東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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御湯殿いづなの最悪の夜

 

 

 

 

その日の夜、御湯殿いづなは混乱に陥っていた。

 

 

「なに、月虹市場に武蔵とナスビが来るだと!?」

 

 

慧音と文から報告を受けた飯綱丸龍は目を見開いた。

 

 

「なんてことだ…………我々の動線を完全に押さえられたぞ…………な、なぜそんな事になった!月虹市場に向かうことも、鞍馬のレーザー研究を私たちが追っていることも、すべてが極秘に行われていた事だったはずだ…………!」

 

 

飯綱丸の顔が真っ青だ。

慧音と文は、この事が青葉のせいだということを言わなかった。

 

 

「うっ…………困ったな…………」

 

 

 

 

 

すると、襖が開いて女将がやってきた。

 

 

「失礼いたします飯綱丸様。お茶をお持ちしましたよ、」

 

「あぁ…………助かるよ朋恵(ともえ)…………」

 

 

飯綱丸から信頼を受けている様子の女将をみて慧音は軽く質問を投げる。

 

 

「彼女は…………」

 

「ん?あぁ、この旅館の代表女将の朋恵だよ。お前たちがこれからここで過ごすにあたって世話になることも多いだろう、顔だけでも覚えてやってくれ」

 

「朋恵です。よろしくお願いします。貴女様がたお話は聞いておりますよ、上白沢様」

 

 

 

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

  いづな旅館女将代表

 

      朋恵

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

 

「よ、よろしく頼む」

 

「それで、どうされますか?このままでは、調査が…………」

 

「調査は完全停止してしまうな。そうしたら異変解決への道が…………」

 

「そもそも、なぜ我々は月虹市場を押さえねばならないのだ?その市場の神は、月虹市場開催の時間にしか降臨されないということか?」

 

「いや、そういうわけではない」

 

「は?」

 

 

飯綱丸の一言に慧音は絶句した。

 

 

「別に探せば会えるし連絡はつく。だが私は取引の現場を押さえたいのだ。月虹市場の取引は匿名性であり、市場のルール上、顧客のプライバシーは守られなければならない。くどいかもしれないが、それもまた神の掟だ。市場の神自身がそれに背くことができない。市場の外で情報を聞き出すことは出来ないんだ。だからこそ、私たちは取引の現場を現行で押さえる必要がある。だからこそ、月虹市場への参加は絶対の計画だった」

 

「そういうことだったのか…………」

 

「こうなってしまっては仕方ない。今さら市場に向かわんわけにもいかない。武蔵とナスビに襲われないことを祈るしかないな…………」

 

 

飯綱丸はかなり困ったような表情をしている。

 

 

「もう今日は休むんだ慧音。明日のためにも英気を養え。……………明日は満月だ、お前は、そういうことだろう?なら、なおのこと休め」

 

「感謝します、飯綱丸様」

 

 

慧音は部屋から立ち去る。

それに続いて文が部屋を出ようとした。

 

 

「──────文、お前に話がある。少し残ってくれるか?」

 

「え………?は、はい!わかりました!」

 

 

慧音は文と飯綱丸を置いて青葉と妹紅の待つ部屋に帰っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま。妹紅、青葉はどこへ?」

 

「オオバ?あいつなら、なんか椛に呼ばれたから外出るってよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

いづな旅館外…………妖怪の森、山中。

俺は椛さんに連れられて林の中にここへ来ていた。

ここもちゃんと管理されているらしく、柵が築かれており、灯籠も立っているのでこんな夜でも明るい。

 

明日この時間には満月、いよいよ月虹市場が開かれている。

その時に備えて着々と【準備】を整えている所だったが、そんな時、俺は椛さんに呼び出された。

 

 

「はぁッ!!!」

 

 

そしてその内容は「剣の鍛錬を施してほしい」という話だった。

椛さんも哨戒隊としては随一の実力の持ち主だが、流石に俺が受けた剣の教育は普通の妖怪の武術とは次元が違う。

昨日の大怪我も重なって、椛さんはとても前線に出て戦える動きではなかった。

 

 

「椛さん、もうこれくらいにしないか?あんまり続けると、身体に障るよ」

 

「はい…………ですが、やらせてください。本番でこの調子では何もかもが上手くいかないでしょう………!」

 

「そ、そりゃそうだけど…………」

 

 

