五感組のちょっと意外な年齢ネタ。
かまぼこ隊で炭治郎が最年少であることはそこそこ有名だと思うのですが、カナヲと玄弥も炭治郎より歳上……というか炭治郎と伊之助以外五感組って十六歳なんですよね……。
──ところでなんだか
「──あ、姉さん。カナヲ知らない? 買い出し頼もうと思って探してるんだけど、姿が見えないのよ」
「あー……カナヲなら、今は──」
「──はぁっ!?
「それが、私にも詳細は伝えられてないんだけど……
「──はああああああ!?!!? いや、柱直轄の継子を動かせるのがお館様くらいっていうのは解ってるけど、ホントにお館様の指示だったの……!?」
「アハハ……やっぱり産屋敷家の思考は、流石のしのぶも解らない?」
「解ってたまるもんですかッ!? 言っておくけど私、未来とか全っ然見えないからね!?
あぁもう……っ、お願いだから無事に帰ってきてねカナヲ……!」
*
──とある港町の入り口、橋前にて。
「
鎹鴉の案内によりこの場所を訪れた炭治郎は、何となしにそう呟いた。
──それを聞き咎めたワケではないだろうが、彼に向かっていく人影が一つ。
「──ねぇ、アナタ」
「あッ、はい!?」
「その痣、赤い髪と瞳……あなたが『竈門炭治郎』ね?」
「──っ。はい! 階級『癸』 竈門炭治郎です!
俺の名前を知っているということは、貴女が『
「うん。よろしく」
「よろしくお願いします!!」
「じゃあ炭治郎。早速だけど、命令」
「はい!」
「町に入る前に、刀は隠して」
「あっ、はい! すみません!!」
「ん。じゃあ行くけど、最初は何をするか分かる?」
「聞き込みをして、鬼の情報を集めます」
「分かってるならいい」
それだけ言うと、カナヲはスタスタと橋を渡り始めた。
一拍出遅れた炭治郎が、慌てて追随すると……彼女は視線をやらず、足を止めないまま、再び口を開いた。
「──炭治郎」
「はい、なんでしょう?」
「私の任務は、あくまで〝アナタの初任務〟を『補助・監督』すること。明らかに問題のあるところは指摘するけど、基本的に私から動くことはないから。そのつもりで動いて」
「承知しました!!」
*
──ふぅん……この子、鼻が利くんだ。
私は宣言通り、何も手伝う気は無かったのだけれど……調査はトントン拍子に進んだ。
私と炭治郎は、町に到着してすぐ『婚約者が消えた
すると炭治郎は信じられないことに、勢いよく四つん這いになって……
『鬼は独特の臭気を発しているから分かる』『確かにこの場所には、鬼の臭いが残っている』とのことで、私と和巳さんは彼の誘導に従って町を練り歩き──日が暮れ始めた頃には、彼の感覚が正しいと理解させられた。
経験を積んだ鬼殺の剣士は、鬼の気配を察知できるようになる。近付くにつれて、私の感覚にも気配が引っかかり始めたのだ。
そして、この任務が『炭治郎と私』に割り当てられたことに納得した。
──今追っているのは、間違いなく異能の鬼だ。
『
透明化や気配隠蔽・遮音の複合か、異空間操作……パッと思い付くのはこの辺りか。
こういう術を使う鬼は、見つけるのに手間がかかる。
だから不死川さんのような『稀血持ち』や、この子のような『超感覚持ち』は重宝される。初任務で喪うには惜しい。自分で言うのも何だけれど、甲の上澄みを使うワケだ。
「──ッッ!!!」
……なんてことを考えている内に、見つけたらしい。
炭治郎は突然血相を変えて、民家の屋根に飛び乗り移動を始めた。私も和巳さんを抱えて、すぐに追いかける。
そして彼は『ある地点』で飛び降りると……背中に隠していた日輪刀を抜き、数秒逡巡した後……地面へ突き刺した。
──黒い日輪刀。『あの人』と同じ。
……一瞬浮かんだ感慨を、押し沈める。今はそんな場合じゃない。鬼の気配が、膨れ上がった。
足場の変化を目視で確認。そして、
しかし私が動くまでもなく、炭治郎は最優先で『そこ』へ手を伸ばした。優秀だ。
──血鬼術により作成された異空間から、誘拐されていた女性を炭治郎は救い出した。
「カナヲさんッッ!」
「任せて」
和巳さんを一度降ろし、一息で縮地。そして女性を引き受け、再び後退。一般人の護衛は私が引き受ける。
────戦闘開始だ。
「──キサマァァ!! 今すぐその女を返せぇぇ!!
背後から、鬼の金切り声が聞こえてくる。
──瞬間移動? いや……。
「まぁまぁ、そうカリカリするなよ──俺」
分裂か。気配から察するに、力は等分していると見た。どちらも分身か、両方本体か──まぁ、どっちも斬ればいいだけの話だが。
「これが怒らずにいられるかッッ!! アレはもう十六なんだぞ!?
「そうだなぁ、知っているとも。だがイイじゃないか──アレを守っている女もまた、
……あぁ、なるほど。私が担当になったのは
「──ッ」
……?
