この話は「蝉の家」の2次創作です。

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じじじじ じじ じじじじ

 

⚪︎作り話

 

 Aさんが小学5年生の時のことだという。

 2泊3日で山奥の少年自然の家に泊まりに行った日の、2日目の夜。

 9時半くらいにその日の行事は全て終わり、Aさん達には消灯時間まで自由な時間が与えられたそうだ。

 Aさんは相部屋の友達と話し込んでいた。

 話す相手は元から仲の良かったBさん、それと同じ部屋になって仲良くなった浅田あゆみだった。

 

 Aさんの最近の趣味は怖い話だった。

 インターネットで洒落怖、図書館で怪談レストランを読み漁り、怪談話を蓄えていた。

 そのことを話すと、Bさんも浅田あゆみも怪談話は得意だったらしく、「何か怖い話知らない?」とAさんに尋ねてきた。

 

 Aさんは今まで見てきた怪談を思い返し、この状況にピッタリな物を探した。

 すると、頭の中に「蝉の家」という怪談が浮かんできた。

 山奥の廃墟に忍び込んだ若者が、口いっぱいに蝉を頬張った老人の霊に追いかけ回されるという話だ。

 しかし、この話はあまり出来が良くない。

 だが、あんまり時間をかけて吟味するのも……。

 Aさんはそこまで考えて、ふと思いついた。

 「蝉の家」を部分的に改変するのはどうだろう、と。

 

 「あのね、これはさっきここの職員の人から聞いた話なんだけど……。ここに来る前の道の端っこに、木でできたの小屋があったでしょ?」

 「あー、あったねぇ」

 「あそこでね、お爺さんが死んでるらしいよ」

 「えっ!」

 

 まず、怪談の舞台を変えることにした。

 「蝉の家」の舞台を今自分達がいるこの山に。「蝉の家」の舞台である大きな木造建築の屋敷をその辺にあった家に。

 

 「なんかね、心臓麻痺だったらしいよ。でね、そのお爺さんは死んじゃう直接にジュースか何かを飲んでいたんだって。それで、倒れた時にそのジュースがお爺さんの顔面にかかっちゃったんだって。でさ、ここの職員さんがお爺さんの死体を見つけた時にはね、お爺さんの顔面に、いっぱいの蝉が集ってたらしいんだよね。口の中まで蝉でいっぱい。……それ以来、この辺にはお爺さんの幽霊が出るらしいんだよね。蝉をびっしり顔面に貼り付けた幽霊が、ね」

 

 ここまでは「蝉の家」から直接引用した。

 舞台を今いる場所に変更したからか、Bさんはほどほど、浅田あゆみは顔色を変えるくらいに怖がっている。

 しかし、Aさんはそこで満足しなかった。怖いオチを付け足して、更に怖がらせてやろうと考えたらしい、

 

 「でね。……この話を聞いた人の所に、お爺さん、来るんだって」

 「やだー、そんな話しないでよ〜〜!」

 

 BさんがAさんを軽くこづく。浅田あゆみは何も喋らない。

 

 「いや、本当なんだって。窓の外に立って、窓をコンコンってノックしてくるんだって」

 「やめてよー! 寝れなくなるじゃん!」

 

 AさんとBさんがじゃれあっている、その時だった。

 

 「ゥオエッ、」

 

 浅田あゆみが、突然吐いた。

 Aさんはびっくりしすぎて声も出なかった。

 怪談をしていて空気が張りつめていたこともあって、その驚きは相当な物だった。

 吐瀉物が床に広がる。酸っぱい臭いが辺りに広がった。

 そして、昼に食べたカレーのニンジンなんかがに紛れて握り拳ほどの大きな物が吐瀉物に混じっていた。

 

 蝉だった。

 

 それも、生きた蝉だった。

 蝉は、床に転がったままバタバタと動いて不快な音を奏でた。

 あまりに異様な事態に、AさんもBさんも動けないでいた。

 

 臭いが届いたのか、蝉の鳴き声が聞こえたのか。同じ部屋の子が「どうしたの?」とAさんに声をかけてきた。

 その言葉でAさんは我に帰り、「浅田ちゃんが吐いちゃって! 先生呼んでくる!」と叫んで部屋から飛び出そうとした。

 

 急いで靴を履き、ドアノブに手を伸ばす。

 その瞬間、ドアが開いた。

 そしてドアの隙間の暗闇から枯れ木のような細い手が伸び、Aさんの腕を掴んだ。

 

 「よんだかァ」

 

 聞き覚えのない、しわがれた声が聞こえた瞬間、Aさんは意識を失ったという。

 

 Aさんの記憶にあるのは、ここまでだそうだ。

 その後の自然教室の記憶も、小学5年生後半の記憶も、すっかり頭から抜け落ちているらしい。

 まるで頭が不都合なことを忘れようとしているかのように。

 

 Aさんが1つ気がかりなのは、いくら小学生の頃のアルバムを捲っても浅田あゆみの姿が見つからないことだそうだ。

 

 

 

⚪︎この話も参考にしました。

  

 怪談ってある種呪術というか、降霊術なんですよ。よくいうじゃないですか、怖い話をしていると幽霊が寄ってくるって。

 百物語ってありますよね。あれって実は、全部の話を語り終わると青行燈っていう妖怪が表れるんです。

 怪談を集めること事態が怪談として、儀式として成立しているんです。「新耳袋」っていう怪談を集めた本があるんですが、その本を作る最中にもいろんな変なことが起こったらしいです。怪異の存在を誰かに伝えようとする行為、それ自体に魔力が宿るのかもしれません。怪談だけじゃなく、妖怪画にもいろんないわくがありますからね。

 

 怪談の登場人物にAさんとかBさんとか、仮名を使うことってよくあるじゃないですか。それってプライバシーの観点からも必要な行為ですけど、オカルト的にも大事な意味を持つんですよね。

 本名を怪談に載せないことで、霊障がその人たちに降りかかるのを防いでる。

 怪談の中に生きている人間を組み込むことって、本当はとても危険な事だと思うんですよね。

 

 実は怪談にも危険度みたいな物があって、実話怪談より創作怪談の方がヤバいんです。

 ほら、幽霊って見られてるとバレたらまずいっていうじゃないですか。やっぱり一人で彷徨ってるのが寂しいんでしょうね。色々な方法で幽霊は私達の気を引こうとしてくる。

 嘘の怪談を語るっていうのは、そういう幽霊達に新しいネタを与えるってことなんですよね。何者でもない存在が、嘘っぱちで空っぽの怪異の殻を被って、生きてる人間にちょっかいをかけてくる。それって凄く怖いことじゃないですか?

 

 

 

⚪︎浅田あゆみについて

 

 呪われて死んだらいいと思います(笑)。

 

 

 

 

 




 「蝉の家」は2chのスレッド、「死ぬ程洒落にならない怖い話を集めてみない?」に投稿された一本の怪談です。

 蝉は樹液を吸う生き物であり、死体に群がるのは現実では考えにくいです。
     
 2022年、「蝉の怪物に襲われてるんだけど」という、和歌山県在住のスレ主が頭部が蝉の怪物に襲われているというスレッドが立ち、「蝉の家」に出てくる老人の霊とその怪物に類似性があるという事で、「蝉の家」は話題を呼びました。

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