短いです。
MyGOです。
よろしくお願いします。
8月中旬。
もう2週間もすれば秋に入るというのに、太陽の勢いはいまだ健在で、容赦なく地球上の温度をガンガン上げている。
そんな、40度になりそうな外気温を遮断して、26度を保つ部屋でぐったりする男女が1組。
「あつい」
花咲川学園の中学3年生で、よくライブハウスRiNGでギターを弾いている。
最近は、彼女曰く「おもしれー女」のバンドに入り浸っているらしい。
一回付き添いで着いていってみたけど、どうしてこんな人たちが楽奈を受け入れたのか不思議なぐらいで。
まぁ、うまくやれているなら問題ないだろう。
「そうだな」
会話という会話をしてはいないが、口を開けば暑いとしか言わないので問題ない。
正直会話をするのだって体力を使うし、単語、及び無口で済むならそれでいい。
「アイスほしい」
「バニラ、イチゴ、チョコ、抹茶」
「まっちゃ」
ノータイム返答で抹茶を要求されるのは分かっているので、すぐに口の中に抹茶味の棒アイスを突っ込んでやる。
それによって笑顔になる彼女の隣で、チョコ味の棒アイスを咥える。
「おいひい」
「よかったな」
チョコアイスを咥えながら、スマホの電源を付けてネットサーフィン。
目に入るニュースは、誰が不倫して離婚した、これまでにない暑さ、誰がスポーツ大会優勝など、代り映えのしないものばかりだったので、やむなくスマホを置く。
そのタイミングで思い出したことを、そういえばと前置きして聞く。
「楽奈はなんでこっち来たの?」
「あれ、こわれた」
彼女の左手が指す先にあるのは、最近買い替えたばかりのエアコン。
「壊れた?」
「うん。だから来た」
何か?と言いたげな彼女の顔から眼を背け、小さくため息。
「幸せ、逃げる」
「迷信だろ」
エアコンが壊れて俺の家に来るのは、わからなくはない。
RiNGは金はかかる、というか、外の建物で涼もうと思ったら金がかかることはほぼ確定。
だから来たんだろうが、一言ぐらい言ってほしいものである。
「メッセージは送った」
「じゃあなんで俺が覚えてなくて家にいる?」
「鍵、もらった」
「あんのバカ親...!」
メッセージは見てない俺が悪いとして、鍵まで預けるな。
中3に自分の家の鍵持たすな。
「はぁ...まぁいいか。別に」
「許された?」
「あぁ許した。親は許さない」
帰ってきたらお小言でも投げとこう。
「ねぇ」
「なんだ」
「眠い」
「せめて抹茶アイス食いきってからにしろ」
「食べた」
早いな、いや俺が遅いのか。
半分程食べ進めた俺のアイスは、3割ほどが溶け始めている。
とりあえず手に垂れるのだけは避けるべく、口に含んで上を向く。
液体となったチョコアイスはすべて口に流れていき、個体を保つアイスも木の棒を滑って口の中へ。
つまり、半分ほどの個体が一気に口の中に入ってきたので、割とピンチ。
「食べれる?」
ただ、棒を引き抜いてないのが功を奏した。
少しだけ引き抜いて、噛んで個体量を調節。
「...死ぬかと思った」
「せっかちさん」
猫口で言うな、可愛いだろうが。
と、楽奈の目線が俺のチョコアイスに、と思ったのもつかの間。
「はむっ」
「あっ」
喰われた。
「ん...苦い」
「抹茶の方が苦いと思うけど」
「チョコアイス、食べないから」
アイスになってるチョコって基本的に甘いもんだと思うんだけどな。
まぁ、感性は人それぞれか。
「てか、なんで食った」
「おいしそうだったから。あと、垂れたらもったいない」
その前に食うつもりでいたんだけどなぁという文句は心に閉じ込めて、どうもと呟く。
それが聞こえたかどうか知らないけど、楽奈は俺の足に頭を乗せた。
「ねる」
「ん、お休み」
寝るのはいいんだけど、なんで俺の膝の上なんだろう。
もっと柔らかい場所はあるだろうに。
「ほんと、猫みたい」
頭を軽くなでる。
微かに笑い声がして、手を止めると、「もっと」と聞こえる。
「...はいはい」
ほんとは起きてるだろ、なんて野暮なことを言うつもりはない。
彼女なりの好意の印だから、無下にはしない。
「おやすみ、楽奈」
「ん、おやすみ...」