東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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かまくらやる気ナスの歌〜Brilliant Brinjal

 

 

 

上白沢慧音は満月の日にハクタクの姿になる。

 

彼女の能力によって鴉天狗の集落は秘匿されている。鞍馬天狗の兵の襲撃が来ることはない。なぜなら敵が認知できないからだ。

 

そのはずだったのだが……………

 

 

「ネムノ!こりゃあどういう事だったんだい!?先生が鴉天狗の集落は見えないようにしているって話じゃあなかったのかい!?」

 

「話してる暇なんてねーべ山如!!!次から次へと敵が流れこんで来ら!!!」

 

「ど、どうしてこんな事に…………!!!」

 

 

鴉天狗の集落は正面からやってくる鞍馬天狗の兵士の大群に襲われていた。

 

 

「ぐうっ………!煙も効かないか!」

 

「どうなってんだべ………!!!」

 

「なぜ…………慧音さんの秘匿した歴史は、賢者級の大妖怪にしか見破れるはずがないのに………!」

 

 

山如、ネムノ、椛の三人は全力でこれを止めにかかるが、あまりにも敵の数が多すぎて追いついていない。

 

 

 

 

 

 

 

「───────残念だったな………幻想郷で最も巨大な山………妖怪の山は我々『幻想獣国同盟』がいただくのだ!」

 

「やれやれ。モーガン君にしては陰湿な立ち回りをするのですね、」

 

「違うな政子牙。戦いには陰陽などない!いかなる小細工を施そうとも、最後は力が自ずと示すものである!」

 

「彼女の『眼』はいつだって真実を見破る。たとえそれが歴史編纂によるものであろうと、秘匿された事実を見抜くことができる…………隠された事実だけではありません、物事の本質を見破り、他人の情報や嘘を見破る技能をも兼ねた能力。さすがは獣国の千里眼ですねモーガン君」

 

「一度見破れば、それはそこにあるものとして認知される。彼奴の視覚を彼らに与えれば、鴉天狗の集落を見つけることは容易い」

 

「ま、あとは【彼女】が上手くやってくれるかどうかですよね、」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ネムノ!椛!向こうから何か来てるぞ!」

 

「ありぁなんだ…………!」

 

「あれは…………紅の……………鎧!?」

 

 

 

──────そう、我らが幻想獣国の紅き鎧。

 

 

 

「忌々しい鴉どもめ、駆逐してくれる!!!」

 

 

金の薙刀を手にし、紅と金の鎧に身を包んだ天下無双の女武将。

鬼神の如き強さを誇る戦乙女……………

 

 

「さぁ怯むな同胞よ!鴉天狗を潰し、いずれ鞍馬天狗をも叩き伏せ、この山を我らが自由の大地へと導くのだ!!!ゆけーっ!!!」

 

 

「おい、来るぞ!!!」

 

 

 

───────【紅き鎧の鈴鹿嶽(すずかやま)】です。

 

 

 

「ほう………鴉天狗には見えぬが、貴様ら何者だ?」

 

「………………………………………」

 

「まぁいい。我が行く手を遮るのであれば問答無用。この地より立ち去り、ゴミでも漁っておれ、」

 

「二人とも!!!」

 

 

おっと、邪魔が入ったようですが彼女の前では無意味でしょう。

 

 

「ぐぅぅぅぅっ…………!!!」

 

「椛!!!」

 

 

あの黄金の薙刀から逃れられた武将は、わたくしですら知りません。

圧倒的な実力、圧倒的な兵力、そして圧倒的な残忍さ。

彼女らの戦いは、敵将を討ち取ることではありません。ひとえに、敵将を含めたすべてを【全滅させる】ことにあります。

流石は、我らが猛将。そして………………

 

 

 

この山の異変の──────根源よ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

様子がおかしい─────旅館の外で何が…………

 

 

「ぬぅぅぅぅぅぅん!!!!」

 

 

すると突然、旅館の外の喧騒をかき消すほどの大きな音を立てて、私の真横にある窓ガラスが砕け散った。

 

そして窓の外から一人の女が、私が隠れていた小部屋に飛び込んできた。

それは想定外の事態だった。

 

 

「バカな…………!お前、なぜここが解った!」

 

 

