星野アイを救いたいだけのお話   作:でぃあ

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久々の投稿です、一か月も空いてしまいましたがまだまだ続くぞい。

感想評価お気に入りよろしくお願いします。


026

暦が進んで八月。世間が突風やらゲリラ豪雨やらで騒がしくなっている中、俺とアイは二人揃って機上の人となっていた。

 

朝に一度事務所に寄って社長夫妻に挨拶した後、タクシーで羽田に行き宮崎への直行便に乗り込んだ俺は今世初のフライトをのんびりと楽しんでいる。

 

一方右隣に座る我が最愛のアイさんはちょうど窓から見え始めた富士山にテンションを上げており実に微笑ましい。飛行機は地方遠征もあったから初めてではないはずだけどと思って聞いてみたら、以前乗った時は座席が中央だったらしい。そりゃ見えんわな。ともあれ、今回はやることがあるとはいえ純粋に観光の側面が大きいからね、楽しんでくれているようで何よりだ。

 

離陸してしばらくすると機内食の配膳が始まる。今回は折角の旅行ということで奮発してそれなりの座席を確保したので前世含めても初の機内食を楽しむことができた。軽食程度だろうと思っていたけど結構しっかりとしたお弁当出るんですね。汁物までついてきたし驚いたわ。

 

昼食を済ませお腹が膨れてしばらくすると、特にやることもなかったからだろう。アイがふわふわと眠そうにしているのが横目に見えた。

 

「おねむ?」

 

「うん。昨日あんまり寝れなかったからちょっと眠いかも」

 

「今のうちに寝ておきな、これから忙しいし」

 

「うむー……」

 

遠足の前の小学生みたいなノリで昨日は寝るの遅かったからなぁ。まあ着陸まではあと一時間以上あるし良い昼寝になるだろう。

 

早々に目を閉じたアイを横目に俺はこれからの予定を改めて確認する。

 

宮崎についたらすぐに予約しているスタジオに直行だ。事前に資料を送ってもらっていたのである程度検討はつけてはいるのだが、やはりウェディングドレスであるから直接見たり試着してみないとわからないこともあるだろう。なので今日一日はこれにつぎ込む予定だ。

 

翌日は朝一で電車とタクシーを使って高千穂に向かう。星野家の実家やお墓などはアイの母親が東京に出てくるときに処分していたようで家と土地は売却済み、お墓に関しては実家の近所のお寺で永代供養されているのが事前の調べで分かっている。恐らく東京に出た後は高千穂に戻る気はなかったのだろう。

 

そんなわけで実をいうと高千穂で行うことはほとんどない。しいて言えばお寺に行ってお参りをするのと、アイの実家があった場所の周辺で星野家の人がどんな人たちだったかを軽く聞き込みするくらいだろうか。

 

一応二日の滞在予定でいるのだが時間が余ることは疑いないので、やるべきことが終わったらそのまま寺社見学となるだろう。今回の旅が実質観光というのはこれが理由だ。

 

高千穂で二泊した後、次の日の朝一で宮崎に移動してそのままスタジオに直行し撮影となる。スタジオの方には本当に無茶なスケジュールを提示してしまって迷惑をかけてしまったのだが、その分お金を積むことで何とかしてもらった。昼前にはスタジオに行って撮影、夕方には解散してその足で空港に向かって東京に帰還となる。

 

こうしてまとめてみると実にハードなスケジュールだ。それに応じて準備も大変だったのだが、それでもやって良かったと思えるのは形に残るものが目に見え始めているからだろうか。

 

眠っているアイの左手。その薬指には指輪が嵌められており、対となるものを俺も同様に身に着けている。

 

社長夫妻に紹介してもらった宝飾店にアイと一緒に買いに行った結婚指輪はプラチナ製のリングの裏側に日付が刻まれただけのシンプルなもの。予算はそれなりにあったので選択肢には困らなかったが、二人で色々と相談した結果、長く使うものだし一々外したりするのは面倒だからと宝石とか台座のような出っ張りがついていないものを選ぶことにしたのだ。

 

