ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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お気に入り登録、評価付けも勿論とっっても嬉しいのですが、感想が来るとついニヤついてしまいますね。読んでくださった上に文章を作ってくださるんだと考えると、新着感想通知が来た時が個人的に一番嬉しいです。感想を書いてくださる方々、いつもありがとうございます。


ついに二学期突入だ!!!!!




二学期
始まる二学期


 

 

 

 

 夏休み明けの午後の授業。2時間ホームルームという異例の時間割を不思議に思いつつも、私たちは教壇に立った真嶋先生の説明を聞いていた。

 

 

「2学期は9月から10月までの1ヶ月間、体育祭に向け体育の授業が増えることになる。これから新たな時間割を配るためしっかり保管しておくように。また時間割表と共に体育祭に関する資料も配っていくので、先頭の生徒から後ろに回してくれ」

 

 

 体育祭、という言葉にAクラスの面々はほとんどが暗い表情になっていく。学力が優秀なうちのクラスの子たちは、こと運動面においては自信の無い子が多いようだ。

 

 

「体育祭……!!有栖ちゃん!ついに私の時代が来たよ!!」

「ふふ、随分と短い天下ですね」

 

 

 前からプリントが回されたため軽く流し見していると、前方の葛城くんから質問があがる。

 

 

「先生。これも特別試験、ということになるのでしょうか?」

「どう受け止めようがおまえたちの自由だ。各クラスに大きな影響を与えることに違いは無い」

 

 

 肯定とも否定とも取れる言い方。クラスに影響を与える、ということは結果によってクラスポイントの推移があることは間違いないようだ。そうなると、うちのクラスは有栖ちゃん(身体的ハンデ)がある分少し不利になるかな。

 

 

「今回の体育祭は全学年を2つの組に分けて勝負する方式が採用された。我々Aクラスは赤組として、体育祭の間はDクラスと共闘してもらうことになる」

 

 

 つまりBクラスとCクラスが白組にあたるのか。これまでは学年の枠を超えることはなかったが、まさかこういう形で協力戦をすることになるとは。私はプリントを見ながら隣の有栖ちゃんに不満をこぼす。

 

 

「ねえ、有栖ちゃん」

「何ですか?文字を読みすぎて頭が痛くなってしまいましたか?」

「いやいや、そんなアホじゃないよ私。そうじゃなくてさー、これ頑張って勝ってもすごいショボくない?」

「それは否定しませんね。最も、最初から不参加の私にとっては関係ありませんが」

「私の時代だと思ってたのに、蓋を開けたらこんなリセッションの低迷期だったなんて……!詐欺だって学校に訴えれば変わるかな!?」

「そうですね、貴女のプライベートポイントが下降の一途を辿るのを許容できるのであれば良いと思いますよ」

「…………この世は理不尽だ……」

 

 

 机に突っ伏しながら、プリントを再度見る。書いてあるもので目ぼしい表記は以下の通り。

 

 

 __________________

 

 ・全員参加種目

 ①100メートル走

 ②ハードル競走

 ③棒倒し(男子限定)

 ④騎馬戦(女子限定)

 ⑤男女別綱引き

 ⑥障害物競走

 ⑦二人三脚

 ⑧騎馬戦

 ⑨200メートル走

 

 ・推薦競技

 ⑩借り物競走

 ⑪四方綱引き

 ⑫男女混合二人三脚

 ⑬3学年合同1200メートルリレー

 

 

 

 ・全員参加報酬の点数配分(個人競技)

 結果に応じて1位15点、2位15点、3位10点、4位8点が組に与えられる。5位以下は1点ずつ下がって行く。団体戦の場合は勝利した組に500点が与えられる。

 

 ・推薦参加の点数配分

 結果に応じて1位50点、2位30点、3位15点、4位10点が組に与えられる。5位以下は2点ずつ下がって行く(最終競技のリレーは3倍の点数が与えられる)

 

 ・赤組対白組の結果が与える影響

 全学年の総合点で負けた組は全学年等しくクラスポイントが100引かれる。

 

 ・学年別順位が与える影響

 各学年、総合点で1位を取ったクラスにはクラスポイントが50与えられる。総合点で2位を取ったクラスのクラスポイントは変動しない。総合点3位はマイナス50クラスポイント、総合点4位はマイナス100クラスポイント。

