東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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湧き上がる温泉根性

 

 

 

─────伍重艦庭は全長15キロを誇る超巨大戦艦。

 

その舟の後方には、ひときわ巨大な艦橋がそびえ立っていた。

その高さは地上に置くだけで雲をつけ抜けそうなほどのもの。

 

それ一つで丸ごと要塞として十分すぎるほどの大きさを誇るソレの中に、鈴鹿山ヤマブキとアオイが来ていた。

 

青葉を逃したあと、ここまで帰還してきたのだ。

 

 

ヤマブキは壁にかけてあった無線機を取る。

 

 

「────こちらヤマブキ…………脱走犯・神門青葉を逃がしてしまった。脱走犯・神門青葉は依然として行方不明。第捌区画の料亭での戦闘の後、第拾弐森林地帯に逃亡した可能性が高い。不手際ながら、こちらへの増援を要請する」

 

 

ヤマブキは淡々と事実を告げる。

彼女の身体は瓦礫に潰されて傷だらけだったが、それでも彼女はここまで歩いてきたし、顔色は変わっていない。

身体に受けたダメージはあるが、闘志だけは切れる素振りもなく精神は揺らがなかった。

 

 

その横ではアオイが目をつぶり、両耳を塞ぎながらガタガタと震えている。

 

 

(怖い怖い怖い…………ぜったいメタメタに怒られちゃう…………聞きたくない聞きたくない〜!)

 

 

「繰り返す、こちらに増援を要請────」

 

『構わぬ、ヤマブキ…………』

 

 

黒塗りの無線機の向こうから、声が聞こえてくる。

声は加工されているのか、この声だけでは何が何だか分からない。

 

だがヤマブキはそれが誰のものかわかり、無線機越しに跪いた。

 

それにならって、アオイも跪くかと思えば、アオイは何も見ていなかったので突っ立っていた。

 

ヤマブキはアオイの頭を掴み、無理やり地面に叩きつけて跪かせた。

 

 

『あの男の事ならば…………既に私が観測している。彼奴が何処にいるか、それらは全て、この私が監視している。御湯殿いづなも、この舟も…………地上の事も……………』

 

「ならば、今すぐにでもその地点の方に増援を…………」

 

『ならぬ───ヤマブキ、』

 

「な…………どうして、アイツは今、ここから抜け出した状態で彷徨いている…………このままほったらかしにしちまえば…………」

 

『構わぬ、と言っとはずだ…………ヤマブキ…………彼奴の存在など、取るに足らぬ。斯様な軟弱者如きに、一人で何が出来ようぞ…………加えて、彼奴の身柄を縛ることは禁ずる…………彼奴は地上の妖怪共に信頼されている。【公平な交渉】の材料となるだろうよ』

 

「で、でも……………!」

 

 

『ヤマブキよ…………我が勅令に異を唱えると申すか。貴様は…………私の言う事だけを聞いていれば善い……………アオイも同様にだ……………我が覇道に、異など不要()い……………この私に、二度言わすでないぞ……………ヤマブキ…………』

 

 

その声は鋼の精神を持つヤマブキすらも服従に留めた。

 

 

「あぁ。わかってるよ────【姉貴】、」

 

『お前は利口な妹だ…………ヤマブキ…………それでこそ我が誇り、鈴鹿山の名を着る者よ…………』

 

「………………………………………」

 

『……………では、私はまだすべき事がある故。お前たちには、新たに命じる事がある。妖怪の山の弱き街に、不穏な動きがある…………』

 

「小さい街?それって、御湯殿いづな?」

 

『いかにも。懲りずにまた力を付けようと企んでいる。─────跡形もなく蹂躙(つぶ)して参れ、ヤマブキ』

 

 

「え…………でも─────」

 

『これは命令だ…………我らの覇道において、あの程度の溜場の一つや二つ、芥に等しい。私の期待を裏切るなよ、妹よ……………』

 

 

─────無線は切られてしまった。

 

 

 

「くっ…………………」

 

 

ヤマブキは無線機を握りしめた後、それを雑に片付けた。

 

 

