ようこそ青春至上主義の教室へ   作:イノセ

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こちらの都合にて更新遅れて申し訳ありません。
冬休み編最後!!!次回から三学期に入ります!!!

どうにか更新頻度を戻していきたいところ……!!






お正月

 

 

 

 

 年始。一年の始まりであるこの日は、多くの日本人が神社に行き八百万の神にお祈りをするらしい。最も、政教分離の観点からかこの高度育成高等学校には神社はないのだが。普段は全く普通の高校っぽくないくせに、こういうところは従順らしい。

 そんな中、私は……いや、私た(・)ち(・)はというと。

 

 

「あけましておめでとーう真澄ちゃん!!!お年玉ちょうだい!!!!」

「あけましておめでとうございます、真澄さん。本年もよろしくお願いしますね」

「……あんたらの落差が酷すぎて新年早々風邪ひきそうなんだけど。てか同い年にお年玉をねだるな」

 

 

 真澄ちゃんの部屋に凸っていた。有栖ちゃんと共に。

 凸る、と言っても、真澄ちゃんの部屋は私の部屋と有栖ちゃんの部屋の間だからそこまで距離が離れている訳でもないのだが。片手に袋、もう片手を挙げて笑顔で挨拶する私と、これまた笑顔で私の後ろから顔を覗かせる有栖ちゃん。どちらもドア前でお預けをくらっている。

 

 

「ていうかあんたら二人で私の部屋に来て何の用なわけ」

「真澄ちゃん!寒いから入れて欲しいな!!」

「やだ。無理。絶対何かする気でしょ」

「そんなー!真澄ちゃんの部屋で鍋パしようって、こんなに材料買ってきたのに!!」

 

 

 これみよがしに片方の手で持っていた袋を見せる。中には白菜、豆腐、長ネギ、お肉、椎茸など、いわゆる冬のお鍋の定番食材たちが入っていた。

 

 

「鍋パ?そんな話聞いてないけど」

「ええ、そうでしょうね。私が今朝決めました」

「あんたねぇ……」

「ということでお邪魔しまーす!!真澄ちゃんのお部屋、鍋ある!?」

「あるわけないでしょ、一人暮らしなのに」

「と思って!鍋も買ってきましたー!じゃーん!」

 

 

 私が袋から自慢げに鍋を出すと更に呆れた顔になる真澄ちゃん。うんうん、いいね!やっぱ真澄ちゃんはこうでなきゃ!

 有栖ちゃんがソファに座っている間に真澄ちゃんちのキッチンを借りてパパっと鍋の準備をしていると、肉を取り出した真澄ちゃんが露骨に顔を変えた。

 

 

「……あんたこれ高い肉じゃないの。絶対これだけで一万くらい飛んでるでしょ」

「え?さあ……食材を選んだのは有栖ちゃんだから!ねー、有栖ちゃん?」

「ふふ、確かに少々お高めな牛肉を選定したのは事実ですね。折角の『パーティー』ですから」

「ていうか坂柳、あんたも何か手伝いなさいよ」

「あら、私は資金の提供という最大の貢献をいたしましたよ?元日から一人寂しく部屋に引きこもっている哀れな真澄さんのために、私たちがわざわざ『福』を届けてあげましたし……これ以上何をしろと仰るのでしょうか」

「ああもう理屈ったらしい!普通に料理の手伝いするって発想はないわけ!?」

「あはは!!有栖ちゃんにそういう常識を求めたらダメだよー!!皮肉三割増の言葉がトッピングされて返ってくるよー!?」

「その言い方ではまるで私の常識がないみたいではありませんか。訂正を求めます」

「えー、やだよー。真澄ちゃんの部屋に入る前の有栖ちゃんすっごく悪い笑顔してたし」

 

 

 談笑をしながらも鍋の準備が終わり、コンロと一緒に真澄ちゃんの部屋の机に乗せる。火をつけると、私たちも床に座った。

 

 

「なーべ、なーべっ、みんなでなーべぱっ♪」

「変な歌歌わないでくれる?」

「だって待ってる時間暇だし。ねえ真澄ちゃん、新年だよ!何かお願いごとした?カウントダウンとかした!?」

「してない。昨日は一日寝てたし」

「えー!?!つまんない!!!」

「あんたを楽しませるために過ごしてる訳じゃないわけ。というかあんたが元気すぎるのよ」

「そうかなぁ?」

「じゃあ昨日、何してたわけ。朝、あんたの声で目覚めたんだけど?」

「あー!昨日はね、ランニング中にクラスの子達に会ったから雪合戦してたよ!私の圧勝だったけどね!!どや!」

「はいはい、凄いわね。次から近所迷惑を考えなさいよ。……私、飲み物取ってくるけど。あんたたちは何か飲む?」

「お水!」

「私は紅茶を。なければ普通のお茶で構いません」

 