しばらく対峙して分かったのだが、椛さんはかなり頑固な所ある。

 

 

「…………私は白狼天狗の身。もともと天狗の社会ではあまり良い立場ではないです。むしろ一般の天狗よりも格は下の下…………天狗の厳しい身分制度の中では苦しい生活を強いられている者も多いんです、」

 

 

椛さんは休憩に座り話をし始めた。

 

 

「しかし、飯綱丸様は、行き場のなかった私を哨戒隊に任命してくださった………文とはたてさんの旧知である、たったそれだけの事で。あのお方は、身分などといった縛りに囚われず、力になってくれる者を認めてくださる。たまたま運動が得意だっただけの木っ端同然だった私を………今に不満を持たない一人前の天狗にしてくださった………私はそれで恩返しがしたくて、ずっとここにいる………」

 

「椛さん………」

 

「私には居場所だけはあるけれど、富も権力もない。文さんやはたてさんのように、烏天狗に何か利益をもたらせるわけでもない………ならせめて、彼らが安心して暮らせるように、山の治安を守ってきた。別にそれが恩着せがましく思っていないですよ、ただそれでも………私には、武器を取ることしかない」

 

「………………………………………」

 

「青葉さん、貴方は凄い人です。貴方は優しくて………これほどの強さがあるのに、剣だけではない………まるで私とは、」

 

 

俺は聞いていられなくなって椛さんの手を取る。

 

 

「…………ッ!?」

 

 

椛さんの耳と尻尾が震える。

 

 

「…………そんな事はない。そんな事、ないんだ。椛さんは凄いよ、」

 

「青葉さん………」

 

「君は、何もなくない。それに君は、守るべきものを守れている。文さんやはたてさんが笑っているのも、きっと君がいるからだよ。文さんにはたてさん………そして飯綱丸様のことも守れている。君は、すごいよ。すべきことを、ちゃんとできているなんて………」

 

 

それに比べて俺は…………

 

 

 

 

(大丈夫だよ………!もうすぐ、着くから………!)

 

(──────────あ………な、た…………)

 

 

 

 

守るべきものを守れず、永遠亭を出た。

そして、何を守るべきだったかも思い出せない。

 

俺は、何がしたかったのか。俺は何を守りたくて、医師の道をいっときでも志した………?

 

あの時の俺は、この命にかけても守りたい………【生きる目的】があったはずなのに。

それがなくなって、思い出すこともできなくなった俺には、今を生きる目的なんてない。

 

だから俺は、

 

 

 

 

「───────俺は、真実を知りたい。それが今の俺の生きる目的なんだ。自分ではない誰かを守るなんてそんな高尚な願いを持てるほど俺は強くない、」

 

「す、すみません………悪いことを思い出させてしまった………!」

 

「いや。気にしないでくれ………これは俺が一生背負っていかなければならない業だ」

 

 

医師を目指していた者として………助けたい人を守れない………誰かの命を預かるものとしてあってはならないことだろう。

それが誰のせいであっても、俺は守りきれなかった責任を負う。

 

俺は探さなければならない。俺が本当に守りたかったものを、何があったのか………そして、俺の母さんの記憶も。

全ては俺自身のためにする事だ。誰かを守るなんて二の次だった。

 

あれ…………ならば俺はなぜこんな事をしているのだろう。

 

俺が本当にしなければいけないのはこんなことなのか?

 

─────無意識にこう動くのはなぜだろう。

 

困っている人を見つけて放っておけない。

 

 

いや…………違う。俺がここに来た理由、それはこの刀をタダで貰うためだ。

所詮、俺がここにいるのは金を節約したいという自分勝手な欲望。

 

慧音さんや妹紅は………

 

 

(私ら友達だろ?な、慧音)

 

(うん、そうだな)

 

 

友達を助けたいなんて…………そんな嬉しい事を言ってくれたのに。

 

俺は────────

 

 

 

 

 

「椛さん、」

 

「はい?」

 

「俺、頑張る。椛さんみたいに、みんなを守るために………」

 

 

俺もまだ、勉強しなければいけないことがあるんだ。

この人、に教えるばかりではない。この人から教わることもたくさんある。

何が師匠ヅラして…………俺のほうこそ本当に剣しかない馬鹿な男だ。

 

この人のような優しさがなければ…………

 

 

「は、はい………!」

 

 