「お、お姉様────今の電話、何言ってましたか…………」

 

「──────御湯殿いづなを潰せってさ。あの言い方は…………建物の一つや二つ燃やすなんかじゃ済まされない、もっとデカい事らしいわ」

 

 

ヤマブキは淡々と報告する。

 

 

「なるほど!でしたら、すぐにでも行きましょう!」

 

「アオイ…………あんた、」

 

「だって他でもない大姉様の命令ですよ。成果を上げればきっと、ごほうびもくれると思います!いきましょう!今すぐにでも!」

 

「やけにノリノリなのね、」

 

「はい!だって、命令に従わなかったら怒られますから!…………お姉様はどうして乗り気じゃないんですか?」

 

「はぁッ!?だれがチキってるって!?」

 

「ひぃぃぃーひぃっ!!ご、ごめんなさいごめんなさい!」

 

「いーじゃんその心意気。やってやろうじゃないの、あんなクソみてぇな街、一晩で潰してやろうじゃねーの!!!」

 

「で、でも…………軍の統率権なんてないですよ私たち…………大姉様はそんな事言ってました?」

 

「なにがあんなもん!御前会だけで十分だよ!ほら、さっさと行くよ!どんくせーな!」

 

 

ヤマブキはアオイの襟を掴んで引きずるようにしてその場から立ち去った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────────ん、」

 

 

あれ…………俺、寝てたっけ……………

 

 

「おはようございます青葉様。寝覚めはいかがですか」

 

 

目を覚ますと、向こうから朋恵さんがやってきた。

 

 

「─────最悪。もう身体じゅうが痛くて痛くてしょうがない…………」

 

 

 

俺は長い戦いの連続と、歩き回り走り回った疲労で全身がボロボロだった。

見かねた朋恵さんが、森の中にあった小屋に案内してくれた。なぜ彼女が知っていたのかは覚えていない。たぶん、俺が走っている間に見つけてくれたと思うんだけど。

とりあえずその小屋のなかで休息を取ることにした。

 

都合よく布団があったのでそこで寝っ転がっていたら、身体が限界を迎えて昼寝してしまったらしい。

 

とはいえ…………体力面ではだいぶ回復を図れた。

 

激しい戦闘ができる状態ではないが、また朋恵さんを抱えて走るくらいならできる。

 

 

 

「青葉様…………こちら、もしよければ…………」

 

 

そう言って朋恵さんは果物を差し出してきた。

赤く熟れた果実の中身が、真っ黄色に焼け目がついていた。

 

 

「これ…………」

 

「森に落ちていたものを拾ってきました。しっかり洗ってから焼きりんごのように焼いたので、たぶん食べれると思います…………お口に合えばですが…………」

 

「すごく助かるよ朋恵さん。ありがとう、優しいんだね」

 

「そんな………こと…………私は、青葉様に助けられてばかりなのですから、これくらい…………」

 

 

俺は焼けた果物を手に取ってかじる。

 

 

「─────青葉様には、私がなぜ御湯殿いづなで働いているのか、ご説明していませんでしたよね…………」

 

「ん?そういえばそうだけど、どうしたの?何か事情があるのかい?」

 

 

朋恵さんが突然、自分語りを始めたので俺は興味を示した。

 

 

 

「─────私の故郷は、私が物心が付くよりも前に、ほかの種族との争いのせいでなくなってしまったんです。お父様もお母様も、里のみんなも…………みんな散り散りになって…………」

 

 

朋恵さんは格子窓の外を見つめながらつぶやき始めた。

 

 

「私が赤ん坊だった頃…………ある男の人に拾われ、育ててもらっていました。彼はとても優しく…………私のことを本物の家族のように扱ってくれて…………それがとても心地よかった…………」

 

「朋恵さん…………」

 

「彼は生まれつき、身体が弱くて…………病気がちでした。でも、どんなに自分の身体が辛くても………私が心配して彼のもとに寄り添ったら、『大丈夫だよ、僕は平気だから』と頭を撫でてくれて…………」

 

 

朋恵さんの表情はわからないけれど、それはとてもいい思い出だったんだなと俺は感じた。

 

