私がpixivで書いた物を持ってきたものです。(実験的初投稿)

ファミマとコラボしてた時に「ゴルシって指輪のことどう思ってるんだろ」ってフォロワーが言ったので書いたものです。

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ゴルシちゃんvs100年後まで暇そうなトレーナーvsダークライ

「なー……」

 

「なんだよ。」

 

 ソファ。それに寝転んで、天井を眺める。銀色の流線形が乱雑に広がって、口から無気力に声を上げて、形容するのも面倒に感じるほどの、まぁなんともダラけた姿を晒しているウマ娘が一人。何を血迷ったのかいつもの船長帽子のようなアレを外して、一応出先という自覚だけはあるのか洋服を着こなし、他“人”の部屋で平気な顔をしている。

 ソファ。それに座らずに、地べたに腰を下ろして、ぼんやりと雑誌を眺める。安く切りそろえ、整わせることだけを考えられた黒髪、そしてなんとも暇そうな表情をしている人の男性が一人。何をするまでもなく、ただ雑にダラダラしているウマ娘の手を握るんだか握らないんだか分からない位に触りながら、自分の部屋の異分子に適応している。

 ゴールドシップ。彼女に今更海図やコンパスのような常識を投げかけても、錨の怒りを買い無残に己の肋骨かその他が最悪砕け散るのは目に見えているので、彼は何も言わないけれど、それでもこの状況はふざけた光景だ。部屋に上げることを躊躇う必要がない関係に時間と彼女たちのコウセキがした、といえばそうなのかもしれない。二人はもう、暫くの付き合いだということだ。

 

 

 

 

 

「腹へったぁ~……。」

 

「んー?草でも食ってろ」

 

 舌を口外に出し、正常な呂律のほぼ無い意思伝達を試みる。そしてそれを青年に雑に弾かれる。なんだか15分くらい前に同じような会話をしたような気がお互いにしているが、とりあえず、気のせいということにしておいた。

 

「なんか作れよ~焼きそばとかよぉ~なぁ~あ」

 

「冷蔵庫のモンでも食べてて、好きに食っていいから」

 

 雪のちらつく昼過ぎ、唐突にドアを蹴破らんとしてやってきた空腹の波乱の擬バ化。壁や天井に比べればドアや昼飯くらい……いやそれは流石に毒され過ぎである。やはりどう考えたって彼女の言動は異常である、来るなら昼飯くらい食べて来るかアポをとるかするべきである、というか来る度にドアを蹴破ろうとするなという所から……常識が通じないと知っていてもこれは言いたくなろう。それに平然と対応してしまったことに彼は辟易……していない。またも雑にウマ娘の言葉を躱した。そして自分の城の食糧備蓄を明け渡す宣言をした。コイツも大概である。やはり二人の出会いは真鯛なのだろうか。

 

「んだよ……」

 

 流石のゴールドシップも窓の外を見てうんざりした。来る頃にはそうでもなかった雪が横向きに降りだしたのである。気に入っている赤のシャツに白い結晶が付いて「めでたいぞアタシ!」とか口走ったゴルシちゃんプリティーマウスが憎かった。自分印の焼きそばが好評発売中のコンビニくらい彼女の脚があれば行き帰りしても分単位の航海なのだが、クソ寒い中視界不良の船旅となれば、いくら不沈艦とて波を掻き分けるのは億劫であろう。

 というか、もうなんか落ち着いてしまった。この部屋のそれは、特別イイふかふかソファではないが、寒い外から帰り、ぬくい部屋に身体を預けるには十分だった。しっかり8時間睡眠をしたはずのプロポーションお化けウマ娘も思わず欠伸をした。こうなってはハエ取り棒のネチョネチョに囚われた哀れなコバエ共と変わらない。身体を動かそうとしても動かない、そのまま眠りについてしまうのがオチだ。冷蔵庫に行く?面倒だ。焼きそばを作る?ソースの匂いは確かに恋しいがやはり面倒だ。とりあえずテーブルの上のお菓子を何か……あぁ、身体を起こして取らねばギリギリゴルシちゃんマジックビューティーアームが届かない、ゴルシちゃんは波紋の呼吸かインドヨガを学んでおけば良かったと後悔した。近くにある物は……そこまで考えて彼女は自分の手のひらを思い出した。そこには己のトレーナーの手があるでは無いか!なので勿論冗談だが、食ってやる事にした。彼女は、彼にそういうことをするとなんだかんだ構ってくれる事を知っている。喰らえ、ゴルシちゃんかまってビーム。がぶ。

 

「あ゛ーっ、ウダウダ言いながら俺の手食おうとすんな。」

 

 これだ。ゴルシちゃんは密かに歓喜した。彼女はこの「あ゛ーっ」が堪らなく好きなのだ。これを見ると己が生きていると実感出来る、ニマニマしちゃう、しちゃった。

 

「いいだろーっ!?お前とゴルシちゃんの仲だぞ~?」

 

 面白くなってきた。彼女のニマニマにはそう書いてある。どう言えば彼は更に困るだろう?そんな事で頭がいっぱいだ。でもそれはそれとしてお腹は減ったのでまた噛む。がぶがぶ。ついでに満腹中枢とやらを刺激してやろうという魂胆だ。

 

「もし本気で俺の手を食うなら、お前も何かしら対価払えよな。」

 

 波乱を飼い慣らす狂人、もとい彼女のトレーナーがようやくマトモ、かは置いておくとして、話に食いついた。しかし己の手に食いついているウマ娘を無理矢理引き剥がそうとはしない。会話が食べられる事前提で進んでいる、勿論これも冗談でからかっているのだろうけれど。でもやっぱりおかしい。でも今更だといえばそれまでだ。

 

