「いやー、良い湯ですねぇ」
夜空を見上げながら、かぐやはなんとなしに呟いた。
「そうですねぇかぐやさん。
──あっ、流れ星! 見ましたか!?」
「見ました見ました! 運が良いですね!」
かぐやの隣で、同じく星を見ていた須磨は、一通りはしゃいだ後──すぐ後ろにいた
「天元様天元様、せっかくの露天風呂なんですから、俯いてないで景色を見ましょうよー」
「須磨……頼むから、今だけは俺を地味でいさせてくれ……」
「勿体ないですねぇ。仕事柄、私達『柱』がこうしてゆっくり夜空を見上げる機会なんて……そうないでしょうに」
「それは……そうだがよぉ……」
音柱、天元は困惑していた。同僚から『温泉に行きましょう』という誘いを受け、嫁と共に藤の家紋を掲げる旅館へ来たはいいが……何故、混浴なのだと。いや、彼が混浴を好むのは確かだが……それはあくまで貸し切りの状態で、嫁と同じ湯を楽しむためである。断じて邪な理由からではない。
「……てか
「刺青ではありませんよ。コレは痣です」
振り向き、視界に入ったかぐやの背中には──巻き布では隠し切れないほど大きな、月模様の刺青が彫られていた。
「いや、痣にも見えなくはねぇが……こんだけ造形が整った模様で、痣と言い張るのは厳しいんじゃねぇの?」
「まぁ実際、痣と言っていいのか分からないものですが……刺青ではありません」
「なんだそりゃ」
「体温を三十九度以上、心拍数を六十秒につき二百以上に上げることで発現する、
「……冗談にしちゃ、地味に笑えないぜ姐御」
天元は、冗談だと思いたかった。だが、この場で考えたにしては……やけに数字が具体的すぎる。
「…………」
どう返したものかと言いたげに、困った顔で笑う彼女を見て……天元は、絞り出すような声で問いかけた。
「……あと何年、生きられるんだ?」
「痣を出した者は、二十五を迎える前に死ぬらしいので……最長であと五年です」
「……そのこと、他の奴らは……知ってんのか?」
「知っているのは産屋敷家と、煉獄家の人間。後は珠世さんと愈史郎さんだけです」
「…………」
(道理で──)
「『道理で、調べても出てこなかった訳だ』とでも言いたげな顔ですね」
「──っ!?」
「分かりますよ。周囲を嗅ぎ回られてたってことくらい。産屋敷の超感覚を舐めないでください」
──言葉の意味を理解した瞬間、天元は距離を取り、須磨・まきを・雛鶴は天元の元に駆け寄った。
「……信用されていないということは、分かっていましたが……こうもあからさまにやられると、流石に傷付きますね」
「……俺達を、消すのか?」
「まさか。むしろ逆──命乞いをするのは私です」
「……は?」
かぐやは湯船から出ると、ゆっくりと正座した。
「全ての鬼殺隊士が、私のやったことを知れば……鬼殺隊という組織の根幹が崩れます。だからそうなる前に、私を粛正しようとするのは合理的です。宇髄さん、貴方は間違っていません」
「いや、粛正だなんてそんな──ってオイオイオイ!?」
天元はむしろ、彼女の秘密が漏れないように動くつもりだった。彼に彼女を害する意思は無い──そのことをどう説明するか、考える間もなくかぐやは土下座した。
「お願いします。殺さないでください。私にはまだやるべきことがあるんです。まだ死ねないんですよ……!
先程説明した通り、放っておいても私は二十四で死にます。だからどうか、今は見逃してください」
「止めてくれ! 頼むから本当にやめてくれ!! この状況は俺が死ぬ!!」
……この後かぐやの頭を上げさせるのに、四人は十数分ほどかかったらしい。
*
明治コソコソ噂話
かぐや「よし、これで後は不死川さんだけですね!」
実弥 「──っ!!?!? なんだァ、この異様な悪寒は……!?」
錆&天「「来いよ……こっち来いよ……(かぐや関連地雷持ち)」」