 

 真澄ちゃんは短く了解、というとキッチンへと姿を消していった。リビングには私と有栖ちゃん、そして煮込み中の鍋が存在している。キッチンからはお湯がなかったのか、ケトルでお湯を沸かす音が聞こえてきた。……そうだ。

 

 

「ねえ、有栖ちゃん」

「はい。何でしょう?」

 

 

 小首を傾げる有栖ちゃんに、私は体育祭の後、有栖ちゃんが清隆に「お前を潰す(意訳)」と宣言したあの時から抱いていた疑問を投げる。

 

 

「なんで有栖ちゃんは、清隆を倒すことに躍起になってるの?」

「……あら。ふふ、ふふふ。まさか貴女の方からその話題に触れてくださるとは」

 

 

 一瞬で嬉しそうな顔になった有栖ちゃんは、嬉々として話し出した。

 

 

「そうですね……話せば長くなってしまうのですが。真澄さんがいつ帰ってくるかも分かりませんから、手短に。萌さんは、凡人として生まれてきた人間が天才になれると思いますか?」

「……まあ、なれるんじゃない?その最たる例を、私は間近で見てきたわけだし」

「ふふ、そうでしょうね。ですが私はそうは思いません。人は刻まれたDNA以上のことは出来ず、生まれた瞬間にそのポテンシャルが決まっている。それが私の持論です」

「じゃあ有栖ちゃんは、それを証明するために清隆を倒すと?」

「ええ、父の願いなどもありますが……それが一番の理由でしょうか」

「へえ。有栖ちゃんがそんなこと言うなんて、皮肉な話だね?」

「……どういう意味でしょう」

 

 

 楽しそうな表情から一転、怪訝な表情になる。私は有栖ちゃんを見上げる形で笑った。

 

 

「有栖ちゃんさ。清隆を通じて自分の考えを証明することで、自分を納得させようとしてるんじゃない?」

「納得?何を納得させるのですか?」

「自分の存在を、かな。だって有栖ちゃんは、そのDNAのせいで自分が先天性心疾患になって、杖を使う生活になっている。運動ができなくなっている。今はそれを受け入れてるかもしれないけど、幼少期は?物心がつき始めた頃は?必ずしも、受け入れられるとは限らないよね」

「っ、それは……違います。その様な意図はありませんし、私は幼少期からこの身体を受け入れてきました。変な憶測はやめていただけますか」

「そう?私はいい線いってると思うけどなー」

「……何が言いたいのですか」

「ん?何が言いたいってわけでも無かったんだけど……ま、そんな証明しなくても有栖ちゃんは有栖ちゃんなんだからさ。気楽にやりなよー」

「……はい?」

「ま、息が詰まったら私が連れ出してあげるから、色んなとこに。ね?」

「ですから、どういう意味で……」

「お待たせ、お湯やっと沸いた……って何この空気。何話してたわけ?」

「あ、おかえり真澄ちゃん!冬休み明けの学校はどうなるかなーって話してたんだよー!ね、有栖ちゃん!」

「……ええ。夏休みと異なり、冬休みには特別試験はありませんでしたから。冬休み明けすぐ特別試験、ということも有り得ます。そうなれば真澄さんにまたお願いすることがあるかもしれませんね」

「げ、また……?勘弁して欲しいんだけど」

 

 

 そう言いながら、真澄ちゃんは私の前にお水、有栖ちゃんの前に紅茶を出した。自分はココアを選んだらしい。

 

 

「……あ、鍋いい感じじゃない。萌、手伝いなさい」

「はーいっ!有栖ちゃん、お皿貰うねー!」

「ええ。お肉は少なめでお願いします」

「えーっ、有栖ちゃん細いんだからもっとお肉食べないとダメだよー!!」

「体質の問題ですので。余計なお世話です」

「そういうあんたは肉ばっか取ってんじゃないわよ。ほら、野菜も食べなさい」

「た、食べるよー?今は肉のターンなんだってー!」

「焼肉みたいなこと言うな」

 

 

 しばらく3人で鍋をつつきながら楽しんでいると、机の上に置いていた私の端末から通話の音声がなった。私が不思議に思いながら画面を確認すると、表示された名前は『橋本正義』。

 

 

