鬼殺しのかぐや姫   作:しやぶ

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第二十四話:見えない凶兆

 

 ……『無知は罪である』

 私はこの言葉があまり好きではないのだが、いざ『こういう場面』に遭遇すると……どうしても、罪悪感が湧くものだ。

 

「あーっ、炭治郎くんだ! 元気してた!?」

「──甘露寺さん! お久しぶりです!!」

 

 眼下には、桃髪の女性と赫灼の子。

 私が知るままだった『甘露寺蜜璃』と──額の痣が()()()()()な炭治郎くん。

 彼の痣は本来、手鬼との戦いを境に変形・変色する筈だった。……私が見た、『黒死牟と似通ったもの』に。そして『黒死牟の痣』は、『継国縁壱』と同じ形だという。

 

 ……無論、後悔はない。やらなければ錆兎と真菰(あの二人)が死んでいたし……他の犠牲者も大勢出ていただろう。

 だがそれでも、『私』が彼の『吉兆』を奪ったことは事実で。それ以前に……彼の家族を救えなかったことも、事実なのだ。

 

 彼の痣は、彼がここに立っているという事実は……私の『罪』の、証明である。

 ……なのに私は、その『罪』を償う方法を知らない。『この先』を、知らない。

 

(……皆そうだよ。未来のことなんて、わからないのが『当たり前』

 だから鬼が生まれてしまったし、それを今も滅ぼせていない。

 神様だって手違いを起こすんだよ? 私の身代わりにされただけの、只人だった()()に……『罪』なんて、あるワケがない)

 

 ……ありがとうございます。

 しかし顔の見えないところで曇り顔をされても、あまり味が……。

 

(…………心配して損した……。

 というか、『自分と同じ顔の妹』も守備範囲なの……?)

 

 『同じ顔』と言っても……私、元男ですし。

 二十年も生きてればある程度慣れはしますけど……綺麗すぎて『()()()私』以上には馴染まないんですよね、この顔。前世の私なら、直視するのも気後れしてますよ?

 

(平気で小っ恥ずかしいこと言うわねこの姉……)

 

 恥ずかしいも何も、お互い意識すれば思考が筒抜けになる間柄なワケですし……そりゃあもう開き直って赤裸々にもなりますよ。

 

(はいはい。

 ──それで、いつまで突っ立ってるの? あの二人、放っておくと無限に話し続けるよ?)

 

 ……それもそうですね。行きますか。

 

 

「お二人とも、お話はその辺りで」

 

「────」

「あ、すみません! 私ったら、かぐやさんをほったらかして……!」

 

「私のことは構いませんが、里の皆さんを待たせるのは忍びありません。折角のお料理が冷めてしまいますよ?」

 

「そうですよね! いつも『柱のために』って、すごく張り切って用意してくれてますもんね……!」

 

「──と、いう訳ですので。蜜璃さんをお借りしていきますね、炭治郎くん。

 申し訳ありませんが、お話の続きは後ほど宿に帰ってきてからでお願いします」

 

「あ、はいッ!」

 

「では、また」

 

「──あのッ!」

 

「……? なんでしょう」

 

 

「貴女の技に助けられました。本当に、ありがとうございます!!」

 

 

「…………。

 礼であれば、鱗滝さんに。私は、感謝されるほどのことをしていません」

 

「それでも、ありがとうございます!」

 

「……湯浴みと食事を済ませたら、私の部屋を訪ねてください。あなたが望むなら……今度はあんな見取り稽古モドキではなく、真っ当な形式で手解きをしますから。……感謝の言葉は、その後に」

 

「────是非! よろしくお願いします!!」

 

「……えぇ」

 

 

 

 *

 

 

 

 大正コソコソ噂話

 

 

「──かぐやさんって、炭治郎くんとお知り合いだったんですか!?」

 

「えぇ。顔を合わせるのは十四年ぶりなので……正直、彼が私を覚えていたことには驚いていますがね」

 

「へっ? 十四年ぶり、ですか?」

 

「はい。当時の彼は、まだ赤ん坊でした」

 

「じゃあ、かぐやさんの言ってた『見取り稽古モドキ』って……」

 

「身も蓋もない言い方をすれば、()()()()()()()ですよ。当時の彼には『珍妙な踊り』にしか見えなかったでしょうし、もしかしたら『ただ暴れているだけ』と思われていたかもしれませんね。

 ──それでも、彼なら必要な時に思い出すのだろうと──そういう予感があったんです」

 

「もしかして、『産屋敷家』が持つっていう『先見の明』ですか……!?」

(噂に聞いてた超能力! 凄いわ!)

 

「今はもう、めっきり見えなくなってしまいましたがね」

(実は元々そんなの見えていませんでしたし)

 

「でも凄いです!!」

 

「……炭治郎くんや蜜璃さんだって、凄い人ですよ」

 

 

 *

 

 

(…………ちなみにかぐやは、『先見の明』って……)

 

『ないわよ。あったとしても、それらしき〝勘〟が働いたことはないわね』

 

(……やはり、楽はできませんか)

 

『楽をしてこなかったから、余計な口出しも必要なかったってだけかもだけど』

 

(……だと良いのですが)

 

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