鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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第二話:煉獄家にて

 

 今日も今日とてスーハースーハー。暇さえあればスーハースーハー。

 気合いを入れると暖房器具(ストーブ)みたいな音が出せます。どうも、かぐやです。じんたいってすごい。

 

 あれから一ヶ月で、大分常中に近付きました。今はもう、意識がある(ウチ)はずっと炎の呼吸です。やはり槇寿朗さんが居ると、成長速度が段違いですね。

 今は真剣を持って長時間走りながら、炎の呼吸を維持できるかどうかの試験(テスト)中です。

 ちなみに持ってみて分かったのですが、真剣の重さは一キログラムもないらしいです。いろんな作品みてると、最初は『重い』『邪魔』と思うらしい……という印象があったので、ちょっと拍子抜けです。身体強化されてる分、ロリっ()ボディなのに、男だった生前よりパワフルなまである。

 

「……ええ、確かに安定していますね。それでは約束通り、型の鍛錬に入りましょう」

 

 ヨシ! 槇寿朗さんからお許し(オーケー)が出た。遂に念願の、剣技を教えて貰う段階だ……!

 

「はい。()()()()()お願い致しますね? 師匠」

 

 『約束』というのは、私から槇寿郎さんに対する『他の門下生と同じように接してほしい』という()()()の話だ。剣技の指導を「優しく」なんてされたら実戦で死ぬからね。

 

「……無論、鍛錬内容に手心を加える気はございませんが」

「『敬語も必要ない』と申し上げているのです」

「しかし、お館様の姉君にそのような……」

「私はただの隊士候補生として此処に来ています。家を出た時点で()()()からも、『以降は一般隊士と変わらぬ扱いをする』と明言されておりますので。何卒」

 

 私が改めて頭を下げると、槇寿郎さんはしばらく唸った後……『あい分かった』と言ってくれた。

 

「こうも真摯に頼み込まれてしまっては、応える他あるまい!

 その心が燃えている限り──俺は()()を、一切の容赦なく鍛え上げよう!!」

「望むところです!」

 

 やはり『煉獄さん』は、こうでなくっちゃ調子が出ない。

 

 …………まぁこの人の場合、近い将来『ああなる』と思うと……逆に違和感があったりしなくもないけど。

 

 原因は二つ。どうしても気になって、調べたから……知ってる。()()()()()()()()のだと、知っている。

 原因の一つは妻、『瑠火(るか)』さんの病死。

 ……具体的な病名は不明。だから、予防ができない。なった後の治療だって、柱の給料は無制限だ。正史でも、手は尽くしていただろうし……私が介入する余地は無い。

 だから残念だが……非常に不本意だがッ、彼女については助ける手段が無い。……いや、()()()()()()()()()()()んだがね?

 

「──まずは壱ノ型からだ。よく見ておけ!」

 

 おっと、余計なことを考えている間に始まったな。全集中全集中。

 言われた通り、注視する。『ゴヲヲヲ』という特徴的な呼吸音が、大きくなる。

 

  炎の呼吸 壱ノ型 不知火(しらぬい)

 

 弾ける火花のような踏み込みから放たれる、袈裟斬り。なるほど、これが『型』か……本当にエフェクトが見えるとは驚いた。

 それと、気付いたことが一つ。

 

「あの、師匠」

「どうした?」

「私の呼吸音、変じゃないです?」

「あぁ、自力で気付いたのか。確かに少し違和感はあるが、誤差の範囲だから心配するな。こういった事態は珍しくない。おそらくお前は、炎の呼吸を派生させた先に、本来の適性呼吸があるのだろう」

「……なるほど」

 

 やはり私の──というより、『産屋敷家の適性呼吸』は()()なのだろうか。

 槇寿朗さんの心を折った、もう一つの原因……原初にして最強の呼吸法。『日の呼吸』

 

 私の予想が合っているなら、アレは()()()()()()()()使()()()()()()()()()()()()()()だ。

 …………『かぐや(わたし)』が習得することで、彼の精神にどんな影響が出るか……正直分からないし、怖いけど。ここを出たら私は、竈門家へ向かうと決めている。

 

 とは言えこれは、ここでの修行をやり切った後の話。取らぬ狸の皮算用より、目の前のことに集中しなければ。

 

「では一度、やってみますね」

 

 力強く踏み込み、木刀を上から──。

 

「待て!」

「……はい?」

「刀の握り方が間違っている。刀は小指と薬指で握る物だ。手首の自由度が全く異なる」

「分かりました」

 

 実際にやってみる。

 ……お? おぉ、本当に全然違う!

