今年中には完結させたいですね。今後もよろしくお願いします。
斉藤夫妻の説得を終え、続いて俺の後見人さん――石原さんという――の了承もため息交じりではあったが得ることができたので、アイの出産に関して大人たちのバックアップは問題なく受けれることになった。元々資金面では何の問題もなかったが、やはり手続きやら親権やら病院の手配やらと成人している人間の手伝いはどうしても必要になるからそこが上手くいって本当に良かったと思う。
「~♪ ~♪」
そんな感じで交渉が無事に終わったおかげかアイは極めてご機嫌なようで、B小町の新曲を鼻歌で歌いながらキッチンで夕食の準備をしている。説得がサクッと済んだおかげでまだ六時にもなっていないから少々早いとは思うのだが、今日の夜はたっぷり時間が欲しいと言われたら俺は何も言えねぇんだ。枯れそう。
栄養ドリンクでも買っておくかとぼやきつつ、エプロン装備のアイさんはくそかわの権化なので悪戯しにいこうかとも思ったけれど今日のメインは唐揚げだった。油扱ってるときにちょっかいかけるのは流石にNGなので自重して食器の用意を済ませてじっとしていることにする。
と思ったけどやっぱり我慢できねぇわと、料理してる姿を観察しにキッチンをこっそり覗いてみた。料理のためにロングヘアを後ろでまとめてポニーテールにしたアイさん。項がばっちり見えてセクシーだし、そもそもがかわいすぎますね、天使です天使。あの子あと二年も経つとワイのお嫁さんになるんですよ、たまらんな。
まだまだ問題は山積みだが少なくとも今は幸せいっぱいだ。とはいえそれに浸っていられるわけもなく、今までは恋人関係であったのがここにきて急に結婚や夫婦なんて言葉が現実味を帯びてきたのでやるべきことがまた増えたわけである。
法的に結婚できるようになるにはまだ二年あるし、そもそもとしてアイが芸能人を続ける場合婚姻届けを提出するかどうかすら不明だ。だが、事実としてそういう関係になるとお互いが了承する以上はそれなりのことをやるべきだろう。
「できたよー」
ぼんやりと今後のことを考えていると、そんな言葉と共にアイが皿に盛られた唐揚げを持ってきた。鳥さんに祈りを捧げて美味しく頂き、リビングのソファーでイチャイチャしながらテレビを見て時間を潰した後、お風呂に入るアイを見送り食器を洗ってから自室に戻ってインターネットで目的のものを検索、調べていく。
八月の上旬には三泊四日の日程で高千穂に向かうことになっており、追加でもう一日だけ予備日を取ってある。ある程度前から予定していたこともあってスケジュールには余裕があるので、できるかどうかはわからないがここは一つ調べてみようとインターネットを起動する。高千穂だから宮崎、あとは熊本も選択肢に入るだろう。
――流石に時間に余裕ないから難しいかもしれんが。
検索して出てきたサイトをさっと確認し二、三社ピックアップしつつ、ポチポチしながら必要なものを印刷していく。まだまだ情報量が少ないインターネットに頭を抱えつつも、アイが呼びに来るまでその作業は続けられた。
お風呂に入ってすっきりした後、自室に戻るとパジャマを着たアイさんがベッドの上に転がって携帯をいじってました。視線が合うと「準備万端だよ☆」といった感じのキラッキラした目でこちらを見てきます。ワイは今日も枯らされるんか?
「アイさん、まだ九時にもなってないっすよ」
「うん。今日はいっぱいできるね!」
アイさんどっかからバフもらってるとはいえ最近容赦なさすぎじゃない? 俺にもバフよこせと声を大にして言いたいんだが。
「もう少しこう何というか、手心というか……」
「そんなものはない、って返せばいいかな?」
なんかニーッコリしながらステージで出すような人を魅了する瞳使ってるし。やめろ、それは俺に効く。
そんなアイの瞳に釣られてふらふらと誘引されるようにベッドに向かう――のをぐっと我慢して、まだやるべきことが残っているためパソコン机へと向かう。
「ちょっと先に調べものさせてくれ」
「えー」
不満げなアイが枕を抱え、こちらを向きつつベッドに寝転がって足をパタパタとしている。埃が立つからやめなさい。
「お仕事?」
「いや、私用だな」
「何調べてるのー?」
「見てみるか? ほれ」
流石に気になったのだろうアイがのそりと起きて近づいてきたので、プリンターに印刷してあった資料を手渡す。するとそれに目を通したアイが目を開いてぽつりと呟いた。
「フォトウェディング……?」
「うん。まあ、何というか、必要なんじゃないかなと思ってさ。まとめてから話そうとは思ってたんだけど、ちょうどよかったわ」
「これ、結婚式をするってこと?」
「いや、衣装を着て写真を撮るだけかな」
流石に結婚式開くわけにはいかん。まだ十六歳と十五歳だからね。
「アイは子供を産んだ後でもアイドル続ける予定だろ?」
「うん。一応復帰できるならしたいと思ってるけど……」
「それならさ、東京は今後のことを考えれば避けた方がいいし、二人で地方に出かけることなんて恐らく当分はないだろうからいっそこの機会にどうかなと」
「そっか、それで高千穂で?」
「高千穂にはそういうスタジオなさそうだから宮崎、もしくは熊本になるかな」
「なるほどね……」
アイが資料に目を通していく。こういう大事なことを焦る必要はないとは思うけど、アイの今後のことを考えると有名になればなるほどできなくなるだろうし、今回のことは少々早すぎるとはいえ人生の区切りって感じだから多少は無理してもいいのかなと。資金にも余裕があるしね。
「そもそも時間もないし日程も結構シビアだからどうなるかわからないけど、一応問い合わせだけでもしてみようかなと思ってさ」
