壱与ちゃんの活発だけど根暗でもあるギャップが好きなのですが、あまり二次創作の文章見ないので自分で書いてみました。
健全版とR18版を同時投稿です(大筋は大体一緒)。ピクシブにも同時投稿。

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【健全版】壱与とマスターが夜に恋人っぽい会話する短編

 

 

「未来さんって、あったかいれすねえ」

 

 

 

 天井の照明を少し弱めたマスターの部屋。

 ベッドの上で髪を解いている壱与は、隅に座る立香の膝を枕に寝転がっている。

 顔が赤く、回らない呂律むにゃむにゃとうわ言を言って気持ちよさそうなのは、先ほど飲みすぎた金色の飲料のせいかもしれない。

 部屋のテーブルには菓子の袋や空の瓶。

 宴を終えて多幸感に包まれながら、少女は頬を立香の腹にすりすりと頬をこすり付けて甘えていた。

 

 部屋の外は、深夜で静まり返っている。

 互いに一日の仕事を終えて、汗ばんだ肌。

 肉感もありながら軽やかな裸の足は布団の上で、滑らかな曲線を描く。

 赤い腕輪のような模様の描かれた腕と、そこから伸びた細い手は立香の腰を掴んだり、布団に指をうずめて遊んでいる。

 小ぶりな胸は呼吸と共に上下し、頭の周囲には花が舞っていそうなほど彼女はとろけた笑みを浮かべていた。

 

 しかし不意に、暗い感情が浮かび上がる。

 それは彼女が普段陽気にふるまいながらも、自身に女王として劣等感を感じていることによる、突発的な症状であった。

 

「……本当に私なんかでよかったんですか?」

 

「どういうこと?」

 

「ほら、私ってばぁ……暗いじゃないですかぁ。不運体質で、ジメジメとして、それに重い女ですよ。未来さんの周りの方々と比べても、地味で、すっごい強いわけでもないですし……」

 

 日頃の彼女を知れば、誰もが異口同音に「そんなことはない」と言うだろう。

 活発で、よく動くことが好きで、表情も豊か。

 一生懸命に働き、仕事終わりにはお気に入りの一杯を満足そうに飲んでいる。

 生前の女王としての能力が足りないことを嘆いてはいるが、カルデアにおいては与えられた仕事を十分にこなしている。

 

 けれど、立香は知っている。

 彼女が本音を晒すとき、そこには自らの出自に対する劣等感と、頑張りながらも卑弥呼のように天性の才能がなかったという負い目があることを。

 

「それも含めて壱与さんのことを好きになったんだよ。それに……」

 

「それに……?」

 

 潤んだ瞳で壱与は立香とじっと目を合わせた。

 立香は彼女の背中をぎゅっと抱きしめる。

 

「ほら、壱与さんはとっても軽いよ」

 

「フフッ、なんですかそれ~!」

 

 壱与はくすりと笑うと同時に、「いよっと」と立香の膝枕から身を起こした。

 

「私ってばずるい女ですよね。未来さんなら私を絶対に否定しない、優しい言葉をかけてくれるって分かっていて、意地悪な質問をしちゃいますし」

 

「それも壱与さんの可愛いところだよ」

 

「……!」

 

 困った表情で頬を真っ赤にした後、壱与はしばらく黙ってしまった。

 同時に、相手と心が通じ合っている喜びに打ち震える。

 

「未来さん未来さん、もっと恋人トークしましょう! 私、こういう恋人とまったり過ごす時間に憧れてたんです!」

 

 足をばたつかせながら、少し横に転がって立香の腕の中に倒れ込んだ。

 ああ、この甘い瞬間がずっと続けばいいのに。

 そしてそれはどうも、立香のほうも同じらしい。

 

 

 

 □□□

 

 

 

「ふわあ~~、夜も更けてきましたねぇ」

 

 ぐぐっと背伸びをして、壱与は0時を過ぎた時計を眺めた。

 

「私、夜は強いほうなんですけど、未来さんはもう眠たいですか? でしたら、一緒に添い寝してあげてもいいですよ……なんちゃって、調子のりすぎですね」

 

