東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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月虹作戦開始!!!

 

 

次の日──────

 

 

 

 

 

「文さん………こりゃあ、どういうことだい………」

 

 

昼間、青葉が射命丸文に呼び出されて、例の服を着せられているのを私は見た。

 

 

「だって、これが一番大丈夫そうじゃないですか〜、常盤國に潜入するという話でしょう?」

 

「いやいや…………これ、どう見ても女の子の服でしょ…………」

 

 

なぜか女装させられている青葉を見かけた。

 

 

「私は鞍馬天狗に顔が割れてしまったのでもう潜入はできませんが、青葉さんならまだこうやって笠を脱いで代わりの帽子を被り、髪を下ろす場合バレませんから」

 

「いや、理屈はわかるんだよ。そうじゃなくて、女装である必要よ」

 

「いいじゃないですか、知らない男より、可愛い女の子のほうが潜入にはいいですって。男のハニートラップとか聞いたこないでしょう?」

 

 

たしかに。

いや、そうじゃない。

 

 

「青葉…………無理することはないんだぞ。嫌なら嫌と…………」

 

 

流石に見てられない………というか可哀想だったので青葉の意見を聞こうとした。

 

 

「……………じゃあ、いいか。」

 

「納得したァァァァァァッ!?」

 

「まぁ、たまには女装もいいね。せっかくだからとびっきりかわいいので頼む!」

 

 

しかもノリノリだ!?

 

 

「はい!おまかせください、射命丸文、全力を尽くして最高の美女に仕立て上げてご覧にいれましょう!」

 

 

 

 

 

こうして二人はさっそく、青葉の意見を含めた扮装コスチュームを選び直すわけだ。

 

 

「洋服もいいけれど、やっぱ着物がいいかなー。鞍馬天狗に洋服を着ている人はいなかったからね」

 

「なるほどなるほど、柄はどうされますか?」

 

「これもいいな………でも、こっちのほうがいいかもな〜。できれば明るい色がいいかも。柄はあったほうがいいかも、」

 

「髪の結い方はどうされますか?それとも下ろしたままで行きますか?」

 

「うーん、結って欲しいかも…………いや、これは自分でやるよ。うーんと…………よっ、と、こんな感じでどう?」

 

「あやや〜!いいじゃないですか!それだったら、髪留めではなく、こちらのリボンで………」

 

「なるほどなるほど!こりゃあいいや!」

 

 

 

───────なぜだろう。

 

こんなにも二人は楽しそうなのに、私だけオシャレに全くついていけないせいでわからなくてつまらん。

 

 

 

 

──────10分ほど待ったあと、退屈していた私の所に文と青葉が戻ってきた。

 

 

「慧音さん!完成したよ!どう?似合ってる?」

 

「戻ったか────って、なぁッ!?」

 

 

青葉の姿を見て私はついつい自分の下顎を破壊してしまった。

 

 

青葉は白地に、薄桃色の花の模様が小さく描かれた着物を着てきていた。

さらに髪は普段より濃青に染め、着物と同じ柄のリボンで纏め、長い髪が肩下に流れないようにお団子気味に結んでいた。

 

一見すると完全に別人だった。

女性の私ですら魅了されかけた。

 

 

「青葉さーん!カラーコンタクト入れ忘れてますよ!」

 

「おっと!頼む!」

 

 

さらに青葉は赤いカラーコンタクトまで入れて、完全に元の面影を失った。

最後の仕上げに、頭に桃の花の飾りを付ける。

 

 

「よし!潜入モードの俺、完成だ!笠は………まぁ、番傘を持っていこう!」

 

「………………………………………………………………」

 

 

いや……………美しすぎる。

こんなもの…………誰でも惚れる。

男はイチコロ、女も多分ほぼ全員胸を穿ち抜かれること間違いなしだ。

正直出来過ぎというか、やりすぎだ。

 

 

「なぜお前は何をしても美人なのだ………!」

 

「あらありがとう。けれども、あなたの方がずうっとお美しいですわ、慧音先生」

 

