(念には念を入れて──)
「父さん、口開けて」
「アァ?」
巨漢の鬼が口を開けて振り向くと、少年の鬼はそこへ向かって『赤い蜘蛛』を投げ入れた。
「グゥッ!?」
「分かる? 父さん──
「ア……」
「──仇を取って。できるよね?」
「ァ、ア……! よグも……!! オレの『家族』ヲ、よグもォォォ!!!」
『蜘蛛』を取り込んだ巨漢は、身体を震わせながらみるみる巨大化し──縦寸十一尺まで急速に成長した。炭治郎達の倍は超えている。
「──ッ」
(大きさだけじゃない。臭いも変化した……! この刺激臭は、あの人面蜘蛛と同じ──)
「シャアアアアアアッッ!!!」
「くッ……!」
怒り狂った巨漢は、その体躯に見合わない俊足で間合いを詰め、炭治郎に向けて拳を振るった。
対する炭治郎は『
(速い。重い。そして何より、硬い……!!
咄嗟に出した型で、力が乗り切ってなかったとはいえ──
「──伊之助、善逸!
「こレ以上……! オ゛レの『家族』にィ、手ヲ出すなァァ!!!」
「……俺、は……俺は……!!」
「頼むからッ、早く……! 俺も長くは持たない……!!」
血鬼術を用いない、
(──割り込めねぇ。肌が風圧を感じた時には、もう次の拳が来てやがる……それを受け切っている、コイツの動きも……剣の軌道が、ほとんど見えねぇ。俺を相手にしていた時とは、別物だ……)
「────恥じるな!! もっと強くなるんじゃなかったのかッ、嘴平伊之助!!! ここで死んだら永久に『癸』のままお終いだぞ!? 今はッ、生き残ることだけ考えろ!!!」
「……ッ」
「でも、炭治郎……!」
「心配するな善逸!! 俺だって死ぬ気は無い!! 二人が逃げてくれたら、その後で『
(──分かるよ……! 炭治郎が嘘を言ってないのは分かる。『奥の手』があるってのはハッタリじゃない。でも……!
でもお前ッ、その『音』は──
「〜〜〜〜っっ! 逃げるぞ、紋逸!!」
「──ちょっ、伊之助!? おッ、オイおまっ……!」
「…………それでいい」
伊之助は善逸の腕を引き、逃走を開始した。
「──ほら。結局、『役立たず』は『役立たず』じゃないか」
「一人で全部できなきゃ、皆『役立たず』なのか……!? 伊之助がいなかったら、俺は最初の鬼を見つけられなかった……! 善逸がいなければ、伊之助はもう死んでいた……!
皆、その場その場で助け合って生きている! それがどうして解らない……!?」
「いいや、解ってるよ。だから僕は『
……にしてもあの猪、索敵要員だったのか。なのに直接戦いたがるって……やっぱり『役割』を理解しているとは思えないね。ここで生き残っても、『役立たず』のままどっかで野垂れ死ぬでしょ」
「お前……!!」
「それに金髪の奴も、護衛があんな腰抜けでどうするのさ。
──うん、何一つ訂正する気にはなれない『役立たず』っぷりだ」
「いい加減に、しろ……ッ!」
「──ん?」
(気配が変わった?)
炭治郎は渾身の力を込めた『
「覚悟しろ。今からお前達を、斬る」
*
大正噂話
「──善蜜、雀を出せッ」
「あぁ!?」
「鎹雀を出せッつってんだ!!」
「〜〜っ、何だよもう……! チュン太郎!!」
「チュン!!」
「雀、
(──ッ! そっか、落ち込んでる場合じゃない。増援を呼ばないと!!)
「なら情報が集まる場所の方が良い!! 相手は十二鬼月だ! 並の隊士じゃ絶対足手纏いになる!」
「──チュンッ! チュンチュンチュン!!!」
「伊之助、座標は!? 足の速さだけなら俺が一番だ!」
「──港町……いや、とにかく南の方を目指して道なりに走れ! 途中で神社が見えたらっ、そこが鴉の集まる最寄りの『集会場』だ!!! テメェの耳なら、細かく言わなくても近付きゃ解るな!?」
「分かった! 南だな!?」
「──どうしたの? あなた。そんなに慌てて」
「……『那田蜘蛛山』ね。分かった」
「すぐ、助けに行くから──