「──ぅっ」
斬首後血液を採取し、彼が完全に消滅したことを確認した途端──眩暈と頭痛と倦怠感のアンハッピートリプルコンボが私の身体を襲った。
あと寒い。全身ガタついている。痣を解除した途端にコレか……ダメだ、歩けん。立っているのもままならない。
倒れ込むように両膝、両手を地につける。……うわ冷たッ、シャーベットみたいになってやがる。
せめて四つん這いから三角座りに移行。接地面積を減らして、体温を逃がさないように。
「…………くっそぉ……負けたなぁ……」
『痣』『彼岸朱眼』『変転』『天照』
全部使った。その上で、本来なら勝ち切れなかった。これは私が『対無惨』を想定した、紛れもない最終決戦仕様だったのに。
──どうする?
私一人じゃ、無惨どころか上弦の壱にすら勝てないことが判明してしまった。もしかしたら
考えろ。どうすればいい? 考えろ……。
「…………だめだ、あたま回んない」
──休もう。話は全て、その後だ…………。
*
「ん……」
目が覚めると、実家の寝室に居た。
……ふむ。違うか。
「──上弦討伐おめでとう、
「はぇ……?」
……その子は、子供の頃の
「見れば解ると思うけど、一応名乗るよ。私は
「…………そのかぐやさんが、偽物の私に何用ですか?」
うっわぁ……マジかぁ……『追加戦力』として『記憶持ち転生者』を
だからまぁ、これから起こることに……想像はついている。
「お察しの通り。アナタに私が受ける呪いを肩代わりしてもらって、肉体と精神を統一する。『かぐや』を『産屋敷』として完成させるの」
「──はぁぁぁ…………ですよねぇ……」
転生者に最低限必要な要素は、『黒刀の適性呼吸が何か知っていること』『竈門家の場所を知っていること』だけ。そこからついでに『呼吸の才能』と『いざ身代わりにする時、後腐れなく消えてくれる者であること』を条件に探したのだろう。呼吸は常中にさえ至れば、後は身体が勝手にやってくれる。剣技の才は肩代わりで失われるから、選考には必要ない。無一郎くんレベルの才能があれば、十三歳までに剣技も仕込めるのかもしれんが。
……うん、そうだよな。本来十三の前に消されててもおかしくなかったんだよな。随分と長生きさせてくれたものだ。
「──お館様を頼みます。しっかりキッカリ、無惨を倒してくださいね」
「うん、任せてお姉ちゃん──って格好よく言いたかったんだけど、ごめん。
「────は?」
………………は???
「いやね? お姉ちゃんが想定を遥かに超えて優秀で、しかも上弦まで倒しちゃったもんだから……私、いらなくね? ってなっちゃって」
「えっ、はい? でも私、無惨と上弦の壱を相手にしたら……悔しいですけど、たぶん負けちゃいますよ?」
「だけど神仏は、私がやるよりは勝機があるって判断したみたいなんだ。……実際私自身、お姉ちゃんと上弦の弍の戦いぶりを見て『あっ無理』って思っちゃったもん」
「えぇ……」
それでいいのか、真打。
「だって、考えてもみてよ?
「…………不敬にも真っ先に思いつくのは、
「ピンポンピンポン大正解! だから人に
「…………身勝手ですね、神仏は」
「そう悪く言わないであげてよ。一応味方なんだからさ」
「私の大切な人を……あなたの父を呪殺した、仇でもあります」
「…………そうだね」
「はぁ……しかし、事情は理解しました。引き続き励めば良いのでしょう? やってやりますよ」
「うん、お願い。──最後に伝言と、個人的なコメント」
「なんですか?」
「『九年前の申請は受理している。産屋敷耀哉には三十を越えても健康体で生き続け、人並みの一生を送る時間を用意した』……だってさ」
「…………感謝はしません。それで、個人的なコメントというのは」
「んっとね、痣の代償のことなんだけど……
「えっ」
「元々は私達の身体って『巫女神楽』で神様を憑依させる『器』として作られたものだからさ、肉体的にはそもそも『寿命を削ってようやく人並み』なくらいの寿命があるんだよ。
でもお姉ちゃんの痣は、一緒に精神エネルギーも削っちゃってたから……使った分、私が補ってあげたの」
「……精神エネルギーって、無くなるとどうなるんですか?」
「天国にも地獄にも行けないし、来世も訪れない、完全な『終わり』だね」
「そんなものを融通して、あなたは大丈夫なんですか……?」
「モーマンタイ。だって私、精神エネルギーも肉体本来の寿命に見合った量あるし。……私の代わりに戦ってくれるお姉ちゃんへのお詫びでもあるからさ、気にしないで」
「ですが……」
「じゃあ気にするなら、個人的なコメントその弍!」
「……なんですか?」
「──幸せに生きてほしいな。そしたらここで見てる私も、幸せになれるからさ」
「……善処します」
「じゃあ、後は──ううん、
「はい」
「私が入ってきた襖の向こうに行けば、目覚めることができるよ」
「分かりました。それでは」
*
「──結局一度も『お姉ちゃん』を否定しなかったね。素直になればいいのに」
*
明治無限噂話
「──童磨が死んだ。あの気狂いめ、最期は自ら頸を差し出しおった」
「私は珍しく反省している。『上弦だから』という理由で、お前達を甘やかし過ぎたと。貴様らに特権を、自由意志を与え過ぎたと。
──これからはもっと死に物狂いで働け。でなければ、私はお前達の存在意義が分からなくなる」
「黒死牟、
「猗窩座、貴様はいい加減下らん拘りを捨てろ。食事の効率を上げて、もっと早く確実に力を付けるのだ」
「半天狗、貴様は真面目に働け。死にたくなければ成果をあげろ」
「玉壺、妓夫太郎、堕姫。お前達は比較的よく働いているが、私が真に求めるものを得ていないという点では他と変わらん。この先も同じような成果しか出せないなら、容赦はしない。分かったな?」
「────以上だ」
「…………黒い、日輪刀……適性呼吸を使わず、柱になったのか……? それも、童磨を葬るほどの力を
「──童磨さんが、死んだ? ウソでしょ? ねぇお兄ちゃん、嘘だよね? 童磨さんが負けるワケないよね?」
「…………あぁ、そうだなぁ。あり得ねぇよなぁ無理な話なんだよなぁぁ」
(──真っ当に戦えば、だけどなぁ。
…………『最期は頸を差し出した』……何があったんだぁ? 童磨さんよぉぉ……)