──産屋敷邸、縁側にて。
「かぐや、よく戻ったね。任務お疲れ様」
「お館様におかれましても、ご壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」
「……姉さん、柱合会議じゃないんだ。堅苦しいのはナシにしよう」
「ごめんなさい。耀哉に名前で呼ばれると、つい」
「おっと、つい癖で」
柱合会議以外で、わざわざ耀哉に直接任務の報告をするなんて、久しぶりだからね。しょうがない。
二人で並んでお茶を啜り、一息つく。
「さてさて、本題に入ろうか。姉さんから見て、匡近と実弥はどうだった?」
「そうですねぇ。結論から言うと、二人共甲の中でも上位の実力者で間違いありません。カナエさんが推薦するだけはあります」
共闘できなかった粂野さん……彼が原作に登場していた人物なのかは不明だが、任務後に手合わせしてみた感じ、彼も充分以上に強いことが分かった。
「あぁ。事前報告に、下弦の壱と戦ったという話が出ていたね」
「えぇ。粂野さんとは分断されてしまったので、主に不死川さんについての報告になりますが」
「構わないよ」
正史でも柱になっていただけあり、不死川さんは別格だ。
「不死川さんですが──まず、呼吸の質が違いました。風の呼吸は元々攻撃範囲に優れた呼吸ですが、彼の呼吸は、全ての型の攻撃範囲が一段上に押し上げられていました」
「それは凄いね」
「持久力・精神力も申し分ありません。型を連続で繰り出しても息一つ乱していませんでしたし、十数秒ではありましたが、下弦の壱を一人で足止めしてくれました」
「ふむ。たしか、頸を斬ったのも彼だったね」
「えぇ。ですので、条件は満たしています。私は彼を、風柱に推薦します」
柱になるための条件は、『階級が甲である』ことかつ、『十二鬼月の討伐』もしくは『鬼の討伐数が五十に達する』ことである。
この内『十二鬼月の討伐』に関しては、柱との共闘である場合、共闘した柱の推薦がなければ昇格はできないが*1……私が不死川さんの推薦を拒否する理由はないので、これで晴れて、彼は風柱になれるワケだ。
「珠世さんのことは、話せそうかい?」
「それなんですが──
今の柱は、珠世さんの研究を補助するため、十二鬼月の採血も任務に含まれている。(だから実はこっそり、下弦の壱の血も取ってたりする) そのことを考えると、柱は『鬼の協力者』に理解のある人物であることが望ましい。
不死川さんは正史における禰豆子否定派筆頭だったので、鬼の協力者なんて完全拒否するだろうと思っていたのだが……。
『お二人は、もし人を食べない鬼がいて、その鬼がお医者様をやっているとしたら……どう思いますか?』
『すぐに斬るべきだと思いますね。そいつが人を食わない
『……普通に考えたら、そうだろうなァ。
……だが、そんな鬼が実在したのなら……『胡蝶に会わせてやりたい』と、思いますね』
意外や意外。粂野さんが前提条件をガン無視した回答をしたのに対し、不死川さんはこのイケメン回答である。ぶっちゃけどっちも逆の反応すると思ってましたごめんなさい。
あ、ちなみに粂野さんの反応は普通です。大体の人が『鬼の医者』=『患者を食う』という思考になるんですよね。実際そういう鬼が結構いるから仕方ないのだけど。
……こんなに優しかった不死川さんが、正史であんな風になっちゃったのは……きっと、カナエさんが死んじゃったからなんだろうなぁ。
二人共柱だったから、正史でも何かと関わりがあって、仲が良くなったのだろう。もしかしたら、恋仲だったのかもしれない。
……でも、彼女は死んだ。上弦の弍と戦って、殉職した。
それによって、不死川さんは変わってしまったのだろう。笑顔の仮面を被り、本当は欠片も望んでいない『鬼との共存』を願っていると
「これで、現役の柱は七人か……
