一番星と一等星。   作:果実味

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 地の文むっっずい!! もうご愛嬌でおなしゃす。なんとか連載中に文章力は鍛えていけたら……うーんきびし、でも頑張る。
 そしてあとちょっと。あの子を早く出したい……もう無理矢理出したくなってしまう。






第三話 見えない裏側。

 

 

 

 

 

 アイが活動を再開して数ヶ月。止まっていた時計の針が進み始めB小町はさらなる快進撃を──

 

「今月の給料2●万……」

 

 遂げているわけではなかった。

 

「ねぇ〜うちの事務所の給料渋いよぉ〜こないだ出したシングルオリコン三位だったよね? 中抜きエグない?」

「大手のアイドルに同じこと言ってみたら? 多分、アイより低いかもしれないわよ」

「──え、マジ?」

 

 まだまだ売れっ子には程遠いB小町のセンター様はぶーぶーと文句を垂れ流し編集作業を進めているミヤコがバッサリ言う。

 

「確かにうちは弱小芸プロだけど売上は好調。しかもB小町以外に抱えている子がいないからその分給料に回せるのよ。けど大手だったら……」

「製造、流通、ぜーんぶやってるからその分引かれるってわけね」

「しかも担当してる子が両手でも数え切れないんだから薄給なのは仕方ないわ」

「うぅ……でもなぁ〜私気づいちゃったの」

「何に?」

「──世の中『金』だなって」

「嫌なことに気づいちゃったわね」

 

 アイ一人だけなら現状に不満はなかった。アイドルとしてステージに立てる喜び、楽しさを感じられるから。しかし今はアクアとルビーを育てる母親でもある。子どもたちを良い学校に行かせたり習い事をさせたり、とにかく色々な知識と経験をさせてあげたい、今のままでは幸せにできない……アイにも『母』として子に何をしてあげられるかという気持ちが少しずつ大きくなっている。

 

「そういえばちーちゃんは?」

「仕事。今日は帰ってこないかも」

「え、それアウトじゃない? 未成年なんだよ?」

「仕事は深夜までさせないわよ、個人レッスン」

「はぇ〜ちーちゃんストイックぅ〜」

「……そう、ね」

 

『さすがちーちゃん』と感心して双子をあやしているアイを横目にミヤコは表情をこわばらせていた。

 

「あ、そろそろレッスンいってきま〜いい子にお留守しててね」

 

 仕事がない日はライブの為に歌とダンスのレッスンに時間を当てている。アイが出掛けたのを皮切りに双子はようやく喋ることを許された。

 

「アイドルって月百万円くらい稼いでるんじゃないの?」

「ンなワケないだろ」

「ンなワケないの?!」

 

 眩しい世界しか知らないと思われるルビーの問いにアクアは常識だろと言わんばかりの呆れ顔だ。

 

「歌唱印税やテレビ出演料はメンバーと山分け、ライブは物販売れなきゃ余裕で赤字。衣装代だって天引き……月百万なんて一握りも一握りだぞ」

「何それっ! 頑張ってる人にお金が行き届かないなんて世も末ね! ……あ、そうだ」

「……なんだよ」

 

 どうせろくでもないアイディアなのは共に過してよぉ〜く分かってはいるが後が怖いのでアクアは聞き流すつもりで言葉を待った。

 

「オタク全員が持ち回りで肝臓をアイに捧げてそれを売って──」 

「お前の前世って世紀末だったの? その考えの方が世も末だわ」

 

 思わずツッコミをいれてしまうくらいろくでもなかった。やっぱりルビーはアホの子というイメージがアクアの中で定着しつつある。

 しかしアイに仕事がこない事にはアクアも憤慨していた。歌って踊って顔もいい、レッスンやボイトレをして夜には振り入れをする。努力はしている、B小町も界隈では有名なグループであるのは間違いない。これだけの条件が揃っていて仕事がこないのは陰で営業妨害をしている輩がいるのではないか? と疑わずにはいられない。

 

