東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅   作:マジカル赤褐色

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(ほうり)

 

 

────────幻想郷某所。

 

 

 

そこは獣人の山賊、幻想獣国同盟のアジトであった。

 

 

「さて?政子牙の野郎はどうした」

 

 

御簾の向こうから男の声が聞こえてくる。

 

 

「あの女は封神演義に集中しております。妖怪の山と旧地獄と新地獄をほぼ制圧という風に聞いています」

 

 

そこに跪く紫の髪の女、モーガンが答える。

 

 

「いや早ぇなアイツおい。仮にもあいつら幻想郷の神様らだろ。なんでこんな簡単に制圧できんだよ…………ま、政子牙はもともと能力も高い。その上に、とりわけ神様に対する特攻は凄まじいからな」

 

「してお館殿よ。我々の行動は如何とすればよい?もう彼奴に手を貸すような必要性は皆無だ。此方は此方の準備をすればよいか?」

 

「そーだな…………前回の妖怪の山攻略戦は散々な結果だった。流石に相手が悪すぎたってのもなんだが、特に神門青葉が面倒くさすぎる」

 

 

お館様という男は威厳あふれる姿勢と声をしているが、どうも神門青葉の存在に対しては余裕を持てないらしい。

 

 

「アイツがなんでめんどいか分かるか?こっちの折角頑張って組んだ盤面を全部破壊するからだよ。敵もぜーんぶ仲間に入れようとしやがる。梓なんて完全に懐いちまったし、1000年鎖国を誓った鞍馬天狗の信頼を勝ち得た時は流石にちょっと俺も引いちまった」

 

「具体的にどのような男なのですか」

 

「さぁな。俺もアイツの事は詳しく分かんねぇんだが…………たぶん政子牙すらも苦労すると思う」

 

「それほどまでの男だと!?なれば、この私もぜひとも戦いたいものだ!」

 

「やめとけ灼。お前なら勝てるかもしれんが、下準備も整ってなきゃやつの情報すらもねぇ。戦士じゃなくて軍人のお前には情報もねぇ敵を倒せなんて言われても無理な話だ」

 

「そうかならばそういうことにしよう!もっと彼奴の情報が明らかになってから倒しに行くとしようか!」

 

 

灼は珍しく素直にビシッと敬礼して話が通じた。

お館様は安堵のため息をつく。

 

 

「いいか。モーガン、灼、それから今は不在の政子牙と夜叉川。お前ら4人はこの幻想郷獣国同盟の四賢者だ。お前らの働きは、特にこの幻想郷の行く末を大きく左右する。それを頭に入れておきな。お前らが頑張りゃあ、この幻想郷はもっとよりよく平等で幸せな世界に変わるってもんだ」

 

 

「承知いたしました、お館様」

 

「相わかった!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「な、なんですって───────!?」

 

 

いっぽう、博麗神社ではその報せを受けた博麗霊夢がお茶を吹き出して咳込んでいた。

 

 

「うそ!?守矢神社の突然の異変は、秋姉妹の暴走で終わったって話だったじゃない!私たちがすーっごい苦労してなんとか倒せたのに」

 

 

話し相手はそう、上白沢慧音だった。

 

 

「だが、政子牙という女から、守矢神社は彼女の手によって滅ぼされたことを知らされた。そして、人間の里は埴安神袿姫………… 造形神ハニヤスの侵攻によって壊滅した」

 

「えぇ。袿姫のことは知っているわ。私も昨日里へ夜な夜な、襲われる人々を助けに行ったけど」

 

「なんで……………ふっざけやがって……………」

 

 

横でそれを聞いていた霧雨魔理沙が拳を握りしめる。

霊夢は声を荒げることもなくただ俯いて静かな怒りを見せていた。

 

 

「だがどうも引っかかるんだぜ…………私らが早苗と一緒に秋姉妹を倒したときには、山から異変の気配は消えていた」

 

「おそらく残党によるものか、あるいはお前たちが山に来た時点ではまだ真の異変が引き起こされていなかったのだろう………」

 

