鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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 到着が早くなっている影響で、今はまだ()()()()()』になっていない。
 なので……。
 


(9A)

 

 那田蜘蛛山、麓にて。

 

「──待ってくれ! ちょっと待ってくれないか!!」

 

「……? どうした、善逸」

 

 藤の家から半日以上かけて、ようやっと到着した目的地を目の前に……善逸は座り込んでいた。何故かキメ顔で。そこだけ切り取れば、とても絵になるだろうが……。

 

「怖いんだよ! 目的地が近付いてきて分かったけど、あの山スゲー怖い!!」

 

 実態は、少年がただ三角座りをして喚いているだけである。とても情けない……。

 

「何言ってんだコイツ。気持ちワリィ奴だな」

「半裸の猪頭野郎に言われたかねぇよ!?

 なぁ炭治郎、分かるだろ……!? あの山は絶対厄場(ヤバ)いって!!」

「まぁ、分かるけど……鬼が居るんだから、当たり前だろう?」

「それにしたってだよ!! この『音』の禍々(まがまが)しさ……! 絶対()()()()()()()()()()()ぜ!?」

「…………。でも善逸、(うずくま)っていても状況は好転しないぞ?」

 

「いや()()()()()()()だろ!? 相手の根城がもう分かってんだから、()()()()()()()()()()()()()()!!」

 

 

「「────」」

 

 

 ──意外と正論だったことに驚いたのか、炭治郎と伊之助は面食らった顔になっている。

 

 鬼殺隊が夜に戦うことが多いのは、鬼が夜に動くからだ。動かないものは追えないからだ。何せ()()()()()()()()()()()

 

 しかしこの任務は違う。

 鬼が苦手とする『朝』に、()()()()()()()()()()()()()()()()

 彼らが相手にしている鬼は、妖怪でもなんでもなく実体のある生物だ。朝もどこかの日影で生きていて、存在しているのだ。

 

 

 ──ならばどうして、わざわざ相手が有利な状況で戦ってやる必要があるのだろう?

 

 

「話にならねぇな。剣八郎、行こうぜ」

「いや、待て伊之助。珍しく、善逸の言うことに正当性が見受けられる……」

「オイ炭治郎? 『珍しく』って何? 俺はいつだって常識人だったよ??」

 

 最後の戯言(ZAREGOTO)はさておき、炭治郎は真面目に出直すか検討を始めた。

 

「…………伊之助は、空気の流れが読めるんだったよな?」

「あぁ、それがどうした?」

「当初の予定では、俺の鼻で鬼の居場所を探る予定だったんだけど……近付いてみて分かった。那田蜘蛛山は、酷い刺激臭が充満してる。とてもじゃないけど、あの中で鬼の臭いを探し当てる自信はない。

 だから今回、索敵は伊之助と善逸に任せることになると思う」

 

「──! おう、任せとけ!!」

「ぉ、おぅ……索敵は頑張ります。()()()

 

「そこで問題になるのが、昼間動かない鬼の居場所を探れるかどうかってことだ。

 相手が動かないとなると、音も出ないだろうから……善逸の耳にはあまり期待できない。だから、残るは伊之助なんだけど……」

 

「あ゛ー、できねぇこたぁないが……半々だな。たぶん見つからないと思った方がいい」

「だよなぁ……」

 

「えっ、どうして?」

 

「お前なぁ……テメェが鬼だったら、昼間はどう隠れるよ?」

 

「……山の中」

「それだけだと、ふとした拍子に日光が当たるかもしんねぇだろ。

 ──だから俺なら、()()()()()()()ね。そうでなくとも、全方位を遮蔽物で埋める。()()()()()()()()()()()()()()()()な」

「あっ」

 

 鬼という生物は、基本的に不死身だ。()()()()()()()()()()()()()()*1

 

「うん。実際禰豆子も最初の方は、穴を掘って日光から逃げてたから……土の中に隠れているって線は、充分にあり得る」

「分かりやすく家でも建てててくれりゃあ別なんだが……」

「期待はしない方がいいと思う」

「むむむむむ……でも鬼だって元は人間なんだし、快適な住まいが欲しいって考えてもおかしくないだろ? 実際前の鬼は屋敷持ってたし」

「だから()()だっつってんだろ。

 ──まァ昼に戦えるとしても、俺は御免だけどな。勝てて当然の戦いなんざ、俺にとっちゃ無価値も無価値。やる意味がねぇ」

「俺も正直、乗り気にはなれないかな」

 

