星の子たちにハッピーエンドを   作:天凪

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待たせて申し訳ありません。しばらく書かないと勘が鈍るものですね。
お待たせしました。まずは、ルビーのハッピーエンド編です。


ハッピーエンド編
星野瑠美衣編


「ああ、やっぱり、いつもとは違うな」

「もう! これを見て言う言葉がそれなの!? お兄ちゃん」

 

 すっかり着替えと化粧を終えた妹がふくれっ面になって兄であるアクアに抗議するルビー。

 

 今の彼女は、純白のドレス―――いわゆるウエディングドレスに身を包み、髪を結い上げ、化粧を終えて出番を待つ状態になっていた。

 

 そう、今日は星野瑠美衣の結婚式だ。相手は言うまでもないだろうが。

 

 ルビーに結婚式を勧めたのはアクアだ。当初、二人は結婚したという事実のみで結婚式などは考えていなかったようだが、さすがに親子二代―――いや、その親もまともな結婚ではなかったため、結婚式という儀式自体が星野家では既に廃れていたようなきがするが、それでも女性からしてみれば夢見るシチュエーションであることは間違いないのだ。

 

 たとえ、相手がルビーよりも二回り以上、年齢が離れていたとしても、法律上犯罪ではないのだ。マスメディアには格好の餌かもしれないが、それ以上に世を憚るようなことはないはずだった。だから、世間体を考えて遠慮していたルビーに、結婚式を提案したのだった。

 

 今の着替えたルビーの表情を見るにどうやらその選択は間違いではなかったようだ。

 

「まあ、言える言葉はたくさんあるが、それでも、それを最初に口にするのは俺であるべきではないだろ」

「そうだけど……」

 

 それだけ言えば、ルビーにも意味は伝わったのだろう。兄妹―――しかも、双子とはいえ、アクアは男だ。花嫁としては最初の賛辞の言葉は旦那である星野吾郎(旧姓:雨宮)であるべきであろう。

 

 そう、今日、星野瑠美衣と雨宮吾郎はここで結婚式をあげるのだ。

 

 式を挙げればよい、と助言したのはアクアだ。当初、年の差ということもあり、所詮は二人とも理解されない結婚ということも理解しており、法律的な結婚だけで最低限のウェディングフォトで済まそうとしていたのだが、そこで待ったをかけたのがアクアだった。

 

 法律も、秩序も犯していない二人の結婚式が行われないのはおかしいと、ネックは年齢差だけなので、それ以外に問題がないのであれば堂々とするべきだと説得して、この式は決行された。とはいえ、アイも結婚式などやっていないし、ここでルビーまでやらなかった場合、親子二代にして不遇な結婚との印象があるのは嫌だと思ったのも理由の一つではある。

 

 なお、ドレスやらを選ぶ準備には当初は乗り気でなかったルビーも式が具体化されるにしたがって、乙女の夢を実現させようと凝っていた。なお、この式場に関しては芸能人がよく使う口の堅い式場を鏑木から紹介してもらい、今日に至っている。

 

 しかし、とルビーのウェディングドレスを見ながら、これまでの軌跡を考えると感慨深いものがあると物思いにふけってしまう。

 

 

 

 ※  ※  ※

 

 

 

 ルビーが結婚を言い始めたのは二十歳の誕生日の後だっただろうか。事務所に出社して、朝の最初の一言がこれだった。

 

「ママ、私、せんせと結婚するからアイドル卒業しようと思う!」

 

 その場にいたアイ、アクア、ミヤコ、壱護の誰もが仕事の手を止めて入ってきたばかりのルビーを虚無の表情で見ていた。これは、ルビーの突然の発言に付いていけず、どんな表情をしていいのか分からなかったからだ。その言葉はあまりに無邪気すぎて、アクアたちの衝撃を想像していないようだった。

 

 だが、砂に水がしみこむように理解が及んでくると誰もが、困惑した表情をしていた。一番最初に口を開いたのはマネージャーともいえるミヤコだった。

 

「ルビー、あなたねぇ……雨宮先生と結婚するとは前から聞いてたけど、急すぎるでしょう」

 

 頭が痛いのか、額を押さえながら答えるミヤコ。なお、アイは頭の代わりにお腹を押さえていた。前々から身内には吹聴していたが、前振りの一つでもあると思っていたが、まさかの直球ストレートだった。

 

「いやぁ~、昨日のデートでプロポーズされちゃって、受けちゃった」

「……確かに誕生日のデートに行ってたね」

 