「なによ、ソレ…………私たちがまんまとその政子牙って奴の罠に引っかかったとでもいいたいの…………」

 

 

静かな時間が流れる。

 

 

「……………そして、お前たちが帰還した直後に機会を計らった政子牙の襲撃で守矢神社は壊滅。おそらく八坂神奈子と洩矢諏訪子の二祭神も倒され、そして風祝の東風谷早苗は記憶喪失になった」

 

「ずいぶんと…………めちゃくちゃやってくれるじゃないか。行こうぜ霊夢、さっさと山の悪者を倒しに行く!」

 

「いいえ、魔理沙。その間人里の警護はどうするの」

 

「っ、そんな事言ったってよ…………!」

 

「私は守矢神社のことも気がかりだけど、異変と関係のない人里が巻き込まれるのはもっといただけないわ。仮にも大勢の人間の生命を抱えている以上、迂闊に動くことができない」

 

 

守矢神社の二祭神と東風谷早苗はもちろん強大な力をもつ勢力だ。

しかし、そんな守矢一派を退けるほどの力を持つ政子牙に対して、霊夢と魔理沙の両方が警備をあけてしまえば今度こそ里は崩壊する。

 

 

「昨日の私も、埴輪兵を倒して理解した。あれは簡単に倒せるものではない…………私たちが里の近くを抜けた途端にこの里はいつ滅んでもおかしくない防御状態になるわ」

 

「だったら…………どうすりゃ……………」

 

 

魔理沙が唸っているのを見て、霊夢は慧音へと視線をやる。

 

 

「でも、慧音………あんたならそれを分かった上でここへ来たってことよね…………何か策があるってこと?」

 

「あぁ。妖怪の山に、もうじきこの状況を打ち破る手が到着する。事態への対策は、それの顛末を見届けてからだ」

 

「【それ】って、まさか…………」

 

 

慧音は頷く。

 

 

「おいおい待て待て待て!あんなヤツにこの異変が解決できるってのか!?なんでそう思えるんだ!?」

 

「私は信じている。彼の可能性をな。彼なら、【この大異変】を…………きっと解決できる」

 

 

外の景色を眺める慧音。

 

その横顔を見て、やっぱり納得できないと声を荒げる魔理沙。

 

その光景を眺めながら霊夢は無言を貫く。

 

 

 

 

(────上白沢慧音………あんたは何を、どこまで知っているの。どうして、知り合ったばかりのあんな胡散臭い男をそんなに信頼できるの。あんたは、彼の何をそこまで知っているのよ?)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして、妖怪の山の山頂、守矢神社へとたどり着いた青葉と磨弓。

 

 

「ここが守矢神社?」

 

「そのはずだ。しかし…………………」

 

 

 

 

俺たちは神社の境内に入ってきたが、目の前にあったのはボロボロになってしまった建物だけだ。

木製の祭壇のような足場と、その上にある屋根と注連縄。

 

壁や屋根に数え切れないほどに穴が空いている。

周囲には木くずや瓦礫が散乱している。

 

 

 

 

「───────ひどい、」

 

「私の知る守矢神社の見る影もない。これではまるで、何者かに破壊活動を働かれたようだ」

 

 

 

誰がこんなことを……………いや、誰の仕業かはわかりきったことだ。

 

 

「あっは。すごい、ホントに来ちゃったよ」

 

 

 

 

 

「───────っ!」

 

 

俺たちは神社の屋根を見上げる。

 

 

 

 

そこには、鞭を持って座っている女がいた。

 

 

「お前は……………」

 

 

「どうも政子牙です。生きてたんですね青葉くん。それから埴輪兵。人間の里を破壊し尽くされた気分はどうですか?」

 

 

「………………………………………」

 

 

だめだ。こんな安い挑発に乗らされてはいけない。

 

 

「見ればわかるとは思いますが、守矢神社は私が滅ぼしました。ここに祀られている二柱の神は私が封じましたし、ここの風祝も今ごろ死んでいるでしょう」

 

 

風祝…………?それって、カナエのことじゃないのか…………?

