鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

38 / 82
(3)

 

『──炭治郎。妹が人を喰った時、お前はどうする』

 

 鱗滝さんは、とても厳しい人だった。

 試験の後、俺は気絶するように寝込んでいたのだが……これは俺が目覚めてすぐ、最初にされた質問だ。

 

 咄嗟に答えることができなかった俺を、彼は平手打ちと共に叱責した。

 

『判断が遅い。戦場では、一瞬判断が遅れただけで致命傷を受けることになる。山降りで実感した筈だな』

『──っ。はい!』

『お前が答えるべきだったことは二つ。

 〝妹を殺す〟〝そのあと己も腹を切って死ぬ〟

 ──だが、これは絶対にあってはならぬことだと肝に銘じておけ』

『はい!!』

 

 それから始まった修行はもう、『辛い』なんてものじゃない。毎日()()()()()()

 柔軟や素振りなんかは、根性でなんとかなる。だけど、日課の修行内容に含まれている『山降り』だけは……ホントに危険。気を抜くと、死ぬ。いや冗談抜きで。

 だから全力で()()()()()。罠の匂いを。おかげさまで、此処に来る前より更に鼻が利くようになってしまった。

 

 

 そして、一年後。

 

 

『──炭治郎。もう儂から教えることはない』

 

『この岩を斬れたら、最終選別に行くことを許可する』

 

 

 最後に課題を残して、鱗滝さんは何も教えてくれなくなった。

 

 最終選別というのは、正式な鬼狩りとなるための特別な試験のことだ。

 鱗滝さんのように、鬼狩り志望者へ修行をつけてくれる人──『育手』は各地に沢山いるけれど、正規隊員になるためには共通して『最終選別』を受験する必要があるらしい。そしてこの試験は、『藤襲山』という場所でしかやってないんだとか。

 

 ……そう。俺は本格的に鬼狩りを目指すことにした。

 禰豆子を見張って、いざという時抑え込むだけなら……必ずしも、鬼狩りになる必要はない。

 でも、俺は妹を人間に戻してやりたい。そのためには──鬼の首魁『鬼舞辻無惨』と対峙し、尋問するだけの力がいる。

 彼が──冨岡さんが俺を此処に送ったのは、そういう訳だった。*1

 

 

 …………それから更に半年が経ち……現在。俺は完全に行き詰まっていた。

 どんなに鍛錬を積んでも、先に進んでいる感覚がしないのだ。半年前から、何も変わっている気がしない。

 

「……どうすれば」

 

 休憩がてら、茹って空転する頭を冷やすために……岩へ額を付けてみる。

 少し気分はスッとしたけれど、やっぱり答えは出てこない。

 だから今日も我武者羅に、素振りを始めようとして──岩から額を離した、その時だった。

 

 

「──困ってるみたいだね、少年」

 

 

 声をかけられ、振り向くと──花柄の着物を纏った、黒髪の女性がいた。

 そして、狐面で顔を隠した彼女は……刀を持っていた。

 

 

「初めまして。私は真菰。()()真菰。

 ──さ、構えて。私がキミをみてあげる」

 

 

 止まっていた時間が、流れ始めた。

 

 

 

 *

 

 

 

 大正コソコソ噂話

 

 

『炭治郎に、修行をつけてやってほしい』

 

『鬼を連れているが、儂と義勇が〝人を襲わない〟と判断した』

 

 

「ふぅん……それは別にイイけど……。

 ──()()……竈門()()()、ねぇ……。

 

 ふふっ。〝日輪の剣士〟には()、鬼を連れて来ないといけない決まりでもあるのかな?」

*1
『禰豆子が人を喰っていない雑魚鬼とはいえ、最低限の抑止力は必要。それにいずれ治療を目指すことになるだろうが、闇雲に方法を探しても見つかる道理は無い。十二鬼月以下の鬼が何も知らないことは、もう確かめた。薬の開発なら、胡蝶がやっている。ならばもう、鬼舞辻に直接問い(ただ)す他ないだろう。ならば、鬼狩りになるしかあるまい』(尚一年経っても意図は半分しか伝わっていない模様)

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。