鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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第十三話:箸休め

 

 ──産屋敷邸、縁側にて。

 

「かぐや、よく戻ったね。任務お疲れ様」

「お館様におかれましても、ご壮健で何よりです。益々のご多幸を切にお祈り申し上げます」

「……姉さん、柱合会議じゃないんだ。堅苦しいのはナシにしよう」

「ごめんなさい。耀哉に名前で呼ばれると、つい」

「おっと、つい癖で」

 

 柱合会議以外で、わざわざ耀哉に直接任務の報告をするなんて、久しぶりだからね。しょうがない。

 二人で並んでお茶を啜り、一息つく。

 

「さてさて、本題に入ろうか。姉さんから見て、匡近と実弥はどうだった?」

「そうですねぇ。結論から言うと、二人共甲の中でも上位の実力者で間違いありません。カナエさんが推薦するだけはあります」

 

 共闘できなかった粂野さん……彼が原作に登場していた人物なのかは不明だが、任務後に手合わせしてみた感じ、彼も充分以上に強いことが分かった。

 

「あぁ。事前報告に、下弦の壱と戦ったという話が出ていたね」

「えぇ。粂野さんとは分断されてしまったので、主に不死川さんについての報告になりますが」

「構わないよ」

 

 正史でも柱になっていただけあり、不死川さんは別格だ。

 

「不死川さんですが──まず、呼吸の質が違いました。風の呼吸は元々攻撃範囲に優れた呼吸ですが、彼の呼吸は、全ての型の攻撃範囲が一段上に押し上げられていました」

「それは凄いね」

「持久力・精神力も申し分ありません。型を連続で繰り出しても息一つ乱していませんでしたし、十数秒ではありましたが、下弦の壱を一人で足止めしてくれました」

「ふむ。たしか、頸を斬ったのも彼だったね」

「えぇ。ですので、条件は満たしています。私は彼を、風柱に推薦します」

 

 柱になるための条件は、『階級が甲である』ことかつ、『十二鬼月の討伐』もしくは『鬼の討伐数が五十に達する』ことである。

 この内『十二鬼月の討伐』に関しては、柱との共闘である場合、共闘した柱の推薦がなければ昇格はできないが*1……私が不死川さんの推薦を拒否する理由はないので、これで晴れて、彼は風柱になれるワケだ。

 

「珠世さんのことは、話せそうかい?」

「それなんですが──()()()()()()()()()()

 

 今の柱は、珠世さんの研究を補助するため、十二鬼月の採血も任務に含まれている。(だから実はこっそり、下弦の壱の血も取ってたりする) そのことを考えると、柱は『鬼の協力者』に理解のある人物であることが望ましい。

 不死川さんは正史における禰豆子否定派筆頭だったので、鬼の協力者なんて完全拒否するだろうと思っていたのだが……。

 

『お二人は、もし人を食べない鬼がいて、その鬼がお医者様をやっているとしたら……どう思いますか?』

『すぐに斬るべきだと思いますね。そいつが人を食わない()()()()()()原因は、おそらく患者を()()()()からですよね?』

『……普通に考えたら、そうだろうなァ。

 ……だが、そんな鬼が実在したのなら……『胡蝶に会わせてやりたい』と、思いますね』

 

 意外や意外。粂野さんが前提条件をガン無視した回答をしたのに対し、不死川さんはこのイケメン回答である。ぶっちゃけどっちも逆の反応すると思ってましたごめんなさい。

 あ、ちなみに粂野さんの反応は普通です。大体の人が『鬼の医者』=『患者を食う』という思考になるんですよね。実際そういう鬼が結構いるから仕方ないのだけど。

 

 ……こんなに優しかった不死川さんが、正史であんな風になっちゃったのは……きっと、カナエさんが死んじゃったからなんだろうなぁ。

 二人共柱だったから、正史でも何かと関わりがあって、仲が良くなったのだろう。もしかしたら、恋仲だったのかもしれない。

 ……でも、彼女は死んだ。上弦の弍と戦って、殉職した。

 それによって、不死川さんは変わってしまったのだろう。笑顔の仮面を被り、本当は欠片も望んでいない『鬼との共存』を願っていると(うそぶ)くようになった、しのぶさんのように。

 

「これで、現役の柱は七人か……()()()()()()()()()()

 

 柱の定員は、柱という漢字の画数に合わせて九名である。

 正史通りになるなら、無一郎くんの年齢的にこの定員が埋まるまであと四、五年かかるといったところだが、()()()()()()()()()()()()()()

 

「階級『(ささえ)

