──蝶屋敷。機能回復訓練用道場にて。
軽い柔軟を済ませた後、俺とカナヲさんは少し早めの鍛錬を始めていた。
「……私の負け」
薬湯の入った湯呑みを頭に乗せたカナヲさんが、心なしかいつもより頬を緩ませて──そう宣言した。
幾度もの敗北を重ねながらも、俺は遂に反射訓練での白星を挙げたのだ。
──その時だった。
「うむ! 良い試合だった!!」
「「わっっ」」
「あわわわ……」
不意に発せられた称賛の声に驚いて、俺は
声の主が、想定外の第三者だったということもあるが……今はそれよりも。
「す、すみませんカナヲさん!」
「ん、気にしないで。元々そういう訓練だし。
──しかし、お早い到着ですね。
「いやはや、驚かせてすまない!
甘露寺の気が昂っていたからな! 日課の走り込み代わりに道中を走って来て、予定より大分早く着いてしまった!*1
栗花落少女と竈門少年も、朝から精が出ているようで感心感心──ではあるのだが、『
「……? ……では、お言葉に甘えて。お先に失礼します。
──炭治郎」
「あッ、はい!」
「……?? ……次は負けないから。気を抜かずに鍛錬を続けること」
「──それは勿論。……です、ハイ」
「…………それじゃ、またね」
「……はい。またいつか」
それから彼女が退室したことを確認し──無意識に溜め込んでいた息を吐き出した。
「師匠、一応私も着いて行きましょうか?」
「そうだな、頼む」
……うん、その方が安全で良いだろう。
おそらく『甘露寺』さんと思われる女性が、カナヲさんを追って外へ出て行く様子を……煉獄さんと二人で見送った。
そうして、問いかける。
「あの、煉獄さん────隊服って、
「あぁ。
なのに何故か、薬湯で濡れたカナヲさんの隊服は……彼女の身体に
「では、アレはどういう……」
「案ずるな。こういったことをやりそうな痴れ者なら一人、心当たりがある。可能な限り早急に、対処しておこう」
「……まさか以前にも、同じようなことが?」
「いや、同じではないな。
以前問題になった時は、直接露出の多い隊服を渡していたらしいからな……隊服を受け取った女性隊士側が返品して、担当を変えさせれば済んでいたのだが……」
「ということは、縫製係ですか。注意はされなかったんですか?」
「勿論した。以前俺と錆兎、胡蝶姉妹、後は不死川がそれぞれ別件で厳重注意を行なっている」
……支柱が五人も出張ったのか。思っていたより大事になっていたらしい。
「そこまでいくと、今までよく除隊になりませんでしたね……」
「……理由は二つ。
一つは『本当に反省していると思っていたから』 注意して以降は、女性隊士にも注文通りの寸法で真面目に作っていたからな……。まさかあんな
「──開発?」
「それが理由の二つ目だ。
奴──前田まさおは、優秀な縫製係であると同時に……藤花彫り技師であり、鎹鴉の調教師であり──それらを可能とする、特殊素材を作成する化学者としての顔を持っている。
放逐するには、些か惜しい」
「…………それは、困りましたね」
「そうだな。
──が、今はそれよりだ。丁度都合良く、栗花落少女と甘露寺が席を外してくれたワケだからな……
「……? はい、なんでしょう」
「実はだな──」
『人を喰わない鬼は、
疲労も寝不足も吹き飛ぶような、衝撃の事実が告げられた。
*
大正コソコソ噂話
ゲスメガネが受けた厳重注意について。
CASE1:かぐやの隊服(上着)を露出多めで提出。かぐやも(自分が着る分にはまぁ見られても減るもんじゃないし、攻撃は避ければ済むから別に構わないものの、他の女性隊士にもやるのは看過できないので)怒ろうと思ったが、それ以上に杏寿郎と錆兎がキレたので仲裁に回った。結果、『胸元の露出はさせない』と誓わせた。
CASE2:『夏だから』と、姉妹揃って異様に丈が短い馬上袴を渡された。姉妹は隊服に油をかけて燃やした。『脚の露出もさせない』と誓わせた。
CASE3:女性隊士にナンパをして困らせていたので、通りがかった実弥が凄んで止めさせた。『迷惑なナンパもしない』と誓わせた。
(一応明記しておきますと、)ゲスのスペックは『これくらいないとクビになってないのオカシイだろコイツ……』という筆者の独自解釈です。