 てへっ、と微塵も反省という二文字を見せない表情であっけらかんというルビーに対して、思いつく予定があったことを思い出したアイがポツリと告げた。アイからしてみれば、その話は数年前にけりがついているのだからせめて前もって言ってくれると胃への衝撃が少ないと思っていた。

 

 なお、アクアは事前に相談を受けており、知っていた。だが、このようにあっけらかんと宣言するとは夢にも思っていなかったので、呆れ具合は彼らと同じである。

 

「でも、そろそろ、新生B小町の卒業だって考えないといけないでしょ?」

 

 ルビーが、明らかに何を言ってるんだ? という空気を読んだように、逆にルビーの言うことに正当性を与えるようなことを口にする。そして、その言葉にうぐっ! と唸るしかないのは経営者としての壱護とマネージャーのミヤコだ。

 

「先輩は、そろそろ女優一本で勝負したいみたいだし、メムちょは……ねぇ?」

 

 メムの理由だけは誤魔化されたが言いたいことは分かった。

 

 そもそも、ルビーが言うことに間違いはないのだ。アイドルの平均的な卒業年齢を考えれば、そろそろ新生B小町がどう卒業するかを考えないといけない時期にあるのは確かだ。卒業といって、はい、明日卒業ね? とできないのがアイドル業界だ。そもそも、卒業公演としても今の新生B小町のことを考えれば、ドームレベルになるのは間違いなく、予約するにしても年単位の計画が必要だ。

 

 それにルビーが言うようにメンバーの有馬かなはそもそも女優としての名を上げるためにアイドルになったのだ。そして、その目論見は成功している。今ではアイドル兼女優としてドラマや映画に出演していないことを見るのが難しい。それに加えてアイドルとして歌唱やダンスの稽古も行っているのだから、もはや彼女のスケジュールは殺人的ともいえるほどだった。

 

 さすがにそのあたりは社長である壱護も調整しているが、それでも、全国ツアーとして出張があるトップアイドルとなれば、ドラマの撮影直後に飛行機で移動など頻繁にあり、ライブの合わせ稽古がライブの前日しかないというのもあったりして、そろそろ限界が? という意見も上がっているのも事実だった。

 

 ならば、なぜ、そこまでしてかなが卒業していないのか? というと、単純に新生B小町に実力の見合う新メンバーいないことに尽きる。

 

 そもそも、新生B小町は元祖B小町の反省を生かして、メンバー一人一人がアイのように輝く人材を集めていた。メンバーの一人一人がアイドルグループの絶対的センターにもなれる、というファンの感想は正しいものだ。だからこそ、新メンバーが見つからない、というジレンマになっていた。

 

 そのレベルの人材であれば、他のアイドルグループでセンターになった方が効率が良い。今の新生B小町が色々な意味で奇跡的なグループであった。

 

 あと、メムについては、新生B小町がアイドルとしてデビューして四年になる。つまり、アラサーからアラウンドがなくなり、本当に30代になるのだ。そして、新生B小町は若いアイドルとしても売っていたため、比較的ダンスが激しいものがある。あとは、言わずもがなである。ルビーが卒業を勧めるのは、体力的な限界が近づく前に、という優しさなのだ。

 

「それに、今年で一番大きな目標は達成しちゃうしね」

 

 そう、それもある。アイドルとして一番大きな目標。母親であるアイと同じく東京ドームでのコンサートである。それも、今年にすでに予定されており、ファンクラブ経由の前売り券も含めて完売している。つまり、アイドルとしての頂点に至ったといっても過言ではない。これからは、全国ツアーを続けるアイドルとなるだろう。

 

 ただ、それは惰性だ。すでに頂点をとってしまったといっても過言ではない。ファンにとっては今まではこのアイドルをトップにまで連れて行くんだ、というモチベーションがあったかもしれないが、ある意味でアイドルとしてはゴールを飾ってしまったといっていい。つまり、ルビーたちのアイドルとしてもファンとしても次のステップが見通せないのだ。

 

 元B小町と同じ年数で東京ドームコンサートまで実行したアイドルとしてルビーたちが伝説に残るのは間違いない。ならば、その後は? という疑問には誰も答えられなかった。

 

 その妥当ともいえる提言に誰も口を開けない。この中で唯一、アイドルとして活躍したアイとしても、東京ドームがある意味のゴールで、それ以降は惰性に近い形で解散ライブまで過ごしていたという自覚があるからだ。

 

 そして、誰も言葉を紡げない中、パンっ! と太ももを叩いて、壱護が覚悟を決めたように前を見て口を開いた。

 

「分かった! 3年だ。3年で新生B小町は卒業させる!」

 

