――ロンドン――
「……こんな、ものか」
橋詰悠々は路頭にぶちまけられたクズ肉と化したアレイスターと上条当麻を見ながらたそがれていた。彼の周囲には天上に巣食っていた神々の成れの果てが這いまわっているが、それらは目に入っていない。彼の標的は、天上の神々であって、この凋落した肉塊ではない。
先程悠々は、肉塊が降り始めて気を取られたアレイスターと上条当麻を撲殺した。上条当麻の殺害は異常なまでに簡単だった。今まで『6人組』が巡らしてきた殺戮の罠を潜り抜けたとは思えぬほどに。
「……闘争を。天まで届く、闘争を」
物思いを終わらせると、橋詰悠々は歩き出した。更なる闘争の機会を手に入れるために。
――スコットランド・エディンバラ――
『ボウオオオオーン……』
空から降り積もる肉から身を守るために屋内に閉じこもっていたエディンバラの住民は、鯨の鳴き声じみた重低音を聞いた。当初、彼らはその音の正体を知るつもりもなかった。だが、通りの家の一軒が暴力的にバラバラにされるかのような音を響かせたと同時に彼らは理解した。
この音の正体が何であれ、肉塊の雨より遥かに悪いものであると。即座に人々は屋内から逃げ出し、空と陸の肉塊を避けながらとにかく遠くへ離れていこうとした。その中に、ふと後ろを振り返ってしまった者がいた。
「ア、アイエエエエッ!?」
彼の目に入ったのは、このエディンバラにそびえるエディンバラ城とその城下町を無理やり混ぜ込んで人型に押し込めたような巨人! 彼を皮切りに、後ろを振り返った者達が次々と悲鳴を上げる!
「「「「アイエエエッ!?」」」」
……その巨人の足元!一つの大都市建築物程の質量を持つ巨人と比べると心許ない大きさのバギーが異常な巨躯を見上げている! 浦々をここエディンバラへと連れて行った『スウォーム』の者達だ!
「何てバケモンだ……」
その構成員達はいずれも絶句している。彼らはいずれも浦々の力については事前に説明されていた。だが、ここまでのことが出来るとは。この巨人の身体を作っているのは、エディンバラ城に加えてここまでに在った木々・ガラクタ・人間……とにかくあらゆる物々であった。
「これをロンドンまで誘導するらしいけど、そんな必要ある?」
ベニゾメが巨人を見つめながらぼやく。実際、ここまでに抵抗らしい抵抗はない。いや、もしかすればあったのかもしれないが、この巨人の前にすべてが磨り潰されたのだろう。
「ここから奴がロンドンにまで迷わずに歩いて行けると思うのか?」
蠢動俊三が皮肉げにベニゾメに答える。この巨人に敵うものはいまい。だが、この巨人はこのエディンバラの地からロンドンにまで行く道筋を知っているとは限らない。
「やめてよね。あいつ、力は凄いけど、頭は悪そうなのは分かってるわよ」
ベニゾメは肩をすくめる。ロンドンは未だ遠い……。