大号泣だった。大好きなお姉ちゃんの下へ一目散に駆け寄り、体当たりのような勢いで抱き着いている。もちろんルビーちゃんはそれを嬉々とした顔で受け止め、わんわん泣きながら言葉にならない声で泣くかなちゃんをぎゅっと抱きしめている。
いやはや全く持って完璧な画だ。自分のユーチューバーとしての才能が怖くなるね。
「もう、人が悪いわよぉ………。私ずっと心配してたんだからね………」
「ごめんごめん。先輩を喜ばせたかったんだよ。普通に退院しましたって言うよりこっちの方が感動的でしょ?」
「うわああぁぁん」
「あはは。また喋れなくなっちゃった。よしよし、お姉ちゃんはここに居るよ。」
かなちゃんが泣き止むまでしばらくかかりそうなので、私とルビーちゃんの二人でトークを続けることに。話しながらも器用にかなちゃんを撫で続けているルビーちゃんのお姉ちゃんスキルはさすがの一言だ。
なでなでしつつトークを続ける事数分。ようやくかなちゃんが復帰した。
「という訳で、今回はドッキリ企画。コラボ相手が登場すると思ったら入院しているはずのルビーちゃんだったら、かなちゃんはどんな反応をするのか? ドッキリー!!」
「先輩すっごくいいリアクションだったよ! 可愛かった!」
「これはさすがに卑怯よ………。もうっ」
卑怯だなんだといいつつ、かなちゃんの顔は笑っている。もうドッキリとか嘘の企画とかはどうでもよくて、ルビーちゃんがここに居てくれることが嬉しくてたまらないって感じ。
それはもちろん私だって同じことだ。
「なんにせよさぁ、ルビーちゃんが無事に退院してきてくれて良かったよぉ。お姉ちゃんこれで一安心だぁ。」
「妹をこんなに心配させて、挙句の果てにはドッキリだなんて、ひどいお姉ちゃんね!」
「ごめんって。お詫びのしるしにいっぱいぎゅーってしてあげるから!」
「………今日くらいは許してあげるわ。」
「じゃあ私もぉ。」
最後はいつも通り、かなちゃんを二人のお姉ちゃんが徹底的によしよしなでなでして動画は終わる。この数日は出来なかった、3人揃ってのおしくらまんじゅう。とっても嬉しそうに嫌がるかなちゃんがこのチャンネルの名物だ。
やっとこの光景が帰って来たんだね。
あ、そうそう。これだけは言っておかなきゃ。
「じゃあルビーちゃん。最後のアレ、行くよ!」
「分かった! せーのっ」
「「ドッキリ大成功!!」」
ラインっぽい奴の形や色を調整していたらいつの間にか凄い時間が経ってました。
参考にしたのはこちら。特殊タグと言う機能を使っています。
https://syosetu.org/novel/299194/2.html
また、運営様が特殊タグの使用方法をまとめているページもあります。
https://syosetu.org/novel/94624/
かなり色々なことが出来るようです。