 

 

「ところで、あなたたち」

 

 

政子牙は座っていた屋根から飛び降りる。

ふわり、と漂うようにゆっくりと降下してくる。

 

 

「わたくしね、釣りが趣味なんですよ。だから獲物をおびき寄せるのがこれ以上となく得意でしてね?分からないです?あなたたちはわたくしの罠にかかったってことなんですよ」

 

「罠だと?」

 

「えぇ。ここに来た時点であなたたちの死は確定しました。残念でしたね」

 

 

政子牙は指を鳴らす。

すると、拝殿の中が突然、大きな火を吹いた。

 

 

「ぐわっ!!!」

 

 

炎の波は俺たちの周囲一帯を薙ぎ払う。

俺と磨弓はあまりの炎と風に、腕で顔を覆う。

 

 

炎の波が止んだとき、拝殿の中から人影が現れた。

 

 

「────────────」

 

 

その姿を見て絶句を隠しきれない俺。

 

その姿は………………白い衣装に、狐の耳と尾を携えた女の子。

 

しかし、その尾はきつね色をしていない。

いや、あれは尻尾なのか…………?

 

燃え盛る炎が、まるで尻尾のように尻から生えていた。

その炎は尻尾のような形だったから、そうなのかもしれない。

 

髪も耳も炎のように、次々と色を変えながら明るく光っている。

だが……………炎の中に感じる狐の黄色を見て、俺はその姿が誰のものかを悟った。

 

 

 

「典……………ちゃん……………?」

 

 

 

俺は反射的にそう話しかけてしまった。

 

 

なんだか、顔や服がやけに似ていたから。

炎を普通の狐の耳と尻尾に差し替えれば、典ちゃんとシルエットが重なるように感じられた。

 

 

「なにっ!?青葉、あれは知り合いなのか!?」

 

「…………………………」

 

 

俺は政子牙のほうを見る。

 

 

「ふふっ、」

 

 

政子牙はこちらを見てニヤニヤと笑っている。

 

 

「お前……………典ちゃんに何をした……………!」

 

「さぁて。なんでしょうかね?」

 

「典ちゃんは神様じゃない…………元に戻したなんて言わせない…………!何をした…………!どうやって、こんな【改造】をした…………!」

 

 

典ちゃんは姿を変えられ、異形の姿へと堕ちていた。

政子牙……………いったい何をしたんだ。

 

 

「私が直々に勝負をしてあげてもいいんですが、せっかくなのでとびっきりの絶望を与えて死んでもらったほうが良いなって思いました。あなたの行動はちゃんと把握しています。大天狗飯綱丸に協力して以前の事件を解決したこと。それに関しては褒めてあげましょう。椰子飼騒動を始末した噂、嘘ではなかったみたいですね」

 

 

政子牙は服の帯から棍棒を取り出すと、棍棒の先端から光の紐が生え、鞭の形状に変わる。

 

その鞭で典ちゃんの目の前を勢いよく叩く。

 

 

「外の世界ではこんな面白い議論があります。「敵の組織が民間人を改造することで生み出した、元の人間の人格を消去し完全な悪となった怪人を、ヒーローが倒すことは殺人罪に問われるのか」ってね。あなたはわたくしを倒し、幻想郷を守りたいんですね?であるのならば…………かつての仲間である、罪のなき菅巻典を改造することで生み出した、この怪獣を殺す覚悟が、あなたにはありますか?」

 

「くっ………………………」

 

 

刀を抜けない俺に向かって、四足歩行の炎の狐が一歩一歩、歩み寄ってくる。

 

 

「あっは。無理ですよねぇ?知ってますよ、あなたがとても優しいことは。たとえ敵になっても、仲間を倒すことはできない。それで良いんですよ、それでこそあなたらしい!…………なので、仲間を殺す覚悟もないあなたにこの事を解決する可能性はゼロですね。大人しくここで死んでください」

 

 

