鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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第十四話:かぐやの休日(三日目)

 鹿威(ししおど)しの『カポーン』という音が、チョロチョロという水の音と共に、静寂を優しく埋めている。

 

「いやー、良い湯ですねぇ」

 

 夜空を見上げながら、かぐやはなんとなしに呟いた。

 

「そうですねぇかぐやさん。

 ──あっ、流れ星! 見ましたか!?」

「見ました見ました! 運が良いですね!」

 

 かぐやの隣で、同じく星を見ていた須磨は、一通りはしゃいだ後──すぐ後ろにいた()()に声をかけた。

 

「天元様天元様、せっかくの露天風呂なんですから、俯いてないで景色を見ましょうよー」

「須磨……頼むから、今だけは俺を地味でいさせてくれ……」

「勿体ないですねぇ。仕事柄、私達『柱』がこうしてゆっくり夜空を見上げる機会なんて……そうないでしょうに」

「それは……そうだがよぉ……」

 

 音柱、天元は困惑していた。同僚から『温泉に行きましょう』という誘いを受け、嫁と共に藤の家紋を掲げる旅館へ来たはいいが……何故、混浴なのだと。いや、彼が混浴を好むのは確かだが……それはあくまで貸し切りの状態で、嫁と同じ湯を楽しむためである。断じて邪な理由からではない。

 

「……てか姐御(あねご)刺青(いれずみ)なんてしてたんだな」

「刺青ではありませんよ。コレは痣です」

 

 振り向き、視界に入ったかぐやの背中には──巻き布では隠し切れないほど大きな、月模様の刺青が彫られていた。

 

「いや、痣にも見えなくはねぇが……こんだけ造形が整った模様で、痣と言い張るのは厳しいんじゃねぇの?」

「まぁ実際、痣と言っていいのか分からないものですが……刺青ではありません」

「なんだそりゃ」

「体温を三十九度以上、心拍数を六十秒につき二百以上に上げることで発現する、寿()()()()()()()()身体強化を行う者である証──それがこの痣です。条件的に、お風呂だと出てきやすいんですよね」

「……冗談にしちゃ、地味に笑えないぜ姐御」

 

 天元は、冗談だと思いたかった。だが、この場で考えたにしては……やけに数字が具体的すぎる。

 

「…………」

 

 どう返したものかと言いたげに、困った顔で笑う彼女を見て……天元は、絞り出すような声で問いかけた。

 

「……あと何年、生きられるんだ?」

「痣を出した者は、二十五を迎える前に死ぬらしいので……最長であと五年です」

「……そのこと、他の奴らは……知ってんのか?」

「知っているのは産屋敷家と、煉獄家の人間。後は珠世さんと愈史郎さんだけです」

「…………」

 

(道理で──)

 

「『道理で、調べても出てこなかった訳だ』とでも言いたげな顔ですね」

「──っ!?」

「分かりますよ。周囲を嗅ぎ回られてたってことくらい。産屋敷の超感覚を舐めないでください」

 

 ──言葉の意味を理解した瞬間、天元は距離を取り、須磨・まきを・雛鶴は天元の元に駆け寄った。

 

「……信用されていないということは、分かっていましたが……こうもあからさまにやられると、流石に傷付きますね」

「……俺達を、消すのか?」

「まさか。むしろ逆──命乞いをするのは私です」

「……は?」

 

 かぐやは湯船から出ると、ゆっくりと正座した。

 

「全ての鬼殺隊士が、私のやったことを知れば……鬼殺隊という組織の根幹が崩れます。だからそうなる前に、私を粛正しようとするのは合理的です。宇髄さん、貴方は間違っていません」

「いや、粛正だなんてそんな──ってオイオイオイ!?」

 

 天元はむしろ、彼女の秘密が漏れないように動くつもりだった。彼に彼女を害する意思は無い──そのことをどう説明するか、考える間もなくかぐやは土下座した。

 

「お願いします。殺さないでください。私にはまだやるべきことがあるんです。まだ死ねないんですよ……!

 先程説明した通り、放っておいても私は二十四で死にます。だからどうか、今は見逃してください」

「止めてくれ! 頼むから本当にやめてくれ!! この状況は俺が死ぬ!!」

 

 ……この後かぐやの頭を上げさせるのに、四人は十数分ほどかかったらしい。

 

 

 

 *

 

 

 

 明治コソコソ噂話

 

かぐや「よし、これで後は不死川さんだけですね!」

 

実弥 「──っ!!?!? なんだァ、この異様な悪寒は……!?」

錆&天「「来いよ……こっち来いよ……(かぐや関連地雷持ち)」」

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