鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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「…………」

 

「「「「「…………」」」」」

 

 泡を吹いて倒れている()が、再び暴れ出さないことを確認し……俺は深く『ヨシ』と頷いた。

 彼が何故か、善逸を追い回して困らせていた上……今度は仲裁に入った俺にも突進してきたので、仕方なく頭突きをして止めたのだ。隊員同士で刀を抜くのは勿論、手を上げるのも基本的には厳禁(隊律違反)だが……頭突き(これ)ならば問題ないだろう。*1

 

「いや待って『良し』でいいのコレ? 大丈夫? 死んでない??」

「死んでない。ただの脳震盪だ」

「お、おう……」*2

 

 それから善逸と清、正一、てる子の手を借りつつ、屋敷で亡くなった方々の遺体を埋葬。途中で起きた()──伊之助にも手伝ってもらい、弔いを終えたところで、俺達は三人兄弟と別れた。*3

 

「──休息! 休息!!

 竈門炭治郎、嘴平(ハシビラ)伊之助、我妻(アガツマ)善逸! 以上三名ハ ツイテコイ! コノ私ニ!! カァァァ!!!」

 

 鎹鴉が案内してくれた場所は、先日もお世話になった『ひささん』が住む『藤の花の家紋の家』だった。

 

「鬼狩り様でございますね。ようこそおいでくださいました」

「ヒッ、オバケ!?」

「コラ善逸! お化けじゃない。家主のひささんだ。

 ──ひささん、またお世話になります!」

 

「──あ゛ぁ ? 権八郎、なんでお前がこんな弱っちそうな奴にへーこらしてんだ?」

「いま言ったろ? 今日からしばらくお世話になるから、だ。伊之助も、あまり失礼なことを言っちゃダメだぞ」

「世話になる?」

「主に衣食住……清潔な着替えや食事、安全な寝床なんかを提供してくれるってことだ」

「いや言葉の意味は解るわボケェ! そうじゃなくて、世話になる必要なんてねぇのに頭を下げる理由が解らないっつってんだ! つーかババアだって、俺らにそんなことをしてやる義理はねえだろ!?」

 

「義理ならばございますよ、鬼狩り様」

「あん?」

「我々のように『藤の花の家紋』を掲げる家は、過去に鬼狩り様から恩を受けた家なのでございます。故に我々は、その時の恩義を返しているのでございます」

「……ほーん。よく解んねえけど、『組織』そのものに義理があるってコトか?

 『人間社会』ってヤツは本当に面倒だな……山ん中の『群れ』は、もっと単純で分かりやすかったぜ?」

 

 ……ここに来るまでの道中で話して分かったのだが、どうやら伊之助は捨て子らしい。それで(野生動物)に育てられたらしく……その影響で、価値観が非常に独特だった。

 しかし、何はともあれ……彼なりの着地点を見つけたのか、コレ以降は伊之助も特に何か言うことはなく、素直にひささんのご厚意に甘えていた。

 

 そして、深夜。

 

(紋寿郎のヤツ、全然挑発乗らねえのな……()()()()()()()()()()()()()()()()だから、もう一回、今度は心ゆくまで戦いてぇんだが……。

 なんだったっけかなぁ……アイツ、戦う時()()()()()()()()()()()()()なんだよなぁ……ソコを突けば、乗り気になりそうなんだが……)

 

「…………ねみぃ。あたま、使い過ぎた」

 

 伊之助の寝息が聞こえてきて、俺は少し安心した。

 ひささんが呼んでくれたお医者様の診察では、問題無さそうだったけれど……彼の額には、大きなコブができていた。

 脳震盪の後遺症には、不眠などの症状もある。やむなくだったとは言え、頭突いてしまったからには心配だった。

 

「……なぁ、炭治郎。起きてるよな?」

「あぁ。どうした? 善逸」

 

「…………伊之助は組織のこととか、よく解ってないみたいだし……だから、普通に気付いた上で……よく解らないまま、受け入れちゃってるみたいだけどさ……」

 

「────」

 

 善逸の視線は、チラチラと──俺の枕元にある、『背負い箱』へ向けられていた。

 

 