 それは社長としては苦渋の決断だったのだろう。現在の新生B小町のファンクラブ会員が10万規模で年間の会員費が6000円だとすると年間での売り上げは6億の収入になるのだ。できるだけ長引かせたいというのが間違いない。なお、これにユーチューブの有料会員などを加えると、今の新生B小町はドル箱以外の何物でもなかった。

 

 このまま、だらだらと惰性で続けても特に問題はなかっだろう。もしかしたら、新メンバーを入れて入れ替えで卒業させてもいいかもしれない。

 

 だが、それよりも、壱護はプロダクションとしてルビーたちを伝説のグループの一員として扱うことを決めた。後輩が下手なことやって『B小町』という名前に泥を塗ることも考えれば、博打よりも堅実だったといえるかもしれない。

 

「3年……3年かぁ……」

 

 むむむ、と考え込むルビー。不満そうであるが、壱護からしても、3年というのは相当譲歩しているといっていい。

 

「言っておくが、これ以上、短期間での卒業は認められねぇぞ。卒業ツアーにしてもドームがメインになるんだからな。最低でも予約に2年は必要なんだからな」

 

 そう言われれば、ルビーとしても反対はできない。別に迷惑をかけるつもりはないのだ。だから、できるだけ最速だったと聞かされれば、それに反対する理由はなかった。長いとは思っているが。

 

 そして、その月日に対して安堵の息を吐いているアイがいた。

 

「アイ、どうしたの? 安心したような態度で」

「いや~、さすがに30代でお祖母ちゃんはつらいものがあるなぁ、って思ってたから」

 

 あはは、と乾いた笑みを浮かべるアイに対して、ミヤコは苦笑する。いくら何でも結婚したとしてもそれはないだろう、と。だが、その言葉を聞いたアイが真剣な表情をして、真正面からミヤコを見据えながら口を開いた。

 

「あの子、私の娘だよ」

 

 なお、ミヤコはアイのその言葉に何も言えなかった。もしも、子供を望めば、すぐさま実現できそうな気もするから恐ろしいものがある。

 

 それぞれの心情はともかく、新生B小町の解散が3年後ということが次のミーティングで告げられた。

 

 かなはようやくか、とため息を吐き、メムは3年なら何とか、と安堵の息を吐いた。

 

 なお、このころになるとバラエティにも出演している新生B小町としては一世代前のクイズにも答えれるメムに年齢詐称疑惑もあるのだが、それは暗黙の了解というやつである。

 

 そして、それから3年後。光のように過ぎ去るような期間を過ごして、最後に全国のドームツアーを満員御礼でライブを終えて、新生B小町は有終の美を飾った。ライブの最後のファンへのルビー、かな、メムからの「愛している」の言葉に嘘はなく、涙を流しながらの卒業公演にファンの誰もが同じくサイリウムと涙で応えて、新生B小町は終わりを迎えた。

 

 

 

 そして、新生B小町の解散から一年後――――星野瑠美衣は、親しい友人のみを誘った結婚式を開くのだった。

 

 

 

 ※  ※  ※

 

 

 

 朝、いつものように鏡を覗き込み、そこに映る自分の姿を見て安堵する。あの髪の毛もなく、手術痕のあり、栄養不足から細くなった天童寺さりなではなく、星野瑠美衣であることに。

 

 今が現実ではなく、胡蝶の夢ではないか? と何度疑ったことだろう。明日をも知れない中、あの狭い病室で、吾郎(せんせ)しか外部とのつながりはなく、母親とのつながりはすでに現実的ではなく、それでも生に縋り付く何かになった天童寺さりなではない、ということをアイ(母親)に似た姿を見て実感していた。

 

 だが、それも今日までだろうと半ば確信があった。なぜなら、もはや今感じている幸せが手のひらから零れ落ちることがないだろうと信じているからだ。

 

「ルビー、時間だよ~」

「ママっ!」

 

 控室で一人で開始の時間を待っているルビーを呼びに来たのは、ルビーの推しであり、母親でもあるアイだった。

 

「う~ん、やっぱり綺麗だねぇ。ママはルビーの姿を見ただけで満足だよ」

「もう、ママ、今から本番なんだからしっかりしてよね!」

 

 でれっ、とした表情をするアイを諫めるように怒ったような表情を作るルビー。そう、アイは今から結婚式という場で一番大事な役割を果たすことになっていた。それは、今のアイの服装から容易に想像できる。今のアイは、男物の礼服に身を包んでいた。つまり、バージンロードを歩く父親役だ。

 

 もっとも、片親の場合は、代理だったり、近しい親族が代役となるのだが、ルビーにそんな人物はいない。強いて言えば兄だろうが、さすがに代役としても同年代は憚られた。

 