炭治郎が青筋を浮かべ、私達の元に駆け寄ってきた。
「炭治郎、冷静になって。せっかく常中が使えても、波長を乱したら意味が無い」
「……はい」
……うん、やっぱり優秀だ。もう呼吸を整えた。
「じゃあ、行ってきて」
「……でも」
「…………??」
筋肉は緊張していないように見える。この子は
──てことは、もしかして……
「炭治郎……私なら大丈夫。護衛は『任せて』」
「……
「
──下弦ですらないような雑魚相手に、型は必要ないから。
「……では、お願いします」
「うん」
「──話は済んだか?」
「済んだ! 今から俺が、お前達を斬る!!」
…………随分と律儀なことだ、どちらも。
「だけどその前に、三つ聞く!!」
「多いな……」
……それに関しては、同意する。
「一つ! 拐った人をどこに隠した!?」
「──そ、そうだ……! 一昨晩に拐った、
…………。
「里子ぉ? 知らんなぁ──」
そう言うと一角の鬼は、胸元を開いて……
「この収集品の中にその女の
「──ぁぁああ゛あ゛……!!!」
…………目を閉じれば、浮かんでくるのは三つの『蝶を象った髪飾り』
自らが着けているものの色違いであるソレらは、義姉からの贈り物。血よりも余程強固に互いを結ぶ、家族の証。
……もう二度と見ることの叶わない、妹弟子達の形見。
「──もういい、分かった。質問は終わりでいい。
────そこを動くな、悪鬼。一秒でも早く、
……戦いはすぐに終わった。
炭治郎が敵の領域に飛び込んで、二体の鬼を撃破。ほぼ同時に
そして炭治郎が地上に上がってくるのを待って、それから首を刎ねた。それで任務はオシマイ。
──でも和巳さんは、終わりじゃない。
彼はこれからも、喪ったまま生きていく。
私達が、そうやって生きてきたように。
*
鬼を倒した炭治郎と私は、その足で町を出た。
夜が明け、朝日が私達を照らしたが……炭治郎の顔は、暗いまま。
……どうでもいい。どうでもいい、筈なのだけれど。
気付けば、どこかで聞いた言葉をなぞっていた。
「『──
「……でも、助けられませんでした」
「『私達鬼殺隊は、犠牲者が出た後にしか動けない。それを〝仕方のないこと〟だって許容できないなら、アナタは向いてない。心が壊れる前に脱隊するべき』 ……受け売りだけど、たぶんホントのこと」
『たぶん』なんて無責任なことを言ってしまうのは、私が既に壊れているからで。最初から、血も涙も枯れ果てた破綻者だからで。
──そして間違いなく、私みたいな人間の方が鬼狩りに向いている。
「……犠牲を許容なんて、絶対にしません。でも鬼狩りは続けます」
「──なら、今日みたいな戦い方はやめた方が良い」
……何をしているんだろうか、私は。
慰めるなら、彼を肯定するべきだ。脱隊を勧めるなら、もっと冷徹に現実を教えてやるべきだ。
……なのに口から出たのは、中途半端な助言だった。
「……具体的には、どの辺りが問題でしたか」
「鬼が作った異空間に、自分から突入したこと。アレ、自殺行為だから」
「……はい」
「…………でも、
「──え?」
本当に、らしくない。
私が、非合理な『感情』を口にするなんて。コレが本物かも、
「……遺品を取り返したくてやったんでしょ?」
「あっ、はい」
あぁ、だけれども。この『心』が何なのか、まだわからなくたって。
一つだけ、確信していることがあるのだ。
──姉二人なら間違いなく、彼と同じことをする。
数少ない、私の『大切な人』と断言できる存在。彼女らと通じるものを感じさせるこの子が、私は『嫌いじゃない』
だから、
「次から私はいないけど──死なないでね炭治郎。お互い生きて、また会おう」
願わくば、その時まで……彼の心が、今と変わらぬ輝きを放っていますように──。
*
大正コソコソ噂話
公式設定より、炭治郎が浅草で本来戦う予定だった鬼は珠世さんだったらしいぞ。だから無惨と偶然遭遇しなければ、
しかし今作では既に珠世さんが味方入りしているので、浅草の任務が消えて休息期間になっているぞ。
──つまりなんと、
オマケ2。あったかもしれないしなかったかもしれない寸劇。
「そんなに心配しなくても、カナヲなら上弦でも出ない限り大丈夫よ」
「違うわ姉さん、全っ然分かってない!!
確かにカナヲは強いわよ、本気を出したら柱の何人かには勝てるかもしれないくらい強いわよ!
──でも姉さん、今期の新人って
「……? そうね」
「だああああ!!! なんでそうポヤポヤしてられるの!? もし任務で一緒になった男が、カナヲの『何でも言うことを聞いちゃう悪癖』に気付いたらどうなるか……!」
「────ッッ、カナヲ逃げて! 超逃げて!!」
「そうなるでしょ!? あぁもうっ、心配だわ……!」
(ここの)胡蝶姉妹は、思い込みが激しかった。*3