 

「それと踏み込みだが、力み過ぎだった。それでは筋肉が緊張して、単純な動作しかできなくなってしまう。

 (かかと)を強く踏むよう意識しろ。逆につま先は、少し上げるくらいの心持ちでいい」

「はい!」

 

 これも実際にやってみる。

 ……、…………。

 

「……難しいですね」

「ハッハッハ! 呼吸を一日で習得されてしまった時は驚いたが、流石にこれはお前でも難しいか!」

「むぅ……。参考までにお聞きしますが、槇寿朗さんはこれを習得するのに、どれくらいかかりましたか?」

「いや、偉そうなことは言ったが、今でも完全にできているとは言い難い。俺も、まだまだ道の途中なのだ」

「……答えになってないです」

「ハハハ、すまない!

 そうだな……実戦で通用すると確信できるまで、半年はかかったか」

「半年ですか。ならば私はその半分──三ヶ月で習得してご覧に入れましょう」

「そうか! 三ヶ月後が楽しみだな!」

 

 ────三ヶ月後。

 

「……どうしましょう、全っ然できません」

「いや、思ったより上達しているぞ! まだ種火程度だが、炎のゆらめきが見えるようになってきた!」

「むむむ……悔しいです……」

「落ち込むことはない! 今のかぐや様なら、最終選別に出てくる雑魚鬼くらいは葬れるだろう!」

「そうですか……」

「……嬉しくなさそうだな。何か気掛かりなことでもあるのか?」

 

 だってその試験、手鬼とかいう裏ボスのせいで難易度詐欺なんだもん……。

 鱗滝(うろこだき)さんは炭治郎(たんじろう)が来るまで暫く弟子を取ってない雰囲気だったし、錆兎(さびと)真菰(まこも)のことは救ってあげられないかもだけど……奴はできるだけ早く、斬り殺しておきたいところなのだ。

 

 ──いや、待てよ?

 

 今の立場はアレだけど……私一応、お館様(かがや)の姉だよな? そして目の前に居るの、柱よな?

 

 柱合会議で直談判したら、手鬼討伐に隊士を──何なら柱を派遣できるんじゃね?

 

「……槇寿朗さん、最終選別の試験会場に異形の鬼が居るとしたら……どう思いますか?」

「ハッハッハ! 何を言うかと思えば、そんな心配をしていたのか! 安心しろ。あそこに居るのは人を二、三人しか食っていない鬼だけだ」

「それは山に放り込んだ時点での話でしょう? 生き残り続け、受験生を何十人も食い殺し、強くなった鬼が居ないと……本当に言い切れますか?」

 

 槇寿郎さんの雰囲気が、真剣なものに変わる。

 

「……もしそんな鬼が実在するのなら、大問題ですね。それでは受験生が、餌と何も変わらない」

「次の最終選別の前に、柱合会議がありますよね。私も連れて行ってください。一度藤襲山(ふじかさねやま)の調査をするよう、直談判します」

 

 

 結果だけ記そう。

 無事に手鬼は滅された。そしてこの件以降、年に一度、試験会場に調査が入るようになったという──。

 

 

 

 *

 

 

 

 明治コソコソ噂話

 

 最終選別は年に一度の開催であった場合、どう考えても入隊数より死者数の方が多くなるため……年に四回か五回は開催していたと筆者は予想しているぞ。(冬は流石にサバイバルそのものが難しいと思うので、三月〜十月くらいの間に実施)

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