あぁ……………この強い目、いつの俺に似ているのか。昔、守りたいもののために命を燃やそうとふんばった少年がいた。

だが彼は失意のうちにその熱情を失い、生きる価値を落とした。

 

そこから先の未来は失われた。

だが、彼は過去すらも失っていた。ならば、これ以上先のない未来よりも、斑に黒く塗りつぶされた過去を遡る必要がある、自分は何者で、何をすべきだったのか。

なぜこの道へ来たのか。

 

俺はそれを知る必要がある、それが俺の記憶を取り戻すための鍵になるんだ。

 

 

 

 

 

 

俺は─────■んの■め、ニニニニニ、■

 

 

 

 

 

何の■めに、こ■場所に、

 

 

 

俺は何のために、この場に────

俺は何のために、幻想郷に────

 

 

 

「あっ…………その…………手を握られると、少し照れますね…………」

 

「あれっ。あっ、ごめん。嫌だったかな………」

 

「い、いえ!嫌というわけでは…………」

 

 

まったく…………俺というやつはすぐに気が抜けて…………

 

 

「ですが、今の貴方の堅い手を通して伝わりました。貴方のかけてきた苦難と、それを乗り越えた強さが。私も、貴方のような力強さで…………きっと本番、上手くいかせます」

 

「うん、頼りにしているよ」

 

 

 

夜の暗闇に二人の笑い声が鳴る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────ふ、2人とも!!!!」

 

 

 

 

その時、はたてさんが慌てて走ってきた。

 

 

 

「はたてさん!?どうかしましたか!?」

 

 

椛さんが慌ててはたてさんのもとに駆け寄る。

はたてさんはかなり動揺しているようだ、椛に飛び込むようにつまづく。

 

息を切らしている、何があった…………!?

 

 

 

「た、大変よ…………!り、旅館が…………!」

 

「どうしたのですか!旅館で一体何が………!」

 

 

 

 

「い、いいから早く………!このままじゃあの子………死んじゃう………!」

 

 

はたてさんはあまりの全力で飛行と疾走をしたせいで、疲れて倒れてしまった。

 

 

「…………と、とにかく早く行きましょう!はたてさん、私の肩に!」

 

「私のことはいいから………!ちょっと息………切れた、だけ!はやく!急いで!」

 

 

 

「わ、わかりました………!行きましょう青葉さん!」

 

 

椛さんは急いで四足歩行で走り出した。

 

あまりの速さであっという間に闇に消えて見えない。

 

 

「ちょっと椛さーん!?」

 

 

全然何もなくないじゃんあの人!

そんだけの敏捷性珍しいぞ!!

 

 

 

───────あの子が死んじゃう………?

 

 

 

「───────まさか、」

 

 

 

俺は最悪な予想を頭の隅に、不安と共に抱えながらいづな旅館の方へ駆け出す。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おいテメェ!!!やっぱりスパイだったんじゃねぇか!!!なんだよ、レーザー開発が鞍馬にはねぇって話!!!」

 

 

その頃、いづな旅館の中庭では大声をあげて暴れる安曇と、傷だらけの鞍馬天狗がいた。

 

 

「やめろ安曇!!そこまでする必要はない!!」

 

 

慧音が安曇を羽交い締めにして止めようとするが、慧音では安曇の筋力にまったく逆らえない。

 

 

「うるっせぇ!!邪魔すんじゃねぇ!!」

 

「どはぁっ!!!」

 

 

安曇は慧音の拘束を解くと、なんと中庭の池に向かって慧音を勢いよく蹴り飛ばした。

 

 

「ぐぅぁっ………!」

 

 

慧音は背中を岩に打ち付けて痛そうに顔をしかめる。

 

 

「慧音!!!大丈夫か!!!」

 

 

妹紅が池に飛び込んで慧音を抱える。

 

 

「安曇…………お前……………!!!」

 

「お前らは離れとけ!あんまり近寄ると巻き込まれるぞ!俺は怪我の保証はしねぇんでな!」

 

 

安曇は鉄棒を振りかざして倒れる一般鞍馬天狗に近寄る。

 

 

「テメェ…………なんでレーザー兵器の開発とか、嘘なんてついた。ふん、最初から怪しいと思ってたんだよ。テメェみてぇなやつ、話だけは聞くために生かしてやったが、やっぱロクでもねぇ奴じゃねぇか。でも、これで警戒する体力が浮くぜ」

 

 

安曇は水道管を持った状態で力を溜める。

 