 

 ・個人競技報酬(次回中間試験にて使用可能)

 各個人競技にて1位を取った生徒には5000プライベートポイントの贈与もしくは筆記試験で3点に相当する点数を与える。2位は3000プライベートポイントもしくは筆記試験で2点に相当する点数。3位は1000プライベートポイントもしくは筆記試験で1点に相当する点数。

 各個人競技で最下位を取った生徒にはマイナス1000プライベートポイント(所持するポイントが1000未満になった場合には筆記試験でマイナス1点を受ける)

 

 ・最優秀賞生徒報酬

 全競技で最も高得点を得た生徒には10万プライベートポイントを贈与。

 ・学年別最優秀賞生徒報酬

 全競技でもっとも高得点を得た学年別生徒3名には各1万プライベートポイントを贈与。

 

 ・全競技終了後、学年内で点数の集計をし下位10名にペナルティを科す。ペナルティの詳細は学年毎に異なるため担任教師に確認すること。

 

 

 __________________

 

 

 

 夢のような話、個人競技全てに出場し1位をもぎ取った場合、3万プライベートポイント。全学年・学年別の最優秀選手に選ばれれば2つで11万プライベートポイント。

 つまり死ぬ気で頑張っても14万プライベートポイントしか貰えないのだ。身体を酷使してもぎ取った報酬が14万プライベートポイント。決して安い数値ではないが、前の特別試験のことを考えるとどうしても割に合わなく感じてしまう。

 やる気の出ないままプリントを読んでいると、葛城くんからまたも質問がされる。

 

 

「先生、このプリントに記載しているペナルティとはどういったものなのでしょうか?」

「1年生に科せられるペナルティは次回筆記試験におけるテストの減点になる。総合成績下位10名の生徒は10点の減点を受けることになるだろう。下位10名の発表は、筆記試験説明の際に通告されることになっている」

「え、せんせー。じゃあ有栖ちゃんはもう筆記試験マイナスが確定されちゃってるってことですか?」

「そうなるな。こればかりは、俺個人にはどうしようも出来ない」

「だって有栖ちゃん。残念だったね」

「点数が減点されたところで赤点になる可能性は0に等しいのでご心配なく。それに、このクラスの方々なら減点は然程痛手にはならないでしょう」

 

 

 このクラスは運動が得意ではない反面、勉強面には信頼を置いていいと言える。有栖ちゃんの言うように、順位や総合点によるペナルティの心配は他クラスよりしなくても良いだろう。

 

 

「それから、ここに参加表と呼ばれるものがある。参加表には全種目の詳細が記載されている。君たちにはこの参加表に自分達で各種目にどの順番で参加するかを決めて記入し、担任である俺に提出してもらう。もし当日欠席者が出た場合、『全員参加』の種目では必要最低人数を下回る形で欠員が出た際には続行不能とみなし失格となる。ただし『推薦競技』に関してのみ、各競技につき10万プライベートポイントで代役を立てることが認められている。当日までに体調や怪我がないよう心するように」

 

 

 真嶋先生からの説明はこれ以上ないのか、クラスメイトたちを観察する。質問がないことを確認した先生は、時計を確認しながら告げた。

 

 

「次の時間は第一体育館に移動し、各クラス他学年との顔合わせになる。このホームルームの残った時間は好きに使うといい」

 

 

 そう真嶋先生が言い終わると、有栖ちゃんは席を立って杖を着きながら教壇へと向かう。どうやら本人が参加出来ないながらも、指示はくれるらしい。これも有栖ちゃんにとっての成長なのだろうか。

 

 

「さて、皆さん。先程萌さんも先生に質問をしていましたが、今回私は本番で皆さんのお役に立てません。その事について、まずは謝罪をさせてください」

「気にしなくて構わない。坂柳の場合、事情が事情だろう。責める者はいないと言っていい」

「ありがとうございます、葛城くん。ですがリーダーの私がこのような有様では、皆さんに適切なアドバイスを送れないこともまた事実。ですから体育祭において、専門のリーダーを設けようと思います」

 

