といっても、書く手は止めない。
頑張ります。
side メテオラ
圏内事件の翌日、今俺と頼んできてもらったリズベットが訪れているのは、『月夜の黒猫団』のギルドハウスだ。
……ちょっと前にキリトが非っ常に、お世話になったとこという認識で間違いない。
最近じゃあ中層あたりでかなり名が通っているらしい。
「メテオラさんとリズベットさん、これを……」
そう言ってそのギルドマスターであるケイタが座っている俺とリズの前に置いたのは、なにかの液体が入った飲み物。
色的にフルーツジュースの類か……?
「ありがとう、ケイタくん。」
「いや……そんなもてなしてくれなくてもいいんだが。元々頼んだのは俺だし……」
「いえ、あなた達にぜひ飲んでもらいたくって……驚くと思いますよ?」
驚く……?この緑とも黄色とも言い難い飲み物が?
だがここの中じゃあ、見た目によらないものもあるしな……紫色の醤油とか、黄色の米とか。
百見は一飲に如かず(少しおかしいな?)……というわけで、ケイタから差し出された飲み物をすすってみる……
「んぐ…………ふぅ……これは麦茶か?」
色はともかく……甘みや香ばしさは麦茶そのものになっている。
しかもこの淹れ具合は、火を使って出汁ているな?市販とか時短で良くする、水出しでは到底出難い味わいが香る。
「すごい……!どうやって作ったの?」
「大麦に近いアイテムを手に入れたから、焙煎したら作れるんじゃないかってサチがね……」
サチが……?
眼の前で座っている彼女の方に顔を向けると、頬を少し赤らめて照れる仕草をする。
「……やるな、サチ。」
「うん……キリトにも飲んでもらいたいって思ってるんだ。」
キリ……もしかして……あいつにホの字なのか?
なんか嫌な予感がするんだが……特にアスナあたりと。
「大麦か……どこで手に入れれたのケイタくん?」
「アイテムを町でトレードしていたら、たまたまこのアイテムが混じってて……今は数を増やそうって頑張ってます!」
「……そういえば、
「ああ……うちでも農作してる奴らいるから、わからないことあったら聞きに来てくれよ。」
あいつらにも、月夜の黒猫団が来たらすぐにできるように話通しとくか。
「その時はお願いしますね!」
さて……雑談はこれくらいにして……
「じゃあ……今日集まってもらった本題に入ろうか。」
アイテムポーチから、犯行に使われた武器を取り出して前の机に置く。
「こいつの名前は『ギルティゾーン』で、制作者は『グリムロック』……なんだが、サチとリズはなにかこの人とか武器について知ってることあるか?」
「……初耳だよその人。」
「私も……そんな人始めて聞いたよ?」
2人とも、ウィンドウを広げてメモやフレンド欄を見てから、こちらに結論を伝える。
個々の世界の生産職の人は、ネットワークを持っていると聞くからな。
その生産職の人が知らない……ということは、誰かが興味本位で作ったか、もしくは……
これはあまり当たってほしくないんだが……
……裏で名のあるやつか。
鑑定スキルで見ても、見ただけでもわかるそんなに攻撃力のない装備……
もしかしたら副次的な効果がなにか付いてるのか?
「……そうか。いや、これだけでも十分な証拠になった。わざわざ来てくれてありがとな、リズ。サチとケイタも、いきなり来て悪かったな。」
「大丈夫だよ!メテオラはコルの……ゴホンゴホン、いつもお世話になってるからね!」
「……そういう目で見てるのか?」
「いえいえいえいえいえいえ!?そんなことぁありませんよぉ!?」
そんな全力で否定しなくてもな……
「いつでもまた歓迎するので、また来てくださいね!」
「メテオラさんの元気な姿を見れてよかったです!」
「…………元気、ね。」
…………サチの言葉に反応して思わず口に出たが、聞かれてないだろうな……
人から見たら、そう見えるのか……
……キリトからメッセージ?
「っと……キリトからお呼び出しを食らった。悪いがすぐ出るぞ。」
「キリトから……?」
「結構緊急みたいだからな、これで失礼する。」
メッセージに書かれていた場所に取り出した転移結晶で移動する。
そこでは、俺が転移するのと同時に、女性がポリゴン化をして姿を消した場面だった。
キリトと、一緒にいたアスナが悔しそうにさっきまで女性のいた場所を見つめる……少し遅れたか。
「また……圏内で人が……」
だが、あの初めて起きた時と同じで……
ということは……
「……キリト、その人は死んでない。」
「ど……どうしてそれを断言できるんだ?」
かなり失礼な考え方かもしれないがな……
「……人が死んだときの
キリトとアスナが互いに顔を見合わせて、首を傾げる。
この時、俺の推測は確信に変わりつつあった。
その代わりかけの確信を、完全な確信にすべく彼……いや、あいつに聞き出すか。
「メテオラ?誰にメッセージを送ってるの?」
「アスナの上司……ヒースクリフにアポ取ってる。」
「……団長に?」
―――――
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―――
――
―
「……こんにちは
「やあ、ベセスダの酒場店長……メテオラくん。今日はよろしく頼むよ。」
予め指定していたバーに俺とヒースクリフは横並びに座っている。
俺は右手を差し出して、もとから差し出された右手と握手する。
というか……裏でそんな呼ばれ方してるのか?