 

「私、気づいたんです。その人が、私の初恋だったんだって…………大きくなったら、私がこの人のお嫁さんになって、彼を幸せにしてあげたい………彼が私に分けてくれた幸せのぶんを、兆倍にして彼に返して、今度は私が彼を支えるんだって。そう心に決めた────なのに…………」

 

 

朋恵さんの声が暗くなる。

 

 

「彼は────本当は武将だった。戦いに巻き込まれて…………私を守るために彼は私を逃がしてくれて…………自分は一人で─────」

 

 

朋恵さんの表情はわからないままに、涙が床に落ちるところだけは見えた。

 

 

「─────私は、大好きだった人を捨てて、振り返らず…………自分がどこに生まれて、自分はなんの妖怪なのかもわからず…………どこに行けばいいかもわからず…………ずっと彷徨っていました…………それで、最後にたどり着いたのが…………この場所、妖怪の山…………天狗の里だったんです」

 

「そうだったのか…………」

 

「でも…………あれから彼から連絡は来なかった…………私があれだけ大切だった…………なぜこの世に生まれたのかもわからない私がみつけた、たった一つの生きる意味…………彼を守って幸せにするって事…………それなのに…………私は戦地に向かう彼の背中に、何も言ってあげられなかった…………!」

 

 

朋恵さんはベッドに座る俺にすがりついてきた。

 

 

「うっ……………ぅっ……………ぅぅっ………っ!!!」

 

「─────辛い思いをしてきたんだね、」

 

「…………私のために傷ついて、無理をする青葉様を見ていると私、彼のことを思い出してしまうんです…………このままだといつか、青葉さんが死んじゃうって…………!そんな気がしてくるんです…………」

 

 

 

「─────────────」

 

 

俺が、いつか死ぬ─────か。

 

 

────それはまた、漠然とした話だね。

 

 

「君の元彼がどんな人だったかはわからないけれど、少なくとも…………彼の記憶に俺を重ねるのはもったいない。それは君の中だけに持っておくべきものだよ」

 

「青葉様…………?」

 

「今の俺の目的はとりあえず、朋恵さんと一緒にここを脱出すること。それまではちゃんと、俺が君を守るよ。けど────俺は、そんな素敵な人の続きをするつもりはないよ。俺は君を新しく守れる人になる、そしてその人にも負けないくらい大切にするからね」

 

「わ………わわわわわわ……………」

 

 

俺は果実の残りを食べきって飲み込んだ。

 

 

「─────さて。お腹も膨れたし行こうか。ずっとここにいると、敵に見つかってしまうかもしれないからね」

 

 

俺は立ち上がって手荷物を揃える。

 

 

「───朋恵さんはどう?歩ける?」

 

「は、はい…………!!いけます!!」

 

「なら良かった。次はあの平地の奥を目指してみよう」

 

 

扉を空けて外に出る。

俺たちがいる場所は、空の遥か上を往く足場だった。

どういう原理で足場が浮いているのかは不明。

 

後ほど俺はこの場所がどんなものなのか知ることでようやくなぜ空中に足場があるか理解したが、まさかそんなわけがあるかと。

よって、俺はまだ地続きにどこかから地上へ降りれる場所があると思い込んでいた。

今自分たちはとんでもない絶壁のうえにいたのだと。

 

とにかく、ここから降りる方法を探さなければ。

 

 

「雲を突き抜けるほどの高度から、いったいどうやって地上に降りられるかはわからないけれど、ひとまずは道を探すしかないね」

 

 

俺は向こうに見える地平線を見つめながらため息をつく。

 

この場所、どんなに広いんだ…………だいたい、幻想郷のどこなんだここは…………

幻想郷で一番標高が高いのは妖怪の山のはずなのに、どうして雲の上にこんな場所があるのだろう。ここは幻想郷のどこなんだ………?