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()なんて、面白いことを考えるよね。姉さんは」

 

 百年以上もの間、柱が上弦に勝てなかったのは……担当区域という縛りのせいで、共闘ができなかったからだ。

 だからこれは、単純な話。担当区域が無く、常に共闘を前提とした部隊を作ればいい。

 今までそれができなかった理由は、人手不足の状況下で、どこに出現するかも分からない上弦のために、柱を集中させられなかったからだ。

 

 ──だが今は、私がいる。まこちゃんがいる。錆兎がいる。

 正史において現時点では存在しない、柱級の戦力が──少なくとも三人。本来飲んだくれになる筈だった槇寿朗さんも含めたら、既に四人。

 更に言えば、私は出現場所を把握している上弦が三体もいる*2。従来の問題は解決されているのだ。

 

「私の勘では、事が起こるのは来年ですが……既に切っ掛けができている以上、遭遇が早まる恐れはあります。結成を急がねばなりません」

「……相変わらずせっかちだね」

「慎重だと言いなさい、愚弟」

「わぁ辛辣。そんなこと言うと首にしちゃうよ?」

「やめてください死んでしまいます」

「ははは、ご冗談を。私じゃどう足掻いても姉上を殺せませんよ」

「いやいや。耀哉が一言命じれば、私なんてすぐ殺せる戦力が集まるでしょう」

「……姉上、それ本気で言ってます?」

 

 耀哉が何故か、残念なイキモノを見るような目を向けてくるのだが。

 

「本気ですよ。流石の私も、行冥さんには勝てる気がしませんし。他の柱だって、二人同時には相手ができません」

「……これは重症だね」

「どういう意味ですか」

「姉上はもう少し、己の価値を自覚してください」

 

 ……まぁ、()()()()()()()()杏寿郎とまこちゃんは敵にはならないでくれる()()。行冥さんとカナエさんは、()()()()()死なない程度に手加減してくれると思う。

 でもたぶん、宇髄さんと不死川さんは本気で殺しに来る。宇髄さんは忍だから非情に徹することができるし、不死川さんに至っては私、親の仇だからなぁ……それ言われて襲われたら私、抵抗する気力無くすぞ。

 

「……まだ私は死ねません。焼き土下座で手を打ってもらえるくらいにはしておかないと……」

「何がどうしてそうなったんですか??」

「己の価値を再認識した結果、立場の危うさに気付いたので対策を……」

「思ったよりかなり重症だった」

 

 強制的に十日間の休暇を取らされました。解せぬ。

 

 

 

 *

 

 

 

 明治コソコソ噂話

 

 各柱から見たかぐや

 

 先代花柱:年長者として、可能な限り普通の女の子として扱っていた。

 

 先代炎柱:自慢の弟子であり、大切な娘であり、かつて仕えた彼の忘れ形見。

 

 水柱:歳の離れた友人。素が意外と男の子っぽいところなど、義理の姉に似ていて接しやすい。

 

 岩柱:歳下の先輩。恩人の恩人。自分が鬼に負けたとしても、彼女がいれば大丈夫。

 

 音柱:派手過ぎるだろ!(エフェクトが次々入れ替わるので) ただ、色目を使おうものなら周囲から殺気が飛んで来るから怖い。

 

 花柱:尊敬しているが、最大の恋敵なので少々フクザツ。

 

 炎柱:敬愛する姉! ただ、無防備な時があるから心配!

 

 風柱:返し切れない大恩のある人。怒った時の笑顔が怖い。

 

 未来の水柱:親友の師匠。よく突然怒り出す不死川と伊黒を宥めてくれる。優しい。

 

 未来の蛇柱:昔、自分のために怒ってくれた人。女性の中では甘露寺の次に話しやすい。

 

 未来の恋柱:私より力が強い女の人って初めて! みんなのお姉さん!

 

 未来の蟲柱:性格が姉によく似ているので話しやすい。ただ、その姉とは何故か仲があまり良くない様子なので気になっている。

 

 未来の霞柱:悲しい人。誰よりも頼りになるけど、たぶん頼っちゃいけなかった。誰よりも支えが必要な人だったんだろうと思う。

 

 

 Q:この中にかぐやの命を狙う者がいるそうですが。誰だと思いますか?

 A:全員『いるわけないだろ

 

 (相手からの)打ち解け度は脅威の97%。

*1
原作玄弥の台詞より、十二鬼月との戦闘は柱との共闘である場合ノーカウント。推薦については独自設定。

*2
遊郭の謝花兄妹、十七歳時点のカナエさんの担当区域に童磨、無限列車の猗窩座

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