狭間の地の冒険譚・望楼より臨む聖騎士 作:騎士
私は、祝福を見出した。あるいは祝福に見出されたか?
ともかくとして、私の肉体は使命を得、そして死なぬ体と再び燃える心を手にしたのだ。
祝福の示す先は、大いなる二本指の伝わる使命の指す先……
しかし、使命と啓示を得た私に聖教騎士団は厳しかった。なぜならば、私の得た啓示とはすなわち、
信仰心の指し示す先、それは燃える黄金の大樹。黄金樹がどのようなものであるかなど、子どもでさえ知っている。御伽噺が伝える、黄金の恵み、その根源。
故にこそ、私の見た猛炎に焼かれて枯れ落ちた黄金樹の啓示は、受け入れられず、私は半ば追放の形で使命の旅を始めた。
しかして、黄金樹を目指す旅は過酷であった。それもそのはず。世界の中心にあるなどという狭間の地、そんなものを見た者など誰もいないとさえ言われているのだ。それは狭間の地に送り込まれた密使や騎士、聖職者、蛮地の戦士から流浪の剣士に至るまで、誰も帰らなかったのだから。
船に乗り、ひと月ふた月を海上で過ごせば、然るのち黄金の樹を垣間見ることも出来ようか。
私は船乗りたちの船長に頼み込み、狭間の地へと連れて行ってもらおうとした。
思いのほか交渉は上手くいった。狭間の地に辿り着いた者は誰一人帰ってこないという伝説とは裏腹に、船乗りたちは黄金樹を見届けて死ぬという気の狂ったような伝統にこそ酔狂していた。
だが、それは私にとっては好都合だった。
船長は、金は要らないという。使命を帯びた褪せ人を黄金樹の麓へ連れて行ったならば、遺された家族は聖教から多額の金を受け取る事が赦される、とその男は笑っていた。
やはり、気が狂っているのだと思う。
私は湿気と塩気で凝り固まった毛布を被り、恩人に対して不穏な事を考えていた。
そして、船は荒波に消えたのだろう。
凍えた体を暖めるため、廃墟の中で目覚めた私は、あの燃える黄金樹へと祈り、壊れ果てた材木のひとつに火をつけた。
死なぬ体というのもなかなかに不便なもので、溺れる苦しみ、凍える寒さ、水を飲む息苦しさなどはそのまま残っているのだと気付いた。冷えた体の、皮膚を刺すような辛さ。
それに耐えかねた私は、今こうして放棄されたであろう礼拝堂で暖を取っている。
それに、わずかながら腐臭がする事に気付いたのは、身体が温もりを取り戻してきてからだった。嫌な臭いを辿った先には、何かを大切に握りしめて絶命する、巫女服を纏う人。
それは女で、であるならやはり巫女だったのだろう。ともすれば、私の……。
女が大事そうに握りしめていたものを、もはや枯れ枝のように痩せ細った指を開き、手に取る。
珍妙な事に、私が手に取ったものもまた、枯れ枝のような指だった。私は女の指を気付かぬ間に引きちぎってしまったのではないかと焦ったのだが、それは思い違いで、やはり女が握っていたのは枯れ指だった。
よく調べてみれば、それは死蝋へと変質した遺骸の指で、僅かな光が細々と指先から発せられている。
祈祷の奇跡に何となく似ていたそれは、地面へと伸びており、それは巫女が書き残したなにかだった。
『王とお成りください。例え導きが壊れていても』
それは、使命を持つ褪せ人とついに生きて出会えなかった、悲しき巫女の思いを込めた言葉だった。
巫女は、褪せ人ではない。故に死ぬ。ただ特別な力を得、しかし戦うことではなく、導くことによって使命を辿るだけの存在。
私の巫女は、見つかるのだろうか。
先の未来に思いやられながら、重々しい足取りで私は礼拝堂の扉を開いた。
気付けばここにいた。だから、私は海岸かどこかに建てられた礼拝堂に匿われていたのだと自分で思っていた。目の前の光景に圧倒されるまでは。
………崖。どこまで見ても崖。向こう側は霧が立ち込めていて見えない。本当にここは狭間の地なのか。
戦々恐々としながら、私は背に差したバスタードソードを引き抜く。それはただのバスタードソードではない。聖教司祭達の手によって神聖なる儀式の対象となり、聖なる力を帯びている。例えるならば、『神聖なバスタードソード』といったところか。
いつまでも頼れる相棒だった剣は、今もなお輝くように見えた。勇気を出して一歩踏み出してみれば、崖に沿うように頼りない木の足場が組まれており、その先にさらに道が続いている。重い甲冑を動かし、降りていく。
軋む足場に恐怖を覚えながらも、どうにか土を踏むと、ほっと一息をつく。死なないとはいえ、恐れは抱くもの。しかし、決して折れる訳にはいかない。
使命を得たならば、その為に命さえ捨てる。それがずっと続く生命であろうが、幾たびでも投げ打つだけだ。
吊り橋を勇ましく渡れば、広い空間に出た。広場は一応の石畳によって道が舗装されてはいるものの、雑草などが伸び放題で、長らく誰も訪れていないか、あるいはここに辿り着く者が誰一人いなかったのだろうと思われた。
しかし、いっそう奥にある半壊した女体像からは、何かしらの神聖なものを感じていた。像の元となった女性は、この地の聖人だったのだろうか。そのような推理を並べ立てながら像へと近付く私は、眼前を黒い影に塞がれた。
私は
そこで気付いた。その影はおおよそ人の形をしていなかった。
足や腕、胴や顔など、節々に人の姿は見受けられたのだが、それ以上に目を引いたのは、おぞましいほどにその背から伸びる腕。三本、四本、五本……数えるのも億劫になるほど無数の腕が、おもむろに武器を構え、私に対して敵意という牙を向いた。
多腕の化け物と対峙したのだ!
