R-15です
身体を触れられる感覚を覚え、意識が覚醒していく。
いまだ朧げな視界のまま横を向けば愛する人がこちらを向いていて、彼の腕は私の胸元へと伸ばされていた。
視線が合って私が起きたことを確認しても腕の動きは止まらずに、ゆっくりと形や感触を確かめるように胸を撫でている。昨夜眠りにつく直前に明日は休みだから朝からしてほしいなーとおねだりしていたのを覚えてくれていたようだ。
寝起きでぼんやりとした思考のまま彼のなすがままになっているとパジャマのボタンが一つずつ外されていく。そして、全てのボタンが器用に片手で外された後、そのまま彼の手がするりとパジャマの中に入り込んだ。男の人は胸を触るのが好きというのは知っているが目の前の彼もその例に漏れず、私を感じさせるというよりもむにむにと感触を楽しむような触り方で、それが微笑ましく感じて少しだけ笑みがこぼれた。
再び目を閉じて行為を受け入れればもそりと彼が動いて上体に覆い被さってくる。寄せられた頭を抱きしめると寝起きゆえか彼の匂いがふわりと鼻腔に入り、同時に首元にぬらりとした感触を覚えた。
「んぅ……」
彼と共に暮らし始めてから徐々に開発されていった私の身体は、このような場で彼から与えられるものなら少しの刺激でも堪らず二度、三度と声を漏らしてしまうようになったが、それを聞いても彼の動きは変わらず、敏感な場所にあえて触れないような愛撫に寝起きの身体が徐々に熱を帯びていく。
されるがままの状態が続き、私の身体は朝だというのに既に準備が整ってしまった。それを感じ取ったのか同時に胸を撫でていた手が私の脇腹を撫でるように滑り、くすぐったさに身体の力が抜けるとその瞬間に太ももの隙間にするりと差し込まれた。
「朝から、んっ、大胆……」
「彼女のご要望にはお応えしないとな」
そこで初めて言葉を紡ぎ、唇を交わす。触れるだけのキスをした後、少しだけ見つめ合うと軽い気恥ずかしさを覚えて笑みがこぼれた。
「おはよ、翔君」
「おはよう、アイ。続けていい?」
「うん、どうぞ」
再び唇が触れあうが、今度は深く、長いキスを。焦らすように刺激を与えていた手の動きも私に快感を与えるためのそれに変わり、重なり合っている口の隙間から声にならない音が零れた。
深いキスを終えると彼の頭が下がっていき顎、首筋、そして胸へと肌を啄んでいく。そして、その直後に感じた甘い刺激に背中を軽く反らせながら、私は彼に与えられる快楽に身を委ねていった。
「いやぁ、朝風呂は贅沢だねぇ」
行為を終えた後、汗を流しているうちに何となくもう少しいちゃいちゃしたくなったのでもう一度だけ楽しんでから、お互いに身体を洗っている間に湯舟にお湯を入れて翔君と一緒に入っている。
朝から、いや昨日の夜からたっぷりと愛してもらったおかげで身体には多少の気怠さがあれど、今日はお休みだから問題ないし何より心の体力は完璧だ。
「ご機嫌そうで何よりだわ」
「むっ、翔君はご機嫌じゃないの?」
「最高の気分だよ?」
「そうだよね!」
湯船の中で抱きかかえられるように座っていた私はくるりと身体を反転させて翔君の首に手を回す。そして、そのまま啄むように口づけして愛情表現をしていると、後頭部に手が回されて深いキスが始まった。湯船のお湯が揺れる度に聞こえる水音に淫靡なそれが混ざり合う。このままもう一度と思ってしまうが、すでに朝から二回もしていることを考えれば流石にこれ以上の行為をするのは好ましいものではないだろう。
――とまあ、頭はわかっているんだけど、身体は反応しちゃうんだよね。
