仮面ライダーギーツvsこちら葛飾区亀有公園前派出所~両さん、デザグラに出るってよ~ 作:唐 十三郎
「おう、そいつはワシも気になっていた。アイツら無事だったのかよ?」
「無事……と言い切れるかはわかりませんが……」
「? どういう事だ?」
「ご覧になります?」
ツムリは両津にテキストを見せる。
「……っぷ! ぶはははははははは!! マジか?! マジであいつらこんな目に逢うのか!!」
「驚いちゃいますよね……」
「い、いいんじゃねぇのかな? 無事が何よりよ。うん。良かった良かった……ぶははははははははは!!」
笑いが止まらない両津。その後ろには道長とウィンが暗い顔をしている。
「両さん……笑いすぎじゃね?」
「諦めろミッチー。両さんはあーゆー人だ」
「アンタまでミッチー言うなし。……いや、もしかしたらアンタの方が俺よか酷いかもな」
「やめろよ! 惨めになっちまうだろ? 俺よかお前の方が酷いだろ!!」
言い争いをし始めた2人に両津がズイと顔を近づける。
「あー……ワシから言わせるならな、お前ら2人とも酷い状況に変わりねぇよ。もっと言うなら今までのワシに比べてたらまだマシだ」
「「確かに!」」
「……納得してんじゃねぇぞ、クソガキども」
流石40年間、201巻もの間ドタバタ劇の主役をやってきている男の言葉だ。気迫が違う。
ジャマトたちを飼育するあの謎の男、彼は今日も多数の温室を移動しながら様々なジャマトの育成に勤しんでいた。手持ちの肥料が少なくなってきたため、倉庫に足を運んだ彼の目の前に山の様に積み上がった肥料袋がある。その中にどう見ても人間にしか見えないものが横たわっていた。作業服の男はそれを見て喜んだ。
「お、新しい肥料が到着したかぁ~」
跪いてその肥料を見るも、異変に気付く。
「? まだ息がある……」
その人物の左手を取り、しげしげと眺めるとクンクンと匂いを嗅いでいく。そしてじっくりと、ねっとりと、指先をしゃぶりだした。ひとしきりしゃぶり尽くすと、その手を放り捨てる。放り捨てられた左手はその人物の腰に据えられたデザイアドライバーに当たった。デザイアドライバーにはヒビが入ったIDコアが付いている。バッファのものだ。
「……ゾンビバックルを使い過ぎた効果かぁ」
それは洋館ジャマト戦で志半ばで散った吾妻道長の姿であった。至る所に裂傷が残っていると言う事は、どうやら退場してまだそれほど時間は経っていないらしい。
「フフフ……貴重なサンプルだぁ~」
喜んでいた作業服の男はキョロキョロと周囲を見渡した。辺りにジャマトは居ないという事を確認した男は、道長の顔に自らの顔を近づけた。
「もっと……味わってみるかねぇ」
舌をペロペロと動かして道長の唇に近づこうとする。接触まであと数ミリとなったその時、道長は目を覚ました。
「……え?」
「ん?」
突然目を覚ました道長に驚く作業服の男。そして目前に現れた見知らぬ男の顔、何よりペロペロ動く舌に驚く道長。
「うわぁあああああああああああああああああああ?!」
「がぁあああああ!!」
作業服の男を突き飛ばして大急ぎで後ろに下がる道長。
「だだだだだ……誰だ?!」
「あたたたた……ご挨拶だねぇ。イテテテ……腰を打っちゃったじゃないか」
理解が追い付かない道長は根本的な疑問を口にした。
「ここは……どこだ? そしてアンタは誰だ?」
「ふん……意識はちゃんとあるようだね。ここはジャマーガーデン。そして私はアルキメデルさ」
「ジャマーガーデン? アルキメデル?」
「そう。ジャマトの楽園。そして私はそれを守る者。ま、場長(じょうちょう)とでも言った所か」
「場……長?」
「そ。さて、君の事も教えてもらおうか、吾妻道長くん。ヒヒヒヒ……」
こうして吾妻道長はジャマーガーデンに辿り着き、謎の男アルキメデルと運命的な出会いをする。
更に別の場所にて。
――ぐあぁあああああ!! やめろ! やめろ! やめろぉおおお!!――
――英……寿……両……さん……逃……逃げ……ろ……――
運営側のライダーとして行動していた晴家ウィン。ギロリの策略で捨て石として扱われた彼は結果ギーツとタートルズの脱落のために爆弾として使われるも、それすら失敗して脱落となった。満身創痍となった彼は、とある病院のベッドの上で目を覚ます。
「ここは……何処だ?」
見知らぬ天井を見て混乱した彼は、何故自分が此処に居るかを考えた。全身の痛みが、そして至る所に巻かれた包帯が、腕に刺された点滴が、そして口に付けられた呼吸補助の酸素マスクが、事故か何かによる怪我を負ったものを物語っていた。だが何故そうなったかまでは覚えていない。一種の記憶喪失だろうかと思うと恐怖で身が震える。
「俺は……晴家ウィン……だよな。うん」
「ようやく目を覚ましましたか」
