──はいというワケで始まりました、『第一回支柱格付け大会』
司会・実況・解説は
本大会は支柱の親睦会としての意味合いも含まれていますが、主な目的はカナヲちゃんの心へ刺激を与える『精神的なリハビリ』ですので、あまり見応えのない種目は隅の方で済ませて結果報告と軽いコメントのみに留めていこうと思います。
腕相撲番付。
1:行冥 2:天元 3:杏寿郎 4:錆兎 5:実弥 6:義勇 7:匡近 8:かぐや 9:カナエ 10:真菰 11:しのぶ
一位は言わずもがな、行冥さん。ぶっちぎりの『最強』です。
二位は天元さん。行冥さん以外には危なげなく勝利していました。
三位の杏寿郎から七位の匡近さんは、大きな差はなく良い勝負でした。
八位は私。やはり痣ナシだと、上位陣の男性達には勝てません……。アリなら行冥さんにも勝てるんですがね。……おそらく。たぶん、きっと。メイビー。
九位はカナエさん。私に瞬殺された時の『えっ……?』という『信じられない』のお手本みたいな顔が印象的でしたね。彼女も別に力が弱いワケじゃないんですけど、むしろ比較対象が甲以下なら並の男性より強いくらいなんですけど……だからこそ、同じ女性の私には負けないと思ってたんでしょうね。
十位はまこちゃん。『戦いは腕力じゃないから〜』と、特に気にした様子はなかったですね。
最下位はしのぶちゃん。全試合を棄権しての不戦敗です。彼女の場合仕方ないですね。
直線俊足番付。
1:真菰 2:天元 3:かぐや 4:錆兎 5:実弥 6:行冥 7:しのぶ 8:杏寿郎 9:義勇 10:カナエ 11:匡近
一位は天元さんを抑えてまこちゃんが受賞。ただ彼の場合、ゴテゴテした装飾品やら暗器やら、明らかに重い双剣やらを装備したまま走ってたので……身軽な状態であれば結果は変わっていたかもしれませんね。
三位が私。僅差で四位錆兎。やはりこういう時、雷の呼吸が使えるのは強いです。
五位は意外なことに不死川さん。肉体の基礎スペックが高い……。
六位は行冥さん。一歩の大きさは速さに直結しますからね……凄い迫力でした。
七位はしのぶちゃん。本人は不死川さんと行冥さんに負けたのが地味にショックだったらしいですが、一部の柱より速く走れるって大分オカシイですからね?
八位、杏寿郎。炎の呼吸って雷に次いで速度が出る呼吸の筈なんですけどね。他が速すぎるんですよね……。
九位は冨岡さん。十位のカナエさん同様、使用呼吸がそもそも速度重視ではなく、直線移動に適しているとは言い難いので、しょうがないです。
最下位は粂野さん。純粋に相手が悪かった。しかし本人は『皆凄いなぁ』とニコニコしていました。良い子。後で個人的に飴ちゃんをあげようと思います。
──そして、本番はここから!
カナヲちゃんが観やすい場所で行う種目は、羽子板を使った『
「クソがッ、いい加減死ねェ冨岡ァァァ!!!」
「…………(羽根が見やすいように顔の前ばかり狙って返してくれるのはありがたいが、)勝利条件を理解していないのか? 不死川」
「うるせェなァ! その澄まし顔に一発入れなきゃ気が済まねェんだよォ!!」
「……聞きしに勝る大迫力ですね」
「えぇ」
カナヲちゃんの目を楽しませつつ、自然に冨岡さんを勝たせる競技──それがこの『HAGOITA』だ。速すぎて普通の人には別ゲーに見えるだろうが、それでも羽子板である。誰が何と言おうと。
「──シィィッ」
「…………」
「……凄い。今の、拾えるんだ」
あぁ、私も少し驚いた。不死川さんの方にだが。
最初は一点だけ狙い続けて意識を慣れさせ、不意に風の呼吸で弾道を曲げたのだ。相変わらず見た目に反して頭脳派である。
──しかし、冨岡さんには『凪』がある。少し軌道が変わるだけの攻撃なんて、いくらでも対処できる。
「……チッ、俺の負けだァ」
「あぁ。だがいい勝負だった」
「────」
……うん。カナヲちゃんも楽しんでくれたようで何より。
いつもよりちょっとだけ目が輝いていて、呼吸が興奮している。
「──では、最終試合ですね。冨岡さんと私、どちらが最強か決めて来ます」
「……ん」
さて、全力を魅せますか──!
……尚彼岸朱眼と痣は使用禁止だったので、派手さ重視で七色の呼吸をエフェクト盛り盛り状態で使って戦った結果普通に負けました。
冨岡さんとカナヲちゃんには、『手を抜きましたね』とちょっぴり怒られました。解せぬ。
羽子板順位。
一位:義勇(無敗) 二位:かぐや(一敗) 三位:実弥(二敗)
四位以下──。
*
明治コソコソ噂話
「──どうしたのですか、真菰さん。そのようなところで何を……」
「あやや、見つかっちゃった」
最終試合が行われている中、真菰の気配が無いことに気付いた行冥は、周囲の音を探り……彼女が少し離れた木の上に居ることが分かった。
「……行冥くん、今は目……見えてないよね?」
「……えぇ、はい。戦場での環境に近い状態でやらねば、番付に意味がなくなるので」
「ふふっ。相変わらず生真面目だなぁ」
木から降りた真菰は、行冥の前でクスリと笑った。
「それで、真菰さんはここで何を……?」
「……ん。ちょっとだけ、一人になりたかったんだ。
私、もう歳だからさ。あと何回こんなふうに集まって、皆で平和を享受できるのかな……とか、考えちゃうんだよね」
『楽しい祭事の中で突然泣き始めたら、空気が台無しでしょう?』と、そう言っているのが行冥には分かった。彼自身涙脆く、そういった『空気』には敏感だ。
「…………真菰さんは、まだお若いでしょう……」
「もぅ、行冥くんまでそんなこと言って、私に仕事させようとするのー? 辛いなぁ……葦実姉さんはもうとっくに引退して、子育て中なのに……このままじゃ私、行き遅れ街道まっしぐらだよ?」
「……行き遅れませんよ、真菰さんは……」
「えー、どうしてそう言い切れるの?」
「…………少なくとも一人……貴女を妻に迎えたい、と……そう願っている者を、知っているので……」
「……それ、私も知ってる人? いくら行き遅れるのが嫌だからって、その日顔を合わせたばかりの人と結婚するほど尻軽じゃないよ? 私は」
「……間違いなく、貴女も知っている者です……」
「ふぅん……その人、子供は好き?」
「はい」
「私、引退したら猫を飼おうと思ってるんだけど」
「猫も好きですよ」
「……その人、私より強いかな?」
「それはどうでしょう──しかしその者は絶対に、己の命と引き換えにしてでも貴女を守る」
「…………じゃあ、その人は……いま、私が触れている人?」
「──はい」
「〜〜っ。そっ、か。じゃあ、安心して働けるかな。
────私も、結婚するならその人が良いなって思ってたから」