 

「やめろ安曇………!そんな事をすれば………!」

 

「慧音先生、妹紅ちゃん、悪いな。昨日にも言ったはずだ。俺はオオバよりは思い切りがあるってな………」

 

 

安曇は背後にいる慧音と妹紅の方を振り向く。

その目は怒りのような妬みのような、恨み辛みを並べ立てたような表情をしていた。

 

 

 

「────────アイツばっかに、良いカッコはさせらんねぇよ、」

 

 

 

 

 

「う………ううっ………!」

 

 

その隙に鞍馬天狗………と思われる人物は立ち上がって逃走を図ろうとする。

 

 

「おせぇんだよ…………グズが、」

 

 

 

だが安曇のほうが何十倍も速い。

 

安曇は慧音の動体視力に収まらないほどの俊足で距離を詰めて、背後から水道管の横薙ぎを鞍馬天狗の頭部にぶつけた。

 

 

「が─────────」

 

 

鞍馬天狗は抵抗することも出来ず、中庭を切り裂くようにふっ飛ばされ、大岩を背中で叩いて倒れ伏した。

あまりの衝撃か、大岩の一部が欠けて割れた。

 

今のは致命傷だ。

脳と内臓に多大なダメージを受けた。

妖怪と言えど、生きているのか、かなり怪しい。

 

 

「フン、雑魚が。そうだろ………邪魔するやつはさっさとぶっ飛ばしたほうが良いんだよ………オオバのやり方より、圧倒的にスマートだろうが。俺たちのやることは烏天狗を守ることなんだろ………なら、烏天狗を危険にさらすようなバカ…………死んで当然だろうが」

 

 

安曇はさらなる追い打ちをかけようと走り出す。

 

 

 

「やめろ…………やめてくれ…………」

 

 

慧音が泣き叫びそうな声で安曇を止めようとするが、受けたダメージで咳き込んでしまう。

 

 

「慧音!無理すんなって!お前はケガしたんだろうが昨日!」

 

 

妹紅も慧音で手一杯。安曇の相手までしていられない。

 

 

 

「覚悟しな────おぉぉぉらぁよっ!!!」

 

 

 

「やめろぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」

 

 

 

 

 

慧音が真夜中、中庭で絶叫する。

 

 

 

 

そしてその叫びが奇跡を呼んだ。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁぁっ!!!!!」

 

 

中庭の横から矢のように鋭い突進が襲いかかった。

 

 

「ぬっ………!?ぐぁぁっ!!!」

 

 

それは椛の突進だった。

安曇はまさかの邪魔に対応できずに弾かれる。

 

 

 

「椛ちゃん…………?な、何すんだよ…………」

 

 

安曇はまさか味方が自分に攻撃してくるとは思わず呆気にとられている。

 

 

「椛か!?なんでここに………け、慧音!!!あれ、」

 

 

椛の後ろから歩いてくる影を妹紅は指さす。

 

 

「よ、良かった…………」

 

 

慧音は安堵の表情を浮かべてようやく休む。

 

 

 

 

 

 

「安曇────なんで……こんな事してるんだ、」

 

 

 

椛の後ろからは、安曇以上に呆気にとられた、最悪にショックな顔をした青葉。

 

 

 

「オオバ………チッ、タイミングわりぃな………空気読めよ、」

 

「あ、安曇………その子………怪我したのかい?」

 

 

青葉は青ざめた顔で口を押さえている。

変な冷や汗が垂れ流されている。

 

 

「あぁ、そうだよ。コイツ………スパイだったんだ。鞍馬天狗はレーザー取引なんてしてねぇ。何が思惑なのか知らねぇが、ひとまず烏天狗に不利益被るやつってことは分かった。だから粛清してんのさ。安心しろ、これ以上コイツから聞き出せる事はなにもない、用済みだ」

 

「安曇…………そんな…………嘘だよね…………」

 

「嘘じゃねぇよ………俺、嘘とかついたことねぇよ………どんな時も本音だ、俺は」

 

 

安曇は悪気もなさそうに、心底真面目な表情で淡々と語る。

 

 

「ひどいケガだよ………それ以上やったら………その子、死んじゃうよ………なんで、そんな事したんだ、安曇………!!!」

 

 

青葉は今にも発狂しそうな声で叫んだ。

こんなに取り乱して、泣き出しそうな青葉は初めて見た。

よほどショックだったのだろう、自分の髪を鷲掴みにして唸っている。

 

