第二十三話:報告書
「ふむ……」
蝶屋敷。個室。
三年間も占領してしまっていたらしい、我が寝台にて。
杏寿郎の無事を確認してメンタルが回復したので、調子良く過去の資料に目を通していた私だが……。
「…………コレ、私ホントに休んでる余裕ありますかね……?」
……ウン、ナニコレ??
竈門家は…………どうすることもできなかったのだろう。その間グースカ寝ていた、私の責任だ。
でも那田蜘蛛山はホントに何? 犠牲者出し過ぎでしょ。どうした耀哉。
それと遊郭……
「下弦の席が、残っている……鬼舞辻が戦力の低下を避けた?」
正史より警戒心が強くなっているのか?
…………いや、考えてもしょうがない。口惜しいが私には、『この先』の知識がまるで備わっていないのだから。
「……ここは大人しく、耀哉の指示に従っておきましょう」
私の存在で悪影響が出たのなら、私が責任を持ってその分鬼を斬る──……と、言いたいところではあるのだが。
私は少し暴れ過ぎた。雲取山で全てを終わらせるつもりで、少々無理を通し過ぎた。
その過程で、信頼を失わなかったのはいいけれど……今となっては、『過信されている』状態でしかない。変に我を通して、意図を深読みされても困る。
というワケで、病み上がりの身体を癒すため──刀鍛冶の里が誇る名湯を、堪能しに行くとしよう。
*
大正コソコソ噂話
童磨の死によって変わった堕姫と、病葉の話。
「──情報源は手に入れた。
次にどうするか……『まきを』は口を割らない。放置して誘蛾灯にするのもいいけど……それじゃあ勿体ないわよね」
……最近、妹は丸くなった。そして、賢くなった。
正確には、煮え滾る憎悪が一点に集中し──元々備わっていた知性が表面化した。
「あーもう、手間かけさせんじゃないわよ……」
『まぁまぁ、そうカリカリしなさんな。折角のかわいい顔が台無しだぜ? 堕姫ちゃん』
「──でもまぁ、いいわ。苦労があるほど、達成感は大きいものね?」
一瞬癇癪を起こしかけても、すぐに笑って持ち直す。目的に向かって邁進する。
…………恐ろしい成長だ。
『上に立つ者は、常に余裕を持って寛容に。優雅に立ち回らなくっちゃあ。
勿論、誰にでもできることじゃあないけれど──キミならできるだろ?』
「えぇ。私ならできるわ」
『時には上ばかり見てないで、足元を固めるのも大事だぜ?
下の面倒を見るのも、俺達のつとめさ』
「ふぅん……死んだのね、
……まぁアイツら、確かに下弦としては強かったけど……『自分ならその気になれば
──でも、
妹は、下弦の中でも臆病かつ
「病葉、手を貸しなさい。情報を抜いてほしい奴がいるの。──勿論、お礼の『帯』は弾むわ」
妹の『帯』は分身と、収納庫としての働きを持つ。
肆は『上弦の分体』として、参は『千変万化の暗器』として、妹の『帯』を求めた。
「──ふふっ、いい返事よ。
────鳴女。病葉をここに呼びなさい」
そして呼び出された参と、引き合わされたまきをは──同時に目を見開いた。
「──お前は……ッ!」
「……そうか。お前が居るということは……連絡を取り合っていたのはアイツだな?」
「……何よ。知り合い?」
「……えぇ。
「ふぅん──でも、情はないのね」
「……『道具』にそんなものは必要ありませんから」
下位の鬼であればある程度思考を読める『特権』を持つ俺達には、その言葉が『本気であると同時に
「何よ、意外と可愛いトコもあるじゃない。不細工だけど」
「…………」
「いいわよ? その『天元』ってヤツはアンタの好きにしなさい。
私は柱を──童磨さんを殺した『かぐや』の身内を引き摺り出せれば、それでいい」
「……ありがたき幸せ」
*
噂話2
ただし最初に地下食糧庫へ辿り着くのは
天元が到着する前に『戦略的撤退』を選んだらしい。