「──あ、帰ってきた。
久しぶり! 短期間で大きくなってて凄いな、玄弥は」
「…………??????」
帰ってきたら、自室が同期に我が物顔で占拠されていた件。
しかも同期は、俺が困惑していることにすら気付いていないのか……躊躇する素振りもなく『ズズイ』と距離を詰め、何かの紙箱を手渡してきた。
「はいコレ、お煎餅。
「お、おう……?」
コイツの用件は分かったが、一体全体どういう経緯でそんな話に……?
そして気付けば促されるまま、座布団に腰を落ち着けていた。俺の部屋なのに、主導権が完全に握られている……。
「会ったら聞こうと思ってたんだけど、玄弥ってもしかして、風柱の不死川さんと兄弟だったりする?」
「…………だったらなんだよ」
「聞いたぞ? 玄弥が、『
仕事を頑張るのは良いことだけど、それで周囲に迷惑をかけてたら……誰も幸せになれないだろ?
「……お前、どこまで知ってるんだ?」
「『どこまで』って?」
「戦い方のことと……俺と兄貴の、関係だよ」
「具体的な戦い方については知らないけど……たぶん、お兄さんとは喧嘩中なんだよな?」
「……チッ。なんでよりによってお前が、そんなこと知ってんだよ……」
「え? 俺達友達だろ?」
「いやどうしてそうなる!? お前、俺の腕折ったこと覚えてねぇのか!?」
普通に考えたら『犬猿の仲』 百歩譲っても『ただの同期』だろ……。
「覚えてるけど、アレはしょうがないだろ。子供に乱暴した玄弥が全面的に悪いと思う」
「…………」
全くもってその通りだが、それを覚えていてこの距離感なのか? コイツ。正直コワイ。
「つーかよぉ……俺、お前の名前すら知らねぇんだけど」
……まぁ、
でも名乗り合ってないのは本当。だから、そこんとこがどういう認識なのか……そこを知りたくて、つい嘘を吐いてしまった。
「──あれ、俺……名乗って…………ないな!! ごめん! 忘れてた……!」
何故そんな初歩的なことを忘れてしまえるのか……。
「俺は竈門炭治郎! 改めてよろしく、玄弥!」
「……あぁ、よろしくな。炭治郎」
ついに『よろしく』と言ってしまったが……まぁいいか。不思議と後悔はない。
……対峙していると、毒気が抜ける。
「──で。どうして里長が、わざわざお前を経由して、俺なんかに煎餅を?」
「あー。鉄珍さんって、会うといつもお菓子をくれるだろ?」
いや知らねぇよその前提。たぶんお前が気に入られてるだけだぞそれ。
コイツ、爺さん婆さんに好かれそうな性格してるしな。
「用があって鉄珍さんの家にお邪魔した時に、玄弥の話が出て……『知り合いです』って言ったら、二人分くれたんだよ」
「…………そうか……。
じゃあ、お前は何をしに里長のとこまで行ったんだ?」
いくらコイツが出世頭だからって、柱どころか甲にもなってない段階で、里長が担当になるワケがないし……。
「俺の刀を打ってくれてる刀鍛治の人がさ? いまちょっと行方不明で……人手を回して探してもらってるんだけど、その進捗を聞きに行ってた」
「お、おう。そうか……無事だといいな……」
「うん……」
意外と理由が重くて、ちょっと気まずい。
痛い沈黙を誤魔化すように、貰った煎餅をひとつ頬張ってみる。……うん、うまい。
対する炭治郎はと言うと、同じように煎餅を一枚つまみ──俺とほぼ同時に食べ終えると、すっくと立ち上がった。
「──そろそろおいとまの時間かな。
俺はこれから鍛錬しに行くけど、玄弥はどうする? 一緒に来る?」
「……遠慮しとく。俺の戦い方は
「そっか。お互い、頑張ろうな」
「おう」
そして彼は、部屋をあとにした。
……嵐のような奴だったな。
「今日がかぐやさんに稽古をつけてもらえる最終日だからな……! 気合を入れないと!!」
──本当の『嵐』は、もうすぐそこに。
*
大正コソコソ噂話
今作での玄弥は最終選別の数日前に、彼の入隊を阻止しようとした実弥からボコボコに殴られた状態で参加している。(一応実弥は最初、言葉での説得を試みている)
そして心身共に最悪のコンディションで選別に挑み、(だからといって許されるワケではないが)気が立っていたためかなたに掴みかかり、炭治郎に腕を折られ、畳みかけるように後日もう一度実弥からボコボコにされ、兄との接触禁止令が出されていたりする。
その後も任務では成果をあげるものの(鬼喰いの性質と本人の気質によって)孤立し……玄弥くんは本人が思っている以上に、事情を知っている支柱の面々から心配されていたりするぞ。
鉄珍さんは悲鳴嶼さんから話を聞いていて、彼を気にかけていた。(里に到着した隊士は最初に長へ挨拶することになるワケだが、玄弥に対しては例の『畳におでこつくくらいに頭下げたってや』というセリフは言っていない)
彼が炭治郎経由でお菓子を渡したのは、『炭治郎なら玄弥の友達になってくれるだろう』という期待から。
噂話2
炭治郎は柱合会議の後、支柱の面々の元へ訪れコミュニケーションを取っている。
稀血試験の件もあり、実弥の元へは早い段階で訪問していたが……その際彼が『弟の同期』ということを知っていた実弥は、遠回しに『弟を頼む』と口にしていたりするぞ。