※モブがしゃべります
※モブ視点です
文化祭といえばメイド喫茶、とは誰が言い出したのかは、全くもって不明だが、非常に良い文化だと私は思う。
なにせ、楽しい。
「下手な野郎よりイキイキしてんな?」
「キッチン担当よ、それが悪いこと?」
「テンションどうなってんの?」
もちろん、爆上がりに決まってるじゃん。
「だって、考えてもみなよ」
私は、くるりとターンをする。ふわりと長い裾がふくらんだ。
「かわいいじゃん」
「ああ……まあ…………」
妙に歯切れ悪くなった友人の反応に少しだけひっかかりながらも、それにと、私はカフェで──といってももちろん、教室の机を並べかえただけだけど──パタパタと動き回るクラスメイトを指す。
「紅音がかわいいし」
陸上部に所属する彼女は、普段ポニーテールがトレードマークなんだけど、今日ばっかしは違う。いつもは背中で揺れる尻尾を、三つ編みのお団子にして頭の後ろでひとまとめ。そして、もちろんその衣装は言うまでもなく私同様メイド服だ。
「否定はしない」
「もっと正直になりなよ、ほら告白とかして」
「やだよ」
「まあ、紅音に告白なんてしようものなら、とんでもないことにはなるね」
具体的には、私達からの厳しいジャッジが下るだろう。
「店員さーん」
「あ、はーい」
おっとこうしてる場合じゃない。
「んじゃ、サボっちゃダメだよ」
紅音がかわいいから、お客さんが増えた訳じゃないだろうけれど、忙しくなってきた。ちゃんと働かなければ。
「そうじゃねえんだけどな……」
ぽつりと何か言ったらしい彼の声はうまく聞き取れなかった。
事件が起きたのは、そんな忙しさのピークが少しすぎた頃だった。
「あ、お財布!」
「え、今のお客さん?」
忘れ物が発生。走って追いかければ、間に合わなくはないだろうけど、悪いことに男子達は全員すぐには出てこられなくて、私達はよりによって裾が長いスカートだ。
間に合わないか
「いってきます!」
私の手から財布がひったくられて、一陣の風が吹いた。
いや、実際に吹いたわけじゃもちろんなくて、紅音がダッシュしただけなんだけど。
「え、いや、速っ!?」
「スカートってこと分かってる!?」
バタバタとふわりと風を吸ってたなびくスカート。私が見えたのは、それだけだった。
◇
後日。
写真部が、文化祭で撮った写真で賞を撮ったらしい。
被写体は、走るメイド。
「は、恥ずかしい……」
「自業自得かなって」
「うう……」
うーん、かわいい。
「目線がおっさん」
友人よ。いくら君でもいって良いことと悪いことがあるぞ。