その女は紫色の髪をしており、頭からは一本の角が真っ直ぐに生えていた。

 

 

「知れたこと。貴様の隠匿能力よりも、私の探知能力の方が遥かに上だっただけの事だ」

 

「あり得ない………一時的にとは言え、歴史から鴉天狗の集落を消し去ったのだぞ………?普通、見つけることすら不可能だ。まして、この旅館の小さな一室に隠れていた私を見つけ出すなど………」

 

「舐めるなよ、小娘。貴様より私のほうが何千年と生きてきている。貴様の能力、私を欺くにはまだまだ未熟すぎるぞ、上白沢慧音」

 

「私の名まで知っているのか……お前、何者だ?」

 

「貴様の名は今知った。私の眼はありとあらゆる真実を見通す。貴様が幻想郷の歴史という時間に縛られた、ある一定の範囲の認知にしか干渉できないのに対して、私はこの宇宙全体の記憶と知識であるアカシック・レコードに直接干渉して無限の事象を把握できる」

 

 

まるで私のように難解な話をしてくる女だった。

だが、私にならば言っている意味が理解できた。

この女、外見は私とあまり変わらないが、相当な大妖怪だ。

一角の角…………真実を見通す眼…………こいつも幻獣の類か………!

 

 

「だが残念だったな。お前の秘匿も私が看破した。今ごろ鴉天狗の集落には次々と兵が流れて二時間以内にこの場所は壊滅する」

 

この女、獣人だと言うのになぜこのようなことをするんだ………?

どういうことだ?なぜ鞍馬天狗の軍勢に獣人が紛れている………?

 

 

「なぜこんな事をするのか、だと?」

 

「……………っ!」

 

 

心を………読まれてる………?

 

 

「あぁそうだ。正確には読心の能力というより、相手の表情から思考を読み解く観察眼(サードアイ)だがな。私は顔を見ただけで相手の思考を読める。人間に闇を見続け、あらゆる事象に対して疑いを持った視点で真実を視覚する私の持つ特技だ」

 

「………………………………」

 

「決まっている。全てはお館様の望むままに。それが私の真実だ。それが私の目的だ」

 

「お館様………?誰だ、そいつは………!」

 

「知りたいならば暴いてみせろ。このモーガンのようにな…………」

 

 

モーガンと名乗った女は床に手を添える。

 

 

「もっとも…………歴史を偽る事しか能のない貴様には、真逆の芸当であるゆえ無理だろうがな!」

 

 

床から火の柱が立ち上った。

 

 

「ぐぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっ!?」

 

 

辛うじて形を保っていた窓ガラスが爆風で粉砕され、慧音は建物の外へと投げ出された。

人間慧音なら地に打ち付けられて死亡するが今は獣の姿。すぐに体勢を立て直し、見事に地上へ着地した。

 

 

「くっ………………まずい、旅館が……………!」

 

「逃げるな、上白沢慧音!!!」

 

 

旅館の高い位置にいるモーガンの紫色の髪が急激に伸び、慧音に襲いかかる。

髪の先端はどろどろと形を変えて触手のような腕のような形になる。

慧音は急いで飛び退く。

髪の猛攻が直撃したのは地面だった。髪から滴る体液のようなものが木の幹に飛び散り、たちまち木の幹は腐敗融解した。

 

 

(な、なんだあの生き物は…………!!!獣のはずが、なぜあのような毒を扱える………!?)

 

「混沌の力…………思い知れ!!!」

 

「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!」

 

 

モーガンの髪が慧音に襲いかかる。

かすっただけで大木をも腐敗させる髪である、動物である慧音が触れれば即死だ。

そんな即死の髪が慧音の眼前まで迫った時、

 

 

 

地面が開き、禍々しく濁った池の中から何かが飛び出してきた。

 

 

「何っ!!」

 

「なんだ!?」

 

 

池の中から飛び出してきたのは、なんと巨大な手だった。骸と化していた骨の手が髪を掴んで防いでしまった。

 

 

「ほう、流石にカルシウムの塊を腐食させることはできんか!」

 

 

声とともに池の中から人影が浮かび上がってきた。

その人物の足裏が地についた時、地面に穿たれた孔はゆっくりと閉じた。

 

 