俺と磨弓は腰を落とす。

狐はもう目の前まできている。

口からの呼吸で、炎の吐息があふれている。

このままじゃ……………

 

 

「青葉よ!戸惑うな!奴はお前の心の弱みにつけこんでいるだけだ!」

 

「磨弓………………」

 

「守るのだろう?迎えに行くのだろう………?大切な人を!」

 

 

「………………あぁ!俺は、カナエを取り戻す!そして、人間の里を潰したお前を、必ず倒す!」

 

 

 

 

 

俺と磨弓は勢いよく刀を抜く。

それを見て政子牙はやれやれ、と首を振る。

 

 

 

「大人しく死んでくれるつもりはないみたいですね。ならば…………シンプルに敗れて死ぬがいい!…………やれ!千年狐(せんねんこ)クダマ!!!」

 

 

政子牙の指示に応じるかのように、典ちゃんだったものは咆哮をあげるとこちらに飛びかかってきた。

 

 

「うわぁっ!?」

 

「ふっ!」

 

 

俺たちは横に飛びのいて突進を躱す。

 

 

 

クダマが通ったあと、石畳は割れてはがれていき、撒き散らされた火の粉が地面に飛び散って炎の柱となる。

 

この災害のような様相、造形神ハニヤスによく似ている。

野郎……………典ちゃんに神威とやらを打ち込みやがったな……………!

 

 

戦闘能力のない典ちゃんですら、これほどの強さを得るなんて……………

一歩でも間違えれば、一発でも食らえば死にかねない。

 

…………………………ちょっと待った?

 

 

「典ちゃんが…………なんで、こいつに捕まってるんだ…………?」

 

 

そうだ。典ちゃんが、こいつのところにいるわけがない。だって彼女は大天狗飯綱丸様の部下。ふだん、飯綱丸様の横…………鴉天狗の集落にいるはずじゃないのか!?

 

 

「きーづいちゃったきーづいちゃった?そうなんですよ、鴉天狗の集落は真っ先に消しました。守矢神社に比べたら軟弱でしたね。私は何もやってないんですが、守矢神社との対決の飛び火でヌルッと消えましたよ」

 

「ふざけやがって……………」

 

 

いや、文さんは大丈夫だ。

きっと逃げ切れている…………飯綱丸様だって、はたてさんだって、他のみんなもきっと…………

 

 

「さて、飯綱権現を召喚!」

 

 

さらに、政子牙は両腕を広げると、鞭の中から光のようなものがウネウネと出てくる。

 

 

 

 

それはすぐさま、鈍器のようなものを持った天狗の姿へと変化する。

 

 

 

「ざーんねん!wwww 期待通り、ちゃんとそこの連中も封じてあげました!」

 

「ぐっ…………………」

 

「青葉!?口から血が……………」

 

 

「あなたの仲間たちはわたくしが封じて差し上げましょう。幻想郷封「神」演義とは言いますがね…………わたくしは都合の悪いやつなら神以外でも封じてやりますよ。たしかにあなたを倒すのは骨が折れますよ。でもしょせん、頼る仲間がいないと弱いんだから。そしたら、周りの取り巻きから潰していくに決まってるじゃないですか!ww」

 

「ぐぅぅ………………!!!」

 

「つまりあなたたちの働きはおおかた無駄だったってことですよ。勝手に意気投合して、勝手に分かれて、その隙にあなたがいないせいで他の仲間たちが封じられてそんな血眼で怒るってバカなんじゃないですか?ww」

 

 

「うぅ………………ウォォォォォォォァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッッッ!!!!」

 

 

 

俺の絶叫が空に響く。

 

 

「じゃ、狐に食べられるのが嫌ならあなたが尊敬する飯綱丸様に殴り殺されてはどうですか?」

 

 

飯綱権現がこちらに突進してくる。

 

 

「許さん……………お前だけは!!!!!」

 

 

俺の眼球が赤から金に切り替わる。

 

その視線は政子牙を刺し穿つ。

 

今までに…………感じたことのない感覚だ。

 

 

