鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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(16B)

 

  破壊殺・乱式

  ()()()() 肆ノ型 盛炎のうねり・乱

 

「どうしたどうした!? 威勢の割に、随分と動きが悪いなァ!?」

 

「──ッ」

(しょうがないでしょ!? 私こういう戦い方得意じゃないし!!)

 

 猗窩座の猛攻を前に、蜜璃は防戦一方だった。しかも、被弾を避け切れていない。……形勢は、誰の目にも明らかだった。

 

 ……彼女も自覚している通り、蜜璃は……と言うより『恋の呼吸』は、持久戦向きではない。

 そもそも『攻め』重視の『炎の呼吸』から派生しているためか、『攻防一体の型』は多いが『専守防衛の型』は存在しないのだ。

 

 では何故派生元とは言え『適性外の呼吸』を使ってまで、格上相手に、態々『不得意』な戦法を使うのか。

 

 ……猗窩座の攻撃は、武器も血鬼術も用いない『純粋な打撃』である。

 たとえば今使われている『乱式』は、言葉にすれば……『ひたすら速くて重い()()の殴打を連続して繰り出す技』であって、血鬼術でもなんでもない。

 

 ──()()()()()、猗窩座という鬼は厄介だった。

 

 これは『純粋』な、小細工抜きの地力勝負である。そこに『運』という『不純物』が介入する余地は存在しない。最初から決まっている『勝敗』は、覆すことができない。

 

 ──甘露寺蜜璃では……猗窩座に勝てない。

 

 それを理解しているから、彼女は専守防衛(時間稼ぎ)に徹するのだ。杏寿郎が到着するまで耐えれば、勝つことも不可能ではなくなる。

 

 ……もっとも、()()()()()()()()()()()が。

 

 

  ()()()() 伍ノ型──

  破壊殺・脚式 流閃群光

 

 

 蜜璃は宙返りと共に、斬撃を繰り出そうとするが……猗窩座は『お見通し』とばかりに上段へ連続蹴りを行い、彼女を吹き飛ばした。

 

「ガッッハ……!」

「ハッハァ! よく飛んだなァ!!」

 

「甘露寺さん……ッ」

「──大丈夫!! まだまだやれるわ……!」

 

(でも、()()()()()()ね……! 攻撃が、()()()()()()()()()()()()感じがするわ……!)

 

 猗窩座の『血鬼術』は、最初に起動した『羅針』のみである。

 その効果は、『闘気を読む』こと。効果範囲内の生物の位置・強さ・意識を向ける先が分かる術。

 ……以上。それだけ。鬼の超感覚と膂力があれば、殆ど無用の長物である。血鬼術だけで評するなら、間違いなく『最弱の上弦』と言えるだろう。

 ──しかし『武人』である彼が持つことで、この術は正しく『鬼に金棒』と化している。

 

(……()()()()

 

 猗窩座は、確かに蹴り飛ばした筈の蜜璃が……強がりではなく()()()()()()()()()()()ことに気付いた。彼女の闘気は、まるで目減りしていない。

 

 ──彼とて、原因には気付いている。

 彼女の筋肉は、並外れた柔軟性と驚異的な密度を誇る。打撃を受けても、バネのように衝撃を吸収し……鋼のように耐えることができるのだ。

 

 ────しかしいくらなんでも、その密度が()()という信じ難い領域にあることは……彼の想定を超えていた。

 

 実のところ猗窩座も猗窩座で、蜜璃とは相性が悪かったのだ。

 

 ──両者共に、膠着状態。

 

 故に、

 

 

「破壊殺──」

(筋肉の鎧で打撃が通らないなら、頭を潰すまで。

 空式で隙を作ってから──)

 

「……!」

(来るッッ)

 

 

 ──時間経過(それ)は、彼女の有利に働いた。

 

 

  炎の呼吸 壱ノ型 不知火

 

 

「……は?」

 

「──まさか、上弦の鬼が来ていたとはな。よもやよもやだ。

 甘露寺。竈門少年。俺が来るまで、よく堪えた」

 

 

「「──煉獄さん……!!」」

 

 

「しかし、なるほど。()()が『常にできる』というのだから、()()()は恐ろしい」

 

「──なんだ、お前は」

(いつから背後に立っていた? 何故()()()()()()()? どうして──)

 

 猗窩座は両手で()()()()()()()()、杏寿郎を睨んだ。

 

(──どうして、俺の頸は()()()()()()()()()……!?)

 

「俺は炎柱。煉獄杏寿郎だ」

 

 言うや否や、彼は『気炎万象(参ノ型)』と『昇り炎天(弐ノ型)』を繰り出し──猗窩座の両腕を斬り落とした。

 支えを失った頸が、大地に転がって……少しずつ、塵になっていく。

 

「────すごい……一瞬で、勝っちゃった……」

「……とは言え、浮かれてもいられない。まだ上弦には、かぐや様を倒した『壱』が残っている」

 

(──なんだ、その口振りは。それでは俺が、単なる前座のようではないか。

 ここに居ない『(アイツ)』ではなく、目の前の俺を見ろ。まだ終わりではない。まだ俺は負けていない)

 

 そんな思考を、読み取ったワケではないだろうが……杏寿郎の視線が、猗窩座に向いた。

 ボロボロ、ボロボロ、崩れていって……もう半分以上消えている、彼の頭に。

 

「…………」

 

 最後まで残った、『参』と刻まれた眼球は……最後に杏寿郎が背を向ける様子を確認して、塵になった。

 

(ふざけるな。まだ俺は戦える。まだ──)

 

 ──『猗窩座という鬼』は、ここで終わった。

 

 

 

 *

 

 

 

 ■■噂■

 

 

 負けるのか? 俺が。一撃も技を出せずに、ワケも分からないまま。

 

 ──否だ。俺はまだ戦える。

 そして強くなる。誰よりも強く。こんなところで終われない。

 

 強くなって──……強くなって、どうしたいのだったか。

 

 ……気の迷いだ。こんなことを考えてしまうなんて。

 …………()()()のせいだ。『甘露寺』とか呼ばれていた、あの女。

 

 

 ────殺してやる。

 

 

術式展開『破壊殺・羅針』

 

 

「「「──ッッッ!?!?」」」

 

 

 鬼狩り共が、息を呑む気配。

 ──分かる。感じる。()()()()()()。それと、近寄ってくる小蝿が三匹。

 

 酷い気分だ。どうでもいい。

 身体の調子が最高に良い。どうでもいい。

 

 ──ただ、殺したい。……誰を?

 

 …………ダメだ。さっきから、おかしな疑問ばかりが浮かぶ。

 

 早く……一刻も早く、殺さなければ……これ以上、おかしくなる前に。

 

 ────あの女を、この手で。

 

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