「──わっしょい!」
「……」
「──わっしょい!!」
「…………」
煉獄家、縁側。
黙々と芋を頬張るかぐやの横で、杏寿郎は一口毎に『わっしょいわっしょい』と叫んでいた。好物が出ると何故かこうなるのだ、彼は。
「……杏寿郎、流石にうるさいです」
「やっと喋ってくれましたね、かぐや様!!!」
「…………」
『たまに話を聞かなく
「はぁ……そんなに嬉しいですか、
「はい!!!」
「即答……」
行冥でも聞き取れるか分からない程の声量で、かぐやは『もうちょっと惜しんでくれてもいいじゃないですか』と呟いた。
「柱の引退は、殆どが殉職ですから」
「引退じゃあないんですけどね」
『辞める』と言っても、鬼殺隊から抜けるワケではない。
──新階級『
以前から構想はあった、四人一組の最高階級。対上弦専門の部隊。かぐやはその一員として栄転するのだ。
隊長・産屋敷かぐや。
役割は全体の指揮及び加護による支援、正面戦闘。虹柱の後任は鱗滝錆兎。
副隊長・鱗滝真菰。
役割は俊足を活かした負傷者の救助、柔軟性のある水の呼吸を用いた正面戦闘補佐。水柱の後任は冨岡義勇。
指名隊員・胡蝶しのぶ。
役割は医学薬学を用いた負傷者の救助、血鬼術に対応した薬品及び毒物を現場で調合にすることによる後方支援。
指名隊員・不死川実弥。
役割は正面戦闘のみ。かぐやが
ただし上弦は、そう頻繁にホイホイ姿を現したりはしない。
なので平常時の待機期間中、かぐやを含めた四人は蝶屋敷で働きつつ英気を養うことになる。
──つまり、
「しかし父上には呆れました! 父上がもう一度炎柱をやってくれさえすれば、不死川に代わって俺がかぐや様と共に『支』となったのですが!」
「無茶を言わないであげてください。あの人いま何歳だと思ってるんですか?」
「冗談です!」
「分かりにくいんですよ、あなたの冗談は」
──あぁ。杏寿郎は上機嫌だった。他の関係者も、皆が諸手を挙げて喜んだ。
百年ぶりの上弦討伐。それも弍を、ほぼ無傷でだ。そりゃあ狂喜乱舞する。間違いなくめでたいことだ。
かぐやが新階級を『いまこの時に』作って『前線を退いた』意味を、最も正確に察した天元ですら……何一つ憂うことなく、勝利を祝った。
──上弦は下位の鬼が見聞きした情報を抜き取れる。敵側には反則級の射程を持った空間系血鬼術の使い手がいる。無惨が余程のバカでなければ、かぐやを放置はしない。
つまり、次にかぐやが鬼の目に入った時には、ほぼ確実に──上弦の壱が、彼女を消しに飛んでくる。
だがこれからは、彼女の補佐に元柱二人と優秀な隊士を一人。合計三人も付けたのだ。これで大丈夫だろうと、天元も安心した。『痣』のことだって、彼女が実質的に蝶屋敷へ拠点を移したことで胸を撫で下ろした。
────誰も、かぐやが負けるだなんて……微塵も思っていなかったのだ。
*
明治コソコソ噂話
『支』のメンバーは実カナ・ぎゆしの・杏かぐ・錆かぐ・行まこ などカップリングが成立している面子で組むことを当初は考えていたが、柱の後任などのことも考えると実現可能そうだったのが『実カナ』と『杏かぐ』だけ。『杏かぐ』は本編中で書いた通り『槇寿郎さんはもう休ませたげて……』となったため却下。『実カナ』に関しては『しのぶちゃん、この時十三歳だけど……柱として通用するか?』となり却下された。(『支』の方は年単位で修行期間が作れることに加え、直接戦闘は他三人に任せられるため、ほぼワンオペの『柱』よりかは荷が軽いかな? と)
てなわけで次回からは新章です。修行期間という名の平穏回をいくつか投稿した後、絶望の黒死牟戦を描いていきます。