 

 

「あのっ…………考え事している所申し訳ありません、私…………聞きたいことがあって…………」

 

「ん?」

 

「─────青葉さんは…………昔の私と同じくらい小さかった頃、どんな夢があったんですか?」

 

 

 

 

 

 

 

「───────お医者さん、だったかな」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

午後三時刻、御湯殿いづな─────

 

 

「おーうお前ら!今すぐ作業やめろー。交代だ、」

 

「お前らは次の交代まで休んでな!あとはオレたちに任せとけ!」

 

「あんがとな!ま、この瓦礫だけ撤去したら交代させてもらうぜ、すまねぇが手伝ってくれねぇか!」

 

「おうよ!まかしとけ!」

 

 

 

御湯殿いづなでは復興作業がすでに始まっており、住民たちが倒れた家屋の修繕や瓦礫の撤去を行っていた。

 

 

 

「ここの空調、直ったはいいが、ちゃんと送風機のうえにバッテン通せよー!あとで落ちてくるかもしれねぇからな!」

 

「どうやらこれの件、図面に書いてねぇ配管が通ってるらしくて通せねぇらしい。あとでダチが里から工事の人間連れてくるから後回しだとよ」

 

 

「あんたらお疲れ!調子はどうだい?今日のうちからいきなり体壊しちゃ話にならないよ!」

 

「武蔵の姉御!!!お疲れ様です!!!」

 

 

現場の作業を指揮していたのは武蔵だった。

彼女には万一を想定して、御湯殿いづなに残るように百鬼丸から指示を受けている。

 

百鬼丸は常盤國と御湯殿いづなを生き来している。むろん、常盤國の防衛など本来、百鬼丸一人で十分すぎるほどだ。

 

ナスビの目が覚めたという報告はまだない。

武蔵がいないと精神的な不調を抱える百鬼丸だが、それでも彼女はナスビすらいない中でも、御湯殿いづなのために武蔵を留めた。

 

もう彼女を縛るものはない。

他でもない、親友飯綱丸龍を取り戻したことで彼女は精神的にも無敵の状態だ。

 

 

 

「今夜から龍ちゃ……飯綱丸様たちは事件の調査で留守になることが多い。いざってときは、あたしたちの力でなんとかしなきゃならない。できるかい?」

 

「へい!まかせてくだせぇ姉御!」

 

「へへっ………いい気合だね。これならあたしたちも安心してあんたたちに作業させられるってもんさ。でも、あんたらが危険を気に病むことはないよ。誰が来ようと、この鉄壁の高倉院武蔵が返り討ちにして、あんたらを守ってやるからね!」

 

 

(武蔵の姉御マジかっけぇよなぁ…………)

 

(あぁ、ほんと『イイ女』って感じの人だ)

 

(オレ、姉御に惚れちまったよどうしよう………)

 

 

 

「武蔵、元気してた?」

 

 

そんなところ、やってきたのははたてと、お土産屋まねき猫の店主ミケ、そして甘味処おたま屋の女将、お玉……魅須丸。

 

 

「汗水垂らして頑張っているみんなに、アタシたちからの差し入れだニャー」

 

「今日はミケさんと一緒にたーっくさんおにぎりを握ってきましたよ。味付けも実に多様に設定しておきましたので、ぜひお召し上がりくださいね」

 

「そんなわけで私はおにぎり運びに来たってこと。まぁちょっと様子見に来いとも言われたけれど」

 

「なるほどね。こっちは全然いいよ。野郎共がまったく素直なもんでね、あたしの言うこと全部聞いてくれらぁ」

 

 

ついさっき知り合ったばかりの男たちを皆一様に従わせるそのカリスマ性というのだろうか、人を引っ張る力にはこの手の才覚には鈍いはたてからすればまったく恐れ入る。

 

 

「常盤國の警護は百鬼丸が一人で受け持つって。あなたには悪いけど、もう少しここで働いてもらうわよ」

 

「あぁ任しておきな。青葉が戻ってくる頃には街が全部直しておくつもりで事にあたるさ」

 

「味方につけるとほんとに頼りになるわね、あんた」

 

「ふふ、こっち何年常盤國のナンバー2張ってると思うのさ。天狗の中では随分とデキるほうさ」

 

 

