──とある屋敷の縁側に、紫の首飾りを着けた
「最終選別、結果報告。受験者数、十八。合格者数、十八」
「……すまない、もう一度言ってくれるかい?」
「最終選別、結果報告。受験者数、十八。合格者数、十八」
「〜〜〜〜っ! やっぱり凄いなぁ、姉さんは」
喋る鴉から報告を受けた少年、耀哉は望外の喜びに打ち震える。
これまでの最終選別は、『合格率が四分の一あれば豊作』という魔境だった。それが、かぐやの一声により、一体の鬼が葬られた途端にこれだ。
(姉さんには並外れた呼吸術の才能に加え、私よりも遥かに優れた『先見の明』まであるみたいだね)
──実際のところ、かぐやに『先見の明』など備わっていないのだけれど。それはともかく。
そこには嫉妬など一切なく、純粋な敬意と溢れんばかりの親愛だけがあった。
「合格者達のことを、教えておくれ。
……ふふふ、今回は覚えるのが大変そうだ」
今までになく贅沢な文句に、耀哉は自然と口元が綻ぶのが分かった。
「承知。
マズ今回ノ筆頭ト言ウベキ、『
性別、女。使用呼吸、水ノ呼吸。孤児。
その後も鴉は容姿や年齢など、詳細な情報を語り、耀哉はそれを真剣に聞いていた。
そして、その内一つの情報に反応を示す。
「合格者ハ皆、『
「狐面……やはりか」
派遣した炎柱によって討伐された鬼は、十枚の狐面を所持していたという。無関係ではないだろう。
それから耀哉は合格者全員の話を心に刻み込み、鴉を放った。
「この朗報を、かぐやにも伝えてやってほしい」
「承知」
「……しかしよくもまぁ。こんなにも早く、あっさりと成し遂げるとはね……」
かぐやはそう言って、焦りに焦っていた。
だが彼女は、たったの半年で歴史を動かしてみせた。
それがあくまで、間接的なものであったのだとしても。それがたとえ、蝶の羽が起こす
──狐面を着けた蝶の羽ばたきはきっと、嵐となりて無惨を襲うだろう。
*
──同日。煉獄家にて。
(あっっぶなかったああああ!!!)
鴉から報告を受けたかぐやは、悶絶していた。
(真菰ちゃん、マジでギリギリだった……! 手鬼は自力で倒そうとか考えなくて良かった……!)
『いや、待てよ? 歳上だから真菰さん? うおお成長後の姿見るの楽しみ!』 などと、気を抜いて縁側でブツブツゴロゴロするくらいには悶絶していた。
「……何をなさっているのですか? かぐや様」
「あ゛っ、すみませんすみません見苦しいものをお見せしました……」
そんなことをしていたら、当然人に見られる訳で。
はしたない姿を瑠火に見咎められ、かぐやは平謝りした。
「ふふふ、構いませんよ。むしろ大人びたかぐや様の、年相応の姿を見ることができましたので、嬉しいくらいです」
「うぅぅ、お恥ずかしい……」
「お気になさらず。走って忘れましょう」
「はい……」
そして二人は、庭を走り始めた。
これは、かぐやが煉獄家に来てから半年の間、欠かさず行われている日課である。
(病気にかかる原因……というか、そもそもどんな病気だったのかすら分からないワケだけど。体力をつけてれば、もしかしたら予防になるかもだし、病気になっても治るかも。ついでに食事も一品増やして、栄養をその分多く取ってもらってるし……これでダメでも一応プランBと『最終手段』がある。でもこれで済むなら、それに越したことはない)
そうして走りながら、彼女は思う。
(──怖いなぁ)
今のところ、彼女の思惑は全てとんとん拍子に進んでいる。
本来自死を選ぶ父を救った。異形の鬼に食い殺される少年少女を救った。
修行だって順調だ。もう彼女は常中に至っているし、奥義である玖ノ型以外はある程度扱えるようになった。
(……うまく、いき過ぎてる)
だからいつか、揺り戻しが来るのではないか──。
そんなことを恐れながら、彼女は今日も、走り続ける。
*
明治コソコソ噂話:真菰の年齢は十二歳だ。原作での柱最年長、
また、耀哉の