東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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武蔵くん、敵か味方かどっちやねん

 

 

 

いっぽうその頃、鞍馬城塞、常磐國では。

 

 

「おかあさん、どう?わたしのつくったおにぎり!」

 

「うん。おいしいわ、貴女の作るおにぎりはいつもおいしいわね〜」

 

「えへへ、ありがとう!」

 

 

一般の鞍馬天狗たちが過ごしている中で、何やら大通りの人々が道を開けるようにしている様子があった。

 

 

「道を開けよ!ひゃっけめッ、あっ噛んだ!…………百鬼丸様が通られるぞ!」

 

「おはようございます百鬼丸様!!!」

 

「おはようございます百鬼丸様!!!」

 

「おはようございます百鬼丸様!!!」

 

 

鞍馬天狗の長、百鬼丸と、それに続く那須備壱与と兵士の姿がそこにある。

用事があるのか、数名の護衛を連れて街中を歩いていた。

百鬼丸が通る道を人々はあわてて次々と開けていく。

 

 

「あーっ!ひゃっきまるさまだー!」

 

 

そんな時、小さな女の子が百鬼丸の行進を指差して叫んだ。

 

 

「こらっ、やめなさい…………!」

 

「ひゃっきまるさまー!」

 

 

母親の静止を振り切って子供は百鬼丸に向かって突撃していく。

当然、寸前のところで兵士に取り囲まれ、取り押さえられる。

 

 

「とっ、止まれ!百鬼丸様のお通りだ!」

 

「ひゃっきまるさまー!おにぎりつくったの!たべてみてよー!」

 

 

少女は百鬼丸に握り飯を差し出す。

 

 

「ば………バカモン!なにを考えとるんだ!百鬼丸様、すみません、つまみ出します………」

 

「いや、よい」

 

 

百鬼丸は少女の前に出るとかがみ込み、にっこり笑った。

 

 

「私にくれるのか?」

 

「…………うん!」

 

「そうか。では、ありがたく頂戴しよう、」

 

 

百鬼丸は少女から握り飯を受け取ると、警戒することなく口に放り込んだ。

 

 

「百鬼丸様!?せめて毒見ぐらいは………」

 

 

兵士の一人が慌てて止めようとするが百鬼丸は兵士の頭を軽く引っ叩いた。

 

 

わわもお(馬鹿者)おああいおうお(幼い少女)ごっくん…が差し出した好意だぞ。毒とか言うでない。すまなかったな、少女よ。お前の握り飯、たいへん美味であった」

 

「ほんと!?」

 

「あぁ。この百鬼丸は嘘をつかない。将来はおにぎり屋さんだな………今のうちに腕を磨けよ、若き才はこの國の民の未来の礎になる」

 

「はーい!よくわかんないけど、おにぎりもっと作ってくるね!」

 

「うむ、それでよい。機会があればまたいただこう。さらばだ、」

 

 

娘が危ない目に遭わなかった事にとにかく感謝する母親を背に、百鬼丸は群衆の合間を切り抜け歩く。

 

そのうち、人目がなくなり、集落の外に出る。

 

 

 

 

 

 

 

「うっ……………うぅぅ……………ナスビ〜……………おにぎり食べてたら、めぐみんの事思い出しちゃったよぉ〜…………うわ〜ん!」

 

 

人目が無くなってすぐに百鬼丸は大粒の涙を流しながらナスビの胸に飛び込む。

 

 

「…………わたしね、めぐみんにね、「もうお前とは友達じゃない」なんて言っちゃった…………ホントはそんな事思ってないのに…………来てくれた時ね、わたし嬉しかったのに…………めぐみんに痛い思いさせちゃったし、あんなひどいことも言っちゃったの…………もうこんなんじゃめぐみんと仲直りできないよ〜!!!」

 

「百鬼丸様…………………」

 

 

本当は百鬼丸は飯綱丸とはよりを取り戻したかった。

だが……………彼女の鞍馬天狗の主という立場と、積もりに積もった覚悟、そしてあの日から自分を蝕む厳格な当主としての呪いが、その想いを阻む。

百鬼丸の苦しみは永久に続いている。

 

 

(……………最近はとくにひどい。百鬼丸様もお疲れなのだろうが、それよりも飯綱丸龍との再会が大きな要因になっているようだ…………)

 

「きっと懲りずにまた訪れるでしょうから、その時にでも和解の姿勢を見せましょう」

 

「ぐすっ………うっ、上手くいくかなぁ………」

 

「そこは百鬼丸様の采配次第です」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その頃、天狗の集落御湯殿いづな─────

 

 

 

 

「ふぅ──────はッ!!!!!」

 

 

カコーン、と気持ちの良い音が響く。

そのままカラン、ゴトン、と続けざまに音が鳴る。

 

 

「よしっ!バックハンド!」

 

「おぉ………すごいな、どこでそんな技を………」

 

「俺を誰の弟子だと思っているの。槍術の応用なんて朝飯前だよ」

 

 

青葉が木の棒を器用に踊らせて喜びの声を上げる。

 

 