柱の定員は、柱という漢字の画数に合わせて九名である。
正史通りになるなら、無一郎くんの年齢的にこの定員が埋まるまであと四、五年かかるといったところだが、
「階級『
百年以上もの間、柱が上弦に勝てなかったのは……担当区域という縛りのせいで、共闘ができなかったからだ。
だからこれは、単純な話。担当区域が無く、常に共闘を前提とした部隊を作ればいい。
今までそれができなかった理由は、人手不足の状況下で、どこに出現するかも分からない上弦のために、柱を集中させられなかったからだ。
──だが今は、私がいる。まこちゃんがいる。錆兎がいる。
正史において現時点では存在しない、柱級の戦力が──少なくとも三人。本来飲んだくれになる筈だった槇寿朗さんも含めたら、既に四人。
更に言えば、私は出現場所を把握している上弦が三体もいる*2。従来の問題は解決されているのだ。
「私の勘では、事が起こるのは来年ですが……既に切っ掛けができている以上、遭遇が早まる恐れはあります。結成を急がねばなりません」
「……相変わらずせっかちだね」
「慎重だと言いなさい、愚弟」
「わぁ辛辣。そんなこと言うと首にしちゃうよ?」
「やめてください死んでしまいます」
「ははは、ご冗談を。私じゃどう足掻いても姉上を殺せませんよ」
「いやいや。耀哉が一言命じれば、私なんてすぐ殺せる戦力が集まるでしょう」
「……姉上、それ本気で言ってます?」
耀哉が何故か、残念なイキモノを見るような目を向けてくるのだが。
「本気ですよ。流石の私も、行冥さんには勝てる気がしませんし。他の柱だって、二人同時には相手ができません」
「……これは重症だね」
「どういう意味ですか」
「姉上はもう少し、己の価値を自覚してください」
……まぁ、
でもたぶん、宇髄さんと不死川さんは本気で殺しに来る。宇髄さんは忍だから非情に徹することができるし、不死川さんに至っては私、親の仇だからなぁ……それ言われて襲われたら私、抵抗する気力無くすぞ。
「……まだ私は死ねません。焼き土下座で手を打ってもらえるくらいにはしておかないと……」
「何がどうしてそうなったんですか??」
「己の価値を再認識した結果、立場の危うさに気付いたので対策を……」
「思ったよりかなり重症だった」
強制的に十日間の休暇を取らされました。解せぬ。
*
明治コソコソ噂話
各柱から見たかぐや
先代花柱:年長者として、可能な限り普通の女の子として扱っていた。
先代炎柱:自慢の弟子であり、大切な娘であり、かつて仕えた彼の忘れ形見。
水柱:歳の離れた友人。素が意外と男の子っぽいところなど、義理の姉に似ていて接しやすい。
岩柱:歳下の先輩。恩人の恩人。自分が鬼に負けたとしても、彼女がいれば大丈夫。
音柱:派手過ぎるだろ!(エフェクトが次々入れ替わるので) ただ、色目を使おうものなら周囲から殺気が飛んで来るから怖い。
花柱:尊敬しているが、最大の恋敵なので少々フクザツ。
炎柱:敬愛する姉! ただ、無防備な時があるから心配!
風柱:返し切れない大恩のある人。怒った時の笑顔が怖い。
未来の水柱:親友の師匠。よく突然怒り出す不死川と伊黒を宥めてくれる。優しい。
未来の蛇柱:昔、自分のために怒ってくれた人。女性の中では甘露寺の次に話しやすい。
未来の恋柱:私より力が強い女の人って初めて! みんなのお姉さん!
未来の蟲柱:性格が姉によく似ているので話しやすい。ただ、その姉とは何故か仲があまり良くない様子なので気になっている。
未来の霞柱:悲しい人。誰よりも頼りになるけど、たぶん頼っちゃいけなかった。誰よりも支えが必要な人だったんだろうと思う。
Q:この中にかぐやの命を狙う者がいるそうですが。誰だと思いますか?
A:全員『いるわけないだろ』
(相手からの)打ち解け度は脅威の97%。