アイの立場上ホントは今も外した方がいいんだろうけどね、この旅行中くらいはと言われたら外せとは言えんわ。まあサングラスかけて移動中は帽子も被ってるから問題ないでしょう。多分。きっと。メイビー。

 

同時に買った婚約指輪に関しては現在スーツケースに入れられて貨物室の中である。こちらはそれなりのものを贈らせてもらったのだが、喜びつつも値段を見てお返しができるまでに何年掛かるんだろうとアイが何とも複雑な目で指輪を見つめていたのは中々に面白い光景だった。

 

どんなものがいいかしか調べなかったからお返しなんて概念完全に忘れてたわ。気にしなくていいとは言ったのだが、そういうわけにもいかなかったのか今はとりあえずこれでと後日結構なブランドのお財布をくれたのでありがたく使わせてもらってます。

 

しかしまあ、転生なんてものを自覚したときはどうしてこんなことにと思ったもんだが、なんだかんだとそれなりに頑張ってきたからか灰色の前世とはまるで違う人生送ってて本当に驚きだよ。特にこれは本当にと、寝ているアイを起こさないようそっと左手に手を伸ばし軽く指輪を撫でる。自分が女性相手にこんなものを贈ることになるとは、前世では恋人すら作れなかったのに不思議なものだとつくづく思う。

 

分不相応だよなぁとため息を一つつくと指輪を撫でていた手が優しく握られた。驚いてアイの顔を伺えば目は閉じたままであったが、口元に笑みを浮かべながら俺の手を軽くにぎにぎとし続けている。

 

「ごめん、起こしちゃったな」

 

起こしてしまって申し訳ないとそう謝ったのだがアイは無言のままだ。ならばと、指を絡めるように手を握ると笑みを浮かべたままむふーと満足そうな表情になった。実に可愛らしい。

 

とはいえ起きる様子はなさそうなので、俺も少し仮眠を取ろうと背もたれに寄りかかって目を閉じた。昨日の夜よく眠れなかったのは俺も同じなので、眠気はすぐにやってきて夢の中へと旅立っていく。

 

その後、着陸直前に二人合わせて目が覚めた時まで手が繋がったままだったため、お互い軽く気恥ずかしくなって無言になってしまった。ついでに降りるときにCAさんに微笑ましそうな視線を送られてさらに恥ずかしくなったのは内緒である。

 

 

 

 

 

スタジオに着いて当日のスケジュールの確認を終えた私たちは、早速当日着用するドレスを選ぶことになった。事前にカタログをもらっていたのである程度の見当はつけておいたのだけど、いざこうしてずらりと並ぶドレスを前にすると流石に目移りしてしまう。さらに現在貸し出し中のドレスがあったりサイズの問題があったりと、一着選ぶにもかなり時間がかかりそうに思えた。

 

「困った。これ、結構時間かかるかも」

 

「だなぁ。とはいえ時間は今日しかないので上手いこと決めてもらわなきゃならんのだが……」

 

申し訳なさそうに言う翔君に気にしないでと言いつつ並べられたドレスを見遣る。

 

今回のフォトウェディングは翔君が気を利かせて予定を立ててくれたのだが、如何せん時間がなかったので試着できるのは今日のみだ。一応二着を選ぶ予定なのだが、ドレスの着脱には結構時間がかかるらしいのでそこまで多くの数を試着することはできないだろう。

 

「う、うーん……。どうしよう……」

 

「とりあえず事前に選んで置いたやつ着てみるか? 着てみて初めてわかることもあるかもしれんし」

 

「確かに、まずは一着着てみた方がいいかもねぇ……」

 

正直言うと自分がこのドレスを着てどう見えるかが全く想像できていないので翔君の意見は一理あるのだ。ならばと、事前に選んでいたものの一つであるプリンセスラインと呼ばれる一番人気があるらしいものをとりあえず着てみることにする。

 

とりあえずこれをとスタッフさんに伝えると、そのまま更衣室へと案内されて言われるがままに着替えていく。袖を通したドレスはプリンセスの名の通り腰から下の部分が実に華やかだ。

 

――プリンセス、か。お姫様って柄じゃないんだけどな。

 

