『──炭治郎。妹が人を喰った時、お前はどうする』
鱗滝さんは、とても厳しい人だった。
試験の後、俺は気絶するように寝込んでいたのだが……これは俺が目覚めてすぐ、最初にされた質問だ。
咄嗟に答えることができなかった俺を、彼は平手打ちと共に叱責した。
『判断が遅い。戦場では、一瞬判断が遅れただけで致命傷を受けることになる。山降りで実感した筈だな』
『──っ。はい!』
『お前が答えるべきだったことは二つ。
〝妹を殺す〟〝そのあと己も腹を切って死ぬ〟
──だが、これは絶対にあってはならぬことだと肝に銘じておけ』
『はい!!』
それから始まった修行はもう、『辛い』なんてものじゃない。毎日
柔軟や素振りなんかは、根性でなんとかなる。だけど、日課の修行内容に含まれている『山降り』だけは……ホントに危険。気を抜くと、死ぬ。いや冗談抜きで。
だから全力で
そして、一年後。
『──炭治郎。もう儂から教えることはない』
『この岩を斬れたら、最終選別に行くことを許可する』
最後に課題を残して、鱗滝さんは何も教えてくれなくなった。
最終選別というのは、正式な鬼狩りとなるための特別な試験のことだ。
鱗滝さんのように、鬼狩り志望者へ修行をつけてくれる人──『育手』は各地に沢山いるけれど、正規隊員になるためには共通して『最終選別』を受験する必要があるらしい。そしてこの試験は、『藤襲山』という場所でしかやってないんだとか。
……そう。俺は本格的に鬼狩りを目指すことにした。
禰豆子を見張って、いざという時抑え込むだけなら……必ずしも、鬼狩りになる必要はない。
でも、俺は妹を人間に戻してやりたい。そのためには──鬼の首魁『鬼舞辻無惨』と対峙し、尋問するだけの力がいる。
彼が──冨岡さんが俺を此処に送ったのは、そういう訳だった。*1
…………それから更に半年が経ち……現在。俺は完全に行き詰まっていた。
どんなに鍛錬を積んでも、先に進んでいる感覚がしないのだ。半年前から、何も変わっている気がしない。
「……どうすれば」
休憩がてら、茹って空転する頭を冷やすために……岩へ額を付けてみる。
少し気分はスッとしたけれど、やっぱり答えは出てこない。
だから今日も我武者羅に、素振りを始めようとして──岩から額を離した、その時だった。
「──困ってるみたいだね、少年」
声をかけられ、振り向くと──花柄の着物を纏った、黒髪の女性がいた。
そして、狐面で顔を隠した彼女は……刀を持っていた。
「初めまして。私は真菰。
──さ、構えて。私がキミをみてあげる」
止まっていた時間が、流れ始めた。
*
大正コソコソ噂話
『炭治郎に、修行をつけてやってほしい』
『鬼を連れているが、儂と義勇が〝人を襲わない〟と判断した』
「ふぅん……それは別にイイけど……。
──
ふふっ。〝日輪の剣士〟には