「ひゃぁぁぁぁっ!?」

 

 

耳元で囁かれて私は身体を跳ねさせながら赤面する。

 

 

「おー、青葉さん女性声も出せるんですね!」

 

「初めてやってみたけど意外と上手く言ったね」

 

「ひぃっ…………………」

 

 

耳が…………溶ける…………

 

 

「そうなんですよ。声どうしようかなと思ったんです。しゃべらないでいただくか、あるいはチョークでも食べさせようかと思って…………」

 

「俺は「オオカミと七人の子ヤギ」のオオカミか」

 

 

そういう童話に、オオカミが母親になりすますためにチョーク(石灰の塊)を食べて声を高くするというシーンがある。

ちなみに科学的根拠は一切ない。

ちなみに他人の前で本性や正体を隠して自分をよく見せようとする事を「チョークを食べる」と言う。

 

 

「それで、私一人で行くのかしら?ちょっと心細いわね………」

 

「いえ。鞍馬天狗に顔が割れていないのは、はたてですね。潜入には彼女に同行してもらいます」

 

「わかったわ。それならひと安心ね」

 

「その声まだやるのか…………」

 

「発声練習よ。いざという時に男の声が出てしまっては潜入作戦が台無しだもの」

 

 

青葉には、よりにもよって今夜に常盤國に再潜入するという計画があることを昨日の晩に飯綱丸から聞かされたが…………本当にやるのか…………

 

 

「青葉、先に言っておくが今夜は私はお前を助けられそうにない。常盤國に向かうこともできない」

 

「もちろんだよ。慧音さんに二度も死地で無茶させるほど俺も鬼じゃない」

 

 

そうだ。異変の調査も重要だが、何よりも今日は満月…………

私には異変の調査よりも優先されなければならない、大事な仕事があるのだ。

 

 

 

 

 

 

 

そしてついに、時刻は夜を指した。

日は落ちきり、満点の夜空には星々が瞬きだす。

 

そしてそれと同時に…………星々の合間に見える、どの星よりも大きく強く輝く、金色の月が。

 

 

────────今月の満月が訪れた。

 

 

そして今宵、待ちに待った月虹市場が開催される。

 

 

「いよいよね。準備は良い?」

 

 

飯綱丸龍は飯空プロジェクトのメンバーたちに集合をかけ作戦の決行に移る。

 

 

「昨日はいろいろあったらしいが、仲良くやろう!そして怪我なくな!はい作戦会議終わり!」

 

「早すぎるだろ!!!」

 

「だって他に何することがある。【メンバーの配置】は全員把握しているだろう?何も確認することはあるまい」

 

「いや確かにそうだけどさ」

 

「こりゃあもう先が思いやられるべ………」

 

「あぁ。もう失敗したらこの女の責任で良いと思うぞ私は…………」

 

「待った待った!失敗してもちゃんとうちらのビジネス資金は出してもらうからね!」

 

「そうだぞ。そういう契約だ」

 

「心配ない!私がついているから絶対に失敗はありえない!」

 

「全員、お前さんがいるから不安だって言ってるんだわさ………」

 

 

 

「さて!みんな、行くわよ!ここが正念場ね、張り切っていきましょう!えいえいおー!」

 

「で、飯綱丸。この女誰だ」

 

「知らん!なんか居るなと思ってた!」

 

「──────俺、抜けていい?」

 

 

 

 

 

 

こうして、俺とはたてさんは鞍馬天狗の集落の門を訪れた。

番傘を持ってきたので俺の月光対策はバッチリだ。

集落の正面に続く道はめちゃくちゃだった。俺たちが一昨日来た時、ぜんぶの罠を発動させたからだ。

 

 

「はたてさん、気合入ってるね。こんな綺麗な着物着てきてさ、」

 

「ちょっと、あんまり見ないでよ。任務に集中しなさい、」

 

「はい…………」

 

 

はたてさんは紫色の着物を着ているが、すごくよく似合っている。

これなら、和服美女二人組として潜入できるね。設定はすでに決めてある。

 

