軽空母から原子力空母になった鳳翔(♂)の話

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軽空母の俺が原子力空母になった理由を語ろうと思う訳

「ありがとうございます」

「おう、気をつけてなー」

 

 空母の装備について、龍鳳から相談を受けたので相談内容と共に調整し終えたので礼を言う彼女を見送ると入れ替わる形で提督がやってきた。

 

「装備の調子はどうだ?」

「まだ、カタパルト関係での不具合が散見されますね。軽空母の標準装備にした頃と比べて大分マシになりましたが」

「そうか。3ヶ月後に正規空母にも拡大するからそのつもりで頼む」

「畏まりました。しかし、それだけではないのでしょう?」

 

 どうやら、俺が提言した空母に対して油圧式カタパルトの標準装備化についての確認をしに来たらしいのだが、合理的な彼がそれだけで俺がいる工房に来るはずがないと判断して聞いてみると予想した通りの反応が返ってきた。

 

「あぁ、君らに対しての支援任務の要請が来た。暫くの予定がないのは把握済みなので艦隊全員に通達する様に」

「ほう、作戦海域は南ですかな?」

「あぁ、そうだ。ポートモレスビーに集結しつつある敵深海棲艦の基地を叩くのが目的だ」

「彼女達も飽きませんな。集まれば叩かれるだけなのに」

「それだけ、目障りなのだろう。ラバウルやブインの基地は」

 

 俺が今いる場所は、最初の鎮守府となった横須賀鎮守府なのでオーストラリアの辺りまで南下するとなるとそれなりの日数が掛かる。

 その為、普段ならラバウル基地に駐在する艦娘達に現地の深海棲艦の処理を任せるのだが、支援任務の依頼が来るとなればキャパオーバーして処理しきれていないのが想像できるので引き受けた方が良いのだろう。

 それに、提督の発言からもわかる様に上官の命令は明確な理由がない限りは服従するのが基本の軍隊なので、今は暇している俺からすれば引き受けるしかないのが現状だ。

 

「畏まりました。では、艦隊全員に今回の支援任務が来た事を伝えます。集合時間はいつにしますか?」

「そうだな。今から2時間後の13:30(ヒトサンサンマル)に装備を整えて出撃用港に集合する様に伝えてくれ」

「畏まりました」

「頼むぞ、鳳翔」

 

 そして、集合時間などの確認をすると提督が今の俺の名前を呼んだ。

 そう。前世では、ボンクラ社会人だった俺が日頃の不摂生で心不全を起こしてくたばった後、何故か最初に専用設計で建造された空母として今の世界に転生し、挙げ句の果てには架空の原子力空母になった経緯を語ろうと思う。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 意識を消失していく中、漸く楽になれると思っていたら何もない真っ暗な空間で体が固定されている感覚を覚えたので、困惑して待っていると固定から解放された。

 その為、見えないながらも手足に違和感がないかを確認する為に動かしていると、ブシュゥゥゥと空気か何かが抜ける音と共に目の前の暗闇から光が溢れ出したので目を細めると、その先には建物内部の光景が見えたので足を進めると軍服を着た偉そうな小太りチビなおっさんが立っていた。

 そして、自己紹介をしろとの命令に内心では首を傾げながら素直に従って自己紹介をすると「航空母艦、鳳翔です」と言う意図しない単語の羅列が口から出てしまった。

 

 空母鳳翔、と言うと巡洋艦などからの改装ではない世界で初めての純粋な設計で建造された航空母艦であり、第二次世界大戦時では空母としては小型な為に最前線で戦える性能ではなかった。

 その事から、赤城や加賀と言った正規空母が来た際の教導役として行動するんだろうなと思いながら、一先ずは彼の指揮下に入ろうと思っていると偉そうなおっさんもとい提督が嫌味たっぷりに言ってきた。

 

「はん、男の艦娘なんて使えるのかね」

「使うか使わないかは貴方次第ですよ、提督」

「はん、生意気な野郎だ」

 

 嫌味に取り付く島を与えない返しに、彼は鼻を鳴らしながら去っていったので機会があれば転勤しようと考えていると、和服を着た女性がやってきてこう言ってきた。

 

「よろしくお願いしますね、鳳翔さん」

「こちらこそ、よろしくお願いします。鳳翔さん」

 

 その言葉でわかってしまった。

 彼女こそが本来の鳳翔であり、紛い物の俺と比べて本物だと、格が違うと一発で分かってしまった。

 だからこそ、ゲームキャラの彼女とは別のアプローチ目の前にいる彼女と対等な関係を築こうと思って、後塵を育てながらしっかりと覚悟を決める準備をした。

 

 何しろ、意図しない形とは言っても一般人から軍属になったのだから戦場で死ぬ未来を考えたり、理不尽な命令や出来事に対する耐性を付けたりと多岐に渡るからな。ある程度の準備は必要だ。

 その為、赤城や加賀を始めとした空母組の教育や訓練といった艦載機や艦隊の運用のイロハを、本来の鳳翔と共に教え込んで一人前にするとサプライズを受けた。

 

「これが正規空母の艤装ですか。訓練用と違って一体感がありますね」

「あぁ、大抵の場所でやっていける様に空母としての技術を君らに教え込んだからな。よっぽどの事がない限りは大丈夫だし、難関を突破した君らの努力の賜物だね」

「これも鳳翔さん達のお陰です」

「そうてすよ。訓練自体はお世話になりっぱなしですけど、これからは鳳翔さん達をお助けしますよ!」

「ふっ、いざって時にはよろしく頼む」

 

 訓練時代の彼女達は、10代前半の小娘達だったのだが今の彼女達は立派な艦娘になったので、その事で口元が緩みながらも頼もしい後塵と共に戦えるな、と思っているとこの時の俺にとって最悪の出来事が発生した。