なんだろう。この感覚は。怒りではない。

 

「腹が立つ」じゃない。

 

「許せない」ではない。

 

「殴りたい」でもない。

 

怒るという激情ではない。

 

もっと根本的で、単純で、冷徹で、簡潔な感情。

 

 

 

「な、なにっ!?」

 

 

「ふざけ……………」

 

 

自分が、別の誰かになったかのように、煮えたぎるこの怒りを抑えられない。

自分が自分じゃないかのように、自分では感じたことのないような思考が溢れてくる。

 

お前のその笑い顔も見飽きた……………

 

 

「るなぁぁぁぁぁぁ!!!!!!」

 

 

俺の身体から暴風が巻き起こり、風の範囲内には極太の雷が奔り回った。

 

俺の間合いに入ってきた飯綱権現が一撃で消滅した。

 

 

 

「ぐおわっ!!!」

 

 

その勢いは離れていた磨弓すらも吹き飛ばした。

 

 

「ぐわーっ!!!」

 

 

さらに磨弓よりもさらにさらに離れていた政子牙も腕で防がなければ吹き飛ばされてしまうほどのものだった。

 

 

「──────ほほう、神威を具現化させただけの神霊とはいえ、神を一撃で…………ん?」

 

 

その時、政子牙の顔が変わる。

 

あの笑顔がついに消えた。

 

しかし、それは焦りや絶望から来るものではない。

 

まるで何かにショックを受けたかのように、驚きの顔をしている。

口を手で押さえるほどの驚き。

 

 

「……………なんだ…………その神威は…………見たことのないほどの大きい神威だ…………今までに私が封じてきた神にも勝る…………今までで一番大きな力だ…………?」

 

 

突如として政子牙は大笑いし始めた。

 

 

 

「あは……………あはははははははは!!!!」

 

「………………………………………」

 

「ほしい…………ほしすぎる!今までに、これほどの神威をもってる神は見たことがない!今のブチギレ、もう1回やってほしい…………!わたくしとしたことが何と言う勘違いを…………!これは失礼しました。たしかにあなたは殺してはなりませんね!他の神と同じ用に…………いや、あなただけ特別です!他の神様がコモンなら、あなたはエピック枠で封印してあげましょう!」

 

 

 

「やれるもんならやってみな。俺は、お前みたいな腐れ外道の鞭に収まるほど安い男じゃあない」

 

 

暴風で笠が脱げる。

そして俺は角を生やしハクタクの姿へ進化する。

 

 

「へぇ。そうなんですか。だからなんだって言うんです!結局あなたが封じられるのは変わりない!……………あなたの神威は大切に大切に、他の神様の数億倍たーいせつに保管いたしましょう。そのかわり、あなたの人格や理性はすべて余分なものなので刈り取らせて貰ってから捨てます…………お待たせしました、こんどこそやっておしまい。おやつの時間ですよ、クダマ!」

 

 

クダマの尻尾が螺旋を描くように燃え上がる。

クダマの胴体を炎の渦が包み込んでいく。

 

 

 

「来い─────どうせお前は死ぬ。典、お前の中に入っている神をブチ殺したら助かるんだろ。ならば、悪いが俺はお前を消す」

 

 

(……………困りましたな。まさかこの男、「殺意」を覚えたっていうんですかね)

 

 

「クダマ!やれ!星狐『天狐龍星の舞・炎舞』!!!」

 

 

狐が縦横無尽に回転しながら炎の尾を振り回してくる。

 

飛び散る炎の玉は弾幕となって俺に襲いかかる。

 

 

 

「───────磨弓!」

 

 

「承知した!」

 

 

磨弓が刀を地面に突き立てると地面から細長い土の柱が一瞬にして形成される。

 

 

柱が火の玉の進路を妨害する。

 

 

 

「はぁぁぁぁぁ…………………………」

 

 

その隙に俺は一撃の準備を整える。

 

 

「無駄!隠符(おんふ)『蜃気楼穴中(けっちゅう)の小狐』!!!」

 

 

俺の目の前まで来たところでクダマが尻尾を一閃。

 

 

 

「八霖儚月流・顎割り──────」

 

 

俺は襲い来る尻尾を模造刀で弾き飛ばす。

 

それと同時にクダマの身体は一瞬にして炎の粉になって消えてしまう。

 

だが───────それがどうした。

 

俺の視線は変わらない──────!!!!!