深緑色の衣を纏った女と、そこに控える紫色の中華服を着る女が慧音に背を向け、モーガンと真っ向からにらみ合う。

 

 

「お前は…………」

 

「のぅ日狭美。彼奴は何者じゃ?」

 

「はて…………私には分かりませんね。しかし、これは相当な手練れと見ましたよ」

 

 

鬼のような角をつけた一人、瞳を覆うほどの長い前髪が一人。

突然の乱入者に慧音は困惑を見せる。

 

 

日白残無(にっぱくざんむ)豫母都日狭美(よもつひさみ)…………地獄にいるはずの貴様らが何故ここに…………」

 

「なに…………残無だと!?それはまさか、新地獄の創設者と言われている………あの残無か!?」

 

「残無様がなぜここにおられるか…………ふふっ。そんなもの決まっていましょう、」

 

 

 

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

 地獄の美しきストーカー

 

   豫母都 日狭美

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

 

「それもこれもすべて、儂の掌の上で起きる出来事、だからのぉ」

 

 

 

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

    寂滅為楽の王

 

    日白 残無

 

 

◆  ◆  ◆  ◆  ◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

───────いっぽうその頃、月虹市場。

 

 

妹紅、にとり、たかねの3人は那須備壱与……ナスビとの戦いを続けていた。

 

青葉たちが鞍馬天狗の長、百鬼丸と正面衝突すると同時に、彼女たちも戦闘を開始した。

目的はナスビの足止め。強力な妖怪であるナスビが青葉たちの戦う前線に乱入すると敗北は必定。

ならばナスビを行かせないように全力で足止めし、もしできなかったとしても大きく消耗させようという事だった。

 

 

「むぅぅぅ…………ふっ!!!」

 

 

ナスビは素早い動きで移動し、妹紅たちに向かって弓を射る。

 

 

「う………うおわぉぉぉぉ!?」

 

「なんならさっきより追尾性能が上がっていないか!?」

 

「くそっ、そろそろ避けられないぞ!?」

 

 

ナスビの放つ弓から放たれる弾幕は弾速が速いだけではなく、対象を追尾するような軌道を持っているのだ。

妹紅にとりたかねは三手に分かれて飛行することでナスビの射撃を散らしているが、いよいよ限界が見えてきた。

 

この隙に放たれた数回の射撃を逃げながら躱してきたが、数が重なるとある問題が発生してきた。

 

 

「オイオイ!!矢が別の角度から来てるじゃないか!!」

 

 

妹紅を追いかける8本の矢がそれぞれ別の軌道で妹紅に襲いかかる。

単に真後ろから追いかけてくるだけならば矢より速い速度で飛行している間は凌げるが、なんと妹紅が後ろから追いかけてくる矢を避けているところ、正面から4本の矢が襲ってきた。

 

 

「ぐわぁぁぁぁぁぁ!?」

 

 

妹紅は咄嗟に火を纏って矢から身を守ろうとするが、反応が遅れて直撃してしまった。

 

 

「はぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

 

ナスビは真上に向かって散らすように矢を反射する。

数え切れぬほどの矢が雲を切り裂いて天に消えていいった

 

 

「まだまだ!!どうせなら全て貰っていけ!!」

 

 

矢は矢筒に入るだけしか持ち歩けないため有限だがナスビの矢はその場で自身の妖力を編むことで作られる弾幕。

つまり彼女の体力の許す限り矢は無限。

妹紅たちは耐久戦を想定していたが、むしろナスビに対して耐久戦は最悪であった。

追尾する矢が幾本と増えていくほど回避は困難になる。いかな速度で飛び回れても先回りしてくる矢に阻まれれば縦横無尽に飛び回ることもかなわない。

 

 

「うわわわわわわわぁぁぁっ!?」

 

「無理だ無理だ無理だ!!!こんなのどうやって避けろって………!!!」

 

「諦めんな!もうちょっとだ………もうちょっとでオオバが勝ってくれる………!」

 

 

妹紅もにとりもたかねも、いよいよ限界だ。

空の領域は完全にナスビの矢が支配している。

 

 

「ここで────緩急をつける!」

 

 

その時、ナスビの弓から1本の矢が放たれる。

今までに放たれたどの弓よりも圧倒的に早い。

青い光が一直線に空気を切り裂いていく。

 

