鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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(9D)

 

「クソッ、やっぱもう逃げてるか……!」

 

 炭治郎が二人と合流した、すぐ後。

 伊之助の案内で、三人は『操り糸』の鬼が居たとみられる場所まで移動したが……そこは既に、もぬけの殻だった。

 

「『首無し』を倒した人が、ソイツも斬ってくれてたっていう可能性はないのか……?」

 

「無いな」「ねぇだろ」

 

「えぇ……? なんだよ二人共……まさか()()()()、冗談じゃなくて、本気?? マジで()()()()()()()()()()()()の……?」

 

「俺に斬った覚えがない以上、テメェしかいねぇだろ。……まぁぶっちゃけ半信半疑だけどよ……」

「チュンチュン! チュンチュンチュン!!!」

「雀は『間違いなく善逸が斬った』『ハッキリ見た』って言ってるぞ?」

「だぁからそれが信用ならねぇんだって!! 何度聞いても俺には『チュンチュン』としか言ってるように聞こえねえんですけどぉ!?」

 

「チュンッ! チュンチュン!!」

 

「あぁごめんな? 『雀』じゃなくて、『うこぎ』か。分かった」

「チュン!」

 

 『雀』改め『うこぎ』は炭治郎の言葉が正しいと示すように、一鳴きして首肯した。

 

「いやだからなんで解るのぉ!?」

 

「チュンチュン。チュンチュチュン」

 

「俺も大体わかるぜ。*1

 ……『うさぎ』でもいいし、『チュン太郎』(今まで通りの呼び方)でも構わねぇってよ!」

 

「チュン……」

 

 続けて首肯。(相変わらず固有名詞は間違っているが)大体合っているらしい。

 

「マジで!?

 …………もしかして俺以外の隊士は皆聞き取りできるのか……?」*2

 

「てか、今はんなこたぁどうでもいいだろ。

 ──それよりどうすんだ? 隊長。追うのか、退くのか」

 

「……善逸と伊之助は、山を降りろ。ここからは、俺一人で行く」

 

「──あ゛ぁ !? なら俺も残るわ!! 俺はまだやれるぞ!!」

 

「俺が倒した鬼は、()()()()()()()()()()

 

 ──つまり、()()()()のだ。『操り糸』の本体に加えて、更に格上の鬼が。

 そして、『操り糸』が逃げた先で……合流しているかもしれない。

 

「…………足手纏いだって、言いてぇのかよ?」

「十二鬼月は、怪我人が戦って勝てるような相手じゃない。前に俺が戦った『数字落ち』ですら……もしあの時体調が万全じゃなかったらと思うと、冷や汗が出る」

「……俺は怪我なんかしてねぇ」

「いや誰がどう見たって、全身打撲と擦り傷だらけだろ……」

「気のせいだッッ」

「伊之助……」

 

 

「──大変だね、お前も」

 

 

「「「!?」」」

 

 

 ──その時、山から『ソレ』以外の音が消えた。

 

 ソレは、少年の姿をした鬼だった。

 

 ソレは、木々の間に張り巡らされた糸の上に立ち……炭治郎達を見下ろしていた。

 

 

「全てのものには『役割』がある。『兄』には『兄』の。『母』には『母』の、『役割』が……ね」

 

(──な、なんだアイツ……震えが止まらねぇ。『肌』が、身体が、全力で『()()()()()()()()()』って叫んでやがる……!!)

 

 

 伊之助は、良くも悪くも『獣』に近い。

 故に解る。分かってしまう。

 

 ──()()に認識されてはいけない。対峙してはいけない。

 

 近付いてしまった者の最適解は、『息を潜めて動かない』ことである──と。

 

 

「上に立つ者は、下の者を守らなきゃいけない。下の者は守られる代わりに、上の者が言うことには従わないといけない。そういう『役割』がある。

 ────なのにさぁ……」

 

 

 少年が腕を振るうと、炭治郎達の前に『何か』が飛来した。

 『ドゴン』と重い音を立てて大地に叩き付けられたそれは……()()()姿()()()()()だった。

 

 