「おいマネージャー! なんでアイに仕事が来ないんだ!」

「このクソ運営! もっと営業かけろ!」

「え、えぇ……そんな事言われても……」

 

 ギャーギャーと騒ぎ立てる双子にミヤコは涙目である。一応、神様が宿っていている(ミヤコの思い込み)ので強くは言えない。しかしマネージャーにも限界というものがある。確かにマネジメントする子が売れない理由にマネージャーの力不足が挙げられることはあるが全てがそうではない。もっと根本的な原因を双子は知らないのだ。

 

「あのですね、アイドルグループというのは数十人が束になってたった一人の芸能人と仕事を奪い合う業態なワケですよ。今はセット売りでやっと仕事が取れているのに単体でってなると壁は厚いですよ?」

「で、でも……ママは凄いアイドルなんだよ?」

「アイの凄さは私もよく知っています。だけどそれは『アイドルに限った話』なんです、芸能界では『一人でもやっていける何か』がなければダメなんです」

 

 アイドルとしてのアイはまさに完璧で究極を体現したかのような偶像だ。人が求めるモノになりきり無償の愛を届ける、容姿も仕草もその全てが現実で拝むことができる。しかしどこまで行ってもそれはアイドルの域を出ない。テレビに映る芸能人にはそれぞれ役割があり他にはない個性を持っている、だからこそ輝くのであって『アイドル』というだけでは芸能界を生き抜くことはできないのだとミヤコは語りかけている。

 

「だったらチトセはどうなんだ? あの子は仕事貰ってるんだろ?」

「それは……」

 

 アクアの問いに再度ミヤコの表情が曇る。アクアは気になっていたのだ、チトセはどんな仕事をしているのかを。家に居るのは一、二時間くらいで後は外に出ている……まぁアイドルとはいえ年頃の女の子だからショッピングに出かけたりアイのようにレッスンをしているのだろうなとアクアは予想していたがミヤコの反応を見る限りどうやら違う理由がありそうだ。

 

「チトセさんの前では絶対に言わないでくださいね? 言ったら私、すっごい怒られちゃいますから」

「怒られるくらいヤバい仕事してるの?」

「分からんっ……でもチトセだったらありえそう」

「も、もしかしてAV──」

「やめろぉ! 俺はそんなチトセは見たくない!」

「あの、全然違いますよ?」

「「ほっ……」」

 

 いつもニコニコしているチトセがどんな仕事をしているのか想像できない双子はあらぬ事を考えてしまったがR十八指定のモノには出演していないようなので胸を撫でおろした。

 

「見てもらった方が早いですね……はい、どうぞ」

 

 そう言ってデスクワーク横に置いてある鞄の中から小冊子を一つ双子の前に置く。そこにはブランド物で身を固めたチトセと身に付けている商品の説明、極めつけは『デートコーデはこれ!』と記載された俳優と手を繋ぐ写真だった。

 

「チーちゃんモデルやってたのっ?!」

「……なんか頭の悪い記事だな」

「アクアってチーちゃんの事になるとマジになるよね。なんかあったの?」

「まぁ色々とな。けどモデルか……」

「撮影する女優さんが来れなくなってピンチヒッターとして、ですけど評判は良いみたいで次の撮影もお願いされたんですよ〜」

「なんか嬉しそうだよ、アクア」

「そりゃ仕事貰えたんだから当然だろ」

 

 チトセが活躍する姿を間近で見れるのは嬉しい、アクアの本心ではあるがやはり前世での立場を考えたら知らない誰かと手を繋いだりというのはなんというかこう……モヤモヤする。推しのアイがモデルとしてならこんな気持ちにはならないのに。

 

「今日はドラマの収録ですね」

「ドラマっ?! チーちゃんすごっ!!」

「もちろん主役だよな!」

「あ……いえ、端役です」

「「おいっ!」」

「仕方ないですよ、まだまだ実力……というか知名度がないんですから。新人枠としてデビューしてくれないかと狙ってはいるんですけどね……やっぱり『アイドルのチトセ』という印象が強いみたいで」