気付くと病室に見知らぬ男がやってきた。見舞いの花束を持っている。
「誰だアンタは……?」
呼吸マスク越しに震えた声で質問するウィン。目の前の男はその問いに即で答えた。
「貴方はデザイアグランプリで、ゲームマスターのギロリに利用され、消される所を私が助けました」
「デザイア……グランプリ? 何だそれ?」
男が答えたものの、理解が追い付かないウィン。聞きなれない単語が含まれていたからだ。
「私はこのゲームのプロデューサーのニラム。ああ……ギロリによる数々の無礼、謝罪しておきます!」
そう言うとニラムと名乗った男は深々と頭を下げた。
「大切なスポンサーのお孫さんだと言うのに……!」
下げたその顔の眉間には深いシワが刻まれ、ギロリと言う存在への怒りが見えた。呼吸マスクを取り外したウィンは更に訊ねた。
「スポンサー?」
「! 晴家商事の会長ですよ」
「ああ……じいちゃんを知っているのか」
祖父の事を口にしてきて複雑な気持ちになるウィン。晴家家の体裁ばかり気にして身内への愛情は一片も持ち合わせていない男、それがウィンの祖父への印象だ。ウィンが売れないミュージシャンをやっている事も随分嫌っていた。あくまで噂程度だが、彼の音楽活動に横やりを入れていたのではないかとも噂を聞いた。決まりかけたイベントへの参加やフェスの参加がキャンセルになった陰で晴家商事の名前を見た事があったからだ。
「貴方に与えられた選択肢は2つ。全て忘れたままここを退院されるか、それとも……今から用意するものに触れて全てを思い出すか」
「思い出す……?」
「ええ。晴家会長の了解は得ています。選択権は……貴方に」
「……」
「後戻りは出来ませんよ」
「!」
「全てを思い出せば、戦わざるを得なくなる……命がけのゲームで」
「何だか知らねぇけど……人生ってのはパンクだろ!」
ウィンはニラムにニヤリと笑ってキメ顔を見せた。だがこの後、その発言を大いに後悔する事となるのだが。
「その心意気、気に入りましたよ。では入りたまえ!!」
「え……? はぁあああああ?! な、何だアンタ……?」
ニラムが叫ぶと病室の入り口から1人の男が現れた。かなりの高身長で180センチくらいはある。更に驚くべきはその鍛えられた身体つきで、胸板の厚さは間違いなくウィンよりも上。更に腹筋は見事に割れきっている。背筋の鍛え方もかなりのもので正しく鬼神が宿っているであろう。大腿の筋肉の切れ方も申し分無い。何故ここまで明確にその男の身体的特徴がわかるかと言うと、完全に丸見えだからである。その男は黒いビキニパンツとブーツにネクタイ。そして頭には垂れ耳で舌を出した犬を模した被り物をしていた。変態と呼んでも差し支え無い。いや、紛う事無き変態が現れたのである。
「な、な、何だコイツは――――?!」
「コイツとは失礼じゃないですか。申し訳ないですが彼に謝ってください」
「謝るのはアンタらの方だろ? いきなり病室に現れてワケわかんねぇ事言ってきてさ! 挙句の果てにこんな変なのまで連れてきてどういう了見だ?!」
狼狽えて叫ぶウィンに構わず、どんどん近付いてくる海パン男。ベッドの上に居たウィンの顔面の前に腰をズイっと突き出してきた。ウィンの目前に海パン男の男性自身が薄布越しに接近する。
「さぁ、これに触れるんだ!」
「い、いやだー! そんなモノに触れたら新しい扉が開いてしまう――! 二度と戻れなくなるってそういう事かぁ――?!」
「? ニラム、彼は何か誤解していないか?」
「……ああ、そういう事か!」
一般常識に疎いらしく、いや一般常識があったとしてもこのアプローチはどうかと思うが、ようやく事の顛末を理解したニラム。当のウィンは海パン男から逃れようとするが、彼の圧に恐怖してしまいその場で震えるだけになっている。
「じ、じいちゃんか?! 俺がそんなに許せないのかよ?! そりゃあ音楽の資金調達の為に持ち株売ったり車売ったりしたけどよ、それだけでこんな思いまでさせるのかよぉ――?!」
「貴方も結構ヤンチャしてきましたね……誤解ですよ、貴方に触れて欲しいのはここじゃない。こちらです」
近づいたニラムが人差し指で二か所指した。海パン男の股間でプルプル震えている男性自身ではなく、腰に備えられたデザイアドライバー。その中央には頭に被っている犬と同じ意匠のIDコアが嵌められている。
「あ、何? こっち?」
「……危うく私もとんでもないモノを見る所だったね」
「私は一行に構わんが?」
海パン男がサラっと危険な事を言っているがニラムは無視した。震える指を海パン男のIDコアに伸ばすウィン。ためらいが見える。そんなウィンにニラムが声をかけた。
「”人生ってのはパンク”なのでは?」
「! そうだよ……ナメんなぁ!! ……?!」
IDコアに触れた事によって今までの事を思い出したウィン。
