「ねんねんころり、こんころり」
走行している汽車の上に、誰かが立っていた。
珍しい洋服で身を包んだ、中性的な風貌を持つソレは──鬼だった。
「予想より早く嗅ぎつけられはしたけど……甘いね。物の数じゃないんだよ。
──うん? いや、コイツは」
鬼は、慎重な性格をしていた。
より大勢の人間を、安全に喰らうため──綿密な計画を立てていたのだ。
「へぇぇ……? 『柱』と『継子』か……危なかった。やっぱり立派に見える石橋でも、叩いてから渡らないとね。
──更に念を入れて、
この鬼は『血鬼術』を持つ者──『異能の鬼』だった。
その力は鬼毎によって異なるが──この者は、『夢見』の力を有していた。
鬼は夢を介し、術中に嵌めた対象の素性を──
──鬼は、非常に慎重だった。
そして、
「もうしばらく、『幸せな夢』を楽しませてあげるよ。
──その後で、俺もたっぷり
慎重である以上に、醜悪な鬼であった。
*
──異変を察知し、わたしは目を覚ました。
ここ最近ですっかり身に付いてしまった、小さな違和感を嗅ぎ取る危険予知。
…………静か過ぎる。
一緒に来た兄と、焔のような彼。桜餅の匂いがする彼女。
三人共、『とても』が付くほど賑やかな人だから。ここまでシンとすることは今までなかった。
しかも今日は、珍妙なタンポポみたいな『彼』と猪のような彼も居る。ここまで揃うと最早騒々しいくらいなのに……この状況はおかしい。
しかし『静かである』ということは、裏を返せば『差し迫った危機はまだない』ということでもある。
大きな音を出さないように気をつけながら、ゆっくり扉を開けて外に出る。
…………失敗して転げ落ちたが、まぁいいだろう。依然周囲に動きはない。
「……ムゥ」
拍子抜けした。
皆揃って、
……そのせいで『わたしだけ逆に起きてしまった』という事実に、なんだか腹が立ち……兄を揺さぶり起こすことにした。
「……ウゥ?」
しかし中々、兄は起きない。
勝手に手のひらを頭に乗せてみても、兄自身の意思がないため
「──フンッ!」
仕方がないので、頭突きしてみる。額から顎先にかけて、何か液体が流れるような感覚。
──遅れて激痛。
端的に言って、出血していた。
「ウううぅうううゥゥ!!!!」
年甲斐もなく癇癪を起こし、泣き喚く。
激情に呼応し、血鬼術が暴発するのが分かる。
構うものか。何に火をつけようと、それが『鬼由来のもの』でない限り──わたしの炎は無害だ。燃え広がることはない。
…………筈、なのだけれど。
──何故か、
「…………う??」
涙が一瞬で、『スンッ』と引っ込んだ。
…………なんだか気が締まらないけれど──。
「……むぅ」
もう既に、『
*
大正コソコソ噂話
カオス過ぎてカットされた合流シーン一部始終。
「おぉおお!! 合同任務の相手って、炭治郎のことだったのか!」
「──善逸! 伊之助! 久しぶりだな!!」
「────。(コイツ、見ない間にまた気配が強くなってやがる……! だが!! 俺様はそれ以上に強くなってる筈だ! 蜘蛛山の後にこなした任務の数は、
オイ、勝負しろ炭士郎! 今日という今日は『奥の手』使わせてやっからな!!!」
「分かった! でも勝負は、任務が終わった後だ!!」
「おう!!」
「うまい! うまい!」
「……それで炭治郎、そちらのキレーなお姉さんとはどういった関係で……?」
「──ふぇっ!?」
(えッ、ウソ!? 綺麗!? 私が!?!? 嬉しい!!!)
「あぁ、こちら『
「はい! 炭治郎くんと禰豆子ちゃんの『形式的な監視役』兼『姉弟子』の、甘露寺蜜璃です! 仲良くしようね!!」
「はッ、はイ! 是非!!
……ん? 『監視役』で『姉弟子』……?
…………オイ炭治郎」
「……? なんだ、善逸」
「お前ふざっっけんなよお前! 真菰さんといい甘露寺さんといい、なんでお前ばっかり美人な姉弟子に手取り足取り稽古つけて貰ってんだよ代われよ!? 『監視』の名目で毎日美人とキャッキャウフフできるんなら俺だって頑張れるわ!! お前がそんな良い思いをしてた間、俺はこのクソ猪と一緒に鬼の尻を追っかけてたんだぞオイ!?!?」
「……黄色い少年。あまりうるさくすると、周囲の迷惑になるぞ。この弁当でも食べて、少し落ち着くといい」
「アンタに言われたかないわこの妖怪食いしんぼ!!!」
「善逸、なんて口の利き方をしてるんだ!? 煉獄さんは『柱』だぞ!?」
「イィィヤァァァ!?!? そういう大事なことは最初に言ってぇ!? 命だけはお助けをぉぉぉ!!!」
(うるさい……)