「……橋本くん?私に電話なんて珍しいなあ」

「橋本?出なくていいでしょ、そんなの」

「ふふ、橋本くんにしては良い判断ですね。萌さんはメッセージを送ったところで確認するのは最短でも3日後ですから。電話をかけた方が意思疎通を図れる確率が高い」

「酷い言いようだなー!事実だから反論できないけど!えーと、応答、応答っと……」

 

 

 私が緑色のボタンを押すと真澄ちゃんが一層嫌そうな顔をして耳を塞いだが、無視することにする。その様子を見て有栖ちゃんは、私の方に寄って端末を覗き込み、「スピーカー」というボタンを押した。

 

 

『おー、もしもーし。電話なら出るって噂、本当だったんだな』

「うわ、声でかっ。もしもーし!」

「それはスピーカーにしているからですよ、萌さん。こうすれば耳元にあてなくても声が簡単に聞こえますね」

「あ、そうなんだ!有栖ちゃんあったまいー!」

『姫さんもいるのか?正月から仲良いな』

「真澄ちゃんも一緒だよー!ねー、真澄ちゃん!」

「うっさい、話しかけないで」

『お?神室ちゃんも一緒なの?じゃあ丁度いいな。俺らAクラスの男子数人で集まって正月らしいことで遊んでんだけどさ、華がないなーって話になって。それで今からどうよってお誘いなわけよ』

「正月らしいこと?」

「凧揚げや羽根つき、福笑いなどでしょうか?」

『ご名答、流石姫さんだね。今は外にいるから羽根つきをやろうぜってなってるんだけど、良かったら来ないか?』

「は?羽根つき?ぜっっっったい嫌なんd…」

「うん!!いくいくー!!!真澄ちゃんと有栖ちゃんも連れていくねー!!」

「は!?ちょっと萌、聞いてた!?!!私は行かないからね!!!」

「えー、私と有栖ちゃんで行ってもいいけど、有栖ちゃんは運動できないし、真澄ちゃんも一人になっちゃうし。みんなで一緒に行けば解決だよ!」

「あのね、良い解決方法を教えてあげる。ここから一歩も出ないで鍋をおかわりすること。わかった?」

「あ、そっかー。じゃあ橋本くん、お鍋食べ終わったら行くねー!」

「そういう話じゃない!!!!」

『おー、まあ気長に待ってるぜ』

 

 

 私が橋本くんからの電話を切ると……いや切る前から、恨めしそうに私を睨む真澄ちゃんの視線が刺さる。これは橋本くんの事が嫌いだからなのか、羽根つきで顔に墨が着くであろう事が嫌なのか、どちらの恨みだろうか。

 

 

「真澄ちゃん、そんなに睨まないでよー」

「私、絶対行かないから」

「あら、真澄さん。良い機会ではありませんか。文化的な側面に触れつつ運動も出来て、他の方との交流も取れる。真澄さんにとっては良い事しかないように思えますが?」

「あのね、私は交流なんてどうでもいいわけ。しかも羽根つきでしょ?私の顔を墨まみれにしたいっていうこいつの願望がダダ漏れなのよ」

 

 

 こいつ、と言われ指をさされた。心外だな、確かに真澄ちゃんの顔に落書きしたいなとは思ってたけど。あと橋本くんに墨を塗られる真澄ちゃんを想像してちょっと笑ったけど。

 

 

「真澄さん。これは命令です。萌さんと一緒に橋本くんたちの遊びに参加してきなさい」

「っ……!あんた、ホントに……はぁ、分かったわよ。萌、さっさと行ってさっさと終わらせるわよ。ほら、食べた食べた」

「え?あ、うんっ。……野菜がクタクタで美味しい」

「ふふ、私も見学として参りましょうか。萌さんと真澄さんの顔が墨だらけになる姿を見てみたいですし」

「あっ、有栖ちゃん性格わるーい!!」

「あら、貴女も似たようなものでしょう?」

 

 こうして私達は、冬の鍋を楽しんだのだった。

 

 

 

 ___________________

 

 

 

 鍋パを終えた私達は外に出てきていた。正月早々雪が降っていて、かなり冷えている。寮から程なく歩いたところの広場にて、見覚えのある後ろ姿が見えた。

 

 