本来ならば予約は三か月くらい前からしておくのがいいらしいけど旅行の予定日まではもう二か月無いくらいだ。繁忙期からは外れているようではあるのだが、旅行中に打ち合わせと撮影がいけるかどうかは運とお金次第というところだろう。
「これ、前々から考えてたの?」
「いや、思い立ったのはついさっきだな」
「そっかぁ……」
話しながら読み終えたのだろう、アイが持っていた資料をプリンタの上に戻した。そして、少しばかり目を瞑ってから口を開いた。
「もしできるなら、したいな」
「わかった。じゃあ、話進めてみるな」
「うん、よろしく」
アイの同意を得たので明日から早速電話してみようと思う。さてさて、調べ物はこれくらいにしてそろそろ甘い夜を始めるとしようかとパソコンの電源を落として立ち上がったのだが、アイは俺の側に立ったままじっとこちらを見るだけだった。
「ん? アイ、どうかしたか? やっぱ急すぎたかな?」
「ううん、それはいいんだけど……」
「ふむ?」
「どうやってお返しすればいいのかなって」
溜息交じりにぽつりと呟いたアイは眉根を寄せ、何とも悩ましい表情を見せている。
「お返しなんて、そんなの気にしなくていいのに」
「気にするよ。だって、私が言い出したことなのに赤ちゃんが欲しいってこと以外何も考えてなかったもん……」
そう言うと、アイは申し訳なさそうに視線を落とした。まずいまずい。アイに喜んでもらうためにやったことなのに気に病んでしまっては意味がないわ。
こういう時は素直にと、俺は極力声を明るくして答える。
「うーん。俺は自分の欲求に従っただけだから、そう思い詰められると申し訳なくなるんだがな?」
「欲求?」
「ぶっちゃけるとアイがウェディングドレス着てるのをどうしても見たくなったのよね」
星野アイのウェディングドレス姿とか永久保存待ったなしだろ。見たら飛ぶぞ、マジで。
「え? そ、そうなの?」
「はい」
純粋で邪な気持ちを行動に移しただけなんです。あとはまあ、原作ではきっと着れなかっただろうから着せてあげたいってのもある。アイがどう思ってるかはわからないけど、何だかんだでウェディングドレスって女性の憧れの一つみたいなとこあると思うのよね。
それに芸能界で活動してるうちは色々制限された生活を送ることになるだろうからこういうのはできることならやってあげたいと思うわけですよ。押しつけがましいかもしれんけどさ。
「だから俺としては思い付きに付き合ってくれてありがとうって感じなんで、マジでお返しとか考えなくていいぞ」
「ううん……。なんか上手く丸め込まれてる気がする」
そんなことないんだけどね、本当に。
「まあ、嫌とか面倒とか思ったらすぐに言ってくれよ? ガチで思いつきを勢いそのまま提案してるだけだからさ」
「思うわけないじゃん。私だって女の子なんだからウェディングドレスには憧れあるし。翔君に見たいって言ってもらえるのもすごく嬉しいよ?」
「そっかそっか。なら良かった」
あ、やっぱアイさんもそうなんですね。興味ないとか言われたら正直しょぼーんってなってたから安心したわ。
思いついて良かったーと胸を撫でおろしつつ、いつまでもこうして立ってても仕方ないのでそろそろ寝ましょうかとアイの腰に腕を回してベッドへと促す。
二人でゴロンと寝転がり、部屋の明かりを消すとアイがぴったりとくっついてきたのでそれを受け入れるように軽く抱き寄せた。
「そういえば、雰囲気壊して悪かったな」
「ううん、むしろもっと雰囲気ある話してくれたから良かったんじゃない? 考えてみれば実質プロポーズみたいなもんだよね、今の」
「んん!? そう言われればそう、かも……」
俺のためにウェディングドレス着てくれなんて、言葉はともかく内容は確かにプロポーズみたいなもんだわ。しかも半ばコスプレ扱いだったからな、情緒の欠片もないね。
「はぁ、何かいろいろすっ飛ばしてるなぁ」
「ちょっと生き急いでる感はあるよねぇ」
「境遇が悪いよ境遇が」
「それはホントにそうだね」
そんなことを言いながら二人で軽く笑い合って、少しばかり見つめ合った後唇を重ねる。色々大変だけどね、幸せだからいいんですよ。
啄むようなキスを何回かした後に準備万端いざ開戦となるわけだが、そんなときに暗がりの中でアイが悪戯を思いついたかのようににやりと笑ったのを俺は見逃さなかった。動かそうとしていた手をピタリと止め、嫌な予感に若干不安になりつつも問いかけてみる。
「ど、どうかした?」
「んー? いやさー、そういえばさっきの話のお返ししてなかったなーって」
「お、お返し? 要らないって言ったはずじゃ」
「そうだけど折角あんなこと考えてもらったのにさ、やっぱり何もしないのは悪いなーって思って」
ニッコニコのアイさんが俺の身体を転がして上に乗ってくる。そして、悪戯っぽく笑いながら俺の耳元に顔を寄せて一言、呟いた。
「今日はいっぱいかわいがってね、あなた」
はい、反則です。それはダメでしょアイさん。俺は激怒しましたよ。今日は絶対に逃がしません。
俺の上にいるアイを抱きしめた後、少々強引に転がって上下を入れ替える。そして、「きゃっ」とかわいい声を上げるアイの身体に少々強引に手を這わせていった。
その後の詳細は省くとするが、その日俺は久々に勝利を得ることができた。なお、代償は大きく翌日は倦怠感と腰の痛みに一日中耐える必要があったことは付け加えておくこととする。
次回から高千穂編! だと思う。
この物語を書いてる途中にどうしてもアイさんにウェディングドレス着せたくなったのでここでぶっこんでみました。
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