「オォォォァァァァァァァァッ!!!つまんねぇぇぇぇぇッ、コイツとやるゲームって!!!」

 

 

妹紅がくさって緑色の机に突っ伏す。

 

 

「そう?俺はけっこう面白かったと思うけど………」

 

「お前はな!?お前の番になった瞬間、そこから私たちの番が回らず、ずっとお前のターンだったじゃねぇか!私らお前がチマチマ、チマチマと一個一個ボール落としていくの見てるだけで、おもしれぇわけねぇだろ!バカかお前は!!!」

 

 

この年頃になってもゲームの勝ち負けでここまで盛り上がれる妹紅が羨ましい私、上白沢慧音である。

 

 

「てかお前が射命丸文の服(コレ)着て勝ってるのが一番ムカつく………!」

 

「アヤッ!?なんでとばっちりで私も傷つくハメに!?」

 

 

甘味処おたま屋で食事を終えたあと、若女将であるお玉が玉遊びに誘ってきた。

そうしたらそこの青葉が圧倒的に強かったもので、まるで試合になっていなかったのだ。

ちなみに文は青葉に手籠めにされた直後なので、もう逃げられなくなってここにいる。

 

 

「しかしお上手ですのね。ビリヤードは経験お有りでしたか?」

 

「いや、実は今日が初めてで…………まぁでも本でルールは知っていたから、みんなより少し有利だったってことで、」

 

「あー、何でもできる奴は羨ましいぜ…………」

 

「ナインボールには対戦相手と読み合いをする要素はないからね。ビリヤードは弓道やアーチェリーと同じで、あくまで技量を競い合うものだから」

 

 

そう、相手の弱点を突くとかそういうことではなく、自分がいくら的確なプレーができるか、それが本質であるのだ。そもそも、冷静で慎重なプレーが求められるビリヤードのルールでは妹紅の土俵にはならない。

 

 

「ぐっ………う、うるせぇ、次は勝つ…………!」

 

「やめておけ妹紅…………身体能力や体力が求められる競技ではない。勢い余って手玉を場外に吹っ飛ばして窓を破壊したり、キューが飛んでいって私のみぞおちに直撃したり、ルールを把握できずにポケットに向かって手玉を一直線に発射するお前と比べれば、この分野では私や青葉に一日の長がある」

 

「妹紅がつまらないなら、他のゲームでもいいよ。大富豪でもやるかい?トランプぐらいなら持ってきているよ」

 

「なんでお前は一方的なゲームしかしたがらないんだよ!」

 

 

いやいや、大富豪はそこまで一方的じゃない。自分が手札を出せる状況でもあえてパスをする冷静さや、スペ3を残しておくためにあえて大きい数のカードを交換に出したりする読み合いがある。なにより、革命が来たら戦況がひっくり返る。

もっとも、革命なんてめったに起きないが。

 

 

「玉を使わないゲームをするなら出禁にしますよ」

 

「お前はなんでそこまで丸にこだわる」

 

「そうだなー。妹紅が楽しめる玉遊びなんて………強いて言うならボウリングとか…………」

 

 

その時、甘味処の入り口の扉が開いて誰かが入ってきた。

 

 

「いらっしゃいませ。ごゆっくりどうぞ〜」

 

 

女将が出迎えたのは…………大柄な女だった。

その姿はまさか…………

 

 

「なっ…………高倉院…………武蔵……………!!!」

 

 

「あら、お知り合いですか?」

 

「知り合いも何も、こいつは……………」

 

 

妹紅は真っ先に机を飛び越え、いきなり現れた武蔵の前に立つ。

この女はそう…………鞍馬天狗の最強戦力…………鞍馬天狗の頭領百鬼丸の右腕。

つまるところ、今の私たちの敵だ。

 

 

「お玉、下がっておけ。コイツ、まじで強ぇぞ」

 

 

私たちはめちゃくちゃにやられた後だ。いま武蔵と戦って勝てる算段がないが…………

 

 

「おーっとタンマ。今日はバトルはナシだよ、私らは常磐國に入ってくる奴は全力で叩き潰すが、わざわざ関係ないとこまでやりに行かないよ」

 

 

武蔵は笑顔で空の両手を挙げた。

今日は武蔵の手に武器は握られていない。腰から一本だけ刀を吊るしている。

 

 

「…………………どうするオオバ、」

 

「武蔵は右利きだ。なのに腰の右側に刀を差しているってことは戦意がないと取っていいと思うよ」

 

「いや………根拠が武人すぎるって、」

 

「アンタは着眼点がいいねぇ。やっぱ猛者だよ、アンタ」

 

「御託はいい。何の用だ、戦意の有無関係なくこっちは理不尽にもコテンパンにされた身だ。お前らのことは好きじゃない」

 

 

青葉はあくまで武蔵を敵として認識している。武蔵側に敵意がないためこちらから戦闘に移る気もなければ、戦闘をしないという武蔵の言葉も信用だけはしているようだ。

しかし、青葉は武蔵を鋭く睨みつけた。

 

 