「おーいっ、橋本くーん!」

「お?赤井か?」

「よっしゃ!もらいっ!!」

「あっ、おい!ずるいぞ清水!」

「よそ見した橋本が悪ぃんだろ!これでようやく俺の墨地獄から解放されるぜ……!!」

「まあ1回なら許してやるよ。それで?赤井と神室ちゃんもやってくれんの?」

「うん、やるよー。橋本くんと清水くんだけ?」

「いや、あっちに里中と鳥羽、それに町田、吉田、鬼頭、司城もいるな」

「あれ?なんか珍しいメンツが多めだね?」

「あー、吉田に加えて司城もいるからじゃないか?あいつらは男子連中からも人気だしな」

「よーし行こう真澄ちゃん!!男子連中を墨だらけにするよー!!!」

「最悪。なんで私が……」

「おー、待ってくれよ!神室ちゃん、俺とやろうぜ?」

「は?なんであんたなんかと……ってちょっと萌、押すな!!」

「はいはーい、じゃあ真澄ちゃんは橋本くんとねー。私はー……あ!鬼頭くーーん!!!今暇ー!!?」

「……丁度完封したところだ」

 

 

 完封?羽根つきで聞き慣れない言葉だと思い見てみると、鬼頭くんの相手であった吉田くんの顔が墨だらけな惨状を見つけてしまった。鬼頭くん、羽根つきとか出来たんだ。力加減が分からないとか……は、流石にないか。

 

 

「おい赤井ぃ、助けてくれよぉ!鬼頭メチャ強なんだってマジで!!!運動は苦手じゃないはずなのに……!!」

「あはは、吉田君顔真っ黒すぎ!!!」

「赤井もすぐにこうなるからな!?絶対!!鬼頭、赤井にもやってくれ!!」

「言われなくても、俺は負けん」

「お、やる気〜?やったことは無いけど負けないぞ〜?」

 

 

 こうして私と鬼頭くんの決戦が始まった。有栖ちゃんはと言うと、遠くのベンチで私と真澄ちゃんのどちらもを見れる位置に陣取っている。

 

 

「じゃあ私からいくよー?そー……れっ!」

「……甘い」

「わっとと!?危なっ!」

 

 

 意外と返すのが難しいなこれ……!あとあんまり力が乗らない…。鬼頭くん、何であんなに安定してるんだ……。あ、落ちちゃった。

 

 

「鬼頭くん、私ばっかり移動しててずるいよー!!」

「それも戦略だ。約束通り塗らせてもらうぞ」

「うー……ちょっとだけにしてね?よーし、次は鬼頭くんに墨を塗ってやるんだから!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 __数十分後。

 

「はぁ、はぁ……鬼頭くん、やるねー……もう諦めたらどう……?」

「はぁ……赤井こそ……もう既に体力の限界のようだが……?」

「いやいや、私はまだまだやれるよ!鬼頭くんこそ、顔真っ黒だけど大丈夫!?」

「それはお前が容赦なく顔に塗りたくるからだろう」

「だっていっぱい墨塗った方が楽しいもんねー!!」

 

 

 私と鬼頭くんが牽制しあっていると、後ろから首根っこを掴まれ強制終了させられる。

 

 

「ぐえっ、なにー!真澄ちゃーん!!!」

「何でわかんのよ、後ろに目でもついてんの?あんたももう顔真っ黒じゃない。寒くなってきたし、落ちなかったら大変だから洗いに帰るわよ」

「そんな!!まだ鬼頭くんとの決着が!!!!!」

「どう考えてもあんたが負けてるから。鬼頭の慈悲ありでこの惨状でしょ?」

「だって、羽根つきって難しくて……あー!!引っ張らないでー!!!鬼頭くーーーーん!!!!」

「ふふ、見苦しいですよ萌さん。皆さん申し訳ありません、こちらは回収しますね」

「あ、ああ……お疲れ、姫さん方……」

 

 

 真澄ちゃんと有栖ちゃんに強制的に連れられ、私たちは帰寮への道筋を辿る。

 

 

「というか真澄ちゃんだって人のこと言えないくらい墨だらけじゃん!」

「私は倍橋本に塗ってやったからいいのよ」

「あら、私からは五分五分のようにお見受けしましたが?」

「あんたの目が節穴なんでしょ」

「……ほう。真澄さんも言うようになりましたね。三学期以降、更に頑張っていただくことにしましょう」

「は?いや、無理。無理だから」

「やーい、自業自得ー!!」

「ふふ、自業自得ですね」

「あんたら、こういう時だけ結託すんのやめてくれない?……はぁ。早くお風呂入りたい……」

「私も顔の墨洗いたーい!!真澄ちゃん、一緒に入ろ!!」

 

 

 寮のロビーに着き、真澄ちゃんがエレベーターのボタンを押した瞬間に放ったその一言で、空気が凍ったような気がした。……あれ?もしかして、一緒にお風呂入るのってダメだったのかな。

 

 

「……は?私が?あんたと?」

「うんっ、だって二人とも同じ用途でしょ?なら一緒に入った方が早いよ!」

「いや、そういう問題じゃないっていうか……」

 