 

 そう、面白そうに目を細めた有栖ちゃん。頬杖を着きながら聞いていると、目が合ってしまう。……嫌な予感がする。

 

 

「赤井萌さん。貴女はクラスの中で高い運動能力を保持しています。お願いできますね?」

「……えー。私、リーダーとか向いてないと思うんだけどなー」

「そんな事はありません。かつて対立していた私と葛城くんをまとめたのは他でもない貴女です。それに、当日参加もできない人に指示を出されても不満が残るものでしょう?」

「そうだな。赤井であるなら、俺も異論はない。その身体能力の高さは無人島試験の時に目にしている」

「あははー。2人から言われちゃったら断れないなー。いいよ、クラスのみんなが良ければやらせてもらうよ」

 

 

 クラスメイトからは口々に賛同の声があがったため、私は席を立って教壇に向かう。戸塚くんは少し不満そうだったので、何となく手を振っておいた。更に睨まれた。有栖ちゃんの隣に立つと、私は有栖ちゃんにしか聞こえない程度の小声で抗議する。

 

 

「……全く、面倒事押し付けないでよね」

「あら、貴女が『寄り添え』と望んだから私はクラスメイトである貴女の能力を認め頼っているまでですが?」

「ちぇー、言い訳が上手いんだから。……よしっ!じゃあまずはー……推薦競技は運動に自信のある子が出るのは当然として、私は全体参加の方でも参加表の組み合わせを『能力制』で決めたいと思ってるんだけど、みんなはどうかな?」

「このクラスであれば総合順位でのペナルティは痛手にならないだろうし良いと思うが、それでも連続で最下位をとった場合プライベートポイントの減点は良く思わない生徒もいるだろう。その場合はどうする」

「3位までに入賞した生徒たちの中で、点数の特典を不要だと思う子達が得たプライベートポイントを譲渡して相殺しようと思うよ。もし誰も手を挙げないって言うなら、私が全員分のプライベートポイントのマイナス分を負担してもいいし」

「……随分と自信があるのだな」

「まあね。参加する全部の競技で1位を取る自信はあるかな」

「あら、それは素晴らしい心がけですね。是非とも全ての競技に参加していただきましょうか」

「うわ、有栖ちゃんの鬼。まあ体力測定次第かなー。皆が輝ける分野があるなら、活躍の機会を奪うのも得にはならないと思うからね。運動が得意な子達は、今のうちにどの推薦競技に参加したいか考えておいてねー!」

「今決めるべきはこんなところだろうか?」

「そうだね、皆の実力はまだ知らないし……あ、そうだ!もしアドバイスが欲しいとか、こんなことで困ってるとかあったら遠慮なく私とか有栖ちゃん、葛城くんに相談してね。じゃ、次の時間までみんな自由にしてよーし!!」

 

 

 私のその一言で、緊張した空気は一気に弛緩する。雑談をする生徒達もいたが、教壇に立っていた私たちの元にも数人が相談に来たため、次の時間までその対応に追われた。

 

 

 

 _________________

 

 

 side:綾小路清隆

 

 

 2時間目のホームルーム、第一体育館での全学年顔合わせ。

 

 

 「__全学年が関わっての種目は最後の1200メートルリレーのみ。それ以外はすべて学年別種目ばかりだ。今から各学年で集まり方針について好きに話し合ってくれ」

 

 

 藤巻の言葉を皮切りに、DクラスのもとへAクラスがゾロゾロと集まって来る。Aクラスを代表する形で、葛城が前に出る。

 

 

「奇妙な形で共闘することになったがよろしく頼む。出来れば仲間同士で揉め事を起こすことなく力を合わせられればと思っている」

「僕も同じ気持ちだよ葛城くん。こちらこそよろしく」

 

 

 Dクラスからは平田が出ていき、互いに協力の意志を表明し握手をする。しかし、オレの視線はそこにはなかった。

 

 

「なああの子……」

 

 

 オレの傍で小さく呟いた池。その気持ちは分からなくもない。オレや池だけではなく、堀北や軽井沢といった主要メンツまで、Dクラスのほとんどが注目している。オレたちが注目している少女の横では、床に座りながらベレー帽を回して遊んでいる赤井の姿がある。……何をしているんだ?あいつは。