「そうか……俺は仮面ライダーパンクジャック……だったな」
「やっと思い出してくれましたか」
記憶を取り戻したウィンを喜ぶニラム。更に言葉を続ける。
「貴方の居ない間にこの世界は大きな変化を迎えています。そしてデザイアグランプリは貴方を必要としている。過酷なゲームが予想されますが……戦ってくれますね?」
「1つだけ条件がある……俺は運営のコマじゃない。何のために命をかける。何のために戦うか決めるのはこの俺だ」
「フフフ……結構です!」
そして目前の海パン男にウィンは尋ねる。
「アンタも仮面ライダーか。しかしアンタみたいなライダー、初めて見るな。新顔か?」
「いや、私は以前から参加していた」
海パン男がドライバーを取り外すと頭に被っていたヘルメットは自動的に消えた。黒髪を適度な長さのオールバックにしていて、顔つきは太い眉を綺麗に整え眉間に深いシワが刻まれている。彫りこそ深いが男前と呼べる顔だ。取り外したデザイアドライバーは履いている海パンの中にしまった。
「なんつー所にしまうんだよ……」
「ここは何でも収納できるからね」
「四次元ポケットかよ?!」
ニラムが改めて海パン男の紹介をする。
「紹介しましょう。彼は汚野(きたの)たけし。仮面ライダーワンワンオーです」
「ワンワンオー……?」
「そうです。また人は彼をこうも呼びます……”海パンライダー”と」
筆者です。「思縁AFT」をお送りしました。
これで思縁は終わり。次回から次のエピソードになりますのでお楽しみに。さて、サブタイはまだ考えていないぞ、どうしよう?
では今回のサブタイの読み方と、そこに込められた意味をお伝えしましょう。
「思縁」の読み方は「しえん」です。連想は”支援”そして”私怨”からの連想です。”支援”は完全に中川くんこと仮面ライダーアポロですね。両さんを支援するポジションです。私怨はもうギロリですね。ゲームマスターと言う立場がどんどん暴走して自らのエゴの方が強くなっていた印象です。そんな2人が激突するんですからサブタイは皮肉も良い所ですね。毎回サブタイ付ける度に思いますが、「また皮肉なサブタイになるんだろうなぁ」と考えています。次回もそうでしょう。
道長の不幸について。本編16話のエピソードをあえて前回では書かずに今回書いた話ですが、アルキメデルがまさかのアレですからねぇ……昨今この辺を表現するとLGBTQ関係が面倒なのと、また内容が不愉快に感じられる方もいらっしゃると思いますが、まぁパロディですのであまり目くじら立てないで頂けるとありがたいです。それでも物言いしたい方はご感想か法廷でどうぞ。でも筆者自身も申し訳なく思っているんですよ。特にアルキメデルを演じられていた春海四方さんには特に!! アルキメデル場長は今後もっともっと凄い事になっていきますのでお楽しみに。
ウィンの不幸について。「ギーツエクストラ 仮面ライダーパンクジャック」のOPアバンとエピローグを土台に書いた話でしたが、とうとう出ました! 皆さまの海パン刑事ですよー! 本作オリジナルライダーですよー!! いやぁとうとうお披露目できました。 まぁ海パン刑事と言えばもう存在そのものが下品で、アニメ設定なのですがゲイであるらしいのでそりゃーウィンにもモーションかけるわなと。ウィンを演じてるの崎山つばささんですからね。ああ、これで刀剣ファンを確実に敵に……まぁウィンは今までも変攻の頃にマリアちゃんへのモーションとハートブレイクがありましたからそこで刀剣ファンの方を敵に回した可能性はありますけどね。詳しくは変攻IIIをどうぞ。
(https://syosetu.org/novel/320823/7.html)
仮面ライダーワンワンオー。申し訳ありませんがコレを考えた時に”俺、マジで天才では?(但しダメな方に)”と思いました。頭だけの変身って元々がライダーたちのエントリーフォームなのですが、更に海パンとブーツだけの武装なら海パン刑事を出せるなと思いついた次第です。日頃読んで頂いている読者様でこち亀ファンの方ならご想像付いているかも知れませんが、中川くんの後ろにはインチキ教授が居ますからね。これで何でもアリになりましたw 名前の連想は警察への緊急電話110番からの連想ですねワン(1)ワン(1)オー(0)。頭のヘルメットは冴さんが変身するロポと大きく異なりまして垂れ耳で舌をペロリと出していて少し可愛らしいです。筋骨隆々のマッチョボディに被らせたら面白いなと思いつきました。変身してもネクタイはしっかり巻いてます。ワンワンオーは今後活躍する場面を用意していますので是非ともお待ちください。
では明日も間に合えば17:30更新ですのでよろしくお願いします。
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