 

 ちらっと有栖ちゃんの方を見た後、気まずそうに顔を逸らした真澄ちゃん。その間にエレベーターが降りてきて、私たちは一斉にエレベーターに乗り込む。

 

 

「……ふふ。何やら真澄さんが私のことを気にしていらっしゃるようなので言わせていただきますが、私は別に構いませんよ?お二人を待っている間、ゆっくり休ませていただきますし」

「いや、私の気持ちは……」

「よーし真澄ちゃん!有栖ちゃんからの許可も出たしすぐ入ろう!今すぐ入ろう!ほらGOGO!」

「ちょ、分かったから!押すな!!」

「私の部屋の浴室を使っていただいて構いません。私は紅茶を飲んでいますので、どうぞごゆっくり」

 

 

 有栖ちゃんの部屋の鍵が開けられ、私は真澄ちゃんと一緒に脱衣所へと向かった。脱衣所に向かう手前に見た有栖ちゃんの顔が何だか顰められていたように見えたのは気のせいだろうか。

 

 

「はぁ。胃が痛い……」

「……?なんで胃が痛いの?」

「もういい。さっさと入って出るわよ。あんたのお守りをするつもりは無いから」

「お守りって!私だって同い年なのに!!」

 

 

 お互いに服を脱いで浴室へ向かうと、そこには高そうなシャンプーとリンス、ボディーソープ。それに柔らかそうな生地のタオルが何枚か。

 

 

「……真澄ちゃん。これって本当に使ってもいいやつ?」

「……墨が着いたらキレるかもね。あいつ、潔癖だし」

「ひゃー!!真澄ちゃん、綺麗に洗おうね!!……ねえねえ、背中流してもいい?私、憧れだったんだよねー!」

「は?今顔洗ってるでしょ、てか先にあんたの顔洗いなさいよ」

 

 

 そう言ってシャワーの温水をかけられる。あ、暖かい。雪と冬の外気で冷えた身体によくしみる……。真澄ちゃんに言われた通り大人しく顔を洗い終わると、真澄ちゃんはバスチェアに座ったまま何かを待っている様子だった。……何を待ってるんだろ?顔は洗い終わったように見えるけど……。

 

 

「……何ぼーっとしてんのよ。背中流すんでしょ。早くしないと冷えるんだけど」

「……!うんっ!優しく洗うねー!!」

「あんたの力で優しく、なんて期待してないけど」

「失礼な!私だってやる時はやれるんだから!!……というか真澄ちゃん、 ほんとにスタイルいいよねー……身長も高いし、お胸もそこそこあるし、お腹ちょっと筋肉ついてるし……」

「……ちょっと。そんなジロジロ見ないでよ変態」

「へ、変態!?違うよー!!褒めてるだけじゃん!?」

「筋肉で言えばあんたの方があるでしょ。……ほら、硬い」

 

 

 そう言われ、振り返った真澄ちゃんに腹筋をつんつんされる。ちょっとくすぐったい。

 

 

「……よーし、こんなもんかな!じゃあ真澄ちゃん、流すねー!」

「ん。じゃあ次はあんたが後ろ向きなさい」

「え?私?……なんで??」

「なんでって、私だけ背中流されたままじゃ不公平でしょ。ほら、早く向いた」

「わわっ。……へへ、何だか不思議な感覚ー。真澄ちゃんやっさしー!」

「静かにしてないと強くするわよ」

「はーい」

 

 

 真澄ちゃんに洗ってもらった後、お互いに顔に墨が着いてないか全力で確認し、有栖ちゃんのタオルをありがたく使わせてもらった。すごいふかふかだった。これが格差……??有栖ちゃんがいいメーカーとか知ってるだけなのかなぁ。

 余談だが、私達がお風呂から上がった後の有栖ちゃんは酷く不機嫌だった。

 

 

 

 

 






(おまけ)
〜二人がお風呂に入ったあとの坂柳さん〜

「……楽しそうですね。浴室の扉の前まで行けば何の会話をしているのか分かるでしょうか……いえ、しかし……」



これからの展開のことを考えて、R-15タグをつけるかどうか迷っています。タグをつければ安心して書ける幅が広がるので、悩みどころ……気兼ねなくイチャつかせられるし、微エロ展開にもできるし……。

↓アンケートしてみるので、良ければお答えください。

R-15タグは

  • つけた方が良い(微エロ歓迎)
  • つけた方が良い(そんなに多くないなら)
  • つけなくて良い(微エロ程度ならご自由に)
  • つけなくて良い(微エロは書くな)
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