……『無知は罪である』
私はこの言葉があまり好きではないのだが、いざ『こういう場面』に遭遇すると……どうしても、罪悪感が湧くものだ。
「あーっ、炭治郎くんだ! 元気してた!?」
「──甘露寺さん! お久しぶりです!!」
眼下には、桃髪の女性と赫灼の子。
私が知るままだった『甘露寺蜜璃』と──額の痣が
彼の痣は本来、手鬼との戦いを境に変形・変色する筈だった。……私が見た、『黒死牟と似通ったもの』に。そして『黒死牟の痣』は、『継国縁壱』と同じ形だという。
……無論、後悔はない。やらなければ
だがそれでも、『私』が彼の『吉兆』を奪ったことは事実で。それ以前に……彼の家族を救えなかったことも、事実なのだ。
彼の痣は、彼がここに立っているという事実は……私の『罪』の、証明である。
……なのに私は、その『罪』を償う方法を知らない。『この先』を、知らない。
(……皆そうだよ。未来のことなんて、わからないのが『当たり前』
だから鬼が生まれてしまったし、それを今も滅ぼせていない。
神様だって手違いを起こすんだよ? 私の身代わりにされただけの、只人だった
……ありがとうございます。
しかし顔の見えないところで曇り顔をされても、あまり味が……。
(…………心配して損した……。
というか、『自分と同じ顔の妹』も守備範囲なの……?)
『同じ顔』と言っても……私、元男ですし。
二十年も生きてればある程度慣れはしますけど……綺麗すぎて『
(平気で小っ恥ずかしいこと言うわねこの姉……)
恥ずかしいも何も、お互い意識すれば思考が筒抜けになる間柄なワケですし……そりゃあもう開き直って赤裸々にもなりますよ。
(はいはい。
──それで、いつまで突っ立ってるの? あの二人、放っておくと無限に話し続けるよ?)
……それもそうですね。行きますか。
「お二人とも、お話はその辺りで」
「────」
「あ、すみません! 私ったら、かぐやさんをほったらかして……!」
「私のことは構いませんが、里の皆さんを待たせるのは忍びありません。折角のお料理が冷めてしまいますよ?」
「そうですよね! いつも『柱のために』って、すごく張り切って用意してくれてますもんね……!」
「──と、いう訳ですので。蜜璃さんをお借りしていきますね、炭治郎くん。
申し訳ありませんが、お話の続きは後ほど宿に帰ってきてからでお願いします」
「あ、はいッ!」
「では、また」
「──あのッ!」
「……? なんでしょう」
「貴女の技に助けられました。本当に、ありがとうございます!!」
「…………。
礼であれば、鱗滝さんに。私は、感謝されるほどのことをしていません」
「それでも、ありがとうございます!」
「……湯浴みと食事を済ませたら、私の部屋を訪ねてください。あなたが望むなら……今度はあんな見取り稽古モドキではなく、真っ当な形式で手解きをしますから。……感謝の言葉は、その後に」
「────是非! よろしくお願いします!!」
「……えぇ」
*
大正コソコソ噂話
「──かぐやさんって、炭治郎くんとお知り合いだったんですか!?」
「えぇ。顔を合わせるのは十四年ぶりなので……正直、彼が私を覚えていたことには驚いていますがね」
「へっ? 十四年ぶり、ですか?」
「はい。当時の彼は、まだ赤ん坊でした」
「じゃあ、かぐやさんの言ってた『見取り稽古モドキ』って……」
「身も蓋もない言い方をすれば、
──それでも、彼なら必要な時に思い出すのだろうと──そういう予感があったんです」
「もしかして、『産屋敷家』が持つっていう『先見の明』ですか……!?」
(噂に聞いてた超能力! 凄いわ!)
「今はもう、めっきり見えなくなってしまいましたがね」
(実は元々そんなの見えていませんでしたし)
「でも凄いです!!」
「……炭治郎くんや蜜璃さんだって、凄い人ですよ」
*
(…………ちなみにかぐやは、『先見の明』って……)
『ないわよ。あったとしても、それらしき〝勘〟が働いたことはないわね』
(……やはり、楽はできませんか)
『楽をしてこなかったから、余計な口出しも必要なかったってだけかもだけど』
(……だと良いのですが)