鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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第十八話:その結末に何を思うか(前編)

 

「──ぅっ」

 

 斬首後血液を採取し、彼が完全に消滅したことを確認した途端──眩暈と頭痛と倦怠感のアンハッピートリプルコンボが私の身体を襲った。

 あと寒い。全身ガタついている。痣を解除した途端にコレか……ダメだ、歩けん。立っているのもままならない。

 倒れ込むように両膝、両手を地につける。……うわ冷たッ、シャーベットみたいになってやがる。

 せめて四つん這いから三角座りに移行。接地面積を減らして、体温を逃がさないように。

 

「…………くっそぉ……負けたなぁ……」

 

 『痣』『彼岸朱眼』『変転』『天照』

 全部使った。その上で、本来なら勝ち切れなかった。これは私が『対無惨』を想定した、紛れもない最終決戦仕様だったのに。

 

 ──どうする?

 

 私一人じゃ、無惨どころか上弦の壱にすら勝てないことが判明してしまった。もしかしたら猗窩座()の相手も危ういかもしれん。

 

 考えろ。どうすればいい? 考えろ……。

 

「…………だめだ、あたま回んない」

 

 ──休もう。話は全て、その後だ…………。

 

 

 

 *

 

 

 

「ん……」

 

 目が覚めると、実家の寝室に居た。

 ……ふむ。違うか。()()()()()()。疲労困憊だったとはいえ、私がここまで運ばれる途中で目を覚さないワケがない。しかも()()()()()()()()()()()()し、()()()()()()。ここまでされて起きないほど腑抜けてないぞ私は。

 

「──上弦討伐おめでとう、()()()()()

「はぇ……?」

 

 (ふすま)を開けて、女の子が入室する。

 ……その子は、子供の頃のかぐや()と同じ姿をしていた。

 

「見れば解ると思うけど、一応名乗るよ。私は()()()()()()。呪いで死なないように『十三歳になる前』で時間を止められている、()()()()()()

「…………そのかぐやさんが、偽物の私に何用ですか?」

 

 うっわぁ……マジかぁ……『追加戦力』として『記憶持ち転生者』を()()()()()()()()()()()、中途半端な原作知識しか持っておらず、大した才能も無い私が選ばれた理由はなんだろう──そう考えたことは、何度もある。

 だからまぁ、これから起こることに……想像はついている。

 

「お察しの通り。アナタに私が受ける呪いを肩代わりしてもらって、肉体と精神を統一する。『かぐや』を『産屋敷』として完成させるの」

「──はぁぁぁ…………ですよねぇ……」

 

 転生者に最低限必要な要素は、『黒刀の適性呼吸が何か知っていること』『竈門家の場所を知っていること』だけ。そこからついでに『呼吸の才能』と『いざ身代わりにする時、後腐れなく消えてくれる者であること』を条件に探したのだろう。呼吸は常中にさえ至れば、後は身体が勝手にやってくれる。剣技の才は肩代わりで失われるから、選考には必要ない。無一郎くんレベルの才能があれば、十三歳までに剣技も仕込めるのかもしれんが。

 

 ……うん、そうだよな。本来十三の前に消されててもおかしくなかったんだよな。随分と長生きさせてくれたものだ。

 

「──お館様を頼みます。しっかりキッカリ、無惨を倒してくださいね」

 

「うん、任せてお姉ちゃん──って格好よく言いたかったんだけど、ごめん。()()()()()()()()()んだよね、私」

 

「────は?」

 

 ………………は???

 

「いやね? お姉ちゃんが想定を遥かに超えて優秀で、しかも上弦まで倒しちゃったもんだから……私、いらなくね? ってなっちゃって」

 

「えっ、はい? でも私、無惨と上弦の壱を相手にしたら……悔しいですけど、たぶん負けちゃいますよ?」

 

「だけど神仏は、私がやるよりは勝機があるって判断したみたいなんだ。……実際私自身、お姉ちゃんと上弦の弍の戦いぶりを見て『あっ無理』って思っちゃったもん」

 

「えぇ……」

 

 それでいいのか、真打。

 