「やれやれ。こっちは感謝されるべきなんだがねぇ………まぁいいけど。話ってのはね、アンタらが調査している【飛来物】の話だよ」

 

「なに…………?」

 

 

飛来物というのは……………

 

 

 

(おいおい、そんな冷たいことを言うんじゃあない。もともとは親友だろう?お前と話をしに来た。訊きたいことと、お願いしたいことがあってな)

 

(訊きたい事とは濁すのだな。何が訊きたいのだ。まぁおおかた見当はついているが。妖怪の山の上空を飛行しているという飛来物の話であろう?ソレに関しては我々の知るところではない。むしろ我々は鴉天狗のものかとも思っておったぐらいだ。故にここに手がかりはなく、我ら鞍馬天狗と飛来物は無関係ということだ)

 

 

 

私たちが異変の調査対象として負っているものだ。

そういえばそうだった…………鞍馬天狗をどうこうすることでも、温泉街を広げることでもない。

飯空Project真の目的は、その飛来物の調査だった。

 

 

「だが、そちらでは手がかりは得られなかったはずだ」

 

「最初はね。だが昨日、百鬼丸様は帰った後あたしにその飛来物とやらの調査を命じてきたんだよ」

 

 

武蔵の口から出たのは衝撃の一言だった。

 

 

「な、なんで鞍馬天狗が…………」

 

「さぁーね。まぁ得体のしれない飛来物なんて、鞍馬天狗の平和をおびやかしかねない。百鬼丸様も無視はできないってことじゃないのかい?」

 

 

武蔵…………いや、百鬼丸も含めて不思議な女だ。

なぜ敵であった私たちの調査の手伝いをするのか。

そんな事をわざわざ報告しに来たのか。

 

 

「そうそう、で例の飛行物の話なんだけどさ。昨晩、ナスビが撃ち落としたんだよ。大したもんだよねぇ、彼女の弓は幻想郷でも一番さ」

 

「いや、弓で永琳さんの右に出るものはいないね」

 

「はいはい。そんで撃ち落としたのがコイツさ、」

 

 

武蔵は机の上に何枚かの写真を投げつけてきた。

 

 

「写真?鞍馬天狗もカメラ持ってるの?」

 

「ツッコむ所そこか?」

 

「うちもいちおう新聞文化あるんだよ。【鞍馬皆諧報(くらまかいほう)】つってな」

 

「アヤッ!?鞍馬諧報ですか!?鞍馬諧報といあのはまさか………かつて新聞大会で金賞を受賞したというあの………!?」

 

「ま、そういう事。とうぜん鞍馬天狗の今の統治は厳しいものだから鞍馬の新聞はこれしか発行されてないんだけど、百鬼丸様ご公認、正真正銘の鞍馬を代表する新聞さ」

 

 

百鬼丸の情報統制か……………

 

 

「ところで、こりゃあなんだ?円盤………?」

 

 

妹紅が手に取った写真には、灰皿のような見た目をした金属の物体が……………

どうやら撃ち落とされた際に破損しているようだが、これは機械のように見える。

 

 

「妖怪の山にこんな機械技術があるなんてな。河童の仕業か?」

 

「あやぁ………これは河童の技術ではないですね………これはむしろ河童の技術よりも文明が進んでいるまである………」

 

「おかしな事になってきたようだ…………」

 

 

私たちがこの円盤の正体がなんなのか思案している間に、青葉は3枚の写真を並べて眺めていた。

何か心当たりでもあるのだろうか、こんなどうせ何もわからない、得体のしれないモノに対して必死に考えている青葉。

 

 

「武蔵、これ同じものじゃないだろ?」

 

 

するとこんな事を言いだした。

 

 

「おや、なんだい」

 

「それぞれ撮影角度も違うけど、土の色と広がり方わずかに違う。これ、別の場所で撮影した、【それぞれ別個体の円盤の写真】だよね」

 

「なっ………青葉まさかお前、この円盤は複数個あるとでも言うのか………!?」

 

「そうだね。墜落してバラバラになっていたおかげで助かったよ。昨日、太夫の話を聞いて思い出した。確かにむかし山童らしい種族の技術者に、外の世界のレーザープラズマ機の設計資料を渡したんだ。その時の資料に書いてあった機構と同じ物が見える。俺たちは鞍馬天狗のレーザー研究が兵器研究に繋がっているという話で聞いている。円盤から遠隔でレーザーを発射して攻撃を行う兵器、それは外の世界にも存在はしている。そういった兵器は必ず数が求められる。なら、この円盤も数は複数あるはずだろう」

 

 

青葉は唐突に剣を抜くと、武蔵に届かない距離から彼女の首元に向けた。

 

 

「答えろ武蔵。お前たち…………レーザー機構を組み込んだこの円盤で、何をしている?なぜ百鬼丸は知らないなんてシラを切った」

 

 

青葉はお玉や文を怖がらせない程度に重圧をかける。

武蔵から冷や汗が流れる。

 

この円盤………レーザー兵器だったというのか………!?

 

この円盤、いったい誰が、何のために……………!?

 

 

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