鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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第十七話:呼吸術潰しの鬼と、血鬼術潰しの柱

 

 白姫と少年の姿をした氷像が、周囲に吹雪を巻き起こす。無数に飛び交う氷片は、一粒一粒が肺を殺す猛毒だ。

 

 ──そんな中、優雅に舞を披露する者が一人。

 

 穏やかな川のように流麗な足取りに対し、剣捌きは嵐のように荒々しく。それでも、その舞は無理なく続いていた。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

(炭十郎さんならきっと、もっと上手く舞うのでしょうね)

 

 人里離れた山奥でひっそりと、年の始まりに奉納される神楽舞。その原典となる型を崩さぬように最適化された、()()()()()()()()()()。『始まりの呼吸』に限りなく近い派生呼吸。それこそがヒノカミ神楽である。

 

(私はまだ、彼の領域には至っていないから。こうやって、騙し騙しやるしかない)

 

 しかしかぐやは、未だその真髄に到達していない。周囲の粉氷りを風の呼吸で吹き飛ばし、彼岸朱眼で安全圏を確認しつつ息継ぎをするという、曲芸染みた手法で命を繋いでいるのだ。

 

「凄い、凄いよ!! 分析が追いつかないっ、俺の思考速度を超えてきた人は初めてだ! ますます君が欲しくなった!」

「私はっ、鬼にっ、なりませんッ!!」

 

(しっかし、コレは予想よりマズいですね……!)

 

 時間が経てば増援が到着する──それは彼女の想定より、優位に働く条件ではなかった。

 

()()()()()()()()()()()()()。安全圏ですら、刀を握るのに支障が出る気温となると……!)

 

 この場で戦力となり得る候補が、極端に限定されているのだ。

 最悪なのが、()()()()()()()()という点。彼の耳の精度では、周囲の粉凍りを正確に()()()()()()()からだ。盲目の彼は暗闇の中でも動けるが、空気中に粉塵が舞う場合は情報過多となり、暗闇と同義となる。

 粉凍りを認識できる超感覚持ちは、現状誰もいない。珠世と愈史郎なら吸っても大丈夫だが、前線には出せない。となると候補は、血鬼術の範囲外から氷を吹き飛ばすだけの力がある実弥、杏寿郎、錆兎の三名のみ。天元も、童磨を相手取る上で相性は悪くないが……連携が非常に難しい。

 

(…………ダメですね。比較的相性が悪くない面子でも、どこかで氷を吸うリスクが高過ぎる。私がやるしかない……!)

 

 そして覚悟を決めた彼女は、思いっきり()()()()()()()()()

 

「なッ──!?」

 

「〜〜〜〜ッッ!!! ヒノカミ様にッ、奉る!」

 

 型を完成させれば、体内の氷は無効化できる。そう割り切っての捨て身。

 童磨はそれを阻止すべく、血鬼術の密度を上げるが……。

 

「──御照覧、あれッッ!!!」

 

 型は完成した。

 密集した氷は全て炎上し、粉塵爆発のように燃え広がって──童磨を焼いた。

 

「…………俺の負け、だね」

 

「──最後の最後で手を抜きましたね? アナタ」

 

 横たわる童磨の首筋──そのすぐ横に刀を突き立て、かぐやはそう言った。

 

「逃げれば良かったのに。一時でも氷を吸った私では、身体が鈍って追い切れなかった。そうして態勢を立て直して、仕切り直せば……体力切れで、私の負けでした。アナタならそれくらい、解っていた筈でしょう?」

 

 戦いを通じて彼女は、彼の観察眼がどれほど優れているか……言われずとも理解していた。

 

「…………キミに、俺の救いは必要ない。でもキミは、無理矢理にでも一回型を完成させてしまえば……敗北を悟った瞬間、自害するだろう?」

 

 鬼になるくらいなら自害する。加護が残っている内に自害すれば、鬼化の血をどれだけ注がれようが関係ない──彼女なら間違いなくそうすると、彼は理解していた。

 

「……キミを殺したくはなかったからね」

「…………そうですか」

 

 かぐやは日輪刀を抜き、構えた。

 水の流派における、伍ノ型の構え。

 

「貴方の生き様に敬愛を。貴方の死に哀悼を。せめて痛みなく、私がこの手で送りましょう」

 

「──ねぇ、名前を教えてよ」

 

「かぐやです。鬼殺隊虹柱の、かぐやと申します」

 

「そっか、かぐやちゃんか。よく似合ってる。俺もキミになら、どんな無理難題を吹っ掛けられても求婚したくなるからね」

 

「世辞でも嬉しいものですね。……さようなら童磨さん。私の親友になってくれたかもしれない貴方」

 

「──さよなら、かぐやちゃん」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

  ──干天の慈雨

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 実に百八年ぶりの、上弦討伐が完遂された。

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