「なんでだよ!? お前らアレか! 斬り合いに華とか求めちゃう武士か何かか!!」

 

「いや別に武士ではないけど……いや、そうだな。()()()()()()

 ──伊之助。出直そう」

 

「え? あっ」

 

「……チッ、まぁ隊長の指示ならしゃーねーか。まだつまんねー結末になるって決まったワケでもねぇし、今回は退いてやる。

 ──が! 代わりに今夜はお前が俺と戦え炭吾郎!! それなら許す!」

「……しょうがないなぁ。俺で良ければ、相手になるよ」

 

「た、炭治郎? 炭治郎!? ちょっ、待てって! 事情があるなら聞くからさぁ! なぁ炭治郎────」

 

 

 ──こうして、最初の夜は何事もなく過ぎ去った。

 

 

 

 *

 

 

 

 大正コソコソ噂話

 

 

「……それで、炭治郎の『私情』ってのは何だよ」

 

「二人には話しただろ? 俺が鬼殺隊に入った目的」

 

「……禰豆子ちゃんを人間に戻す方法を探す……だろ?」

 

「あぁ。そのために、鬼舞辻を見つけて話を聞きたい。

 鬼舞辻を見つけるために──居場所を知ってる鬼を探したい。その点十二鬼月は、期待値が凄く大きい」

 

「十二鬼月……鬼舞辻直属の配下……幹部みたいな存在、だっけか」

 

「そうだ。そして鼓の鬼は、()()()()()()()()

 

「えッ、そうだったの!?」

 

「うん。本人がそう言ってたし、眼に『下陸』って文字も書かれてた。バツ印が付いてたけど」

 

「それで……鬼舞辻の話は聞けたのか?」

 

「いや。あの時俺は十二鬼月が何なのか知らなくて……話を聞く前に斬っちゃったんだ。……そこまで手加減ができるような相手でもなかったし」

 

(……逆に言うと、()()()()()()()()ある程度余裕を持って斬首まで持ってけたってコトだろ……? やっぱコイツだけ格が違うわ……)

 

「つまり、ソイツより強い鬼の気配がするってこたぁ──あの山に居る鬼も十二鬼月ってことだな!? 俄然やる気が出てきたぜ……!」

 

「……うん、その可能性が高い。だから今度こそ、俺は腰を据えて話をしたいんだ。できればな」

 

「なるほど……でもそれは別に、朝でもできるんじゃないか?」

 

「…………じゃあ聞くけど、仮にその十二鬼月が家を建てていて、俺達が朝の調査で、そこを見つけることができたら……どうする?」

 

「屋根をぶっ壊す。鼓鬼の時は中に清くんが居たからできなかったけど、中に人が居なければ、昼間の鬼なんて建物を壊せば一発よ」*2

 

「ほらすぐそういうこと言う……それじゃ話なんてできないだろう?」

「マトモに戦うこともできないじゃねぇか!!」

 

「(伊之助の言い分はともかく、)だから『私情』か……」

 

「そうだ。でも鬼殺隊としては、善逸のやり方が合理的ってことは解ってる。だから明日、正午頃にもう一度改めて調査に向かう。それまでは仮眠と腹ごしらえだ」

 

「……うん。悪いな」

「フン、気に入らねぇ。

 ──今に見てろよ? すぐに俺も昇進して、お前らを足で使えるようになってやるからな!!」

 

「……あぁ、伊之助ならできるよ。きっと」

 

「…………『足』じゃなくて、『顎で使う』だろ? 全く」

 

*1
???『無論死なないだけでパワーは落ちるし苦しみも感じて動けなくなる(しっかり酸欠の症状自体は出る)らしいので、敢えてずっと呼吸をしてない鬼は見たことがありませんけどね。なので私の透視は大抵有効なのです。というかでないと藤襲山が牢獄(笑)になっちゃいますし』

*2
???『…………素晴らしい提案ですね。誰か彼に、高級菓子のヴァニラアイスを』

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