「んじゃーゴルシちゃんが生涯お前の右腕になってやんよっ!新婚旅行はハワイか?ドバイか?宇宙でもいいぜ?その後は……そうだ!ウチ来るか?ゴルゴル星のド真ん中よりちょっと左でよ、漁師町のネジ工場なんだよ、トレーナーも食べたいだろ?マ・グ・ロ・の・さ・し・み♡」

 

 ゴルシちゃんは右手の薬指を食べた。

 甘噛だよ。

 噛まれた彼は死ぬ程嫌そうな顔をした。でも彼は多分、噛まれた事とか、話の流れが結婚している事とかに嫌悪を示した訳では無いだろう。あれは……箱を開けたら刺身と醤油とわさびが入っていたバレンタインデーの事を思い出しているという顔だろう。

 あの箱の臭いにとてもムカついていたトレピッピは反撃に出た。初めて右手を引っ込めて、するっと左手を出した。彼女の口に押し付けるように、ずいっと。日常での活躍は芸人で言う所の“じゃない方”だが、今回ばかりは主役というわけだ。

 

「それなら、左手食えよ」

 

結婚の話を振ったのに、左手を食えだと?

ゴルシ様は訝しんだ。

 でも彼女は気紛れ破天荒ウマ娘ゴールドシップ、訝しもうが何しようが本人がちょっと面白いなと思っていたら食いついていく。それ即ち、夏場のブラックバスの如し。アイツはいい。引きも大きさも食い付きも最高だ。

 

「ほーう、大賢者ゴルゴル、訳を聴いてやるぞよ?」

 

「結婚指輪着けるの左手だろ?それを確かめながら手握って歩くなら右手が無いと困るだろ。」

 

 意外とメルヘンというか、かわいい事を言うトレピッピだ。彼女の金色のハートがちょっときゅんとした。トレーナーの右腕、つまり支える者になるのであれば、しかも無い手を補填する義手となればまさしく手のように動いてやらなくてはいけない。それかどうかは知らないけれど、支える者をエアグルーヴが杖とかどうとか言っていた気もした。

そして彼女は思った。

杖より義手の方がカッコいい、

つまりゴールドシップはカッコいい。

ふふふ、優越感。

と。

アタシはロケットパンチも撃てる。

そうなると杖の564倍カッコいいぞ!

と。

 

しかしまたも彼女は訝しんだ。

「トレピッピは指輪どーすんだよ」

と。

確かにそうだ、自分の指輪はどうするのだろう?

 

「お前さっき腕になるって言ったじゃん。俺の左手は、お前の左手があるから平気だ。」

 

 参った、この男、ただ者ではない。

 ゴルシはお手上げした。必ずこの愉快喜天烈なゴルシちゃんパワーでこの男を言いくるめて遊んでやろうと思っていたのに。ゴルシにはコイツがわからぬ。あとついでにこの続きの文の形も忘れた。あとで彼女が責任もってゴルシちゃん菓子折りセットを過去に贈っておくので、どうか太宰んとこのおさむくんには機嫌を損ねないで欲しい。

 しかし参った、どうしようか。彼女は真面目に、今のセリフにやられた。ああ畜生、彼女は今、目の前の暇そうな顔の男が微妙にイケメンに見えてしまっている。彼女は聡明なウマ娘だ、なので、自分に付き合ってくれそうなヤツに対して、付き合ってくれるように振る舞い、面白いヤツであり続ける。我ながら天才的な千両役者なのではとも彼女は思った。しかし、いずれ付き合ってくれるヤツは少なくなるだろう。いなくなるわけではない。『あのゴルシちゃんだぞ』と言えば、全く知らない他者であっても、笑ってくれるヤツがいるだろう。しかし、彼女に向き合ってくれるヤツは、きっとそんなに居ないだろう。

「まあゴルシだし腕くらい喰うだろ」

は最早諦めの言葉なのである。そこで改めて目の前のヤツの顔を見た。相変わらず目が暇そうだが、こっちを向いている。なんとなくで付き合っている訳じゃ無さそうだ、わざわざ付箋まで貼って読んでいた雑誌をテーブルに置き、ゴルシちゃんパーフェクトアイをまじまじと見詰めている。

 

「どうした?俺になんか付いてるか?それとも、腹の減り過ぎで機能停止でもしたか?もしもーし。」

 

 そしてこれだ。いつも通りに彼女と向き合っている。凄い反射倍率だ。超能力少年の横スマバットくらい凄い。流石のゴルシちゃんも撃沈である。一刻も早くここを一度去りたい!と思った。目に反撃を喰らうのはトラウマだ、彼の視線を真面目に見詰めていたら眼球がハジケる。そう思った。ちょっとからかってかまちょしただけなのに、ワンチャン一生かまって貰えるかも知れない、そしてそれも悪くねぇなと言いたげなゴルシちゃんピュアゴールドハートとトレーナーの口に、ゴルシ庁キュンキュン一課アグネスデジタル本部が今にも爆発しそうだ。

 逃げなくては、本能でそう思った、このままだと死ぬ。今だけ私は逃げウマだ、アンスキしてchu♡を持ってこい。そう思った。彼女はちらり窓を見た。先程は強かった雪が止んでいた。勝った!運命はこのゴールドシップに味方してくれている!まさにそう思った。彼女はそれとなく、ふわっと立ち上がって呟いた。彼女は100年後の予定を今から決めている程バカ正直なウマじゃない。こうやって相手に振り回されても、振り回し返す。これこそあるべき姿だろうと立ち上がったのだ。いざ、コンビニリョテイ!

 

「…………焼きそば買ってくるわ。」

 

勝った。

 

「お前のコラボのヤツ、冷蔵庫に入ってるよ」

 

ダメだった。

 

 


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