 

 

 

「どこを見てるんです!?クダマはもう貴方の後ろに来てるんですよーっ!!!!」

 

 

政子牙の言う通り、クダマは尻尾を振り上げた状態で俺の背後から現れていた。

 

そんなことはわかってる。クダマが消えた瞬間にその可能性は読んでいた。

 

そのうえで俺はこうしてるんだろ。

それがわかんねぇお前のほうが…………何倍もバカだよ。

 

 

 

「どこ見てるかって?お前の土手ッ腹以外にねぇだろうが、クソ外道が─────!!!!」

 

 

 

俺は刀に妖力と神力を集中させる。

どっから来た神力なのかは知らんがハクタクの力だろう。

 

俺の刀は一瞬にして光に包まれて、青白い、光の槍へと姿を変える。

 

 

「──────『逆鉾撃(さかほこげき)』!!!!!」

 

 

俺の槍が勢いよく突き出される。

政子牙まで10メートルは離れている。

その距離を光の槍が伸びて一気に詰める。

 

 

「うぅゔぐっ……………!?」

 

 

光の槍が容赦なく政子牙の身体を貫く。

 

 

「ぐぅふ……………ははっ、いつも模造刀で戦うのに、私にだけは容赦なしって事ですか……………!」

 

「──────────────」

 

 

 

さて、どうするか。

 

 

 

「ですが、惜しかったですね。私もこれでも武の心得はある。食らってしまいましたが、急所ぐらい余裕で外せますよ!」

 

 

俺の槍は政子牙に届いたが、相手はまったくダメージが入った様子を見せない。

 

 

「くっ………………!!!」

 

「相打ち覚悟ですか。でもこの一発で仕留められなかったのが敗因ですね!」

 

 

クダマの尻尾が振り下ろされた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───────車輪よ、守れ!」

 

 

 

 

その時、なんと光の輪が尻尾の叩きつけを盾のように防いだ。

 

 

 

「げ…………………!?」

 

「お前は……………!?」

 

 

 

俺はその姿を見て唖然とした。

 

 

そこに現れたのは──────

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私の命の恩人には………決して触れさせません!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

緑の髪の節々を彩る青と黄色。

 

 

そして鉄の腕輪や注連縄で身を固め、さらに大幣を手にした………………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

守矢神社の風祝、カナエ─────!!!!!

 

 

 

 




【封神録小ネタ帖・カナエ】

早苗「青葉さん、青葉さん!見てくれましたか!私の活躍!」

青葉「うん。おかげで助かったよ。それにしても、姿が変わってから性格も明るくなったんだね」

早苗「はい!自分の正体がわかってきて、少しずつ自信を取り戻せてきました!」

青葉「これからも頼りにしているよ、カナエ」

早苗「はい!カナエちゃんにどーんとお任せください!」


早苗「というわけで今回の封神録小ネタ帖!私、カナエの名前は青葉さんがつけてくれましたが、カナエが良いと言い出したのは私です。その理由は、青葉さんがすすめてくれた「カナ」という名前に「神奈子」の響きをなんとなく思い出したからなんですよ」


青葉「その神奈子って神様がカナエに力を貸してくれたんだよね。どんな人なんだろうなぁ」

カナエ「はい………私も会ってみたいです〜」

青葉「こ、ここはメタ空間なんだから記憶喪失してなくてもいいんだよ………?」

カナエ「次回、『神々が待ちかねた逢魔が時』」

青葉「行こう早苗さん。典ちゃんを助け出して、政子牙を倒そう!」

カナエ「はい!えいえい、おー!」

青葉「いだーっ!!!いま拳刺さった!!!」




次回に続く!!!!!
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