 そこで、代案を出したのがその兄であるアクアだった。

 

 曰く、別に身内に近い人間しかいないんだから母さんがやればいい。

 

 なるほど、と膝を打ったのはアイとルビーだけではなかった。ルビーの旦那となる吾郎も賛成していた。一部、もしかしたら、と期待していた壱護だったが、その悲しそうな顔を見て、社長はおじいちゃんだから、と言われて親族と見られていることに安堵するべきか、祖父と見られて悲しむべきか悩んでいた。

 

 そういった経緯もあり、アイはバージーンロードを歩く間、男物の礼服に身を包んでいるのだ。その格好は、さすが芸能界で今も活躍している女優というべきか、男物もきれいに着こなしていた。

 

「じゃ、いつまでもセンセを待たせるのも悪いし行こうか」

「うん!」

 

 すぅ、と手を差し出すアイに惚れ惚れしそうなルビー。もう、40歳に近いアイだが、それでもまだ外見だけでは20代にも見える若さを保っている姿でそのようなことをされれば、男装の麗人に見えるから困る。

 

 ドルオタ心を出さないようにドキドキしながらアイから差し出された手を取り、立ち上がるルビー。アイのエスコートで―――実際の先導はホテルのスタッフだが―――ホテルの一室の前まで連れてこられて、二人で両開きの扉の前に立つ。

 

 結婚式会場はホテルなのでチャペルではなく、ホテルの中の一室でチャペルに似せた部屋であることはリハーサルの時に確認している。違うのは、招待客がいることぐらいだ。

 

 いいですか? と囁くようにスタッフに確認されて、うん、とアイと一緒に頷くと扉の取っ手に手をかけていた二人のスタッフがほぼ同時扉を開く。

 

 おそらく部屋の中から逆光でアイとルビーが見えただろう。元伝説のアイドルであるアイと元トップアイドルであるルビーが万雷の拍手の中で歩くことは珍しくないが、この場は結婚式だ。親しい友人たちに見守られる中で、拍手に包まれて歩くのは恥ずかしくもあり、嬉しくもあった。

 

 参加者のほとんどはルビーの関係者である以上、ほとんどが女性で色とりどりのドレスに囲まれる中、唯一の白に包まれたルビーが、男物の礼服に包まれたアイにエスコートされてバージンロード歩く。所々で、おめでとう! と声がかけられるが、反応することなく歩みを一歩一歩進める。その先の道の真ん中で待っているせんせ―――雨宮吾郎の元へと。

 

 そこへたどり着く時間は、どれほどだっただろうか。例えば、幼少のころから吾郎へ自分がさりなだと告白するまでの時間と比べれば、刹那ほどの時間でしかなく。ただ、待ち焦がれたという意味で言えば、永遠にも近い時間だっただろう。だが、それもようやくと言っていいほどに待った報われる時が来た。

 

「センセ、娘を頼んだよ」

「ああ、幸せにするよ」

 

 エスコートしてきた腕を外し、吾郎を正面から見据えて笑いながら言う。吾郎もそれに対して真剣な表情で応えていた。そして、吾郎の表情と答えに満足したのかアイは振り返って今までエスコートしてきたルビーを最後に強く抱きしめると耳元で囁いた。

 

「幸せになってよね。――――愛してる」

 

 その言葉に涙が流れそうになる。だが、それは我慢した。化粧が崩れるかもしれないから。だから、アイを優しく抱き返すとルビーも万感の思いを乗せて答えた。

 

「うん、幸せになるよ。ママ」

 

 それだけで母娘は満足した。そして、そのやり取りを待っていた夫となる吾郎は、控室のアイと同じように手を差し伸べる。ルビーはそれを見て迷うことなく腕をとった。バージンロードの残り半分を歩き始めた瞬間で一瞬だけ後ろを振り向くと、アイは涙を流しながら、小さく手を振っていた。

 

 そのアイを目に焼き付けるようにして吾郎と一緒に残りのバージンロードを歩き切った。ちらりと横目で見る吾郎はさすがに真面目な表情を浮かべていた。本当に私でよかったのかな? と思わなかったことはない。吾郎は50歳も超えたというのに30代と言ってもいいほどの若作りだ。きっとモテたことは間違いない。なのに、こんな小娘でよかったのだろうか? と不安になることもあった。

 

 だが、ルビーは覚えている。あの二十歳の誕生日デートの最後で、プロポーズしてくれたせんせの姿を、言葉を。ありきたりな、言葉だった。だが、それでも、あの時言葉は、さりなだったころのように誤魔化すような声色はない、と確信できる態度だったのだから。

 

 そして、最後の宣誓の時間となっていた。

 

