その王であるNの世話係である女神の一人に“正義の女神”と呼ばれた女性がいた。
彼女は、もうこの世にいない。
なぜなら、七賢人の長により消されたからだ…。
一人のトレーナーがホドモエシティにある元プラズマ団団員が住む館を訪ねてきた。
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私の名は、バーベナ。
私は、ヘレナ。
N様の世話係をしておりました。
え、アテナですか…?
正義の女神は………もうおりません。
どこへいったのか、ですか?
あの方は、星の海へ旅立たれました。
どうしてか、ですか……?
バーベナ、話さなければならないでしょうか?
ヘレナ、…話しましょう。
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「アテナ、ヘレナ、バーベナ。
そなたたちは、我らが王となるN様の養育を担う女神となれ。
アテナ、そなたはN様に正義を教える“正義の女神”となれ。
ヘレナ、そなたはN様にポケモンにとっての平和を教える“平和の女神”となれ。
バーベナ、そなたはN様にポケモンへの愛を教える“愛の女神”となれ」
「「「「「「「我ら七賢人の名において、そなたたちを王を守る女神とす!」」」」」」」
私たちは、それぞれ別の地方から七賢人によってイッシュ地方にさらわれた。
シンオウ地方有数の大富豪・ベルリッツ家の長女であったアテナ。
カントー地方のポケモンの権威・オーキド博士の孫娘だったヘレナ。
ホウエン地方の伝説的トップコーディネーターだったバーベナ。
私たちは、N様を大切に育てておりました。
しかし、N様は父親により狭い部屋に閉じ込められ、人間により虐げられたポケモンとしか関わりを持つことを許されなかったのです。
しかし、アテナは1日だけN様を外の世界へと連れ出そうとしたのです。
今でもはっきり覚えています、アテナと幼いN様の会話を。
「N様、この部屋の外に出てみませんか?」
「お父さんが言ってた。
外の世界は、悪い人間たちばかりで、ポケモンたちが苦しんでるって………」
「いいえ、外の世界では人間とポケモンが仲良く共存しているのですよ。
N様もそのような光景を見たくはありませんか?」
「…見てみたい」
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アテナのその行動は、N様の父親の逆鱗に触れることとなったのです。
その父親の名は、ゲーチス・ハルモニア・グロピウス…。
彼の狙いは、プラズマ団以外の人間すべてがポケモンを手放すということ。
そのためには、N様を外界と接する機会を極力抑えなければなりませんでした。
「“正義の女神”アテナよ!
我ら七賢人に背くなど、あってはならぬこと!
さあN様、城へ帰りましょう。
アテナへ与える罰は、我々にお任せを」
「嫌だ!
お父さんの嘘つき!
みんながみんな、ひどいやつじゃないじゃないか!」
「N様!」
「アテナ!
離して!アテナと一緒がいい!」
しかし、二人は引き離されてしまいました。
ゲーチス様は、オーベムを使い、N様の記憶から外界での体験とアテナの記憶を消しました。
七賢人は、すぐさまアテナを裁判へとかけました。
「判決を下す。
“正義の女神”アテナを死刑に処す」
一方的な裁判、アテナに勝ち目はありませんでした。
翌日、私たちは七賢人に呼ばれ、大広間に向かいました。
「ヘレナ、バーベナ。
よく見ておけ、これが七賢人を裏切った者の末路だ」
バリヤードによって作られた透明な壁の向こうには、十字架に架けられたアテナの姿。
すでにベトベトンの体液を飲まされ、弱りきった姿だった。
「始めよ」
ゲーチスの声と同時に炎が放たれた。
みるみるうちに、炎に包まれるアテナ。
目を背けたくなる光景。
しかし、かなしばりをかけられ、体が動かない。
「ゲーチス・ハルモニア・グロピウス、あなたは命を弄ぶ悪魔だ!」
最後の力を振り絞ったような声がした。
「ワタクシを“悪魔”と呼ぶなら、息子であるNも“悪魔”ですよ」
この時ゲーチスが悪魔に見えた……………。
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「アテナを見殺しにしただと!?
許さない………!」
怒りに身を任せないでください。
私たちもゲーチスの横暴を止められなかった………。
彼は、悪魔の中の悪魔、