Muv-Luv Alternative Strange Real 作:yagra
英国陸軍第2戦術機甲師団第52戦術機甲小隊――通称スワロー隊。私はこの名を聞いた時、全身の血が震える感覚を覚えた。西独軍のツェルベルス大隊、東独軍のコルモラン隊やガイヤー中隊、西軍のトロフェロズ隊と並び称される欧州屈指の精鋭部隊だ。
そんな彼らが、金属製の簡単なデスクの向かいに座っている。ここはリヴァプールにある衛士たちの宿舎の1室。私の目の前にいるのは、まさにその部隊の面子だった。
しかし、まさかどこにでもいるようなジャーナリストである私の取材の申し出を受けてくれるとは思っていなかった。
「あの、どうして取材に応じてくださったんですか? こんな一介のジャーナリストの話なんて、普通は取り合ってくれないと思うのですが……」
「気にすることはない。……そうだな、ただの気まぐれとでもしておいてくれ」
そう答えたのはスワロー隊の隊長、デトレフ・フレッジャー中佐。20代という若さながら佐官の肩書を持つエリート中のエリートである彼は、しかしそれを鼻にかけることなく自然体で応じてくれた。
「わかりました。では、あなたの初陣の話から教えていただけますでしょうか」
「初陣か……数年前だというのに懐かしく感じるな」
デトレフはどこか遠くを眺めるような表情を浮かべると、ゆっくりと語り始めた。
「あれは1997年の10月ごろだったか。軍の促成プログラムを受けた俺は、少尉として初めて戦場に出た。そしてそこで、BETAに初めて出会った」
BETA、我々人類に対し非常に攻撃的な異星生物。私も研究目的に捕獲されたそれを見学したことがあったが、あの生理的嫌悪感を覚える姿は忘れられない。
そんなものが初めて目に映る光景として現れたら……それは恐怖でしかないだろう。一体どんな気持ちだったのか、私がそんなことを考えていると彼はさらに続けた。
「最初こそ恐怖心はあった。だが怯えたままでは奴らの餌になるだけだと勇気を出して撃ったんだ」
彼は右手を銃のような形にし、人差し指だけを立てている。その動作はまるで、引き金を引いた瞬間を表しているようだった。
「狙った奴は死んだ、あっさりとな。そしてそれが俺の自信になったのか、その後の戦闘も落ち着いて対処できた」
「なるほど、それがあなたの初戦果だったと」
「ああ、だがあの時はその後突っ込んできた
驚いた。歴戦のエースであっても、やはり死は身近なものだという事実。しかし同時に納得もしていた。彼らのような超人的な力を持った者たちですらそうなのだ。多くの人間が死ぬのはもはや必然と言えるだろう。
「その後はどういう経緯でこの隊の隊長に?」
「任官してから数ヶ月たった頃に
「……」
「それから上層部に腕があると目をつけられ、部隊再編も兼ねてこの部隊を任されることになった」
「なるほど……」
彼の目はまっすぐ前を見据えていた。そこには後悔も悲しみもないように見えたが、その奥には計り知れない感情が渦巻いているように思えた。
「では話題を変えましょう。あなたはこの部隊の隊長になってから何度も光線級吶喊を成功させているそうですが、すべて小隊のみで遂行なされていたのですか?」
「ああ、他部隊との共同で光線級吶喊を実行したことは隊結成時から一度もない。する必要もなかったが」
「では、なぜそこまで強くなったのだと考えますか?」
「難しい質問だな。……個々の技量が高いレベルにあることは大前提として、周囲を俯瞰する力、隊員を信頼し任せること、そして何より自分の命を大切にすること……ぐらいか」
「な、なるほど。ありがとうございます」
私はメモ帳にペンを走らせた。
「ああそうだ、言い忘れていたことがあった」
「なんでしょうか」
「BETAに対し必要以上に怯えないことだ。奴らは集団で襲ってくるし、時に特異な方法で我々を攻撃してくるが、個体ごとの攻撃方法はそう多くない。それに恐れず冷静に対処すれば、そう簡単にやられることはないはずだ」
彼らはBETAを少し頭の良いだけの機械と捉え、その上で戦いを有利に進めようとしている。確かにそれなら勝てるのかもしれない。彼らのような存在が量産できれば、の話ではあるが……。
「他に質問は?」
「では最後に、これから衛士になる、もしくは衛士になったばかりという方々に何かアドバイスをいただければと」
「わかった。新人諸君、まずは自分の身を守ることを最優先しろ。そして生きて帰ってこい、以上だ」
「わかりました。貴重なお時間を割いていただき、誠にありがとうございました」
「いや、構わない。それでは失礼する」
スワロー隊、彼らは確かに化け物だった。だがそれ以上に、人としての強さを持っていると感じた取材だった。「戦場を舞う赤いツバメ」、そう呼ばれる彼らが欧州屈指の実力部隊と謳われるその秘密を、私は垣間見た気がした。
スワロー隊のモデルはもうお分かりかと思いますがエースコンバットZEROに登場するロト隊です。