「雨宮吾郎、あなたは星野瑠美衣を妻とし、愛することを誓いますか?」

「はい」

 

 間髪入れない返事に安堵する。そして、次はルビーの順番だった。

 

「星野瑠美衣、あなたは雨宮吾郎を夫とし、愛することを誓いますか?」

「はい」

 

 その言葉はすんなりと口にすることができた。その誓いは、星野瑠美衣が―――天童寺さりながずっと夢見てきた誓いなのだから。

 

「では、誓いの口づけを」

 

 そう言われて、向かい合うような格好となり、改めてベールが挙げられる。そこで今日、初めてベール越しではなく真正面から吾郎を見た。化粧の関係もあるだろう。だが、それでも、あのさりなの記憶からわずかに年を取った―――といっても、30代程度にしか見えない。

 

「………せんせ」

 

 それは諦めていた光景だった。あの時に16歳になったら考えるといわれ、16歳を迎えることはないと本能でわかっていたから。だから、この奇跡に感謝することしかできない。

 

「幸せにする。約束する」

 

 演劇の練習の中で兄であるアクアが語っていたことを不意に思い出した。本来は言っていないらしいが、文学の世界では有名な『I Love You』の和訳を『月が綺麗ですね』といい、それの回答は、『死んでもいいわ』と返すのだと。なんだそれは? と日本語の不思議を笑ったものだが、今ならわかる。この瞬間は、確かに『死んでもいいわ』だった。

 

 もっとも、一度死んだ経験のあるルビーが言うと洒落にならないのだが。

 

 ゆっくりと近づいてくる吾郎に対して、ルビーは顔を少しだけ傾けて目をつむった。数瞬後に唇の感じる温かみ。誓いの口づけであることは間違いなかった。

 

 ここが始まり。結婚はゴールではなくスタートなのだ。だが、それでも、この時だけは星野瑠美衣は感じていた。

 

 ―――今は間違いなく星野瑠美衣のハッピーエンドなのだ、と。

 

 

 

 

 

 

 

星野吾郎(旧姓:雨宮)

・50代になるのに年を取ったように見えず妖怪のあだ名が看護師の間で噂されていた。

・神の祝福と瑠美衣と見劣りしないようにと頑張った成果。

・婿入りにしたのはルビーが苗字を変えると権利関係がややこしすぎたため。

・病院を辞めて東京暮らしで、産婦人科のヘルプで生活。なお、病院に泣いて喜ばれた。

・結婚後は、夜の生活でいきなり襲われたが、経験が違うため返り討ちにできた。

・結婚報告は一般人で名前は出なかったが、すぐにバレてしまう。

・半年後に妊娠報告されて、世間からフルボッコになったが、甘んじて受けた。

・宮崎へは一年に一回、実家の面倒を含めて戻っている。

・最終的に3男2女の父親となる。

 

 

 

星野アイ

・年上の息子ができて胃が痛い。

・さらに半年で妊娠してしまって、嬉しいやら悲しいやら。

・ギリギリ30代でお祖母ちゃんは逃れられた。

・しかし、40代とは思えない美貌のため、バラエティで孫が生まれて、と言うと時空が歪む。

・妊娠したルビーの代役を買って出たもののまさかの学園物でアラフォーで制服でドラマに出演。

・なお、違和感はなかった模様。

・最終的に孫に囲まれて幸せを感じる。

・息子について考えるとさらに胃が痛いので考えないものとする。

 

 

星野瑠美衣

・アイドルを卒業して、女優にも手を出し、ある意味その才能を開花させた。

・結婚後に年齢差を考えて遠慮する吾郎に対して、無理やり襲ったが、返り討ちに。

・半年で妊娠が発覚してしまった。

・初産なのに男女の双子で、壱護やミヤコをはじめとしてあきれさせた。

・その後も一定の期間を置いて妊娠し、結局、五人の子供を産む。なお、すべて安産だった。

・宮崎への吾郎の里帰りについていく。

・吾郎と結婚できたことが、結局一番のハッピーエンドだと思っている。

 




星野瑠美衣のハッピーエンド編でした。

アクア編のマルチエンドもありましたが、まずはこれを片付けるべきかと思いました。
本編は色々ときな臭いですが、こちらは平穏にハッピーエンドで締めましたよ、ということでお願いします。

次からはアクアのマルチエンドに行きたいと思います。
順番は、今から考えます! 次はあまりお待たせしないように頑張ります。

マルチエンドは誰を期待してますか?

  • 寿みなみ
  • 不知火フリル
  • MEMちょ
  • 黒川あかね
  • 有馬かな
  • ハーレム
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