 明日は任務もないし、まだ平気だよと、立香は平気を装って答えた。

 とはいえお年頃である以上、今の煽情的な提案に、正直に頷きたくなった。

 しかし脳内に滾る妄想を必死に耐える。

 

「あの~未来さん。そう言いながらベッドに寝転んでいるのはどうしてなのでしょう?」

 

 しまった、身体のほうは言うことを効かなかったと立香は悔いた。

 ほろ酔いの壱与を介抱しているつもりが、自身もまた酔っていたのかもしれない……と分析しつつ、言い訳を考えようとした。

 そんな慌てる立香を見て、壱与は彼の横にごろんと寝っ転がった。

 

「あー、なんだかとっても眠くなってきたなー。未来さん、このままここで一緒に寝ても構いませんか?」

 

 立香はぽかんと口を開けたあと、勿論だよと頷いた。

 2人は、部屋の照明を暗くし布団をかけて、寄り添った。

 相手の朧気な顔の輪郭。呼吸の音が近くで熱を帯びて聞こえる。

 立香は、今相手がどんな顔をしているのか分からなかった。

 

 壱与は暗く狭い場所を好んだ。

 それは幼少期、獣の巫女として一人地下牢に入れられてた懐かしさもあるのだろう。

 だが完全な暗闇は、いつだって哀しみを伴う。

 だから暗い中、かすかな灯りが差し込んでいるとき、壱与は一番心が安らぐ。

 こんな薄暗い、駄目な自分の元にも光は差し込んでくれる。

 そして今、例えどんなに暗くとも側にいてくれるぬくもりに、彼女は心から喜びを感じていた。

 

「未来さん……いえ、立香さん。……好きです」

 

 そういうと、立香のほうからも愛の言葉が返ってくる。

 自分の一言より、何倍もの熱を込めて、繰り返し囁いてくれる。

 なにより、布団の中で両手がしっかり握っていてくれる。

 

 その愛への喜びが最高潮に達し、壱与の心は大きく波打った。

 立香もまた同じく、彼女の身体を離れぬようぎゅっと抱きしめた。

 2人は、長い長い快楽の波が過ぎ去るまで、二人だけの闇の中で互いの愛を味わい続けていた。

 

 

 

 □□□

 

 

 明け方。

 朝に弱い壱与をなんとか起こすと、目を覚まさせるためシャワーへと案内する。

 夢うつつのまま寝汗を流し、タオルで身体を拭う。

 そんな背後の光景を見ないようにと、立香は顔を逸らし続けた。

 いつもの巫女姿から見える脇や美脚にすらどぎまぎとしているのに、なぜだか今日は彼女の顔を見るだけで倒れそうになる感覚がある。

 その壱与もまた、今日はなぜだかいつもの恰好が気恥ずかしい。

 

「未来さ~ん、服を貸して頂けませんか?」

 

 詰め寄る壱与に、特に断る理由もなく、立香は自分の着替えの一着を差し出すことにした。

 小柄な壱与にはサイズが少し大きいものの、袖のあるシャツなどで昨晩の痕を隠せそうではある。

 

「えへへぇ……未来さんの匂いがします」

 

 壱与はYシャツの一つを着てみた。

 流石に袖口のサイズが合わないものの、会社帰りのOLのような雰囲気があってそれはそれで良いと立香は思った。

 スーツ姿、協会の学生服、日本の学ランなど、壱与と立香は二人だけのファッションショーを楽しむ。

 結局は無難に、職員全員に支給されているカルデアの制服となった。

 

「でも、……今度はお揃いの服、一緒に着て歩いてみましょうね、未来さん!」

 

 そう言って、くるりと回った壱与は、満面の笑みを浮かべた。

 闇の託宣。滅びの巫女。

 夜を愛し、月を恐れたその半生。

 闇に生きるのを定められたその少女は、光とは程遠い存在だろう。

 

 

 けれど、立香にとっては

 ころころと目まぐるしく表情を変え、誰よりも明るく振舞うその少女は

 窓辺から降り注ぐ朝日を受けて、誰よりも光の似合う笑顔を浮かべていた。

 

 

 

 


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