 

 きちんと役者として経験を積み監督の目に止まれば新人役者から選出される可能性がある──が、チトセの場合は『アイドルとして』現場に立っている。アイドルを生業としてるのだから容姿が良いのは当たり前、それは役者にだって沢山いる。もっとも、第一にドラマの撮影で求められるのは容姿云々、実力云々よりずっと簡単な話、『ビジネスの場』であるという事が重要なのだ。

 

「チトセの演技力は?」 

「可もなく不可もなく、ですね」

「チーちゃんでもやっぱり役者って難しいんだね」

「というよりチトセさんの心に問題があって伸び悩んでいるというのが正しいですね」

「「こころ?」」

「まぁそのお話はまた今度で。今夜はB小町の販促イベントがありますから動画サイトで見ます?」

「販促イベントっ?! いく! 私いきたいっ!」

「ダメです」

「いや! 絶対いくの! 連れてってくれなかったらチーちゃんに今日のこと言っちゃうよ?」

「ぐっ……そ、それは卑怯ですよ! だいたい社長に見つかったらどうする気ですか!」

「それは……ミヤっちのせいにする」

「──人柱にしないでください!」

 

 乳児のゴリ押し&神様に逆らえば天罰が下るとアクアがボソッと呟いた事が決定打となり泣く泣くミヤコはベビーカーを準備して身支度を済ませるのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

 夜の街は存外騒がしくない。驚異の人口密度を誇るここ東京でも人通りが少ない時間というのはあるわけで。

 しかしそれは地上に限った話、下に目を向ければそこにはサイリウムを片手に大声で名を叫ぶ者や日々特訓したヲタ芸なるものを披露する強者達がいる。普段は一般人として人混みの中に消え行く者も地下世界に足を踏み入れれば内側の自分を曝け出せる場となるのだ。

 

「本日はB小町のお三方に起こし頂きましたー!」

 

 そして、そんな熱い視線の先には彼ら彼女らが崇拝するアイドルがいる。運営が狙っているのはグッズの売上、購買意欲を高める目的の為であることはファンも承知しているしこの日のためにと懐を温めている者も少ないない。一部ではグッズ、チェキ代に数万をぶち込むガチ勢も。

 さて、そんな羨望の眼差しで見られるB小町……というより先頭に立つ不動のセンターにしてエースであるアイは観客に手を振りいつも通りの作った笑みで場を沸かせているが内心は少々ブルーになっていた。

 

(はぁ……どうしたもんかねぇ〜)

 

 決して表には出さない裏の顔。アイがやや傷心気味になっている事はこの場の誰一人として気づいていない。

 今日のレッスンの休憩中、子どもたちをどう幸せにしてあげられるのかと悩み練習に身が入らなかった。そこで気分転換にといつも日課にしているエゴサをしているとアイに関する投稿が目に止まる。

 

 ──アイの笑い方って良くも悪くもプロの笑顔なんだよな。

 

 痛いところを突かれた。笑顔には自信があったしそれでファンが喜んでくれるのなら改善する必要はない。いや、正確には『笑顔』に種類なんてものがあるのかとアイは考える。

 

 ──なんか人間臭さがないっていうか……

 

 人間臭さ……具体性がない。アイドルそのものが偶像だというのに、それを求めているのはファンの方ではないか。今この場で振り付けを間違えれば人間らしくなれるのだろうか……お腹の空いた音を聞かせれば人間らしく見てくれるのか、アイの思考は混迷を極めた。

 

(まぁでも……仕方ないよね。私は嘘で出来てるし)

 

 結論はそこに行き着く。鏡を見て研究、ミリ単位での調律、目の細め方や口角……その全てが打算。ファンが喜んでくれる一番の笑顔をやっている(・・・・・)、そう……それらは『嘘』なんだと自覚し自虐してしまう。

 

「──っ?!」

 