反応もさせちゃうしと、下腹部に当たる硬くなったそれをお湯の中でゆっくりと撫でながら一応聞いてみることにする。
「もう一回、する?」
「ゴムさっき使っちゃってるからダメ」
「別に付けなくてもいいよ?」
「ダメです」
「むぅ」
相変わらずこのことに関しては頑なだ、まだお互いに未成年なのだから当たり前かもしれないけど。ちょっとだけ悔しくてキスをしながら撫で続けてみたのだが、流石にこれ以上はダメと身体を離された。素直に諦めた私はもう一度唇を重ねてゆったりとした口づけを楽しんだ後、再び身体を反転させて翔君の腕の中に納まり力を抜く。
――本当に、いいんだけどなー。
ちょくちょく言っていることではあるけれど、冗談で済ましてくれるのはきっと一言目までだ。喉元まで出かかった言葉をぐっと飲みこんで、ふぅと深く息を吐いた。
「お疲れ?」
「疲れてないけど、ご機嫌斜めかも。このままだと拗ねちゃう」
「少し仕事したいんだけどな」
「じゃあ夜までご機嫌斜めでーす」
「うちのお姫様のご機嫌取りは大変だぁ……」
お姫様なんて柄じゃないなぁ。どちらかと言えば欲望に塗れた魔女だよ魔女。欲しいと思ったらどこまでも欲しくなっちゃうからね。
今日は休みだしいっそのことこのまま襲っちゃおうかなと思わないでもないけど、私はともかく翔君は朝から三回ってなると流石に大変だろうから我慢我慢。どうせこの後時間はたっぷりあるからね!
そのままゆっくりお湯に浸かって身体を温めてから、簡単に朝食を済ませた後に私は翔君を伴って自室へと向かう。
目的地は部屋の隅に置かれた箪笥と同じような色の現代仏壇の前。座布団に座り、一度母の写真を見てから蠟燭を灯し、線香に火をつけて手を合わせた。
目を閉じて母のことを思う。
本当は良いことを思い出したいのだけれど笑った顔を思い出すのはどうしても難しくて、やはり頭に浮かぶのは正直に言えば目を背けていたい記憶ばかりだ。それでも今後思い出が褪せることはあっても増えることはないのだから、母と向き合い続けていくためには、母を忘れないでいるためにはきっとこうすることも大切なのだろう。
辛いことではあるけれど、たとえ悪い記憶だったとしても何度も思い出していけば慣れていく。今私が感じている辛い思いも日を追うごとに薄れていくのかもしれない。とはいえこれは、
――とても寂しいことだよね。
母と別れて五年程度なのにもう思い出せないこともある。解決するのは時間だけと翔君が言った理由がなんとなく実感できた気がした。
それからもう少しだけ母のことを思い出した後、ゆっくりと目を開けて翔君に場所を譲る。すると彼もまた私と同じように手を合わせた。
「いつもありがとね」
「お礼なんかいらんて」
「それでも、さ」
彼にとっては話したことはおろか会ったこともない人なのに、毎日律義に一緒に手を合わせてくれるのだからお礼の一つも言いたくなるというものだ。
「当たり前のことしてるだけなんだがなぁ」
「そうなのかな?」
「そりゃな。アイの母親なんだから、俺にとっても母親みたいなもんだろ」
「んなっ!? い、意味わかって言ってる!?」
「……そりゃまあ、そういう意図で言ってるし」
「へ、へぇ~? そうなんだ……?」
翔君の言葉と照れてる姿が、完全に油断していた私の心にクリーンヒットした。
そんな言葉がさらっと出てくるなんて、しかもそのあと恥ずかしそうにするとかずるいよね。本当にずるい。悲しいな、寂しいなって思ってたらさ、たった一言で私のこと幸せにしてくれるんだから。そんなことばっか言ってると私嬉しすぎて死んじゃうよ?