「初めて聞きましたよ……店長ってよばれてるんですね。」
現実でも
酒場だから、店長になっているのか?
「皆はそうやって呼んでいるようだよ?他にも、完璧で究極の店長だとか、正義の権化だとか……」
……なんか俺の知らないところですごい言われようしてるな?
完璧で究極の店長とか、どこのアイドルがなってるのか……俺はアイドルなんかじゃないぞ。
「正義、か……俺にそんな言葉は似合わないと思いますけどね?」
「……本人はそうかも知れないが、白き隕石としての君は評価は高いぞ?」
……本当に、俺がそんな評価を受けていいのか疑問だがな。
「ここに来た要件は、君の評判を聞きに来たわけではないだろう?」
ヒースクリフは、バーのマスターから出された飲み物を口に含む。
「して……
「ブッ!?…………少し場所を移そうか。」
少し吹いてかなりのリアクションをした後、こちらを見る目つきがあからさまに変わる。
やっぱりこれ言ったら警戒するか……
「……お好きにどうぞ。」
―――――
ヒースクリフが指定した場所は、血盟騎士団の団長室……そこではヒースクリフが椅子の前に立ち、俺も机を挟んで立っている。
ヒースクリフの表情はさっきと変わらないが、立っているところからかなり焦っていると推測する。
「……先にそっちから聞きたいことがあるだろう?先にどうぞ。」
「95層までは隠そうと思っていたのだが……参考程度に、なぜわかったのか聞かせてもらっても?」
なぜわかったか……正直、確信じゃなかったんだからな……
「勘……と、ちょっと記憶を漁った。」
「記憶……?」
「それは秘密だ……それで、実際に不具合は起きてないんだな、
ヒースクリフ……もとい茅場は、見慣れないウィンドウを表示してなにか操作したあと、こちらに向けて口を開く。
「……結論だが、その種類の不具合は起きていない。それは私が保証する。」
「……本当だな?」
「これが嘘だったとして、私にはデメリットしかない。圏内でもキルできるシステムはデュエルだけで十分だ。」
嘘もついている様子もなし……これで
剣の製作者が……だろうな。あの副次的な効果も納得がいく。
……ぬ?まだ話が続いてる?
「一つ、いいかな?」
「君は、私がこの世界を作った張本人と分かったとして、私をどうする?」
どうするって……
「……今回はさっきのことを聞きたかっただけだから、それ以外のことはしない。」
「……何故だ?」
「どういうわけか、製作者も一歩間違えれば死ぬプレイヤーになってるようだからな。この事を広めて風評被害ってのも、見過ごせないからな。」
言い切ると、どこか安心した表情になって椅子に座るヒースクリフ。
……そんなにバラされるの心配だったのか。
「そういえば、不具合……というか、嬉しい不具合というか……」
……やけに言い淀むな?
「あの
勝手にケアボット枠に追加されたあいつか?
「あれは
たぶん、このゲームシステムを作った彼でも、彼女のことについては諦めるしかないだろうからな……
「そして……君のアームドアーマーVNはどこで手に入れたのかな?」
あの装備の……フルネームをしっているだと!?
「……もしかして、ガンダム好きか?」
「……気づいてもらっているようで何よりだ!」
「道理で何処かで聞き覚えのある音声が混じってる訳だ……」
黒い三連星のあの言葉とか、確信犯だろ。
このあと普通に4時間以上アニメのガンダムについて話した。
―――――
――――
―――
――
―
side ヒースクリフ
ガンダムについて、4時間は話しただろうか。
少し、ファーストガンダムを話している時には、違和感を覚えたが……
まぁ……非常に有意義で充実した時間だったことに違いない。
「あれは篠ノ之束のワンオフ装備だったのか……」
できれば彼から聞き出して、是非とも私も手に入れたかったのだが……
あの装備、武器威力は凄まじく高いと言っていたのだが、重量が凄まじいそうだ。
「それを抜きにしても……強すぎるな。」
あの時……もし私を倒せば、ゲームがクリアされると知っていて、私を殺す気でいたならば……
今頃、命はなかっただろう。
「今の彼達では……この世界は手温いだろう。」
……想定していたよりも攻略組のレベル……特に
彼らは休んでいるのか……?あの様子だと、相当効率的な方法を編み出したように思える。
これからのフロアボス戦のレベルを上げて、手応えを感じさせようか。
「そして……」
メテオラくんの精神値を図った数値のウィンドウを表示して見る。
これは……
「このような状態なのに……なぜ安定している?」
彼と話している間にこっそり測った精神値は、0を通り越してマイナスの値を示していた。
……わからないだろうから説明しようか。
この世界において、プレイヤーの精神状態を数値化したものが精神値だ。
人の精神の状態を数値化することは至難の……これは関係ないか。
100に近づけば近づくほど精神が安定し、かえって0に近づけば近づくほど精神が不安定であることを示す。
……簡単に言えば、100の時は心配事が何もない状態で、0が自○寸前又は廃人状態ということだ。
このデスゲームが始まった時のプレイヤーの精神値の平均は20ほど……だったが、今では約67までに持ち直している。
そんな彼の数値は、『-400』……一体何を感じているのだろうか。
加えて彼の去り際に見えた……
「あの無数の
カーディナルの解析には、『感情の集合体』という無機質な6文字だけがその中身を示していた。
最近、小説の頭に乗せている誰かの1幕は……
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アリ
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ナシ