 BクラスとCクラスの喧騒を見つめているのか、注目の少女は呟いた。

 

 

「早くも動き出したということでしょうか」

「あ、有栖ちゃん。今はDクラスとの時間だよー。他のクラスへの浮気、だめ、絶対!」

「ふふ、敵情視察も大切でしょう?」

 

 

 ただ一人椅子に座り、その手には細い杖が握られている。誰の目にも、その少女が足に不安を抱えているのだと映っただろう。オレたちの視線に気づいたのか、葛城が説明を始める。

 

 

「彼女は坂柳有栖。身体が不自由なために椅子を使用しているが理解してもらいたい」

「アレが坂柳……」

「めっちゃ可愛いじゃん……」

 

 

 そうDクラスの男子が騒ぎ立てるのも無理はない。櫛田や佐倉とはまた違う可愛さ、美しさ。そして儚げな様子は守ってあげたくなる雰囲気を醸し出している。だがいつものようにおちゃらけた空気を出して、声をかけるような真似が男子連中には出来なかった。希薄ながらも、何故か強い意思を感じさせるのはその大きな瞳の力強さのためだろうか。近寄ると何か悪いことが起こるような気さえしたのかも知れない。注目を浴びていることに気づいたのか、坂柳が柔らかく微笑む。

 

 

「私に関しては残念ながら戦力としてお役に立てません。全ての競技で不戦敗となります。自分のクラスにもDクラスにもご迷惑をおかけするでしょう。そのことについてまずは最初に謝らせて下さい」

「謝ることは無いと思うよ。誰だってその点を追及することはないから」

「学校も容赦ないよな。最初から身体が不自由なら許してくれたっていいのによ」

「そうだよ気にしないで」

「お心遣いありがとうございます」

 

 

 坂柳が一礼すると、坂柳の傍に座っていた赤井が立ち上がり___Dクラスの誰もが躊躇っていた坂柳のパーソナルスペースに、バックハグという形でいとも容易く入っていった。そして坂柳の頭に顎を乗せて手を振る。

 

 

「まーまー、Dクラスのみんな安心してよ。よわよわ有栖ちゃんの分まで私が大活躍しちゃうからねー」

「……萌さん。その状態で話されると顎が私の頭頂部に刺さります。痛いです」

「刺してるんだよー、ぐりぐりぐりぐり〜」

「全く、Dクラスの皆さんに失礼でしょう」

 

 

 そう言いながらも、坂柳は赤井を拒絶しない。先程まで近寄り難い雰囲気を出していた彼女が、今はただの年相応の女の子に見えるのは気のせいだろうか。あの坂柳を「有栖ちゃん」と親しげに名前で呼び、坂柳も赤井のことを名前で呼び返している。それとなくAクラスの面々を観察すると、いつものことだと言うようにどこか微笑ましそうに坂柳と赤井を見つめている。池たちもどこか安心した様子で「マスコットみたいだな…」と呟いている。

 そこでオレはある事に気づく。無人島試験で一之瀬が言っていた葛城派閥と坂柳派閥の対立。それが今は全くないかのように、Aクラスは仲良く入り乱れて座っている。てっきり葛城の失策により、対立がより大きくなっていると思っていたが……。未だ坂柳の頭の上に顎を乗せてリラックスしている少女を見やる。

 

 

 

 (赤井萌、か)

 

 

 

 オレは船上試験でのことを思い出す。兎グループでの裏切り者。最終ディスカッションの様子を見る限り、あれは間違いなく赤井の仕業だろう。あの坂柳有栖という少女と特別距離が近いように見えることからも、Aクラスを真の意味でまとめあげたのはあいつなのかもしれない。それに……本人に確認するつもりはないが、個人的に気になることもある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ___もしかしたら、Aクラスの脅威は葛城でも坂柳でもなく、赤井萌という女なのかもしれないな。

 

 

 

 








萌ちゃんの最近のマイブーム:坂柳に抱きついてその頭に顎を乗せること
坂柳の最近の悩み:ベレー帽がいつの間にか萌に奪われていることと、萌の顎による圧で身長が縮むのではないかということ


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