溢れ出る愛おしさを伝えるべく、膝立ちになって翔君を後ろからゆっくりと抱きしめた。
母と向き合う辛さも寂しさもこの人が側に居てくれれば必ず乗り越えられると確信を持っている。だからだろうか、私は強く思ってしまう。繋がりが欲しい。この人と私を結ぶ強固な絆が欲しいと。
――参ったね、ちょっと抑えられなくなってきてる。
翔君と一緒にいるようになってから漠然と持っていた感情が、唯一の肉親である母を失ったことと再び彼と身体を重ね合わせるようになったことによって爆発しかけていた。
私はまだ十五歳の小娘で、翔君も十六歳。私は誕生日を迎えれば結婚できるようになるけれど、翔君が結婚できるようになるまではまだ二年もあるのだ。だから、私と翔君を結ぶのに結婚という選択肢が取れない以上、選択肢はもう一つしかなかった。血の繋がりも時には何の意味もないことを理解している私がまさかそれに縋ることになるとは、実に滑稽で皮肉な話だとは思う。しかし、それでもなお求めてしまうのは天涯孤独となったこの身の寂しさ故だろうか。
――子供が欲しい、って言ったら怒るかな。
そう思うと同時に翔君を抱きしめていた腕に力が籠る。
きっと、怒らないだろう。この人はきっと私がそんな世迷言を言っても怒らない。でも、困るだろうな。絶対困って、すごく悩んで、いっぱい溜息吐いて、そして頷くだろう。そんな姿がありありと想像できた。
私が普通の女の子で、もっと強い心を持っていたらこんな風に悩むこともなかっただろうし、悩ませることもなかったのに。それこそB小町のみんなみたいに両親がいて、友達がいて、普通に恋愛ができる世間一般的な家庭に生まれた女の子だったら……ないものねだりだね。
人に恵まれたおかげで壊れることも捻じれることもなかったけれど、残念なことにどうしても普通の女の子になれなくて。そんな私が一人になるのが寂しくて、怖くて、どうしても離れたくないとこの人を縛り付けるための何かを求めてしまっていた。
本当に星野アイというのは自分のことばかり考えてしまう弱い人間で嫌になってしまう。
「えーと、アイ」
「あ、ごめんね」
そんな思いに耽っていたら名前を呼ばれてはっとする。慌てて翔君から離れると、彼は座布団に座ったまま私の方に向き直ってからバツが悪そうに口を開いた。
「大丈夫か? その、急に変なこと言ってすまんな」
「へっ? 何が?」
「いや、何がって、その……」
「うん……? あっ、そっか」
はて、と考えてすぐに思い出す。思考があらぬ方向へ飛んでいたから忘れていたが、そういえば翔君が突然プロポーズ染みたことを言うから抱き着いていたのだった。
――今なら、言えるかな。
今なら冗談にできる流れだし、言ってみてもいいかもしれない。ちょっと怖いけど、正直に言うとどんな反応をするのか気になってしまうのだ。
「……ねぇ、翔君」
「うん」
唾を飲み込み、ふぅと一息吐いてからなるべく冗談に聞こえるように気楽な感じで言葉を紡いだ。
「赤ちゃん、欲しいな」
私の言葉を理解した瞬間に翔君が目を見開く。それは想像通りに驚いているようにも、困惑しているようにも見えて、何ともいたたまれなくなった私は慌てて誤魔化そうとする。
「あ、アイ?」
「あっ、お水換えるの忘れてたから変えてくるね!」
続きを聞くのが怖くなった私は花瓶を手に取って逃げるように台所へと向かう。後ろから呼び止めようとする彼の声を振り切るように小走りした。
出産編開始
アイさんの子供はちゃんとオリ主との子供だから安心しろぉ!?
ちょこちょこアイさんの人物像が見えてきたけど、意外と自分のアイ像とずれてないのかなって思い始めた今日この頃。
評価感想よろしく
あと今後についてのアンケートを一つ。ルートは決まってるので興味本位です。
せんせ
-
ゴロルビ! ゴロルビだよね!?
-
バ ー ド ス ト ラ イ ク