「どうして言うことを聞けないのかなぁ……『母さん』ならさぁ……力が及ばなくても、『子供』を守ってよ……戦いもせずに逃げ帰るとか、論外にも程があるでしょ……」

 

「う、ぅ……」

 

「だからもう、キミはいらない」

 

「──ウソつき……! 『守ってあげる』って、言ったくせに……!! 嘘吐き……!!!」

 

「はぁぁ……自分は『役割』を果たそうともしなかったくせに、僕のことを『嘘吐き』呼ばわり……? 酷い言い(ぐさ)だね。

 ──そう思うだろう? お前も」

 

「……俺に言っている、のか?」

 

 突然話を振られ、困惑しながらも……炭治郎は相槌を打つ。

 

「そう。そうだよ、額に痣のあるお前。

 お前がその隊の指揮官だろう?」

 

「……そうだ」

 

「キミ達の話、聞こえてたよ。だからちょっと、共感しちゃってさ……」

 

「共感?」

 

「弱いくせして前へ出たがるバカに、多少強くてもやる気の無い臆病者──本ッ当に役立たずでイヤになるよね

 

「「──ッッ」」

 

 言葉と共に、怒気が伊之助と善逸へ向けられる。

 それだけで……二人は身体が動かなくなったことを自覚した。

 

 しかし、

 

 

「──訂正しろ。伊之助も、善逸も、『役立たず』なんかじゃない……!」

 

 

 炭治郎は刀を抜いて、二人を背に庇うように前へ出た。

 

(──チクショウ、チクショウ……! 情けねぇ……!! 『山の王』だなんだと吹聴しておいて、畜生……!!

 アイツが恐ろしくて仕方ねぇ……! その上他人に庇われて、屈辱よりも安心が(まさ)っちまうなんて……!)

 

(……………………)

 

 

「健気だね。たとえ部下が()()()()()()()でも、『隊長』らしく『部下を守る』だなんて──」

 

「『訂正しろ』と、そう言った!!!」

 

「なら試そうか。

 ──()()。『父さん』」

 

 

「──ガ ァ ア゛ア ァァ!!!」

 

 

 少年の呼び声に応じて、巨漢の身体に蜘蛛の頭を持った異形の鬼が姿を現した。

 

 

(なんて威圧感……! この鬼も、まさか……!!)

 

 

「さぁ、僕の前で『役割』を果たしてみせてよ」

 

 

 

 *

 

 

 

 大正噂話

 

 

 ──『試す』と言っても、猪と金髪には全く期待していない。()は、自分の役割を理解してない奴は生きている価値が無いと思っているから。

 

 俺が『試す』のは──痣の少年だ。

 

 親は子を、兄や姉は弟妹を、命懸けで守る。それが大前提で、一番大事で、なのにいままで誰も、果たしてくれる者のいなかった『役割』だ。

 

 結局()が一番強いから。誰も僕を守ってくれない。守ろうとさえ、してくれない。

 

 ──でも、彼はどうか?

 

 自分より強い敵を前に、命を懸けられるのか? 最期まで、部下を守ろうとするだろうか?

 

 

 ────それがもしも、できるのなら。

 

 

 僕は彼を鬼にしよう。新しい『兄』に迎えよう。

 鬼への勧誘は上弦特権らしいけど、俺には関係ない。何故なら既に、上弦以上の特権を与えられている。

 

 それに、もし断られたとしても……その時は、()()()に『血戦』を挑めばいいだけの話だ。少なくとも俺は、()()()()()()()()()()()のだから────。

 

 

 

 *

 

 

 

 コソコソ噂話

 

 公式ファンブックより、家族に与えていた血鬼術を全回収して本気になった累くんは、冨岡さん(柱)といい勝負ができた可能性がある上、()()()()()()()()()()()()()()()()らしいぞ。

 この情報から、『全力累くん』は宇髄さんに瞬殺された『堕姫第一形態』よりはほぼ間違いなく強いと思われるぞ!

 

 

*1
伊之助は動物の考えていることが分かる。ただし動物が何を考えているか気にすることが少ないので役に立つことは少ないとのこと。

*2
いいえ。(YAMA)育ちがオカシイだけです。

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