私は黄金の樹が燃えゆく姿を念じ、生まれた火を変じて火球とし、投げつける。力を溜めるように強い祈りで投げたそれは、しかし呆気なく盾に封じられ、守り切れなかった火の切れ端というべき燃え残りが僅かばかりに黒布やその隙間から覗く皮膚を焼いたに過ぎなかった。
次はこちらの番だと言わんばかりに剣を大上段に構え、その細々とした足で巨体を大きく浮かばせると、盾を叩きつけ、剣を突き立ててくる。
私はそのうちの一撃をどうにか逸らすと、その衝撃を前にこれ以上耐えるのは無理だと悟り、攻撃から逃れるように後ろへと走った。攻撃に意識が集中していたのか、とにかく叩き潰し、串刺しにすることしか頭になかった多腕の化け物の連撃から逃れた私は、もう一度火を投げつけた。今度は盾に弾かれることなく命中し、黒髪の陰から覗く白面のような顔を強く焼いた!
確かな効果を感じつつも、油断はできない。そのまま怯む化け物へ勇ましく斬りかかり、両手でしっかりと握りしめたバスタードソードを叩き付ける要領で振り下ろした。聖なる力を宿す刃によって与えた切創の隙間から、黄金が散らばるような血飛沫が舞い散る。
痛みに呻いているのか、少し怯んだ多腕の化け物。一挙に畳み掛けんとばかりに大きく踏み込み、今度は頭を目掛けて思い切り切り上げた。それは確かに顎を強く斬り付け、砕いたように見えた。
その瞬間だった。連撃に次ぐ連撃で疲弊した私に、痛みで暴れる化け物のシールドバッシュを避ける術は無く、急いで盾を構えようとしたが最後だった。遠目で見るよりもはるかに大きな盾はまるで壁のようで、私は壁に押し潰されて絶命した。
冷たい水が頬を撫でる。意識は朦朧とし、全身は苦痛で動くことさえできない。死んだと思っていたのに、生半に生きているとこうなるとわかった。死が見えるまでの数刻を、ただ自害することも出来ず延々と待つのは、どんな痛みにも優る拷問のようにも思えた。
しかし、酷い痛みから僅かに気が逸れることがあった。蹄が水溜まりを歩く、馬の足音。そして少女の声。
「大丈夫、トレント。まだ助けられるわ」
それは私に宛てた言葉ではなかった。トレント、それは少女の声の主が乗る、馬のことだろうか。
「やっと見つけたのだから。この人はきっと、エルデンリングを求める」
───黄金律を外れても。
そっと開かない目の前に置かれた、何かの硝子細工。ちゃぷんと液体が音を立てるのを聞いて、何かの容れ物だとわかった時、一際大きな痛みが脳を突き刺し、私は今度こそ息絶えた。
仕事明けテンションでカンスト攻略始めたので記念。
洞窟や地下墓を虱潰しに探索するのか、それとも程々にNPCとのイベントを回収しながら駆け足で大ルーン回収するかはアンケート結果で検討します。
騎士の男の性格はどうだっただろうか?
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好奇心旺盛(洞窟などはくまなく探索する)
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勇敢(探索はするが、虱潰しではない)
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盲信(洞窟よりも地下墓などを優先する)
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慎重(得た情報に則って探索する)
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臆病(何も探索しない)