鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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 手鬼が食い殺した弟子の件ですが、指の示し方的に鱗滝さんが最終選別に弟子を送ったのは五回。それぞれ四、一、五、二、一と示されています。順序的にも時系列的にも最後の一は錆兎で確定なので、その前は二人組で送り出したようです。なので真菰に加えてもう一人の弟子がちょい役で登場します。


第三話:バタフライフォックス

 

 ──とある屋敷の縁側に、紫の首飾りを着けた(からす)が降り立った。

 

「最終選別、結果報告。受験者数、十八。合格者数、十八」

「……すまない、もう一度言ってくれるかい?」

「最終選別、結果報告。受験者数、十八。合格者数、十八」

「〜〜〜〜っ! やっぱり凄いなぁ、姉さんは」

 

 喋る鴉から報告を受けた少年、耀哉は望外の喜びに打ち震える。

 これまでの最終選別は、『合格率が四分の一あれば豊作』という魔境だった。それが、かぐやの一声により、一体の鬼が葬られた途端にこれだ。

 

(姉さんには並外れた呼吸術の才能に加え、私よりも遥かに優れた『先見の明』まであるみたいだね)

 

 ──実際のところ、かぐやに『先見の明』など備わっていないのだけれど。それはともかく。

 そこには嫉妬など一切なく、純粋な敬意と溢れんばかりの親愛だけがあった。

 

「合格者達のことを、教えておくれ。

 ……ふふふ、今回は覚えるのが大変そうだ」

 

 今までになく贅沢な文句に、耀哉は自然と口元が綻ぶのが分かった。

 

「承知。

 マズ今回ノ筆頭ト言ウベキ、『()()()()

 性別、女。使用呼吸、水ノ呼吸。孤児。育手(そだて)ノ鱗滝左近次(さこんじ)ニ引キ取ラレ、鱗滝姓ヲ与エラレタ」

 

 その後も鴉は容姿や年齢など、詳細な情報を語り、耀哉はそれを真剣に聞いていた。

 そして、その内一つの情報に反応を示す。

 

「合格者ハ皆、『()()ヲ着ケタ黒髪ノ少女ニ助ケラレタ』ト言ウ。受験者ノ中デ、試験ニ面ヲ持チ込ンダノハ彼女ト、彼女ノ義姉デアル鱗滝葦実(よしみ)ノミ。髪ノ色カラ、該当スルノハ真菰デアルト判断サレタ」

「狐面……やはりか」

 

 派遣した炎柱によって討伐された鬼は、十枚の狐面を所持していたという。無関係ではないだろう。

 それから耀哉は合格者全員の話を心に刻み込み、鴉を放った。

 

「この朗報を、かぐやにも伝えてやってほしい」

「承知」

 

「……しかしよくもまぁ。こんなにも早く、あっさりと成し遂げるとはね……」

 

『どうしても、父に歴史が動く瞬間を』

 

 かぐやはそう言って、焦りに焦っていた。

 だが彼女は、たったの半年で歴史を動かしてみせた。

 それがあくまで、間接的なものであったのだとしても。それがたとえ、蝶の羽が起こす微風(そよかぜ)ほどの変化だったのだとしても。

 

 ──狐面を着けた蝶の羽ばたきはきっと、嵐となりて無惨を襲うだろう。

 

 

 

 *

 

 

 

 ──同日。煉獄家にて。

 

(あっっぶなかったああああ!!!)

 

 鴉から報告を受けたかぐやは、悶絶していた。

 

(真菰ちゃん、マジでギリギリだった……! 手鬼は自力で倒そうとか考えなくて良かった……!)

 

 『いや、待てよ? 歳上だから真菰さん? うおお成長後の姿見るの楽しみ!』 などと、気を抜いて縁側でブツブツゴロゴロするくらいには悶絶していた。

 

「……何をなさっているのですか? かぐや様」

「あ゛っ、すみませんすみません見苦しいものをお見せしました……」

 

 そんなことをしていたら、当然人に見られる訳で。

 はしたない姿を瑠火に見咎められ、かぐやは平謝りした。

 

「ふふふ、構いませんよ。むしろ大人びたかぐや様の、年相応の姿を見ることができましたので、嬉しいくらいです」

「うぅぅ、お恥ずかしい……」

「お気になさらず。走って忘れましょう」

「はい……」

 

 そして二人は、庭を走り始めた。

 これは、かぐやが煉獄家に来てから半年の間、欠かさず行われている日課である。

 

(病気にかかる原因……というか、そもそもどんな病気だったのかすら分からないワケだけど。体力をつけてれば、もしかしたら予防になるかもだし、病気になっても治るかも。ついでに食事も一品増やして、栄養をその分多く取ってもらってるし……これでダメでも一応プランBと『最終手段』がある。でもこれで済むなら、それに越したことはない)

 

 そうして走りながら、彼女は思う。

 

(──怖いなぁ)

 

 今のところ、彼女の思惑は全てとんとん拍子に進んでいる。

 本来自死を選ぶ父を救った。異形の鬼に食い殺される少年少女を救った。

 修行だって順調だ。もう彼女は常中に至っているし、奥義である玖ノ型以外はある程度扱えるようになった。

 

(……うまく、いき過ぎてる)

 

 だからいつか、揺り戻しが来るのではないか──。

 そんなことを恐れながら、彼女は今日も、走り続ける。

 

 

 

 *

 

 

 

 明治コソコソ噂話:真菰の年齢は十二歳だ。原作での柱最年長、悲鳴嶼(ひめじま)さんの四歳上だぞ!

 また、耀哉の鎹鴉(かすがいがらす)は流暢に話しますが、今話の鴉は彼の父の代の鴉であり、こちらは流暢に話すことはできなかったらしいぞ。

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