「──腹立たしい」
鬼が
突かれた場所を起点にして、雷鳴が鳴り響く。
生じたその
しかし音を置き去りにして
(これは、避けられねぇ……!)
鬼殺の剣士の最高位。『
──だが。
(何故効かぬ……!?)
(威力は大したことが、ねぇ!!)
少年は雷をものともせず歩みを進め、鬼の頸めがけて我武者羅に刀を振るい続ける。
鬼は後退して刀を回避しつつ、雷による攻撃を放ち続ける。
一方の攻撃は命中し続け、一方の攻撃は掠りもしない。誰の目から見ても、どちらが優勢でどちらが劣勢かは明らかだろう。
──にも関わらず、両者の心境は真逆であった。
「ねぇ兄さん、まだ首取れないの〜? 僕もう
「積怒ッ、何をしている積怒……! 早く片付けてッ、儂をっっ、助けろ……!!」
「うっせ、いま温まってきたトコなんだよ! もうちょい待ってろ……!!」
「どいつもこいつもッ、腹立たしい……!!!」
鬼と剣士には、それぞれ相方がいた。
宿の廊下という、長物を扱う武人達には狭い空間内で……もう一つの戦いが、繰り広げられていたのだ。
──剣士が鬼を一方的に斬り刻み続けるという、正反対の形で。
鬼達は焦っていた。
(マズイ……! これは、マズい……!
儂らはどれだけ斬られようとも、死にはしない。しかしこの調子では、無惨様からの粛清は避けられない……!!)
(何なのだ、今代の柱達は……!? 『虹』と『炎』──既に二人、柱の中核と目される剣士を削っている筈だ……! 『音』と『花』──
──それで何故、これほどの練度を誇る柱が残っている!? それも、こんな幼い
「〜〜ッ! 可楽ッ、遊びは終わりだ──全て吹き飛ばせ!!!」
(!? しまっ──)
痺れを切らした積怒の言葉に呼応し、『カカッ』という楽しげな笑い声が、壁越しに届く。
──次の瞬間、建物が風船のように膨らんで……破裂した。
有一郎と玄弥が吹き飛ばされて戦線離脱し、窓を掴んで耐えようとした禰豆子が、瓦礫に埋もれる。
「カカッ、どうだ哀絶! これで槍を振るいやすくなったのう!?」
「哀しい……得物を取り回しやすくなったのは、あちらも同じことだ……」
「贅沢を言うな哀絶。一方的にやられていた分際で……腹立たしい」
「俺は喜んでいるぞ可楽! 若造でも『柱』は柱。仕留めれば、無惨様もお喜びになるだろうからのう!」
「…………」
四対一。『流石にマズいか』 ──と、無一郎が舌を巻きかけた時だった。
「無一郎くん!!」
(──この声は、)
「炭治郎!!」
彼の復帰により、無一郎の気力が回復する。
「──視線はそのまま、よく聞いて」
「うん」
二人は鬼の動きを警戒しながら、小声で方針を共有する。
「舌の文字は見た?」
「『喜怒哀楽』だね」
「うん。ひとまず、これ以上は増えないと判断していいと思う」
「じゃあ、方針は『四体同時に斬る』ってことでいいのかな?」
「──空喜、可楽と共に背後へ回れ」
「遊びが無いのう。もう少し楽しそうな戦法はないのか? 積怒」
「可楽、貴様という奴は……!!」
「カカッ、そう怒るな積怒。それでは俺や可楽には逆効果じゃぞ?
──ただ喜ばしいことに、今は柱がもう一人向かって来ておるらしい。『楽しみ』は後にも残っておるし、俺は積怒の言う通りに動いてやっても良いと思うぞ? 可楽よ」
「ほう? それならまぁ、嗜好を変えて追い込み漁に興ずるのも悪くないかもしれんのう!」
「──待て。『柱がもう一人』『向かってきている』だと?
空喜、
「待って。たぶんだけど、あの四体への攻撃は殆ど意味がない。
──最初を思い出して。奴は
「ん? あぁ。里の中心部で暴れていた、玉壺の大きな金魚達がおっただろう? ついさっき、アレらが一斉に消えた瞬間が見えて──」
「──何故それを喜んでいる!? このッ、どうしようもない愚か者めが……!! それが本当なら、上弦の諜報要員が……ッ、いやそれ以前に、戦力が……!!!」
「アレは本体が隠れてて、術で分身を出したってことなんだと思う」
「なるほど。じゃあ──」
「こうなれば、『
『────えっ?』
積怒を除く、鬼と鬼狩りの声が重なった。
瞬き一つの間に、空喜と可楽が消えたのだ。──積怒が両手を掲げ、
前衛を張っていた哀絶が、異常に気付き振り返ると──すぐに視界が手で覆われ、反応もできずに吸収が完了。
「不快。不愉快……極まれり」
五体目の分身──『憎伯天』が、誕生していた。
*
大正コソコソ噂話
今作の上弦は童磨の死以降、地味に全員無惨の血を増量されていたりする。
最も変化が少ないのは半天狗。次点が謝花兄妹。逆に最も増血されているのが猗窩座。次点で強化されていたのが玉壺だった。(相手が悪くて瞬殺されたが)
──ただ変化が少なかろうと、半天狗も素体が強化されているのである。