 

「にとり!!!」

 

 

たかねがにとりに体当たりする。

 

 

「ぶわぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「うぉぉぉぉぉっ!?」

 

 

2人の間を音速の矢が貫いた。

 

 

「たかね……!助かったよ、一つこれは貸しにしとく……!」

 

「あいよ……!」

 

 

二人はナスビの方を見る。

ナスビは青い矢を複数本つがえる。

 

 

「嘘だろ………あいつ、今までの矢はぜんぜん本気出してなかったってことか………?」

 

「矢の威力をほとんど変化させずに矢の速度を自由自在に操作する………妖力で弾幕の矢を操作している彼女だからできる芸当だ。矢が減速しないということは………あの矢、まさか空気抵抗を無視しているのか!?」

 

 

空気抵抗。

弓矢は弓から矢という棒状の物体を放つ飛び道具。であれば当然、物理的に言うと弓から射出された矢には空気抵抗が働く。

空気抵抗により矢は減速するが、空気抵抗を無視するナスビの矢は減速しない。

また、重量以外に矢に向かって作用する抵抗がなくなるので矢の飛距離も桁違いだ。

弓矢という武器は物理法則を利用した人類の叡智だが、おおよそ物理運動に逆らうナスビの弓は、通常の弓とは性能が全く違うのだ。

 

 

「ふっ!!!」

 

 

先ほどの青い矢が一斉に放たれる。

 

 

「まずい!!!」

 

「避けろ二人とも!!!」

 

「うおっ速っ!?」

 

 

ギリギリで3人は矢を避けた。

 

 

「追尾する矢よりも、一直線に飛ぶ矢の方が速いが………こちらには追尾機能がない分まだ楽だな………」

 

「あれだけの速度だ。方向転換することはさすがに難しいだろう」

 

 

しかし、彼女太刀の読みは外れることになる。

 

 

「いや、まだだ!!!」

 

 

その時、2本放たれた青の矢が急激に反対方向に軌道を変化させて、妹紅の背中を一斉に貫通した。

 

 

「な…………に゙ぃい゙ッ…………!?」

 

 

神速の矢は妹紅の身体に大穴を開けてしまった。

 

 

「妹紅───!!!」

 

(嘘だろ………おかしい、あんなスピードの矢………戻って来るはずがない、仮に戻ってこれたとしても…………スピードが早い分、方向転換に時間がかかるはずだ…………なんで普通の矢より戻るのが速いんだ!?)

 

「妹紅!ひるむな、追尾矢が迫るぞ!」

 

「うぅ………っ!!!」

 

 

妹紅はギリギリで追尾矢を躱す。

 

 

「…………そうか分かったぞ!」

 

 

たかねは顔を青くしながらまさかの事実を悟る。

 

 

「────あの青い矢は妹紅の横を通り過ぎた後、妹紅の背中を追った追尾弓に当たって跳ね返ったんだ!」

 

「な…………反射だと!?」

 

「物体と物体が衝突する時は弾性の作用が発生する。だが基本的には空気抵抗によって跳ね返りは発生しない、ないしは反発の威力が大きく下がる」

 

 

例えば卓球台にピンポン玉を投げたとしよう。

すると最初は玉は元気に跳ねるが何度も跳ねているうちに力を失う。

それはバウンドしたあと、空中で空気抵抗によって減速するからである。

減速することで勢いが弱まり、その状態で再度卓球台に接触した時は先ほどよりも反発力が低くなる。

よって普通、物体は反発後に減速するのだが、空気抵抗がないことにより、反発しても矢が減速することはほとんどないのだ。

 

それにより、音速で跳ね返ってきた矢がそのまま妹紅を直撃したのだ。

 

 

「まじかよ…………」

 

 

以前鴉天狗勢を全滅させた張本人はナスビ。

だからこそ最大限に警戒を敷いていたのだが、ナスビはその予想を上回るほどの強敵だった。

前回のナスビは全く本気ではなかったわけだ。

 

 

「今度こそ二度と立ち上がれぬよう、徹底的に射抜かせて貰おうか!」

 

 

今度はナスビの方から一向に迫る。

それもそうだ。この場の流れは完全にナスビが掌握してしまったのだから。

にとりのほうに飛び上がりながら矢を乱れ撃つ。

 

 

(赤が好きだから赤いのから狙ったが、赤いのは妙に耐久力がある。深追いはせず一度あきらめ、青と緑から仕留めるぞ)

 

 

ナスビの自身の弓への絶対的自信から、妹紅の不死性を浅く見ぬかれる。

素早く冷静な判断を下したナスビはにとりとたかねを先に撃ち落とす作戦に変わった。

 

 

(だが、それは想定内さ………!)