「だって、考えてもみてよ? ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

「…………不敬にも真っ先に思いつくのは、()()()()()()()()といった、単純な答えになりますが」

「ピンポンピンポン大正解! だから人に加護()を与えて、呪いで尻を叩くの。……私みたいな作り物じゃ、どこまでいっても結局上の下止まり。最上級の天然物には敵わないんだ」

「…………身勝手ですね、神仏は」

「そう悪く言わないであげてよ。一応味方なんだからさ」

「私の大切な人を……あなたの父を呪殺した、仇でもあります」

「…………そうだね」

 

「はぁ……しかし、事情は理解しました。引き続き励めば良いのでしょう? やってやりますよ」

 

「うん、お願い。──最後に伝言と、個人的なコメント」

 

「なんですか?」

 

「『九年前の申請は受理している。産屋敷耀哉には三十を越えても健康体で生き続け、人並みの一生を送る時間を用意した』……だってさ」

 

「…………感謝はしません。それで、個人的なコメントというのは」

 

「んっとね、痣の代償のことなんだけど……()()()()()()()()()()()()()()

 

「えっ」

 

「元々は私達の身体って『巫女神楽』で神様を憑依させる『器』として作られたものだからさ、肉体的にはそもそも『寿命を削ってようやく人並み』なくらいの寿命があるんだよ。

 でもお姉ちゃんの痣は、一緒に精神エネルギーも削っちゃってたから……使った分、私が補ってあげたの」

 

「……精神エネルギーって、無くなるとどうなるんですか?」

 

「天国にも地獄にも行けないし、来世も訪れない、完全な『終わり』だね」

 

「そんなものを融通して、あなたは大丈夫なんですか……?」

 

「モーマンタイ。だって私、精神エネルギーも肉体本来の寿命に見合った量あるし。……私の代わりに戦ってくれるお姉ちゃんへのお詫びでもあるからさ、気にしないで」

 

「ですが……」

 

「じゃあ気にするなら、個人的なコメントその弍!」

 

「……なんですか?」

 

 

「──幸せに生きてほしいな。そしたらここで見てる私も、幸せになれるからさ」

 

 

「……善処します」

 

「じゃあ、後は──ううん、()()よろしく!」

 

「はい」

 

「私が入ってきた襖の向こうに行けば、目覚めることができるよ」

 

「分かりました。それでは」

 

 

 

 *

 

 

 

「──結局一度も『お姉ちゃん』を否定しなかったね。素直になればいいのに」

 

 

 

 *

 

 

 

 

 

 明治無限噂話

 

「──童磨が死んだ。あの気狂いめ、最期は自ら頸を差し出しおった」

 

「私は珍しく反省している。『上弦だから』という理由で、お前達を甘やかし過ぎたと。貴様らに特権を、自由意志を与え過ぎたと。

 ──これからはもっと死に物狂いで働け。でなければ、私はお前達の存在意義が分からなくなる」

 

「黒死牟、()()()()()を持った『かぐや』と名乗る柱を殺せ。曲がりなりにも上弦の弍を殺した()だ。対処はお前に一任する」

 

「猗窩座、貴様はいい加減下らん拘りを捨てろ。食事の効率を上げて、もっと早く確実に力を付けるのだ」

 

「半天狗、貴様は真面目に働け。死にたくなければ成果をあげろ」

 

「玉壺、妓夫太郎、堕姫。お前達は比較的よく働いているが、私が真に求めるものを得ていないという点では他と変わらん。この先も同じような成果しか出せないなら、容赦はしない。分かったな?」

 

「────以上だ」

 

 

 

「…………黒い、日輪刀……適性呼吸を使わず、柱になったのか……? それも、童磨を葬るほどの力を(たずさ)えて……そんな、まさか……いや、しかし……それこそ、あり得ぬ……あり得て、いい筈がない……」

 

 

「──童磨さんが、死んだ? ウソでしょ? ねぇお兄ちゃん、嘘だよね? 童磨さんが負けるワケないよね?」

 

「…………あぁ、そうだなぁ。あり得ねぇよなぁ無理な話なんだよなぁぁ」

(──真っ当に戦えば、だけどなぁ。

 …………『最期は頸を差し出した』……何があったんだぁ? 童磨さんよぉぉ……)

 

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