なんか前にもこんなこと思ったことあったなーと思いながら着替えを終え、姿見の前に立ち改めて全身を見る。私は細身で背が低めなのでこういうふわっとしたタイプのものが似合うかどうか不安だったが、周囲のスタッフさんはお世辞だろうけど口々に褒めてくれているし、個人的にも中々のものじゃないかと思える。

 

――翔君、可愛いと思ってくれるかな。

 

私としてはかなりいい感じなのではないかと思うのだが、結論から言えばこれが一番重要なのだ。ウェディングドレスは女の勝負服なのだから、とにかく翔君に可愛い、綺麗って思ってほしいわけで。身体を傾けたり雑誌の撮影で覚えたポーズをとってみたりすると周囲から軽く声が上がった、恥ずかしい。

 

初めて着るドレスというものに舞い上がって、ついつい調子に乗ってしまった私が気恥ずかしさを感じていると、タイミングを計ったようにスタッフさんが伺いを立ててくる。

 

「いかがでしょうか? とても、ほんっとーにお似合いだと思います」

 

「あっ、はい。私もすごくいいと思うんですが、その」

 

「何かございましたか?」

 

「いえ、その、なんか、恥ずかしくなってきてしまって……」

 

何としてもこの機会に翔君の心を鷲掴みにしてやろうと内心気張ってここに来たわけだが、いざこうしてお姫様のような恰好をしたら自分がかなり浮かれていたことに気づいてしまった。調子に乗ってポーズまで取るなんて。

 

いたたまれなくなってもにょもにょとしていると、まあまあまあと満面の笑みを浮かべたスタッフさんに旦那様にも見てもらいましょうと更衣室の外へと促された。

 

ちょっと待ってまだ心の準備がと、そう言おうとしたのだがそんな雰囲気では当然なくて、促されるままに翔君の前まで連れ出される。

 

「えっと、どう、かな?」

 

そう言って恥ずかしさを我慢しながら翔君の前に立つと、まず最初に視線が合い、その後じっくりと上から下へと視線を動かしてから再び私と視線が合わさった。

 

どうだろうか。似合ってないかな?

 

視線を受けながら翔君の言葉を待つ。しかし、翔君はこちらをじっと見続けたままで一向に口を開かない。

 

「えっと、翔君……?」

 

「えっ? あ、ああ。すごいな、アイ、似合ってる。本当にすごく綺麗だ」

 

私が問いかけるとはっとしたように言葉を紡いだが、言い終えると再び目を見開いたまま私の方をじっと見続けている。まるで目に焼き付けるかのような熱い眼差しだ。

 

――そんな視線で見つめられたら流石に恥ずかしいよ……。

 

身体が熱を帯び、頬が赤くなるのを感じる。恥ずかしくて両手で顔を覆いたくなったが、なんとかそれを抑えて翔君の視線を正面から受け止める。ここで逃げてはいけない、私はここで翔君の心を一生鷲掴みにするのだから。

 

とはいえ無言のままじっと見続けられると恥ずかしい。自分に見惚れてくれていることはとても嬉しいのだけれど、ここにはスタジオのスタッフさんもいるので流石に恥ずかしさの方が勝ってきた。

 

「あの、翔君、見過ぎ……」

 

「ふぁっ!? あ、す、すまん……」

 

翔君が頭を掻きながら視線を落とし、それにつられて私も視線を地面に向けた。まさか一着目からこんなことになるとは、これからまだ試着する予定なのにその度にこんな風になってしまうのが目に浮かぶようだ。

 

「どうやら一着目はこちらでよろしそうですね」

 

「はい……」

 

そんな私たちを優しく見守っていたスタッフさんの声に私はただただ頷くしかなかった。




今後の展開の関係でオリ主とアイさんが生まれた年を少しだけずらしました。具体的には91年生まれに設定して、それに伴って修正を加えてあります。赤ん坊のルビーがスマホいじってるのが理由です。

原作の展開でカミキがアイと出会ったときにまだ闇落ちしていなかったことが判明しましたね。さてさて今後の展開をどうしようか悩みどころです。

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