 

 

だがにとりだって過去幾度かの異変で修羅場は潜ってきている。

タダでやられる彼女ではない。

 

 

(あえて私から奴に近づき、少しでも隙を作るんだ。私らが機会をうかがってちまちまと殴るより、千載一遇の好機を妹紅の爆発力で叩くしかない!)

 

 

にとりの判断も的確だった。

 

 

「河童の技術、受けてみろ!!!」

 

 

にとりの背負う鞄が変形する。

鞄がドリルと鋼鉄の翼を構えた飛行機のような形状になる。

 

 

「戦機『飛べ!三平ファイト』!!!」

 

 

後方のアフターバーナーが火を噴く。

にとりはこれまでにない高速で、逆にナスビへと突っ込んでいく。

 

 

「アタックチャァァァァァンス!!!」

 

 

にとりはあえてナスビの正面から突入した。

 

 

「ふん…………」

 

 

予想外の動きをするにとりに対してナスビは顔色を変えずに、弓を乱射する。

 

 

「うわわわわっ!!!」

 

 

とても躱せそうにないがにとりはなんとか間一髪でかわしていく。

 

 

(よし、初めて私への警戒が解けたぞ!)

 

 

妹紅はその隙を逃さなかった。

 

 

「ほぉぉぉぉらよ!!!」

 

 

炎の弾幕がナスビを横から襲う。

 

 

「それは読めている!貴様への警戒など解くものか!」

 

「くそっマジかよ!」

 

 

ナスビは弓を分解し、2本の刀にして弾幕をはじき返した。

ナスビの弓は分解することで2本の刀にすることができる。それを合わせることで双頭剣にすることもできる。

 

ナスビの弓は一級品だが、今の素早い剣撃も目を見張るものだった。

 

 

妹紅への警戒を戻したことが、逆にたかねへの警戒を薄めた。

 

 

「未だ…………!!!当たれぇぇぇ!!!」

 

「甘い!!!」

 

 

それすらもナスビは対応してしまう。

そうこうしている間ににとりがナスビの懐に突っ込んできた。

 

 

「うおーっ!!!」

 

「そのような鉄屑で私に勝てると思うな!!!」

 

 

ナスビは2本の刀を合わせて双頭剣の形にし、ドリルを止めた。

さらにそこから、目にも留まらない速さの後ろ蹴りでにとりの突進を跳ね返してしまった!

 

 

「嘘だ…………!!」

 

 

にとりが腹を括った総攻撃はなんと無効。

 

 

ナスビは3人から飛び退き、距離を取る。

 

 

 

「それが貴様らの切り札か。ならば、私も本気を出させてもらおうか…………」

 

 

ナスビが空に手をかざしたとき、空から金色の光が無数に降り注ぐ。

先ほど天に向かって放った矢が月明かりとなって降り注ぎ始めたのだ。

 

 

「月符『夜間日照(やかんにっしょう)金扇(おうぎ)の的〜』!!!」

 

「「「おわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」」」

 

 

周囲に金色の太い光が雨のように降り注ぐ。

もちろんレーザーの弾幕だ。

その恐るべき眩しさと破壊力に3人は悶絶する。

 

降り注ぐ光の矢に隙間などほとんどない。そのわずかな合間を縫っても、その先から追尾矢が無数に迫る。

 

 

「ずいぶんと耐えたほうだが、ここまでか」

 

 

ナスビの弓に、赤黒く光る矢が構えられる。

 

 

「……………は?」

 

「な、なんかあれ…………」

 

「一番ヤバそうな矢あるんですけど………!?」

 

「私の全力の射撃を受けよ!!!」

 

 

ナスビがこれまでにない勢いで矢を乱れ撃つ。

五月雨のように降り注ぐ赤い矢は青い矢よりもさらにさらに速い!!!

