東方 編史帖~上白沢慧音の過去へと迫る旅 作:マジカル赤褐色
本棚
幻想郷、とある湖の付近の森の中でのこと。
「ち、チルノちゃん………!ダメだよ………危ないよ………?」
黄緑の髪をした、美しい羽根の生えた小さな子供が不安そうな声をしている。
「大丈夫だ!あたいの湖にこんなものがあるってことは、これはあたいへのシレンに違いない!大ちゃんも行くぞ!」
幻想郷に春が訪れたある日のこと、とある湖の中央に、巨大な大渦が巻き起こった。その中心にある巨大な大穴の奥は暗闇で満たされており、先が見えない。
そんな不穏極まりない場所に、探検に行こうとしたバカがいた。
──────その妖精の名はチルノ。
幻想郷で、【サイキョー】の妖精!!!
それは、歴史の物語から切り離された大冒険。
バカなブルーとしっかり者のグリーンの、サイキョー2人組コンビで繰り広げる、幻想郷でもっともハチャメチャな大冒険。
『渦』の奥に広がる、【絶対にありえない】事実の連続。
サイキョーの妖精が、本当に最強になっちゃった!?
『渦』の奥に待ち受ける新たな出会い。
そして新たなる敵。
『妖精郷』の平和を守るために、サイキョーの妖精が立ち上がる!
「──────異世界ですって?」
「そ。ゆーちゃんは異世界を信じるかい?」
「平行世界の話が好きな貴方が唐突に異世界の話だなんて、変わった話題ね」
「平行世界というのは、俺たちと同じ幻想郷という話に広がる、本物のひとつの幻想郷を描いたもの。平行世界というのは、ひとつの世界に対する一つの解釈のことだよ。つまり、平行世界のひとつひとつには必ずすべてに通用する共通点がある。上白沢慧音なら、
「歴史とは記録されたものではなく、記録を見た者の解釈のことであり、つまり誰もにとって誰しもの歴史がほかの誰もにとっての平行世界の歴史と言えるだろう」
と言っていただろうね。
対して、異世界とはそもそもの住む世界が違う。平行世界というのは必ずそれぞれの世界の中央に軸がある。全ての平行世界の起源をたどるうちに、かならず辿り着く「最初の分岐点」、全ての歴史の始まりとなった場所。それこそが平行する世界の共通点だ。それと違って異世界どうしは何があっても交わることはない。まったく違う軸にある世界は、別の本棚に仕舞われた本のように、干渉し合うことはないんだ」
「………………………………」
「分かるように言えば、平行世界とは【同じ『原作』を持つ創作】であり、異世界は【『原作』が違う創作どうし】と思ってもらえたらいい」
「少し、分かるような気もするわ」
「でもゆーちゃん、想像してごらん。もし、俺たちの住む世界の本棚があったとして、そこに仕舞われている本の一冊一冊すべての表紙に、本の名前が書かれていなかったとして、ラベルの分からない他の本棚の無地の表紙が紛れ込んだ場合…………どうなるかな?」
「本が、混ざって区別がつかなくなる………?」
「それこそが、異世界どうしの交わることのできる唯一のケース。可能性としてはゼロであって、交わる事は絶対にない。本は勝手に違う本棚へ移動しないからね。けれども、本を入れ間違えたり、あるいは誰かの悪戯で、もと【あるべき場所】でない場所へ本が移動したとしたならば、これはありえる話だ。つまり、異なる世界が交わる時は、必ず誰かの手によって仕組まれているということだよ。それが意図的に他の本棚へ入れられた本のか、偶然の入れ間違いで混入した本なのかは問わずとも、ね」
「と、いうことは………………」
「この件には、獣人の山賊のもっと奥に………もっともっと得体のしれない、何かの力が働いているということになるね…………」
「つまり、私たちの見る幻想郷は様々な異世界のつながったものである、と」
「当たらずとも遠からずってところかな。たしかにこの幻想郷は他の幻想郷と比べてとりわけ特異なものであると言えるだろう。獣人の山賊もそう、俺たちが関わるというのもそう、そして何より神門青葉の存在」
「彼の存在がまるで幻想郷の起点であるかのようね」
「まさにそうだね。彼がハンドルとして回ることで幻想郷の運命は右にも左にも動く。それと同時に他の幻想郷では見られない特殊な住民や新たな脅威が現れる」
「そう………やはりそうだったのね。他の幻想郷では見られない、この世界の歪みから創り出されたオリジナル…………」
「僕らの見ている幻想郷の歴史は見る者によって自由に解釈されてそれが一つ一つの平行世界の歴史という話をさっきしたね。その解釈によって生み出された世界と、その世界の起点となった軸となる事実との間に矛盾があった時、『辻褄合わせ』として作り出される存在が『オリジナル』というものだ。都合よく創造された解釈に合わせて生み出す事ができるまさに世界における『無法の存在』。そして、この幻想郷の歪みはその無法の存在にあるということだね」
「辻褄合わせ?ということは、それらは自然発生した存在…………?」
「当たらずともってところかな。辻褄合わせということは、【最初に何か異常が起きている】ということさ。それがひとつなのかふたつのなのかはわからない。だが…………この幻想郷には、この世界の歪みの中心となった何かが─────いる。異世界には純世界の常識は通用しない。純世界での認識、常識が改変、反転して異世界では行われる。もちろん、異世界側からすればこちらの世界は異世界であり、彼らにとっての純世界とは歪曲した事象が発生する…………」
「まさかそれは……………」
「名前はチルノって言ったっけ?…………そいつに対する事柄も、異世界では変わるんだよ。神門青葉の物語も、上白沢慧音の物語も一時休符。ここでは、彼らの幻想郷をまたにかける旅の中で起きていた妖精たちの間で起きていたまた別の事件を描いた物語。これこそまさに、語られない歴史とやらだね?」
「貴方の言った【辻褄を合わせるためにオリジナルが発生するということは、最初から何かが歪んでいるということ】という言葉…………それはどういう意味なの?」
「ふふっ。それを語るには、チルノの冒険の時期の時系列ではまだ早いというものだよ………ふふっ、」
「はぁ…………焦らすのね、」
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東方編史帖〜閑章・どたんば恋娘
おおいなる妖精妃
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