 

 それは、空母単独で深海棲艦の群れに突っ込ませると言う素人でもやらない様な下作中の下作な作戦運用を提督がやったからだ。

 

 前々から、この提督は軍人としての才能がないと思っていたがここまで来ると我慢の限界だ。反逆罪で捕まっても構わんが、手塩をかけて、育て上げた後塵を見殺しにする程の薄情でもないのでここで一芝居打つとしよう。

 

   なら、せめて援護の艦隊でも」

「却下だ。あいつらは期待の一航戦とやらなんだろう? 必要なかろう」

「話になりませんな」

「………なんだと?」

「余りにも馬鹿すぎる艦隊運用で話にならんと言ってるんですよ、提督」

 

 艦隊運用について、説得を続ける鳳翔の話を打ち切って言葉を発するとそれまで見下す様に発言していた提督、いやこの場合は無能上司とも言っても差し支えないデブが怒りの表情でこちらを見るできたので、そう言うとムキになって反論してきた。

 

「調子に乗ってんじゃねぇそ、鳳翔。大本営に戻れば立派な将官の1人なんだからな!」

「あぁ、すみませんね。腕より金で昇った人は印象に薄いもんで。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「テメェは今から解体処分だ」

 

 はぁ、部下からの提言に少しでも論理的に反論できない時点でコイツの限界が露わになったし、こんなデブに従っても先がない以上は好きに行動するとしよう。

 そうだな。まずは、こちらの意見を有無を言わさずに聞いてもらう為にバーコードな頭髪を掴んで机に押し付けてみるとしよう。

 

「っ、なにを   

「………忠告だけしておく。俺がこの世で我慢できないのが2つある。1つ目は不味くて食えたものじゃないもの。そして無謀な作戦で部下を無駄死にさせる無能な上官だ」

「っ」

「困ったものだろう? ()()()()()()()、頭を低く生きていけ」

 

 無断でデブに近づき、デブの頭を掴んで執務用に設置された机に勢いよく押し付けながらそう言うと、上官だったデブは何も言えなくなったので手を離してから固唾を飲んでいた鳳翔に声を掛けた。

 

「行くぞ、鳳翔。このままでは彼女達が沈んでしまう」

「わ、わかりました!」

「待て! 行かせんぞ! 行ったら命令違反にするぞ!」

「なら、好きにさせてもらいます」

 

 俺の言葉に、鳳翔は頷いたもののまだ吠え面を描く無能なデブの発言に冷静に返すと2人で工廠へ向かった。その途中で、デブが何か言っていた様だが急ぐ俺らにはよく聞こえなかったので無視した。

 

 

「提督からの電話が来てましたが、電話機の不調でよく聞こえませんでした。なので私達は何も聞いてませんし、見ていません」

「そうですか、助かります」

「ふっ、整備も万全か。なら問題ないな」

 

 工廠に到着すると、工作艦の明石と試験艦の夕張が待ち構えていたのだが出撃用の艤装の整備は済ませてくれていた様で、後は俺達が勝手に出ていくだけだったので彼女達に感謝の言葉を伝えてから艤装を身に付けていった。

 

「すみません。私も出撃できれば良かったのですが」

「気持ちだけは受け取っておく。赤城達の艤装、頼んだぞ」

「は、はい」

 

 すると、夕張が申し訳なさそうに言ってきたので彼女の頭を撫でながら後の事を任せる発言をして、俺達は出撃した。

 

「鳳翔型1番型鳳翔、参ります!」

「同じく鳳翔、出撃する!」

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 こうして、俺達は2人を救出する為に無謀な出撃をした結果、赤城と加賀の救出自体はできたものの体に負荷を掛け過ぎた為に俺達の体はポロポロになり、鳳翔(彼女)は艤装を扱えない体になった。

 勿論、赤城達の元に到着できた時点で4人で撤退すれば延命できただろうがそうした場合は赤城と加賀のどちらかが沈んでいた程、深海棲艦が集まっていたので俺たちが無茶をするしかなかった。

 そんな俺も無事では済まず、沈む一歩手前な上に何の因果か、隠されていた能力が解放されてもう1人の鳳翔が集中治療室で安静に治療を受けている間に改造を受けた。

 

 その結果、基準排水量が20万トンクラスの原子力空母として生まれ変わったのだが、その一方で無能なデブは無謀な作戦立案から艦娘運用、資材の着服などの不正が明らかになった事で更迭され、鎮守府を去ったと聞いている。

 何しろ、改造に掛かった資材は膨大な上に改造が完了するまでの時間が1ヶ月も掛かった為、直にその現場を見てなかったので起きた後で聞くしかなかった。

 まぁ何にせよ、無能な老害の代わりに有能な若手が提督として来てくれるなら問題ないなと思いながら、新たな空母としての能力を確かめていったのだが何故、この能力が俺にあったのかは今なお謎のままだ。

 

 そもそも、艦娘の男バージョンである艦息自体の数が少ない上に架空の原子力空母ともなれば、謎が深まるばかりで解決は遅々として進んでいないが俺個人はそこまで気にしていない。

 何故なら、艤装を扱う事が出来ずに現役を引退した鳳翔は少ない資源をやりくりして、他の艦娘達が戦える様にし続けたノウハウを買われて今は鎮守府内の小さい料亭を作ってそこで働いている。

 その結果、最初期の空母だった俺達は片方が料亭の女将、もう片方が一線級の艦隊旗艦と言うそれぞれの道に進む事になったが、俺達はそれで満足している。

 

 だって、俺達がいる鎮守府には多くの艦娘達が在籍しているのだから。


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