 

 

「まっっじかよぉぉぉぉぉ!?」

 

「まだぜんぜん全力じゃなかったのか!?」

 

「これ…………まさか…………」

 

 

赤い矢は妹紅たちのそばをすり抜けてから、追尾矢と青い矢に跳ね返ってきた!!!

 

 

「やっぱりぃぃぃぃぃ!!!」

 

「うわぁぁぁぁぁっ!!!」

 

 

「終わりだ──凪符『あゝ 海風(うみかぜ)無き(なり)』!!!」

 

 

紫色の1本の矢が空間を切り裂く。

 

 

瞬間、妹紅たちを追いかけ、食らいついた300本以上の矢が一斉に大爆発を起こしていった。

 

 

「あっ─────!?」

 

「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

 

「なんだとぉぉぉぉぉぉぉ!?」

 

 

空中に天の川でも作られたかのように爆炎の河が生み出された。

妖怪の山の上を黒い雲が覆う。

 

 

「手応えあり…………」

 

 

ナスビは弓を下ろす。

さすがにこれで当たっていないはずがない。

あの場所にいれば間違いなく五体霧散。

ナスビは勝ちを確信した。

 

 

「───────違和感、」

 

 

だがナスビは弓を構え直す。

明らかに消えたはずなのに、ナスビは油断をしなかった。

 

 

煙の中から、無傷の妹紅とにとりとたかねが現れたのだ。

 

 

「なぜだ…………」

 

 

ナスビの疑問は当然だった。

 

 

「あれ………?」

 

「私たち…………」

 

「生きているのか?」

 

 

両者の間に人影が舞い降りる。

 

 

「アビリティカード、『死穢回避の薬』。これがあれば、弾幕が直撃してもスペルカードと引き換えに無効化されます」

 

「またも邪魔するか商人!」

 

 

ナスビの前に立ちはだかったのは天弓千亦。

千亦は少し怒ったような顔をする。

それは荒神の逆鱗というより、子をたしなめる母のようだった。

 

 

「貴方がめちゃくちゃしてしまったせいで見てください。地上がめちゃくちゃですよ」

 

 

妖怪の山の表面はナスビの射撃の連続で焼き払われていた。

 

 

「あーやべ、」

 

「さすがにこれ以上の狼藉は、龍の迷惑になります。彼女のためにも、ここは一つ私も手助けしてあげましょう」

 

 

千亦は自分の真隣にジッパーを作る。

その中から出てきたのは、

 

 

「えぇ………俺もやんのか?」

 

 

先程まで空中戦を観させられていた化野安曇。

 

 

「貴方にこの場での浮遊権を付与します。戦いましょう。仲間のために」

 

「ちっ、なんだよ………んどくせぇな………」

 

 

安曇はわざとらしく舌打ちする。

だが、すぐに笑う。

 

 

「だが…………あん時のオトシマエをつけれるんだよなナスビ野郎」

 

 

安曇はナスビへの復讐の気持ちで完全に高ぶっている。

 

 

「なら…………俺もちぃとばかり本気出すかね、」

 

 

安曇は千亦から与えられた浮遊の力で月明かりの前に飛んでいく。

安曇はそこで目を見開いた。

 

 

その時、安曇の身体2本の太い角と尻尾が生えてきた。

口元からは鋭い牙を剥き、瞳に紅が宿る。

 

 

「…………此度の俺は一個違う、試してみるか?」

 

 

 

今宵は満月。

化野安曇が獣の姿を解放したのだ。

 

 

「オオバばっかり良い真似はさせらんねぇよ。ガチでいくぜ…………クソ野郎がよ!!!」

 

 

安曇の手に水道管が握られる。

 

 

 

 

「へへっ、やっぱあいつ味方にしたら頼りになるな、」

 

 

妹紅も元気を取り戻す。

 

 

「さぁさぁ、反撃開始と行こうか!!!ナスビ野郎!!!天ぷらにしてやらぁ!!!」

 

「私も手伝いましょう!」

 

 

安曇と千亦が仲間に加わった。

5対1の戦闘は、この後さらなる熾烈さを極めていくことになる!

 

そしてついに、ナスビとの決着がつく!!!

 

 

 

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