 ひとまず今日のところはこのまま乗り切ろう、家に帰ってから笑顔の研究を……と半ばやけくそ気味に今を楽しもうと会場に目を向けると信じられない光景が目に飛び込んでくる。

 

「「バブっ! バブバブっ! バブゥッ!」」

 

 家で待っているはずの愛しの我が子達が凄まじいヲタ芸で観客の注目を集めていた。

 ……ありえない、乳児にキレのあるヲタ芸ができるなんて。それは観客も、そして歌も踊りも忘れて凝視するメンバー達も同意見だった。

 

 ──しかし、それ以上のモノがアイの内から溢れようとしている。

 

(ウチの子──きゃわぁ〜〜!!)

 

 一目惚れ、とでもいうのか今のアイは洗練された笑顔ではなく『素』の、シンプルで分かりやすい『愛情』を込めたとびきりの満面の笑みだった。

 

 ──そして帰宅後。

 

「何か言い残すことはあるか?」

「いえ……ございません」

「ちょっと来い」

「……御意」

 

 アクアとルビーによるヲタ芸はすぐさまネットに拡散し動画も投稿され再生回数は二百万……今もその数字を伸ばしている。

 もちろんそんな投稿が世に出たとなれば黙っていないのが苺プロ社長──斉藤 壱護である。少しでも危険を回避するためにあの手この手で策を張り巡らせたのにまさか内側から突破されるとは思いもしなかった。事情聴取とばかりにアイと双子を残してミヤコの首根っこを掴み別の部屋へ姿を消した。

 

「あちゃ〜アクアもルビーも有名になっちゃうね。これちーちゃん見たらなんて言われるか……」

 

 親友の顔を思い浮かべ『ま、最後には許してくれるよねっ』とどこまでも楽観的なアイ。そのまま投稿される文を見ていると我が子を見て感無量といった表情の自分の写真が貼られており話題はアイへと変わる。

 

 ──これだよ!!! これ!! 

 

「はは〜ん……コレがイイ(・・)がいいのね。よぉ〜し、覚えちゃったぞ〜」

 

 密かにイタズラを考える小悪魔のような笑み。コレが『人間臭さ』というもの……なるほど。作った顔と素の顔、上手く融合させればそれすなわちアイドルとしてもっと飛躍できる可能性があるとアイは抑えきれない昂りに次のステージまでには完成させようとやる気になっていた。

 

 

 

 

 ☆★☆★☆★☆★☆★☆

 

 

 

 

「あっはははっ! あ~おかし! これやりすぎっ」

 

 同時刻、とあるビルの一室にて少女の笑い声が響く。少女はスマホを片手にお腹を抱えてひーひーと呼吸を整え先ほど見ていた動画をもう一度再生する。

 

「いやいやあの子達何やってるの……てかヲタ芸すごっ」

 

 その動画というのは話題沸騰中である乳児のヲタ芸──というより少女のよく知る双子である。

 仕事で販促イベントに出演できなかったことを残念がるような表情に見えたが次第にニヤっと口角を上げる。

 

「あ〜あ、アイもこ〜んなにだらしない顔しちゃって……でも分かるなぁ〜私もおんなじ顔になってたと思うし」

 

 画面をスワイプして下を見ていくと親友の写真が。それを見てまた頬が緩む。

 

「ふふっ……ね、さりなちゃん。アイの素顔って見たことあったかな? 多分……これがステージで見せる初めてだよ」

 

 慣れた手付きで写真フォルダを開きお気に入り登録してある内の一枚をタップして話しかけている。

 写っているのは幼さを残した容姿の少女、それを見つめる瞳には星が宿っている。きっとこの場にファンが居たならば間違いなくその瞳の虜になっていただろう。それほどまでに強く、そして美しかった。

 

「もし……もしもだよ? 『生まれ変わり』なんてものがこの世に存在するんだったら……私に会いに来てほしいな」

 

 憂いを帯びた表情だがその裏側は分からない。いつだって少女──鳴川 千十星はミステリアスなのだから。

 

 

 

 

 

 

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