鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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(9E)

 

(念には念を入れて──)

「父さん、口開けて」

「アァ?」

 

 巨漢の鬼が口を開けて振り向くと、少年の鬼はそこへ向かって『赤い蜘蛛』を投げ入れた。

 

「グゥッ!?」

 

「分かる? 父さん──()()は、兄さんの形見だ」

 

「ア……」

 

「──仇を取って。できるよね?」

 

「ァ、ア……! よグも……!! オレの『家族』ヲ、よグもォォォ!!!」

 

 『蜘蛛』を取り込んだ巨漢は、身体を震わせながらみるみる巨大化し──縦寸十一尺まで急速に成長した。炭治郎達の倍は超えている。

 

「──ッ」

(大きさだけじゃない。臭いも変化した……! この刺激臭は、あの人面蜘蛛と同じ──)

 

「シャアアアアアアッッ!!!」

 

「くッ……!」

 

 怒り狂った巨漢は、その体躯に見合わない俊足で間合いを詰め、炭治郎に向けて拳を振るった。

 対する炭治郎は『捌ノ型(滝壷)』で迎撃し──戦慄する。

 

(速い。重い。そして何より、硬い……!!

 咄嗟に出した型で、力が乗り切ってなかったとはいえ──()()()()()()()()……!)

 

「──伊之助、善逸! ()()()!! ここは俺が食い止める!!」

「こレ以上……! オ゛レの『家族』にィ、手ヲ出すなァァ!!!」

 

「……俺、は……俺は……!!」

 

「頼むからッ、早く……! 俺も長くは持たない……!!」

 

 血鬼術を用いない、()()()()()の連続。それですら、炭治郎は防戦一方になっていた。

 

(──割り込めねぇ。肌が風圧を感じた時には、もう次の拳が来てやがる……それを受け切っている、コイツの動きも……剣の軌道が、ほとんど見えねぇ。俺を相手にしていた時とは、別物だ……)

 

「────恥じるな!! もっと強くなるんじゃなかったのかッ、嘴平伊之助!!! ここで死んだら永久に『癸』のままお終いだぞ!? 今はッ、生き残ることだけ考えろ!!!」

 

「……ッ」

 

「でも、炭治郎……!」

 

「心配するな善逸!! 俺だって死ぬ気は無い!! 二人が逃げてくれたら、その後で『()()()』を使ってコイツを斬る! ただちょっとこの状況では使いにくいから、二人には離れていて欲しい!! それだけだ!」

 

(──分かるよ……! 炭治郎が嘘を言ってないのは分かる。『奥の手』があるってのはハッタリじゃない。でも……!

 でもお前ッ、その『音』は──()()()()()()()()()()()()()()()()じゃんか……!!)

 

「〜〜〜〜っっ! 逃げるぞ、紋逸!!」

「──ちょっ、伊之助!? おッ、オイおまっ……!」

 

「…………それでいい」

 

 伊之助は善逸の腕を引き、逃走を開始した。

 

「──ほら。結局、『役立たず』は『役立たず』じゃないか」

「一人で全部できなきゃ、皆『役立たず』なのか……!? 伊之助がいなかったら、俺は最初の鬼を見つけられなかった……! 善逸がいなければ、伊之助はもう死んでいた……!

 皆、その場その場で助け合って生きている! それがどうして解らない……!?」

「いいや、解ってるよ。だから僕は『助けてあげる(力をあげる)』から『助けてよ(守ってちょうだい)』と言ってるんだ。

 ……にしてもあの猪、索敵要員だったのか。なのに直接戦いたがるって……やっぱり『役割』を理解しているとは思えないね。ここで生き残っても、『役立たず』のままどっかで野垂れ死ぬでしょ」

 

「お前……!!」

 

「それに金髪の奴も、護衛があんな腰抜けでどうするのさ。

 ──うん、何一つ訂正する気にはなれない『役立たず』っぷりだ」

 

「いい加減に、しろ……ッ!」

 

「──ん?」

(気配が変わった?)

 

 炭治郎は渾身の力を込めた『肆ノ型(打ち潮)』で巨漢の鬼を弾き飛ばし──()()()()()()()()

 

 

「覚悟しろ。今からお前達を、斬る」

 

 

 

 *

 

 

 

 大正噂話

 

 

「──善蜜、雀を出せッ」

「あぁ!?」

「鎹雀を出せッつってんだ!!」

 

「〜〜っ、何だよもう……! チュン太郎!!」

「チュン!!」

 

「雀、()()()()()()!! 一番近い隊士の場所か、情報の集まる場所か、どっちでもいい!!」

 

(──ッ! そっか、落ち込んでる場合じゃない。増援を呼ばないと!!)

「なら情報が集まる場所の方が良い!! 相手は十二鬼月だ! 並の隊士じゃ絶対足手纏いになる!」

 

「──チュンッ! チュンチュンチュン!!!」

 

「伊之助、座標は!? 足の速さだけなら俺が一番だ!」

 

「──港町……いや、とにかく南の方を目指して道なりに走れ! 途中で神社が見えたらっ、そこが鴉の集まる最寄りの『集会場』だ!!! テメェの耳なら、細かく言わなくても近付きゃ解るな!?」

「分かった! 南だな!?」

 

 

 

「──どうしたの? あなた。そんなに慌てて」

 

 

「……『那田蜘蛛山』ね。分かった」

 

 

「すぐ、助けに行くから──()()()

 

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