度胸があり、忍耐があり、信頼があり、自信家で面倒見がいい。

そりゃあコレだけの人間がついていくだろう。

はたても武蔵を観察していくうちにそれがなんとなくわかっていく。

 

 

「はぁ…………文たちもこんぐらい使える女ならいいのにね…………」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

話は変わって、場面はいづな旅館の作戦室に移る。

 

 

「結局、青葉の居場所が分からなければ救出する作戦に移ることすらできない…………青葉はどこへ消えたと思う?」

 

 

気を取り直した龍を主導に、調査班………旧飯空Projectメンバーたちは当面の課題に悩まされていた。

 

当面の課題とは二つ、一つはすでに武蔵の主導で行われている御湯殿いづなの復興。

こっちは時間が許せばいずれ持ち直せるとして、問題は未だに居場所すら掴めない青葉の事だ。

 

 

 

慧音「青葉を失って一夜が開けたが、未だに動きはない。敵からの2度目の襲撃に備えていたが、そういうことが起こるわけでもない。あの放火襲撃は単なる嫌がらせとしての攻撃だったのだろうか?」

 

妹紅「そんな事あるか?仮にもオオバは何の力も持たない一般妖怪だぞ。攫ったところでなんの意味があるんだ?」

 

安曇「敵はオオバを餌にして俺らをおびき出し、叩くという目的があんじゃねーか?」

 

慧音「いや…………現状それはないな。もしそうならば、敵は青葉のいる座標をこちらに見せびらかしてくるはずだ。一夜明けても居場所の一つも掴めていない現状ならば、青葉の位置をこちらに教えることは向こうにとってメリットではないようだ」

 

文「でしたら、本当に敵は青葉さんを理由なく攫って………?」

 

慧音「いや…………奴ら………モーガンと名乗ったあの女は最初、私の身柄を拘束しようとしていた。それを、途中から青葉に切り替えた。となると、連中は私でも青葉でもよかった………あるいは、本命は私でそこにつなげるために青葉を攫ったか」

 

山如「私は後者の可能性に賭ける。ただの直感だがね」

 

ネムノ「胴元のヤマカンってのぁ馬鹿にできねー。ウチもそっちだと思うべ」

 

椛「…………結局、青葉さんの位置は掴めないようですね。今朝から我々白狼天狗も100人体制で山を巡回し、私も千里眼で高所から見渡していましたがそれらしい痕跡は確認できていません」

 

龍「時間をかけるほど、人の捜索はより困難になり、わずかな痕跡も薄れ消えていく。今日中に見つからないならば、最悪の展開を想定せざるを得ないな」

 

安曇「そうはさせっかよ。ぜってぇ見つけてやる。怪しいところは徹底的に調べるように、あのよわっちい天狗にキツく言っておいた。今夜までに分からなきゃ終わりかもしれねぇが、今日中に見つけてやるよ。必ずな、」

 

慧音「しかし…………コレほど広大な敷地を哨戒隊が捜索してこの成果ならば、ひょっとすると山からもういなくなっている可能性も高い。そうなると、幻想郷全域に範囲を絞らねばならないぞ…………青葉は著名な妖怪ではなければ、何かの守護を担うものでもない。たとえ幻想郷全域に範囲が広がったとしても、全員で捜索できるわけではない。協力してくれるのはごく一部だろう。それも………見かけたらお電話ください、という程度のな………」

 

妹紅「くそっ………!アイツ今どこで何やってやがんだよ………!余計な手間かけさせやがって………!」

 

 

 

青葉の位置を把握できないのは当たり前だ。

そもそも青葉は現在この地上にすらいないのだから。

 

このまま捜査は難航して青葉を探す算段は尽きるかと思った時だった。

予想外の進展があった。

 

文のとある一言から、流れが変わったのだ。

 

 

 

文「青葉さんは頭も切れるし、とっさの機転も利きますし対応力も判断力も非常に高いです。最悪の場合にも、剣術で鞍馬天狗と渡り合うほどの実力があります。そんな青葉さんが、一晩かけて次の日の夕方になるまで帰れないなんて、いったいどんな状況なんでしょう?」