 

「はァ……………オオバよぉ、お前さ、目的と手段を履き違えるなよ。俺たちがやらなきゃいけねぇことはハナから決まってるんだ。だから、そのために障害はすべて取っ払ってなんぼだろ。まさかお前、烏天狗にスパイしにきたコイツとまで仲良くする気かよ?」

 

「そうじゃない…………!けれど…………!命まで取る必要は………!絶対にないよ!!!」

 

 

 

「あー始まった始まった。やっぱりお前はなぁんにもわかっちゃいねぇな…………」

 

 

安曇はやれやれ、と頭をかきむしる。

 

 

「慧音先生、アンタと文ちゃんと飯綱丸の話聞いてるぜ。ナスビともう一人来るんだろ?月虹市場に。ほらな、だから言ったんだ。邪魔なやつはさっさと潰しとくべきだってな」

 

 

化野安曇…………この男は…………!!!

 

 

「もう一人はアレだろ、あんとき百鬼丸と一緒にいたデカブツだろ?お前が仕留め損ねたやつ。お前がアイツ生かしたせいでこんな大惨事になっちまったよ。オオバ、お前どんだけやらかしちゃあ気が済むんだ?つか、ここにいるやつ全員がダメなんだよ………!まったく、ウマが合わねぇな………どいつもコイツも………!!!」

 

 

「あず───────!!!!!」

 

 

慧音が怒鳴り声を上げようとした次の瞬間、

 

 

 

 

 

「────────────ッ!!!!!」

 

「ぶっ…………!!!!!」

 

 

凄まじい剣幕で安曇の懐に飛び込んだ青葉が、鋭い拳を安曇の頬にねじ込んだ。

 

安曇は中庭を転がるがすぐに身体を立て直す。

 

 

 

「だよな………みんな仲良しな神門青葉はやっぱ反対だよな!そうだよな!!!」

 

 

「安曇─────!!!!!」

 

 

青葉が激しい怒声を上げる。

まさか……………こんな本気で怒っている青葉を見ることになるなんて……………

 

 

 

「まずい慧音!互いに正気じゃねぇ!どうすんだ………!?」

 

「ぐっ…………こんな、ことが…………!」

 

 

 

 

安曇と青葉、親友同士がまさかの大喧嘩になってしまった。

 

 

(安曇みたいな私よりも決断力も思い切りも凄いやつ、本気で怒らしたら親友のオオバすらぶっ飛ばすんじゃないか?)

 

 

これじゃあ…………昨日妹紅の言っていたことと同じじゃないか…………!

 

 

 

「安曇…………………」

 

 

「ふん、クソみてぇな状況だが同時にちょっと懐かしいな」

 

「─────────────」

 

 

青葉は安曇を睨んでいる。

 

 

「いいぜ、抜けよ刀。卑怯とは言わねぇ…………さぁやろうぜオオバ………ガキん時みてぇにさ、お前がぶっ倒れるまでな!!!!!」

 

 

「─────────ッ、」

 

 

青葉は刀を外して椛に押し付けた。

 

 

「………………………………なんだそれ、」

 

 

安曇も声を震わせる。

 

 

「なんだよ、『お前は徒手で十分』ってか!?俺のプライド折りてぇのか?は、ははははははははは!!!!!」

 

 

安曇は大笑いする。

 

 

「──────思いアガってんじゃねぇ!!!!!」

 

 

安曇は水道管を青葉に投げつける。

 

青葉が首を傾けると、青葉の顔を打ち抜く勢いで飛来する鉄棒が彼の頬をすりぬけて壁に突き刺さる。

 

 

「ちっ……………まぁいいぜ、どうせ俺が勝つ。忘れたとは言わせねぇぞ?喧嘩はお前より俺のほうが強い。また腕折れても、今度は謝らねぇぞ!!」

 

 

「────────ッ…………」

 

 

青葉の口から血が流れ出る。

 

安曇が青葉の腕を折った件…………それは二人をつないだ大切な思い出だったはず。

それを……………泥を塗るかのように…………!!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あ………あ…………安曇─────!!!!!」

 

 

「来いよ………………オオバ────!!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

怒り狂う青葉と、傲り狂う安曇。

 

 

 

誰も予期していなかった史上最悪の戦いが、意図せずにも、この場で巻き怒ってしまった。

 

 

 

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