「──()()、鬼だろ」

 

 

「……気付いてて、今まで見逃してくれてたのか」

「……何か、事情があるんだよな?」

 

「──箱の中に居るのは、妹だ。

 俺は鬼舞辻無惨を探し出して、()を人間に戻す方法を聞き出すために、鬼殺隊に入った」

 

「そっ、か……一応聞くけど、それ……上の人は、知ってるのか?」

「俺の育手と、同門の先輩二人は知ってるけど……他の人は知らないと思う」

「…………じゃあやっぱり、秘密なんだな」

「あぁ」

「……なぁ、炭治郎。その子、いつから鬼なんだ?」

「二年前だな」

 

「──その二年間、食事はどうしてたんだ?」

 

「あぁ、そこは大丈夫。妹は人を食べない鬼なんだよ」

 

「──えっ、あり得るのそんなこと!?」

 

「禰豆子……妹は食事の代わりに、睡眠で体力を回復してるみたいなんだ。信じられないかもしれないけど……この二年間、一度も人を食べたことはない」

 

「──はぁぁぁ、よかったぁぁ……これで炭治郎が、『夜な夜な死体漁りをして妹に与えていた』とか言い出したらどうしようかと思ったぜ……ちょうどさっき埋めてたし」

 

「えっ、コワ!? そんなこと考えながら埋葬してたのか善逸!?」

 

「しょうがねぇだろ? 『すぐ隣に居る奴が鬼を背負ってる』って気付いちまったんだから……最初から『人を襲ってる』なんて思っちゃいなくても、『飲まず食わずで生きられる』なんて……普通思い当たらねぇって」

 

「いや、そうかもだけど……まぁ、それはいい。

 ──とにかく、善逸は信じてくれるんだな?」

 

「──あぁ。信じるよ」

 

「善逸……お前は本当に、良い奴だな」

 

 

 

 *

 

 

 

 ──十日後。

 

 

『カァァァ! カァァァァ!!

 竈門炭治郎、嘴平伊之助、我妻善逸、伝令有リ! 伝令有リ!!』

 

 

『竈門炭治郎、昇格! 昇格!!

 栗花落カナヲ ヨリ推薦有リ! 階級ヲ(ミズノト)カラ(ミズノエ)ニ昇格!!』

 

 

『嘴平伊之助、我妻善逸ハ竈門炭治郎ノ指揮下ニ入リ行動セヨ!!』

 

 

『三名ハ装備ヲ整エ次第、那田蜘蛛山ヘ向カエ!!』

 

 

 

 

 *

 

 

 

 

 大正コソコソ噂話

 

 骨折は骨がくっつくのに1、2週間程度。完治までに半年程度かかるが、正史の彼らは(呼吸剣士で治癒力が高いので)骨がくっついてすぐ(二週間程度)で完治したと作者は予想しているぞ。つまり五日前後早く那田蜘蛛山に突入することになったぞ!

 

 ちなみに伊之助と善逸を炭治郎の指揮下に入れたのは、『専属の鴉を通じて本部からの指令を伝えられないから』という理由もあるみたいだぞ。

 しかし伊之助は、ジムバッ○の足りないポ○モン並に指示が通らないぞ!(逆に言えば、指示を全く聞かないワケではない。反骨心はあるが、現状では自分より炭治郎の方が強いことは認めている。その上で『つまり、炭治郎(お前)を倒せば俺も昇格できるってワケだな?』と明確な目標に設定して燃えているのだ)

 

 

 

 オマケ2(禰豆子を見た善逸と炭治郎)

 

「むー」

 

 

「──炭治郎」

「ん?」

 

「是非ともお義兄(にい)さまと呼ばせて頂きたい」(超絶イケボ)

 

「お前は出会った女性全員に求婚しないと死ぬ呪いにでもかかっているのか……?」(本気の心配)

 

*1
あります。

*2
脳震盪は後遺症として頭痛・耳鳴り・目眩・吐き気・ふらつき・()()()()()()()()()()()などが発生する恐れがあるぞ。決して甘く見てはいけない。

*3
松衛門(炭治郎の鴉)はキチンと清に藤の花の香り袋を持たせている。

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