「クソッ、やっぱもう逃げてるか……!」
炭治郎が二人と合流した、すぐ後。
伊之助の案内で、三人は『操り糸』の鬼が居たとみられる場所まで移動したが……そこは既に、もぬけの殻だった。
「『首無し』を倒した人が、ソイツも斬ってくれてたっていう可能性はないのか……?」
「無いな」「ねぇだろ」
「えぇ……? なんだよ二人共……まさか
「俺に斬った覚えがない以上、テメェしかいねぇだろ。……まぁぶっちゃけ半信半疑だけどよ……」
「チュンチュン! チュンチュンチュン!!!」
「雀は『間違いなく善逸が斬った』『ハッキリ見た』って言ってるぞ?」
「だぁからそれが信用ならねぇんだって!! 何度聞いても俺には『チュンチュン』としか言ってるように聞こえねえんですけどぉ!?」
「チュンッ! チュンチュン!!」
「あぁごめんな? 『雀』じゃなくて、『うこぎ』か。分かった」
「チュン!」
『雀』改め『うこぎ』は炭治郎の言葉が正しいと示すように、一鳴きして首肯した。
「いやだからなんで解るのぉ!?」
「チュンチュン。チュンチュチュン」
「俺も大体わかるぜ。*1
……『うさぎ』でもいいし、
「チュン……」
続けて首肯。(相変わらず固有名詞は間違っているが)大体合っているらしい。
「マジで!?
…………もしかして俺以外の隊士は皆聞き取りできるのか……?」*2
「てか、今はんなこたぁどうでもいいだろ。
──それよりどうすんだ? 隊長。追うのか、退くのか」
「……善逸と伊之助は、山を降りろ。ここからは、俺一人で行く」
「──あ゛ぁ !? なら俺も残るわ!! 俺はまだやれるぞ!!」
「俺が倒した鬼は、
──つまり、
そして、『操り糸』が逃げた先で……合流しているかもしれない。
「…………足手纏いだって、言いてぇのかよ?」
「十二鬼月は、怪我人が戦って勝てるような相手じゃない。前に俺が戦った『数字落ち』ですら……もしあの時体調が万全じゃなかったらと思うと、冷や汗が出る」
「……俺は怪我なんかしてねぇ」
「いや誰がどう見たって、全身打撲と擦り傷だらけだろ……」
「気のせいだッッ」
「伊之助……」
「──大変だね、お前も」
「「「!?」」」
──その時、山から『ソレ』以外の音が消えた。
ソレは、少年の姿をした鬼だった。
ソレは、木々の間に張り巡らされた糸の上に立ち……炭治郎達を見下ろしていた。
「全てのものには『役割』がある。『兄』には『兄』の。『母』には『母』の、『役割』が……ね」
(──な、なんだアイツ……震えが止まらねぇ。『肌』が、身体が、全力で『
伊之助は、良くも悪くも『獣』に近い。
故に解る。分かってしまう。
──
近付いてしまった者の最適解は、『息を潜めて動かない』ことである──と。
「上に立つ者は、下の者を守らなきゃいけない。下の者は守られる代わりに、上の者が言うことには従わないといけない。そういう『役割』がある。
────なのにさぁ……」
少年が腕を振るうと、炭治郎達の前に『何か』が飛来した。
『ドゴン』と重い音を立てて大地に叩き付けられたそれは……
「どうして言うことを聞けないのかなぁ……『母さん』ならさぁ……力が及ばなくても、『子供』を守ってよ……戦いもせずに逃げ帰るとか、論外にも程があるでしょ……」
「う、ぅ……」
「だからもう、キミはいらない」
「──ウソつき……! 『守ってあげる』って、言ったくせに……!! 嘘吐き……!!!」
「はぁぁ……自分は『役割』を果たそうともしなかったくせに、僕のことを『嘘吐き』呼ばわり……? 酷い言い
──そう思うだろう? お前も」
「……俺に言っている、のか?」
突然話を振られ、困惑しながらも……炭治郎は相槌を打つ。
「そう。そうだよ、額に痣のあるお前。
お前がその隊の指揮官だろう?」
「……そうだ」
「キミ達の話、聞こえてたよ。だからちょっと、共感しちゃってさ……」
「共感?」
「弱いくせして前へ出たがるバカに、多少強くてもやる気の無い臆病者──本ッ当に役立たずでイヤになるよね」
「「──ッッ」」
言葉と共に、怒気が伊之助と善逸へ向けられる。
それだけで……二人は身体が動かなくなったことを自覚した。
しかし、
「──訂正しろ。伊之助も、善逸も、『役立たず』なんかじゃない……!」
炭治郎は刀を抜いて、二人を背に庇うように前へ出た。
(──チクショウ、チクショウ……! 情けねぇ……!! 『山の王』だなんだと吹聴しておいて、畜生……!!
アイツが恐ろしくて仕方ねぇ……! その上他人に庇われて、屈辱よりも安心が
(……………………)
「健気だね。たとえ部下が
「『訂正しろ』と、そう言った!!!」
「なら試そうか。
──
「──ガ ァ ア゛ア ァァ!!!」
少年の呼び声に応じて、巨漢の身体に蜘蛛の頭を持った異形の鬼が姿を現した。
(なんて威圧感……! この鬼も、まさか……!!)
「さぁ、僕の前で『役割』を果たしてみせてよ」
*
大正噂話
──『試す』と言っても、猪と金髪には全く期待していない。
俺が『試す』のは──痣の少年だ。
親は子を、兄や姉は弟妹を、命懸けで守る。それが大前提で、一番大事で、なのにいままで誰も、果たしてくれる者のいなかった『役割』だ。
結局
──でも、彼はどうか?
自分より強い敵を前に、命を懸けられるのか? 最期まで、部下を守ろうとするだろうか?
────それがもしも、できるのなら。
僕は彼を鬼にしよう。新しい『兄』に迎えよう。
鬼への勧誘は上弦特権らしいけど、俺には関係ない。何故なら既に、上弦以上の特権を与えられている。
それに、もし断られたとしても……その時は、
*
コソコソ噂話
公式ファンブックより、家族に与えていた血鬼術を全回収して本気になった累くんは、冨岡さん(柱)といい勝負ができた可能性がある上、
この情報から、『全力累くん』は宇髄さんに瞬殺された『堕姫第一形態』よりはほぼ間違いなく強いと思われるぞ!