 

妹紅「あ?何言ってんだ?」

 

文「ですから、【青葉さんが詰むような状況は逆に珍しい】んじゃないですかね?」

 

 

文のあんまりな暴論に、あたりには沈黙が流れるが、案外それは的を射ていた指摘だった。

 

 

慧音「……………確かに、」

 

 

聡明な慧音が思わず頷くほどの盲点だったのだ。

 

あの青葉が『打つ手無し』とする、もしくはこれほどにまで時間をかけるとするのならば、青葉は現在、彼にとって相当不利な状況に置かれている可能性が非常に高い。

 

それも、ちょっと檻に閉じ込める程度のものではない。

物理的に脱出が不可能な位置に青葉は閉じ込められているのだ。

 

 

妹紅「なんか特殊な結界に閉じ込められたとか?」

 

慧音「いや、結界が発動しているのならばどこかにその元となる妖力が継続的に流れているはずだ。私たちが見つけるまでもなく、ほかの妖怪たちがその異常に気がつくだろう。おそらく、物理的に青葉は脱出できない状態とみていい」

 

山如「そりゃあ青葉は頭が切れるが、いったいどれくらい信用していいんだい?」

 

慧音「奴を閉じ込めようとするのなら、全身をコンクリートで固めるくらいの覚悟でなければならい。青葉に身体の自由を与えると、物理的な拘束であればすぐにでも破ってくる。鎖で縛ったり、牢屋に閉じ込める程度ではものの数分で出られる」

 

ネムノ「なんつーやつだべ…………」

 

椛「つまり、物理的な拘束………それも彼の自由を直接的に封じるような大がかりなものでない限り基本的に青葉さんは脱走できるのですね」

 

安曇「逃げないように脅すにしても、アイツに背負うもんは今のところない。んで、妖術でオオバを封じる事ができないってんなら…………は?となると、意外ともうアイツ、【すでに拘束を抜けて】んじゃないのか?」

 

慧音「なんだと…………!?」

 

安曇「アイツ、もしかしたら────拘束を抜けたはいいが、こっちに来れなくて困ってるんじゃあねぇのか?」

 

 

安曇がついに真理の一歩手前までたどり着いた。

 

 

 

文「なるほどそういうことですか!青葉さんは拘束を解けないんじゃなくて、ここに来ることができない状況なんですね!」

 

 

まだ何もわかってない、仮説の段階でしかないというのに全員が頷いた。

それだけ、青葉の頭は彼らから信頼されているのだ。『あの青葉が出られないなんて』、そんなぶっ飛んだ考えが答えにありつく鍵だった。

 

 

龍「よし!だったら、青葉がこちらへ戻れなさそうな場所を徹底的に探せ!青葉が戻れないとしたら、地続きになっていない場所やはるか地下、あるいは水の上や中だ!」

 

椛「承知いたしました。部隊に共有しておきます」

 

ネムノ「ウチはにとりとたかねを呼んでくるべ」

 

山如「私はそうだな…………聞き込みにでも行くとしようか、」

 

 

全員がそれぞれに行動を開始した。

場に慧音と妹紅と龍と安曇が残った。

 

 

「……………慧音はどう思う?オオバのやつ、どこにいると思う?」

 

「私の仮説としてはそうだな…………青葉がもし本当に詰む事があるとするならば────私は空だと思う」

 

「空?」

 

「あぁ。青葉は飛べないからな。はるか上空にいる場合、滑空もできないのならば、こちらへ移ることができない」

 

「それはあるかもな、流石だな先生」

 

「とはいえ、今は推測にすぎない。私たちはほかの可能性を調べよう。妹紅、安曇、手伝ってくれ」

 

「もちろん!」

 

「任せときな」

 

 

「…………うんうん。みんな纏ってくれて嬉しいぞ。これならきっと見つけられる!」

 

 

青葉捜索は難航するはずだったが、予想外の事から機転が導かれた。

ニュー飯空Projectのメンバーたちは、暗闇に開かれた光の閃きを信じ、次なる調査へ─────

 

 

 

 

 

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