 

正門は俺が破壊したのでめちゃくちゃだ。

 

応急的な修繕措置を試みたのか、なぜか絆創膏がたくさん貼ってある。

どうしよう、この様子を見るに鞍馬天狗ってめちゃくちゃ頭悪そう。

 

さていよいよ見張りの目前だ………集中していくぞ。

 

 

「何者だ!」

 

「鞍馬天狗ではないな?両手を挙げ、荷物を地面に置け!」

 

 

いきなり槍を向けられた。

 

 

「ここは、誰の集落でございますか!?た、助けて欲しいんです………!」

 

 

まずははたてさんが交渉しようとするが、兵士は聞く耳を持たない。

 

 

「ここが何処かとも心得ていないのか。ここは鞍馬天狗の集落、常盤國。百鬼丸様のおわす土地。貴様ら身寄りのない一般人が踏み込んでよい土地ではない!引き返せ!」

 

「そんな………困ります!この山に、獣の妖怪が現れて、私たち逃げてきたんです………!」

 

「事情は察した。だが、我々鞍馬天狗は多種族を保護するという事は行っていない。当たる場所が悪かったな。諦めろ」

 

 

やれやれ、頑固な門番だ………さすがにそう簡単に通してくれるわけないよな………!

さて、俺の番だな。

 

 

「私からもお願いします。父と母と夫を亡くし、若い妹の命を預かっているのです………そしてこの子も………お願いです………!せめて今夜だけでも、どうかお願いします………!」

 

 

俺の着物の腹の部分は膨らんでいた。

 

 

「…………………………………少し山を降り、東へ向かった先に鴉天狗の集落がある。そこを訪ねろ、ここではお前たちを保護できん」

 

「そこまでは私たちが案内しよう。必ず娘を守るのだぞ」

 

 

兵士たちは少し折れてくれた。

鴉天狗の集落に俺たちを案内してくれるようだ。

残念ながら常盤國への侵入は叶わなかったが。

 

いや、じゃあ女装の意味なくない。

 

 

俺は黙ってはたてさんの手を繋ぎ、2回握った。

 

プランBの合図。

はたてさんは応答するように2回握り返してきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

しばらく歩いた所で、木陰からカサッ、と音がした。

 

 

「い、今…………音がした…………?」

 

 

はたてさんが声をあげる。

 

 

「何っ?」

 

 

兵士たちは槍を構える。

 

 

 

(行くよ、はたてさん………………)

 

(えぇ。本番ね……………)

 

 

 

 

 

草むらの揺れが強く、激しくなる。

ガサガサガサガサガサガサ……………

 

 

「何者だ!」

 

「返事をせんか!」

 

 

だが草の中から声はしない。

 

兵士たちは顔を見合わせ、おそるおそる茂みにに手を伸ばす。

 

 

その隙に、俺とはたてさんは顔を見合わせた。

 

 

 

 

(作戦開始─────!!!!!)

(作戦開始─────!!!!!)

 

 

 

 

突如、草むらから白い毛並みの獣が現れた。

 

 

 

「ガルルルゥゥゥゥ!!!」

 

 

「きゃぁぁぁぁぁぁ出たぁぁぁぁ!!!!」

「助けてぇぇぇぇ!!!!」

 

 

俺とはたてさんは悲鳴をあげる。

 

 

「下がっていて!!!」

 

「なるべく遠くへ逃げなさい!!!」

 

 

兵士たちは槍を構えて獣を倒そうとした。

 

俺たちはその隙に、一目散に逃げ出した。

もちろん、逃げる先は常盤國の正門!!!

 

 

 

「なんだコイツは、狼か!」

 

「この程度、一瞬で……………」

 

 

「オォォォン!!!」

 

「なっ!?」

 

 

なんと、その狼はいきなり二足歩行になり、鉈を振りかざしてきた。

さらに、突然周囲に霞が立ち込めた。

 

 

「なっ、この煙は……………!?」

 

「この匂い……………煙草か…………!?」

 

 

煙の向こうから3つの足音が聞こえてくる。

 

 

「ふっふっふ。まんまとおびき寄せられたようだねぇ…………」

 

 

兵士の向かいから現れたのは駒草山如。

この場所で待ち伏せしていたのだ。

 

 

「貴様…………図ったな!!!」

 

「消え失せろ!!!」

 

 

2人の兵士の槍が襲いかかるが、霞のように消えていった駒草太夫にはかすりもしなかった。

 

 

「一昨日はしくじったが…………夜の暗闇ではキツイだろう?お前たちはこの暗闇の中に仕込まれた煙草の煙で何も見えやしないさ………」

 

「まずい…………方向感覚が…………」

 

「おのれ…………小癪な…………だが、見えないのは貴様も同じ事…………!」

 

 

だが駒草太夫は煙の中で妖しく笑っている。

 

 

「さて………果たしてそうかな?お前さんらの賭け………負けないと良いがねぇ」

 

 

「この暗闇で見えなくとも、匂いはします!!!せぇぇぇぁぁぁぁっ!!!」

 

 

「ぐぁぁぁぁぁぁぁッ、」

 

 

背後から狼が襲いかかる。

犬走椛によって兵士が一人組み倒された。

 

 

「音は聞こえる…………!そこか!」

 

「ぐぅぅぅぅぅ!!!」

 

 

相手も一流。兵士は椛の音を聞きつけて槍を振りかざした。

間一髪盾で防いだが、椛は激しく地面を転がる。

 

 

「足音は3つ…………もう一つはどこから…………」

 

 

その背後から何かが忍び寄る。

 

 

「山の妖怪…………舐めねぇでくんろ。ウチらはね、真夜中にこんな霞や雪があろうども、月の光だけで物の位置はある程度わかるんだべ!」

 

「まさか………背後いつの間に………!!!!」

 

 

「イノシシの背後取って生活してんだ、人型妖怪の背中なんて朝飯前だべ!!!悪い子ぁ………いねーがー!!!!!」

 

「ぐぉぉぉぉぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

坂田ネムノの包丁が全力で地面を叩き切り、強烈な地割れと共に爆発が起きた。

もう一人も一撃で失神した。

 

 

「薪藁の代わりにもなりやしねーべ、」

 

「ネムノ………さっきのはナマハゲではないか………」

 

「いいだ、気にすんな」

 

「さて、あとは他の皆さんの成功を祈るだけですね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして射命丸文と藤原妹紅、河城にとり、山城たかね、そして化野安曇は月虹市場を訪れようと、あの金色の月を目指していた。

 

 

「到着しました!ここが月虹市場です!」

 

 

月明かりを背に広い空間があった。

 

 

「おいおいどうなってんだ!?空中に透明な地面があるぞ!?」

 

「ようやく着いたわけだね…………」

 

「さぁて、ここで取引の現場を押さえるって話だよね?」

 

 

あたりはしんとしている。

 

だがその時、空から誰かがゆっくりと降りてきた。

 

 

 

「ようこそおいでくださいました、この月虹市場へ…………」

 

 

白い純白のマント。

そして…………身体を虹色の布を組み合わせた摩訶不思議な模様の服で覆っている少女が舞い降りてきた!

 

 

「お前も市場に来たのか?ここのオーナーを探しているんだ」

 

「あなたたちがお客様ですね。私は天弓千亦(てんきゅうちまた)

 

「そうか。ここのオーナーを探していてさ、」

 

「私はこの月虹市場において、お客様に絶対的な安心のサービスと取引を行」

 

「それよりここのオーナーは誰だ?」

 

 

 

「人の話を最後まで聞きなさい!!!!!!」

 

 

その人影は声を荒げて叫んだ。

 

 

「…………おほん。改めて、ようこそ月虹市場へ。私こそがこの市場のオーナー・天弓千亦!今宵の一番乗りは………あなたたちよ!」

 

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

    無主物の神

 

 

    天弓 千亦

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

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